君のために


『昨日は』って言った方が正確なのかも。
少し前に0時を回ったから。
君の為に精一杯体を削って練習したギター。
決してうまいとは言えない歌声。
そんな半端な音でさえ君に伝えたかった僕がいた。
何時間か前の僕ならそういう気持ちでいた。

『ごめん』君からのメール。
僕は君に歌ってあげると約束をした。
約束だったかどうかは知らないけれど。
僕は君に歌ってあげると約束をした。
楽しみにしていたかどうかは知らないけれど。
『別に気にしていない』僕からのメール。
そのメールはうそだけどね。
気にしてなかったら君に冷たくなんてしない。
困らせたりなんかしない。
傷つけたりもしない。
ましてや泣かせることなんてするはずがない。

いつもの僕ならそういうことはしない。
あるとしてもほんの少しだけ。
でも今日の僕は違った。
困らせ、傷つけ、涙すら流させた。
『何で泣いてるの?』分かりきった質問。
『泣いてなんかない』見え透いたうそ。
静かな夜に、静か過ぎる沈黙。

君が昨日見た夢。
僕が君から離れる夢。
君はその夢をひどく嫌っていた。
僕が離れていくことを悲しんでくれた。
『はじめは本気だった』どうやら夢の中の僕の言葉らしい。
そんな話しをこの静寂の中で思い出した。

『その続きのセリフでも考えてみようかな』僕は言った。
『そんなことしないで』君は拒んだ。
しかし僕は考えていた。次の静寂は僕の続きのセリフで始まった。
君は声をあげて泣いた。
悪いと思った。傷つけたと思った。自分は何をしたんだろうと後悔した。
『ごめん』謝ることしか出来なかった。

『軽はずみな言葉が時に人を傷付けたそした君はいないよ』
ミスチルの歌詞の一つだ。
このとおりだった。
軽はずみな言葉だった。
君を傷付けた。
ただ違うのは君がいることだけ。
いなくなってしまったら?
分からない。
君がいない生活なんて考えられるわけがない。
僕の生活に溶け込んだ君をどのように引き裂けというのか。
分からなかった。
まだ君はいる。僕の傍にいて、笑ってくれて、愛してくれる。

大切にしなきゃって思った。
昨日のこと君は許してくれるだろうか。
『機嫌悪いでしょ』君は昨日そう言った。
『別に』ごめんね?ほんとにごめん。
君を困らせたくてわざと冷たくしてた。
もうしない。絶対にしないから。


朝の電話。君を抱きたくなった。
ちょうど何日か前のように抱きたくなった。
手を繋いで歩きたくなった。
そっとキスもしたくなった。
ほんとにほんとにわがままな僕がいて。
ほんとにほんとに優しい君がいる。
僕ね、君みたいに少し素直になる。
もし何か感じたらすぐに言う。
冷たい態度なんか取らずにちゃんと言うから。
たまにきついことを言うかもしれない。
けどちゃんと言うからね。

これからもずっとずっと一緒だから。
ずっとずっと一緒にいたいから。
だからだから大切にしなくちゃ。
精一杯の愛を込めて君を大切にしなくちゃ。
たった一人の君のために。

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