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日常・・・
第6章 【結団と決裂の予感】
「久しぶりだな・・・ジョン・・・エレナ・・・」
突然現れ、HGアンデットを殺した黒い男はジョンとエレナに向かってそう言い放った。
ジョンはまじまじと突如現れた男を見る。
髪が剃り上げられているこの優しい目つきをした黒人・・・
ふと5年前の記憶が呼び起こされた。
―施設から脱出し、荒野と化したアラスカの地表に出たエレナとジョン。
そしてウィルという黒人男性を担いでいた。
ウィルはHGアンデットによって重傷を負ったのである。
そしてジョンはウィルを低い崖の下に隠した。
「すまんな、ウィル」
ウィルの手を握り、2人は近くの山を目指したのである―
「ウィルか?・・・」
ジョンは回想をやめて、目の前に立つ黒人男性を見つめていった。
よく見ると、あのウィルと ―指に長い爪が生えているところ以外は 瓜二つではないか。
「ウィル・・・ウィル・パットンなんだな?」
ジョンがじょじょに興奮してくると、相手の黒人も小さな笑みを作った。
「そうだ・・・あの時のウィルだ」
2人は目を丸くする。
そして笑みが一斉にあふれ出た。
「嘘だろ!?」
ジョンが吹き飛ばされた衝撃も忘れ立ち上がる。
エレナもつられて立ち上がった。
「どうして生きていたんだ!?」
ジョンの質問にウィルもまた、遠い記憶の中へと飛んでいた。
―ウィルはジョンに地面へ降ろされた感覚を感じ、意識を取り戻した。
「すまんな、ウィル・・・」
いきなり手を握られそう言われる。
しかし体は動かないし、目を開けることも出来ない。
待て、俺は意識がある・・・そう思って言うことを聞かない体を何とか動かそうとする。
力を振り絞っているといつの間にか目は開いた。
しかしそこにジョンとエレナの姿は見えない。
代わりに荒野に咲く、一輪花が顔の隣にあった。
そして近くから騒がしい音が聞こえてきた。
「・・・仕方ないな。だが付近の捜索はする」
どう聞いても見方ではない声に、ウィルは何とか体を起こした。
しかしその瞬間、体に異変を感じた。
体といっても・・・両手にだ。
両手の指、真ん中の3本が突然痛み出したのだ。
「くそ・・・」
ウィルは両手の痛みをこらえて立ち上がった。
いつの間にか、引っかかれて傷を負った背中の痛みはなくなっていた。
ウィルが何とか立ち上がると、敵部隊の声が響いた。
「あの崖の下にいるかもな」
ウィルはその声を聞き、急いで近くの窪みに入った。
次に静かに顔を出すと、あの小さな崖下を研究所の私設部隊員の面々が覗き込んでいた。
「いないな」
そういって立ち去る部隊を見ながら、ウィルはホッと胸をなでおろした。
すぐにジョンとエレナを追わなくては、と思いとりあえず何処か見当をつける。
しかし、すぐに指先に痛みが戻ってきた。
が、それでもウィルは何処かへと進んだ。
一応ジョンとエレナを追いかけながら・・・―
ウィルはその時に生えた、自身の長い爪を見つめた。
あの時は苦労したが、いまやもう自分のものとして定着している。
「ねぇ」
エレナが口を開く。
ウィルは目を見開き、「どうした?」の顔を向けた。
「その爪はやっぱり・・・変異のとき・・・?」
「それに」
エレナの質問が終わるとほぼ同時にジョンの質問が重なる。
「お前は背中にその・・・爪で背中を引っかかれた筈だ・・・なんでその傷はもう治癒したのか・・・それに感染は・・・?」
ウィルは自分の力になれるほどで答えを出した。
「この爪は変異の時のものだ。お前らとは変異の仕方が違った。お前達は・・・分類すると“能力”って感じだ。
俺のはそのまま“力”だ。お前らが使う「フォース」は心得ていない。あるのは腕力と敏捷性と免疫だけ・・・」
ウィルはそこで説明をやめた。
順に目の前に立っている2人の男女を見る。
ジョンがこちらを向いて何かを質問しようとした時、バスの中に大きな声が響き渡った。
「なんだ!?となると、お前もジョンたちの仲間ってことか!?」
いまいち状況を把握できていない、ハンドレックスが足の痛みをこらえながら大声で聞いてくる。
ウィルはジョンとエレナを見た後、運転席の方へと歩いた。
先ほどHGアンデットがぶつかり、エアバックが開き身動きが取れなくなっているハンドレックスに近づく。
「おう、お前のことだぞ、モンスターマン。お前もジョンとエレナとおんなじ・・・」
言い終わる前に、ウィルは右腕を上げる。
「なんだ・・・?おいおい、よせ!」
ハンドレックスの悲鳴と同時にウィルの右腕は振り下ろされた。
しかし、長い爪が捉えたのはウィルではなく、その前にあるエアバックだった。
恐怖の顔に満ちたハンドレックスがウィルを見上げる。
「・・・あ・・・あ・・・ありが・・・タンクー」
恐怖で“Thank you”を“Tank”と発してしまい、ろれつが回らなくなっているハンドレックスから顔を離す。
既に2人はバスの外に降りていた。
「おおお・・・」
ジョンが驚きの声をあげる。
外で起きていた戦争が終わっていたからだ。
「終わってる・・・」
エレナがジョンの言葉をリレーしたらしく発すると、ジェームスとルーシーがジョンに近づいてきた。
「やあジョン。お前が化け物がいるバスに飛び込んでいったときは心配したぞ・・・」
ジェームスが心配そうにジョンの顔を見る。
ジョンは気になっていたことを質問した。
「あんな数がいたろ?何でこんなに簡単に片付くんだ?」
ジェームスに辺りに倒れている大量のゾンビを指差して訊く。
だが、ジェームスの答えはそっけなかった。
「あいつが片付けた」
ウィルの方をジェームスは指差していた。
「既にお前がバスに乗り込んでいたときには遠方でこいつがゾンビを吹っ飛ばしていたんだ」
ジェームスは静かに補足する。
ジョンはもう一度周りを見渡した。
ゾンビ共の死体の中には、人間の死体も多く混じっていた。
それを察したルーシーがジョンに説明する。
「もちろんゾンビたちだけじゃなく、仲間も大勢殺されたわ・・・」
ジェームスとルーシーが顔を見合わせて、意を決したようにいう。
「そこの黒人の男・・・が現れる前は私達の敗北は明らかだったわ。その時点で戦闘員の三分の二は殺されていた・・・
いま生きている戦闘員は私とジェームス、そしてあなたとエレナを入れても・・・たった6人なの」
なんてことだ。
生存者は戦い前に51名いたはずだ。
戦闘員はその中で戦闘意欲がある35名。
殺されたのは29人という大きな数だ。
しかもこの場に戦闘員がジョンとエレナ、ジェームスとルーシーと4人も固まっている。
この場ではないところには、たったの2人しか生存していないということだ。
ジョンが失望あらわにエレナを振り返ったとき、さらにルーシーが追い討ちをかけた。
「それだけじゃないのジョン。バスから逃げ出した人たちも・・・どんどんと殺されて・・・」
ジョンは大体想定できた。
自分が力でHGアンデットを吹き飛ばす少し前に、バスに乗っていた人たちが下りてきたのを覚えている。
その人たちも殺されたのだ。
「で・・・その数は・・・」
ウィルに支えられているハンドレックスが質問しようとした時、バスの裏側から1人の戦闘員と・・・
どうみても5人の男女しかいない。
「まさか・・・」
ハンドレックスが顔をこわばらせルーシーを見た。
ジェームスも悲しそうな顔をして告白した。
「そうだ・・・バスにいた16人のうち、生き残ったのは・・・5人だ」
疲れた顔をして歩いてくる老人の男に女、ハンドレックスに銃は無いといった男、12歳の少年、そして5歳の幼女・・・
「これだけか・・・?」
「ああ」
ジョンの問いは、隠しても仕方ないとはっきりと告げるジェームスの強い答えによって、あっさりと返された。
「入りますよ・・・」
そう言って、オーウェンは学校の窓を開けた。
先頭を行く彼は、マシンガンを強く握って前方を見渡した。
窓から侵入した彼らはオーウェンに中の様子を探らせたのだ。
その窓がある部屋はどうやら校内放送のための放送室らしく、放送機器が並んでいる。
「よし、みんな・・・怪しいものは一つもない」
そんな感じで学校に侵入した抹殺部隊の面々は、狭い部屋で腰を下ろしていた。
「さすがに疲れるな」
ソニーがつい弱音を吐く。
いつもは強気で何事にも動じないソニーの弱音により、周りの面々は唐突に不安になってきた。
「早速無線を探さないといけないな」
グリーは勢いよく立ち上がった。
そこには気合と、不安を消し去ろうという思いも見て取れた。
「お前は休め」
しかし、ロスソンのその言葉によってグリーは倒れこんだ。
そしてロスソンに真意を尋ねる。
「休めって・・・なんでだロスソン」
「カーディーとロックに先に探しに行かせた。すぐに交代するが今は彼らが探している」
なんと、勝手に決めていたようだ。
ついこの間まで信用しきっていたロスソンだが、ここに来て独断が見て取れた。
グリーはそんなロスソンに軽蔑の目を向けると座り込んだ。
「ロスソン、おまえ勝手に物事を決めるなよ」
ダイソンもグリーと同じことを思っていたようだ。
ロスソンがクエスチョンマークをつけた顔で振り向く。
「おいおい、俺はかってに決めてなんて無いぞ」
その言葉に一瞬空気が冷たくなる。
しかしそれはカランの言葉によって遮られた。
「おいおい、今はそんなことを言ってる場合じゃないだろ?」
その言葉に、グリーもついけんか腰になる。
「言ってる場合だ、カラン。お前は、物事を勝手に決めるリーダーに従うってのか」
ロスソンはその言葉に疑問をもった。
ついこの間まで、親友のような関係だったグリーが突然自分の案に反対しだしたのだ。
ダイソンはともかく、グリーが作戦に反対するとは。
それの疑問はソニーも同じだった。
「どうしたグリー?お前達は「2060の事件」で共に戦った仲だろ?」
ソニーの質問にグリーが答えようとしたとき、耳をつんざくような銃の連射音が響いた。
一旦議論は取りやめにし、一同は校内から響いた銃声の所へ向かったのである。
一同が議論している頃、カーディーとロックは遠距離通信機を探し廊下を歩いていた。
「ところで・・・学校に遠距離通信機などあるのか?」
ロックが発案者のカーディーに尋ねる。
いまやカーディーも立派な仲間の一人であった。
「いや、本当のところ分からない。でもこのような公共施設には緊急用電話の設置が義務付けられている。
それは特殊な電波線を使用しているはずだから・・・本体が無事なら地球のどこにでも電話ができるんだ」
カーディーの説明に、ロックが感心したように頷く。
「なら安心して探せるな」
そして数秒間沈黙が流れる。
階段の前に来て、緊張感が増しているのだ。
「ロック、そのガトリング砲を使って後ろを任せた。俺は前方を警戒する」
カーディーは的確な指示をした。
しかしロックは何かが不満だったようだ。
「おいおい、そのガトリング砲はやめてくれよ」
カーディーはロックがもってるガトリング砲を手持ち式にした銃器に目をやる。
銃口はガトリング式、そして担いでいるバックからその手持ちのガトリングまでチェーンのように連結した弾が繋がっている。
これのどこが、ガトリング砲ではないというのか。
ロックは説明を始めた。
「まぁ一般的にこれはガトリング砲だ。でもこれをチェーンガンと呼びたいんだよ」
「それではまったく別の武器になってしまうが」
カーディーはますます疑問の顔をあらわにした。
「いいんだ。この弾が連結しているのをチェーンと見立ててそう呼んでいるんだ」
ロックの説明を聞き、納得と呆れ顔を返したカーディーが頷きをかえした。
「ならロック。その“チェーンガン”で後方を警戒してくれ」
何とか満足そうな顔をしたロックが頷く。
それを見てカーディーは階段の一段目を踏んだ。
しかしその時、何かが下に落下する鈍い音と、何かが何かを切り裂く音が後方で響いた。
次いでカーディーの背中に血が吹き飛んでくる。
驚いて振り向くと、下にロックの“チェーンガン”が落っていた。
そしてガトリング部から繋がる連結された弾を見た。
連結された弾は上に伸び、天井にぶら下がっているロックの背中 ―厳密には背負っているバック― まで伸びていた。
「ロッ・・・」
そう呼ぼうとして絶句した。
ロックはジャンプしてぶらがっているわけでない。
天井に張り付いている小柄なリッカーが、ロックの肩をくわえているのだ。
カーディーはついに目が合ったリッカーと、3秒間たっぷり見詰め合った。
そしてリッカーがロックにとどめをさした瞬間、カーディーは前方に転がりロックが落とした“チェーンガン”を掴んだ。
遅れてリッカーがカーディーがもといた場所に飛びかかった時、カーディーは引き金を引いた。
その銃口から鋭い銃弾が飛び出し、リッカー目掛けて直進する。
発射する度に銃口に連結されるように繋がる弾丸が、下に落ちたロックのバックから滑り出してくる。
辺りに連射音が響く中、強力な銃によって撃たれ続けていたリッカーもついに力尽きた。
剥き出しの筋肉を弾け飛ばして、階段の中央辺りに倒れている。
カーディーがガンを手放すと、大きめで思いガンは音を立てて落下した。
そしてすぐに近くに倒れるロックの元に駆け寄る。
「大丈夫か!?」
必死でそう訊くが体は動かず、目を開いたまま絶命していた。
カーディーは静かにその開いた目を閉じてやった。
「おい!何があった!」
ロックの目を閉じた瞬間、後方からそう声が聞こえた。
待機していたメンバー達が一斉に駆け寄ってきたのだ。
「どうしたんだカーディー!」
オーウェンが先頭に走ってきてそう尋ねるが、ロックの骸をみて急に立ち止まる。
「おい・・・これ・・・」
そして同時にリッカーの死体にも目がいったらしく、一緒に走ってくるロスソンとグリーに向かって叫んだ。
「ロックが死んだ!」
あたりが静かになる。
「リッカーも死んだ!・・・」
どうともいえない空気が漂ったのは、間違いなかった。
「玄関ホールを封鎖しろ!」
キャメロンは司令室から監視カメラで未だ玄関ホールでうろうろしているリッカーを確認しつつ、マイクでそう言った。
少なくとも、あの玄関ホールに閉じ込めておければこっちは逃げられる。
ホーキンスもその光景をじっとみていた。
「しかし司令官・・・この状態をずっと確保できるとは思えません」
彼の指摘は的を突いていた。
が、戦車か何かを導入しない限り確実に倒す方法が思いつかない。
確実な対処法が思いつくまで、あそこに閉じ込めておくのが一番だろう。
とりあえず各扉を自動的に封鎖するように司令室にいる技師に命じた。
しかし、ここでとんでもない事態が発生してしまった。
バスが突っ込んで粉々に割れた玄関のガラスは開放されていて封鎖できるものが無かった。
「やばいな・・・」
さすがに無人の島だからといって、リッカーを逃がすわけには行かなかった。
「どうしますか?銃撃を・・・」
リッカーの行動は早かった。
ダニー・コミックは避難場所として開放された特殊部隊本部の3階にあるトレーニングルームで腰をおろしていた。
リームとチードルもそこにしゃがみこんでいる。
ジャックはさっきから姿が見ないワラライを探すといって近くをうろうろしていた。
ダニーが何気なく周りを見回していると、朝のニュースで自殺未遂を放送する予定だった作詞家のゴーレムを見つけた。
何故彼がデモに?と疑問に思っていると、ふとあちらの方がこちらに気付いた。
どうやらあっちもこっちの存在を知っているらしい。そそくさと寄ってくる。
「あんたは・・・まさかダニー・コミック?アナウンサーの」
中年の男は興味本位で聞いてくる。
もちろんダニーはそれに答えた。
「ああそうだ。デモについて報道してたらこのざまでね」
あたりがざわめいている中、2人は小さく笑いあう。
「ところで、君は作詞家のゴーレムだろ?」
ダニーの質問に相手は隠す様子も無くあっさりと答えた。
「そうだ」
「自殺未遂をしたと聞いた。そして昨日退院したと」
「詳しいな。さすがマスコミ」
ゴーレムは不審がる様子も無く、純粋に褒め称える。
ダニーは著名人であるゴーレムがデモに参加した理由を何とか聞き出そうと質問した。
「ところで・・・なんでそんなあなたがデモに参加を?妻子がいるはずでしょ?」
さすがに答えづらい質問かと思ったが、それもあっさりと答えた。
「ここの所ストレスが溜まっていたからな・・・軽い鬱憤晴らしに。そしたらこんな不運に・・・」
ダニーはその様子をまじまじと見る。どうやらさっきまでの軽い彼とは少し違った。
そして一瞬の間が開いた後、ゴーレムは本音を吐いた。
「・・・やっぱり・・・俺は死にたいのかもしれない・・・」
涙ぐんで言う彼をまじまじとダニーは見つめた。
元は自殺が出来なかったのだ・・・自殺に失敗とはとても恥ずかしいに違いない。
ダニーが何か励まそうとゴーレムの肩をぽんと叩いた時、広い部屋の扉が開いた。
一斉に皆の目が入ってきた黒人の男 ―デモを鎮圧させようとしていた特殊部隊員だ を見つめる。
「リッカーが外に逃げ出した!」
その言葉に一同はうなだれたが、一瞬安堵感を覚えた。
リッカーがこの場からいなくなったのだ。後は避難を待てばそれでいい。
しかし入ってきた特殊部隊員の言葉は続いた。
「お前達デモ隊は俺達が安全を保障できていなかったのが種となって発足したんだろ?」
ダニーは理由を知ってなんとなく納得したが、デモ隊の先頭に立っていた若者が立ち上がって反論した。
「だからなんだ!?というか、リッカーをまた逃がしたのか?」
その言葉に空気が硬直するのをダニーは感じた。
一歩も引かない黒人の隊員が強気に言い切る。
「逃がした!」
そこで全員の顔が一瞬固まる。しかしそれを見ないようにして黒人隊員は続けた。
「だからこそお前達の手を貸してほしい!また不信感を高めてしまう・・・が、今は手を結ぼうじゃないか!
協力してリッカーを倒そう!その後からいくらでもデモを起こせ!分かったな!
さぁ、誰か俺達に手を貸してくれないか!」
黒人隊員は怒鳴っていた。ダニーはできることなら自分が力になりたいと思っていた。
しかしその前にデモ隊の面々が反論した。
「今更になって協力できるか!」
「ならなんでここにいる!?特殊部隊を頼ってここに逃げてきたんだろ!?」
黒人の隊員も何とか意見を通そうとしている。筋が通っていて、しっかりとした意見だ。
が、デモ隊の方も一歩も引かなかった。
「今は頼っている!しかし全て保障してくれるとは思っていないな!」
「だからいい加減に、リッカーだけを倒すため協力してくれと・・・」
「俺は行く!!!」
いい争いが続く中、その声だけが一つ浮き上がった。
その声の主を皆が確認する。
ゴーレムだ。
ダニーはなんとなくその理由が分かる。・・・死にたいのだ。
「やめとけ・・・私に止める権限は無いが・・・やめたほうが・・・」
ダニーが小声で言うが、あっという間に黒人隊員の隣まで歩いていってしまった。
それに心を動かされたか、デモ隊の数人が手を上げる。
その中にはあのリーダー格の男やバスに乗り込もうと言った男も含まれていた。
7人集まった所で黒人隊員は募集を打ち切ろうとした。
「よし、もうこのくらい要れば銃撃の力のプラスに・・・」
その時、何かのささやきか、ダニーも手を上げていた。
「俺もいかせてくれ」
黒人隊員は喜んで受け入れる。
「他にいないか?」
ダニーが黒人隊員の脇に並んで振り返ると、驚いたことにリームとジャックも手を上げていた。
「あんただけでは心配だ」や「僕もついていきます」といった顔でこちらに向かってくる。
そして次にはチードルが手を上げた。
一瞬喜んだが、次の瞬間には恐ろしい想像が浮かび上がった。
また報道に利用されそうな気がしていた。
「集まったのか?」
ホーキンスがヘッドセットのマイク部分に向かってそう言っている。
十分な人数の追撃部隊が整ったとコーラスから報告が入ったのだ。
しかし一般市民である・・・もちろん死ということは免れなくてはならなかった。
ホーキンスが電源を切るとキャメロンの姿が見えないことに気付いた。
焦って探すと、最高司令室にいる所を見つけ出した。
しかし制服は任務用のコスチュームに変わっていて、腰のベルトにはハンドガンや手榴弾がついている。
「なにを・・・?」
なんとなく想像はできていたが、確信は持てなかった。
「何を言うかホーキンス・・・私も行くんだ」
ホーキンスはその言葉に耳を疑った。
覚悟はしていたものの、実際に最高司令官がリッカーの追撃部隊に加わるとは・・・
唖然とするホーキンスに、キャメロンはブーツの紐を結びながら説明を始めた。
「ただでさえ人数不足だ。そこに民間人が加わっても・・・正直あまり力にはなれないと思うんだ・・・
それで少しでも力になれる私が加われば・・・民間人を危険に晒すわけには行かないんだ」
キャメロンはブーツを履き終え、ホーキンスに向いた。
「私の任期は・・・数えてみたら今日までだった。次の最高司令官選出は一週間後・・・
前から言ってるように・・・次の最高司令官は君が適任だよ、ホーキンス」
ホーキンスはその推薦に戸惑ったが、すぐに止めに入った。
「私はあなたの任期続行を希望しますよ」
「そうか?私はきみの新しいやり方を期待するが」
キャメロンは目も見ずにそういった。
ホーキンスはキャメロンが準備完了したのを見て、意を決していった。
「私も行きます!」
「なに?」
キャメロンは耳を疑うようにホーキンスを見る。
「行くといったんです」
そういってホーキンスは自分の部屋に戻ろうとする。
しかしキャメロンが大きな声で止めた。
「待て!君が死んだらどうするつもりだ!」
「もし2人とも生き残ったら私が最高司令官になります!もし私が死んだら、あなたは任期続行してください」
ホーキンスは今までに無いほど強い口調で言った。
さすがのキャメロンも少し笑った。
「私の任期続行はありえないな」
そのジョークはなにを考えているのか分からなかった。
しかしすぐに真顔になってホーキンスを見た。
「早く支度をするんだ。すぐに出発するぞ!」
ホーキンスは頷いて部屋を出て行こうとする。
しかしちょっと待て、とキャメロンにとめられた。
「安全命だ。忘れるな」
ホーキンスは“安全命”を心におくことを決意し、ここ十年ほど封印していた自分の戦闘用品を解禁したのである。
こうして逃げたリッカーを追うため部隊員4名、民間人11人、スペシャルゲスト2人を加えた部隊が完成したのである。
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