ほしはひかるのかな????

ほしはひかるのかな????

その11 喫茶室こんとん お日さまのした

「喫茶室こんとん」 、に投稿したものをまとめています♪

分類のしかたは、喫茶室こんとんにあるままです。

・お日さまのした
・月のした
・雨の日・曇りの日
・白手帳

という分類になってます。こちらにあるのは「お日さまのした」です。


○お日さまのした(お日さまのしたで読むような)

「やさしい鹿」
「あなたの岸辺」
「春」
「歯医者のスリッパ」
「華やかに」
「まぶしいの」
「この時間はいとしい」
「ポピーの花畑」
「階段」
「恥じらいを」
「ただの」
「質問」
「あの坂」
「12月の子
「オゾンホール」
「おっかない」
「白の緑の」
「白い花」
「真っ赤な嘘」
「黄色だよ」
「夏の」
「緑」
「最後から六番目」
「サイクリング」
「ななつ」
「回転」
「四角い箱」
「青磁」
「コットンキャンディ」
「手紙」
「朝」
「ダリアローズ・タンブリン」
「めめさん」
「行って来ます」
「ハンギング・バスケット」
「イチゴのソース」
「四葉のクローバー」
「いいじゃないか」
「ベンチにて」
「朝食」
「くじ引き」
「朝日」
「花鳥風月」」←ここまでしかUPしてません。いずれそのうち
「バカンス」
「さようなら」
「春に」
「オートマティック」
「エンジェル」
「花」
「くらげ」
「風が吹くから」
「幻想」
「紅茶」
「比喩」
「南の」
「コーマ」
「空」


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「やさしい鹿」

やさしい鹿は
首を
うとうと
かしげて
眠る

緑の
草原
黄色い
お花

やさしい鹿は
黒い目
ぱっちり
開いて
目覚める

宇宙の
どこか
小さな
星で

やさしい鹿は
鼻を
ひくひく
匂いをかいで
歩み始める

素敵な
ことに
私の
ほうへ

(2005/02/15)

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「あなたの岸辺」

雲から晴れ間が見えたので
昨日買った新しい靴を履いて
おもてに出ます

始め硬かった靴は
だんだんと足になじんで
コツコツとよい音を立てます

遠くに、あなたが見えます
あなたは釣り糸をたれて
河を見つめていて

あなたが時々釣り上げるのは
私の知らないもの
確かなもの
あいまいなもの・・・

私は靴を鳴らしながら 歩きながら
口笛で、あなたを呼びます
あなたはきょろきょろとあたりを見回して
また
河を見つめてしまう

あなたが時々釣り上げるのは
私の知らないもの
わくわくするもの
怖いもの・・・

雲から晴れ間が見えたので
私もあなたも
おもてへ出て
したいことをして
行きたいところに行くの

あなたが時々釣り上げるのは
私の知らないもの
強いもの
とてもか弱いもの・・・

したいことをして
行きたいところに行くの

私の行きたいところ
私の行きたいところ・・・



私は
あなたの岸辺に行きたい

(2005/03/03)

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「春」

丸まってるお菓子がかわいい。

ワンピース
薄い桃色と
薄い緑色
どっちにしようか、迷ってる

私が困ると、あなたは笑う気がするから
言わない

(2005/03/10)

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「歯医者のスリッパ」

歯医者のスリッパは考えました
私も何かお手伝いできないかしら
そこで
歯医者のスリッパは
痛くなくなるツボを押してあげました
男の子、今日は泣きませんでした

歯医者のスリッパは考えました
私も何かお手伝いできないかしら
そこで
歯医者のスリッパは
がんばってふかふかになりました
おばあさん、今日は冷えませんでした

歯医者のスリッパは考えました
私も何かお手伝いできないかしら
そこで
歯医者のスリッパは
小さい声で歌を歌いました
赤ちゃん、今日はおとなしく、受付の人に抱っこされました

歯医者のスリッパは考えました
私も何かお手伝いできないかしら
そこで
歯医者のスリッパは
歯医者さんの水虫を治してあげようとしましたが、
それは無理でした

歯医者のスリッパは考えました
私も何かお手伝いできないかしら
そこで
歯医者のスリッパは
きっちりそろっていました
神経質な男の人、今日はなんだか気分がいい

歯医者のスリッパは考えました
私も何かお手伝いできないかしら
そこで
歯医者のスリッパは
ストッキングの伝線を教えたかったのですが
女の人、気づきませんでした

歯医者のスリッパは
明日のお手伝いのことを考えながら

暗くなった診療所で

眠るのでした

(2005/03/11)
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「華やかに」

華やかに
傷をつけました
あの人に

あの人は
せっかくの傷をじっと見て
封をしました

ぺたり。

すこし
泣きたくなったので
盛大に泣いて見せました

わあん。

私たちは
隔たりのある二人なのですが

二人の間には
春の花、夏の花、秋の花、冬の花が
常に常に
咲き誇っているのです

すてき。


二人の関係ないところにも
季節はあるのかしら?

(2005/03/21)

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「まぶしいの」

まぶしいの
目を開けていられないくらい

花が咲いて、そこから
ひかりが
たくさんたくさん
生まれてきたんだわ

もう、目を手でおおってしまう


まっくらなの
目を閉じているかわからないくらい

花が閉じて、同時に
まっくらが
たくさんたくさん
にじんできたんだわ

それだから
口であたりを見るの

ぱくぱく
ぱくぱくって

ああ
いまなら
海で生きられるかもしれない

(2005/04/13)

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「この時間はいとしい」

つば広の帽子を膝に乗せて
バスで

良くはない道
揺れるたびに
乗客の首もカクカク揺れる

昨日飲んだ水、とてもおいしかった
今日はバスで
明日は、お菓子の本を買う

花束をたむける
年に一度のバスで
乗客の首がカクカク揺れる

一緒に笑った人はもういないけれど

昨日のこと
今日のこと
明日のこと
を考える
つば広の帽子を膝に乗せて

バスは揺れ
ぱらりと落ちる
花びらをつまむ

この時間はいとしい

(2005/04/24)

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「ポピーの花畑」

青い緑の
とうめいの
うすい
ふくをきた
妖精

何も言わず
こっちを見てる
しずかに
わらって

ポピーを摘んで来た

とてもゆれていた

オレンジや赤や黄色だった


の・・・・

青い緑の
とうめいの
うすい
ふくをきた
妖精


こんな顔


の の
 ー

また来てね
ポピーの
はなばたけ

わたしは、まってる

(2005/05/06)

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「階段」

階段を昇る
(それは影だ)
(いいえ 影ではないの)

回廊を行く
(それは君だ)
(いいえ 私ではないの)

(君はだらりと下げた手に植物を携えて)
(いいえ それは小さな動物)

階段を昇る
階段を降りる

回廊を行く
回廊で止まる
(君は不思議そうだね)
(いいえ なんにも不思議なことはないわ)

階段はどこまで続いているのか
(あの 植物が生い茂っているところへ)

回廊の終わりはどこだろう
(小さな動物が走り抜けた場所)

君を探す
君を探さない

目隠しを外す
目隠しを外さない

階段は空中で止まっている
回廊は空中に浮かんでいて

(それは君だ)
(いいえ 私ではないの)
(私は影ではなく)
(あなたの目隠しを外すために)

急に大きく地面に近づいた階段を降りて


あなたを捕まえた!

(2005/05/13)

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「恥じらいを」

恥じらいを胸に
仔兎
駆けて行った

春に恋をした
仔兎は
恥じらいを知って

春が終わる頃には もう
しっぽの線までも完璧に
誰かを待つ準備が
できている

知っているのかいないのか
小さな花畑で
鼻をひくひく
動かして

(2005/05/17)

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「ただの」

椅子を引いたとき
床と
椅子の足
どっちが鳴ったか知らないよね

坂道をのぼるとき
ちょうど追い風だったけど
僕のためにじゃないよね

遅くまで空が明るくて
不思議な色で
急に暗くなって
でも
わざとじゃないよね

猫を三匹も見かけたけど
それぞれ違う時
別々の所に
行こうとしていただけ

ただの日常なんだ

床と
椅子の足
どっちが鳴ったか知らないよね

明日も
その次も

(2005/05/18)

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「質問」

君は質問をよせつけないね

知りたがったらダメみたい

いいよ
君のことならだいたい知ってる

キャラメルが好きで
曇り空が結構好きだ

電車に乗る時顔をしかめて
じっと見ると「なによ」って言う


知りたがったらダメみたい

でもどうしても聞いてみたい

君が最後に泣いたのは
いつ?


それから謝るよ

その時、いなくてごめんね

(2005/05/23)

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「あの坂」

あの坂は
どこへ続いているのでしょうか

さあ知らない
このかんざしに聞いてみましょうか

水晶でできた
青梅のかんざし

あの坂は
どこへ続いているのでしょうか

さあ知らない
この帯止めに聞いてみましょうか

象牙でできた
あやめの帯止め

あの坂は
どこへ続いているのでしょうか

さあ知らない
この鼻緒に聞いてみましょうか

牡丹の模様の
ちりめんの鼻緒

日傘をくるくる回してね

この坂おりてみましょうか

(2005/05/25)

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「12月の子」

あの子の耳から冷たい風が吹いて
カレンダーをさっとめくり

12月になった

人が多すぎる街で出会った
小さな
あの子

あの子は
子猫な声で
歌う
多分、12月の歌だ

あの子は
なんでか
僕の部屋までついてきて

古いソファーにちょこんと座り
白いタイツの足をぶらぶらさせながら

「らいねんも、すこしだけいいことが・・・」

って歌う

少しだけって
いいかもしれない

僕は、あの子のために
少しだけ甘くした飲み物を温めながら
思う

それを
二人で
飲んで・・・

僕はぼんやり
あの子は鼻歌

歌が終わったのか
あの子はとん と立ちあがる

群青の
ビロードのワンピース
裾には
とても綺麗なビーズの刺繍


何処へいくの?

せかいじゅう、どこへでも

何をしに?

なんでもするの。したいことは、ぜんぶするの。
(いまも、したよ。)


そのままあの子は手を振って
すたすた歩いていく

外は凍っていて
吐く息はみんな白いのに

あの子はうれしそう


あの子は

 12月の子


群青の
ビロードのワンピース

とても綺麗な

ビーズの刺繍・・・・


2004/12/29(Wed) 18:14:55

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no. 433 オゾンホール
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/06/03(Fri) 22:06:25

ぽっかりと
あいた穴
あなたの
オゾンホール

わたし
埋めようと埋めようと
いろいろがんばった

あなたはわらっていたけど
わたしはがんばっていた

ぽっかりと
あいた穴
あなたの
オゾンホール

わたし
もう冷蔵庫使わない使わないって
言ってみた

あなたはわらっていたけど
わたしはがまんしていた

ぽっかりと
あいた穴に
あるひ
階段

ちょこっとのぼって
あなたを待っていた


いまも、待っているんだけど・・・

no. 434 おっかない
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/06/08(Wed) 11:06:54

静寂の中から
お前の姿が
ゆらぎ立ち上った時
俺は喧騒の中にいて
恐れおののいた

お前の周りは常に
湖畔のホテルのように静かで
俺は入っていけそうにない
「お客様、ネクタイの着用をお願いいたします。」
なんてな

マティーニのオリーブみたいに
お前をくわえるわけにも
いかないだろう

お前はそこ

俺はここ

まあ何かあったら呼んでくれ

うるさくて聞こえないかも
しれないが

お前の髪を飾る花くらい
俺だって取ってこれるんだぜ
花なんて
おっかないけどな

俺を恐れおののかせたのは

お前が最初で

多分最後だ


あの静寂の中から・・・・・


no. 435 白の緑の
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/06/13(Mon) 09:35:03

私はネギです
白の緑の

私は海に似ているでしょうか?
・・・それは白の青でしょう

私は乙女の唇みたいですか?
・・・それは白の紅でしょう

私は碁石になれますか?
・・・それは白の黒でしょう

・・・あなたは何かになりたいの?

いいえ、でも
明日の朝には
とととんと刻まれてしまうので
その時
根っこと葉っぱはきっと捨てられるので

土に繋がっていた根っこ
お日様を浴びていた葉っぱ・・・・

両方切られて
白い体だけになって・・・

それのことを考えると
少し寂しいなって
思うのです

私はネギです

白の、緑の

no. 436 白い花
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/06/13(Mon) 23:52:53

私はジャガイモです

私の花をご存知ですか

白です
白い花です
風に揺れる白い花の大群
それは
素敵です
とても素敵

白い花の中
テントウムシを探して
真剣な女の子
真っ赤なほっぺが
つやつやでした

白い花の中
遠くの雲を
じっと見つめていた
男の子
ひそめた眉が
かっこいいでした

今日の夜はなんですか?

ビシソワーズ
白い白い、ジャガイモの
冷たいスープ

ああ、それは
素敵です

とても素敵

no. 437 真っ赤な嘘
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/06/14(Tue) 00:33:06

私はトマトよ

まだ青いうちにもぎとられて
暗い箱の中で赤くなったの
お日様の赤じゃないの

きれいだけど
真っ赤な嘘だわ

でもねえ
私のことを
デザートみたいにして
最後に、大事に食べるこがいて
大事に食べてくれるの

だから、いいの

ううん
ほんとは私のこと嫌いって
最後まで
食べてくれなかったの

真っ赤な嘘
ついちゃった

でもね
しょうがないわねえって
ママが
最後の最後に
食べてくれたの

だから、いいの


no. 440 黄色だよ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/07/07(Thu) 11:41:42

僕、キュウリ

黄色だよ
知ってると思うけど
花は黄色

黄色に何を混ぜたら緑?

そうあたり

青を混ぜたんだよ

あのたかーいところにある
雲なんか泳いでて
鳥なんか飛んでる
青を混ぜたら

緑になった

この、ぼつぼつはねえ

虫さされ

なんてね

塩で揉むといいよ


no. 448 夏の
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/07/20(Wed) 14:15:25

声の方を見上げると

入道雲がのそりと立ち上がって
お昼の相談をしている

今日は何を食べようか
夏の風
夏の花
夏の色
夏の光
夏の海

すべて
手の上にのせて
そっくり
飲み込んだりできるけど

どれか
残しておこうか

どれがいい?


no. 449 緑
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/07/26(Tue) 22:24:38

太陽が雲の切れ間から
ぐいと顔を突き出して

木々は一気に生い茂る

君は一緒に生まれたような気分になって
洗濯をしたり
掃除をしたり

生い茂る木々の葉は
それぞれ色が違う
鳴らす音も
匂いも違う

彼らは彼らの言葉で話し、歌う
彼らのやり方で食事をし
風と手をつなぎ
空に触れる
鳥を招いたり
虫をもてなしたり

君は一緒にもてなされたような気分になって
歌ったり
眠ったりする

そんな気分になっているだけ

ごらん
生い茂る木々を
君は見上げる

しかしそれは
いくら見上げても
想像もできないほどの緑

想像もできないほどの緑なんだ


no. 452 最後から6番目
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/08/02(Tue) 22:58:03

おかゆは1番最後に煮るの

さくらんぼは2番目に美味しいと思う

3番目にって何を言うか忘れちゃった

4番目・・・雲を数えていたの

あの5番目の歌は忘れられないほど

最後から6番目のあなたを

私は好きになった


no. 455 サイクリング
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/09/13(Tue) 14:18:46

「サイクリングに行こう」
と言ったら君は
すごく嫌そうな顔をした
「いやらしい」
だって

フットボールのキャプテンが
誘ってきた時も
鼻をちょっとふくらませて
黙ってたくせに

真っ昼間
草むらに君となだれ込んで
見つめ合った時も
でっかい目をもっとでっかくして
黙ってたくせに

行っちゃいけない洞窟に
いやがる僕を引き連れて
見ちゃいけない雑誌を見たときも
(そん時は暗くて顔は見えなかった)
黙ってたくせに

「サイクリングに行こう」
と言うと君は
すごく嫌そうな顔をして
「いやらしい」
だって

学校行くときも
ピクニックの時も
「つまんないつまんない」って言うデートの時も
自転車に乗るのに

サイクリングは
「いやらしい」
だって

理由はぜんぜん教えてくれないで

君は変だよ

君は謎だよ


僕は謎が すごく好きだよ


  今日も草むらになだれ込むかな?


no. 461 ななつ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/09/20(Tue) 00:52:42

やっとななつになりました

むつかしいのはだいきらい

ランドセルならくろがいい

おとこのこにはあかんべえ

おんなのこにはいーをする

鳥ならいっしょに飛びましょう

雨ならいっしょに踊りましょ

おひさまかんかんあついあつい

うんどうかいではいっとうしょう

風ならいっしょに歌いましょ

月ならいっしょに眠りましょ

ほしはたくさんきらきらり

あしたのあさにはわすれちゃう

くつはいっつもちんばです

うわばきなんかいらないよ

すかーとなんかはかないよ

くもはふわふわうらやまし

えんそくおやつはわすれない

虹ならどんどこのぼってく

海ならクジラの滑り台


「きーちゃんお教室に戻りなさい」

いやですよう。


no. 463 回転
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/09/20(Tue) 17:00:22

なあメアリーご覧よ
回転木馬の上で
ブタがウシにプロポーズしてら

待ってボビィ
木馬が早すぎて
振り落とされないよう
しがみつくので
精一杯よ

ああ、必死なお前の顔ったら
この上なく妙ちきりんだぜ

そんなこと言わないで頂戴
どこにあるのブタの絵は?

お前の真上さメアリー

ああ、もう早く降りたいわ
こんな回転木馬
そしてあなたと結婚したいボビィ

お前には無理さ
お前は一生
ブタの絵を探して
ぐるぐる廻ってるのがお似合いさ

そんなこと言わないで
早く止めるよう言って頂戴
そして私にプロポーズしてよ

お前があと20キロ痩せたらな、メアリー
そら、木馬が悲鳴を上げてるぜ

ああ、後生だからボビィ
私を見て笑うのはやめて頂戴

これが笑わずにいられるか
ブタはウシと結婚して
ハンバーグにされちまうんだぜ

ああ、お願いよボビィ
早く私と結婚して頂戴

お前には無理さメアリー
お前は一生
ブタの絵を探して
ぐるぐる廻ってるのがお似合いさ

大好きな俺のくそったれメアリー

必死なお前の顔ったら
なんて愛しいんだ

お前は一生
ブタの絵を探して
ぐるぐる廻ってるのがお似合いさ

ボビィィィィィィ・・・・・・・・・・・

 ボビィィィィィィ・・・・・・・・・・・

  ボビィィィィィィ・・・・・・・・・・



no. 464 四角い箱
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/09/22(Thu) 23:10:55

四角い箱をぴったりと閉じたいのです

しししかくいいいはこをぴったりと閉じたいのです

し、しかくいは、はこをぴ、ぴったりと

ぴっちりと?

し、しかくいはこの蓋をぴっちりと閉じたいのです

ししかくいいいははこのふふふたをぴぴぴぴっちりと閉じたいのです

しか、しかくいは、はこっ

はこのふた

をっ

ははははは

はこ

はこ?

はははこのはこには底がありませんよ

底がないじゃないですか

そこ

そこ?

四角い箱の底をぴったりと閉じたいのです

ししかくいはははこのそそそそこを。

あっ

両手でですね

・・・・箱じゃないじゃありませんか・・・・


no. 467 青磁
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/09/26(Mon) 13:24:07

青磁の
うす青の


甘い雨の
降る

風は
不思議な


ジャスミンの花
香る
赤い実の
散る

獣の
足跡は
赤い

散らばる
雨粒

青磁の



no. 468 コットンキャンディ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/09/30(Fri) 16:29:53

お砂糖の上に
寝転びました
溶けないように
そっと

あなたの幸せを
お祈りしました
ばれないように

  ピンクやブルーのコットンキャンディ
  遊園地の明かりに照らされて
  きれい
  帰る頃には
  すっかりしぼみ・・・・

  あなたは怖がる私を
  観覧車に乗せて
  てっぺんまで来ると
  急に黙り・・・・

  言わなくても
  ようく分かりました

  あなたが遠くに行くこと。

  キスはコットンキャンディのよう・・・に
  軽く


お砂糖の上に
寝転びました
溶けないように
そっと

あなたの幸せを
お祈りしました

ばれないように

そっと


no. 473 手紙
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/10/04(Tue) 13:36:26

手紙を広げるときいつも

艶やかな紺色の羽根を
あなたは広げるでしょう?

あおいあおいとおい
空の下

生きていることは
とても悲しいです

とても嬉しいです

私たちは

悲しいと
嬉しいのあいだを

行ったりきたりする生き物です

どちらの港にもたどり着けない
小さな船のように

または

出したきり届かない
あなたへのお手紙のように



手紙を広げるとき
あなたは羽ばたいて・・・

その風が、こちらにも届きますように・・・


no. 474 朝
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/10/12(Wed) 08:57:35

むすんではひらかれていく
手のひらに似たもの

まだ眠りたいあなたには
むすんだまま

もう起きたいあなたには
すぐにひらきましょう

私は贈り物なんかじゃないんですよ

ええ、ほんとに


no. 475 ダリアローズ・タンブリン
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/10/12(Wed) 10:24:06

さあ輪になって踊りましょ

20人のダリアローズ
みんな同じ顔

さあ手を鳴らしましょ

19人のダリアローズ
みんな同じ服

さあくるりと回りましょ

18人のダリアローズ
みんなくすくす笑い

さあ手をつなぎましょ

17人のダリアローズ
仲良く手をつないで

さあ縮みましょ

16人のダリアローズ
輪の中心へ
中心へ
もっと
もっと
もっと

さあ広がって

15人のダリアローズ
輪を広げて
広げて
もっと
もっと
もっと

14人のダリアローズ
疲れて休憩

13人のダリアローズ
そろって寝転ぶ

12人のダリアローズ
そろってお昼ね

11人のダリアローズ
一人はどこかへ

10人のダリアローズ
立ち上がり

9人のダリアローズ
あたりを見回し

8人のダリアローズ
肩をすくめる

7人のダリアローズ
みんな同じ顔

6人のダリアローズ
みんな同じ服

5人のダリアローズ
そろって言う

4人のダリアローズ
これってなんだか

3人のダリアローズ
変じゃない?

2人のダリアローズ
お目目ぱちくり

・・・・・・・・

たった一人のダリアローズ

一人でタンブリン




みんなはどこ?


no. 478 めめさん
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/11/09(Wed) 16:46:45

めめさん
めめさん

めめさんのめは遠くを遠くを見ています

めめさん
めめさん

めめさんのめは多分遠くを旅している途中なのでしょう


旅の途中で転んだようです

「ああ・・・もう。」とつぶやきました


それから素敵な夕焼けを見つけたようです

めめさんのめがあたたかな夕焼け色に染まっていました


めめさんのめからお水が溢れてしまったのは

海にでも行ったのでしょうか


めめさん
めめさん

ご飯までには帰って来て下さいね

no. 483 行って来ます
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/11/18(Fri) 15:46:10

秋・・・・はどこから来てどこへ行くのでしょう

空・・・・は果てしないのですが雲はどこかへ行くようですね

夕・・・・はこっくりとその実を毎日ある哀しい時間になると実らせてしまいますが

落ちた実はどこへ行ったのでしょうね

冬・・・・もやがてはやって来て行くあてもなくしばらくさまよってはあちらこちらを

白くしてしまうのでしょうね

わたしはわたしの一番知っている場所へ
行って来ますね

行きますね


もし、よろしければご一緒に


今日、わたしが言いたかったのはそのことなのです

no. 484 ハンギング・バスケット
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/11/21(Mon) 16:54:29

人魚のブーツを隠したの
ハンギング・バスケットの中

お花がむちゃくちゃに溢れて
ブーツを隠してくれたの
蜂にだってヒミツ

パンプキンの角を隠したの
ハンギング・バスケットの中

緑がぷんぷん匂って
角を隠してくれたの
リリアにだってヒミツ

キイスの声を隠したの
ハンギング・バスケットの中

お花はちょっともなかったけど
声を抱いてくれたの
ママにだってヒミツ

キイスとわたし
ハンギング・バスケットの中で
それから先はヒミツ


no. 485 イチゴのソース
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/11/28(Mon) 22:51:22








ぬるくなったお湯。


no. 486 四葉のクローバー
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2005/12/07(Wed) 19:06:42

四葉のクローバーを
はいつくばって探してる
おしりがぴこん
ひとつ、ふたつ、みっつ

ないね
ないねえ
なーいね

ひとりのおしりには、テントウムシ
もうひとりには、チョウチョ
もうひとりには、ミツバチ

これはいいお椅子
いいね
いいーね

虫たち、クローバーのあるところ、知ってるよ
知ってるけど言わないよ
こんなにいいお椅子
もすこし座っていたいから

ないね
ないねえ
なーいね

春の、穏やかな午後なのでした


no. 490 いいじゃないか
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/01/09(Mon) 18:16:19

ひっくり返ったって
いいじゃないか

レースのリボンにきらきらネックレス
いいじゃないか

夜中にソーダで眠る
いいじゃないか

ベッドに海
いいじゃないか

潮騒?
いいじゃないか

裸足で
いいじゃないか

抜き足差し足で
いいじゃないか

すべて波に洗われる

いいじゃないか



  じ
   ゃ

     い
       か 


no. 491 ベンチにて
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/01/13(Fri) 11:43:55

寒い寒い公園のベンチに

炬燵が座りに来ました

よっこらしょ。

そこへ、扇風機がやってきて隣に座りました

どっこいしょ。

二人はちらちらお互いを見ますが

何を話しかけたらよいのやら

やがて炬燵は腰をあげ

ひとつ会釈をすると去ってゆきます


扇風機は一人、寒い寒い公園のベンチに

座っております

日はすっかり暮れて

街灯の灯りもつきました


no. 492 朝食
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/01/13(Fri) 11:48:09

朝食の時間です

パンの耳が眠い目をこすりながら

目玉焼きを焼いています

パンの耳はカリカリなので
腰を曲げるときちょっとつらい

キュウリとトマトもきれいに切って

お皿に盛り付けます

誰が食べに来るのでしょうか?


no. 493 くじ引き
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/01/13(Fri) 11:50:22

くじ引きをしました

一等が出ました

「一等」と書かれたくじと手をつないで

おうちに帰りました


no. 500 朝日
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/01/23(Mon) 20:41:44

朝日はそれはそれは綺麗だろうね

雪の一粒一粒が朝日の子供と手をつなぎ

踊って

踊って

にっこり笑って日に溶ける

その笑顔が

それはそれは綺麗だろうね

朝日は引きとめもせず手を振って見送って

すべてを暖めるために、出かけてゆくんだ


no. 513 花鳥風月
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/03/07(Tue) 13:35:26


桜の花     歌う鳥     東の風     朧な月

薄明るい    夢の中で    柔らかく    光を放ち

時の中では   遥か遠くで   呟きながら   佇んでいる

寂しくはない  彷徨いつつも  藤色の記憶が  見つめるのは

思い出に咲く花 恋を求め飛ぶ鳥 忘れられない風 廃墟の中の歳月



no. 554 コーマ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/08/25(Fri) 14:04:35

ねえ、コーマ
ひた走る夏がまたやってきたよ
クルクルと
額を通り過ぎる光の群れ
君は開け放した口で
笑うね
(笑う 笑う 笑った)

君は箱庭が沢山ぶら下がった
奇妙な棒をかついで
ひた走る
(笑う 笑う 笑った)

波は君を追い越すだろうか
ねえ、コーマ
眠りについたばかりの君
君のとってからげた波はいつも
(笑う 笑う 笑って)

コーマ、

サンゴ礁はわりと柔らかいけど
立ち止まったりはしないんだろう
ぶら下がった箱庭には
小さなガレージ
きれいに磨かれた車が
きちんと並んで
(笑う 笑う 笑う)

コーマ、

ようく見るんだ
通り過ぎるものを
あの小さなガレージから
飛び立っていく車たちは
もうきちんと並んでなんかいない

コーマ、
クルクルと
額を通り過ぎるよ車が
(笑う/あれらは音速の)

コーマ、
だからって君は立ち止まらない
ねえ、君
もう達した頃だろうか

(笑いながら眠る君の額をクルクルと通り過ぎる光の群れ)

ねえ、コーマ

(お前は音速で越えながら)

(笑う 笑う 笑っ )

no. 563 空
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/09/25(Mon) 15:23:43

りいろりいろ

空のこと

そらのことなんて
書くなよ

書いたってしょうもない

さわれないし

りいろろろろ

雲だって

ふかふかしてるかと思ったら

してないし

いろろ

いろいろ
さわりたいなあ

さわり心地
どんなかなあ

つるりかな
くにゃりかな
案外
ざらりかな

つるりな気がするけど

つるりつるつる
つる
るりり

るりいろ
りいろ
ろろろ

るりいろに
とりなんか飛んだりしてさ
きれい
あったかい
いきている
みたいだ

さわりたいなあ



no. 567 おやつ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/10/21(Sat) 00:00:57

カップケーキ焼けたら

おしえてね

指で頬をつついてね

あたたかくてやさしい

おやつの時間に眠たいの


no. 571 あるカフェ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/11/08(Wed) 00:26:19

その
カフェの
パフェは
コンクリートでできていた
コンクリートミキサー車でよく練って
きれいに盛り付けられていた

一口食べると
ふわんふわんしていて
学校の味がして

二口食べると
とろりとろりしていて
道路の味がして

三口食べると
もこもこしていて
電柱の味

前に座っている彼氏は
コーヒーらしきものを飲んで一言

油田の味がする、と


no. 572 キズ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/11/22(Wed) 16:13:52

あの時
絶好のチャンスだったから

かわいい君が黙っているのをいいことに

キスなんかせずに
キズつけた

だけど君はきょとんとしてるから
しょうがないから
キスをした

キスしたって
もっとしたくなるのは
いつも、ボクだけ

キズつけたって
しょんぼりするのは
いつも、ボクだけ

そうなるたびに
かわいくなるのは
いつも、君だけ

no. 574 ある、朝
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/12/04(Mon) 14:35:45

ある、朝

この心臓が脈打っているとろこに出合った
熱い血が流れていった
呼吸も熱く

朝日はまぶしすぎて
心臓は追いつけない

生まれた時から打っている
そのリズムで
心臓は語った

この熱い血をとどめることは誰にもできない
この熱い呼吸も

私は聞く
朝日に追いつける日は来るだろうかと

心臓は言う
追いつける日など来ない、永遠に
追いつこうともするな
このリズムは
とどめることのできない血は呼吸は
追いつくためにあるのではない

朝の一杯の水
木々の挨拶
鳥の歌
夕の風
星の瞬き

それらを愛でるためにあるのだ

追いつくな
血よ呼吸よお前よ
私はリズムそのものだ

リズムそのものの私に

それ以外のものを求めるな

私によって生かされるお前が

それ以外のものを求めるな


決して求めるな



            (いつもよりも冷たい水が熱っぽい喉を流れていく・・・・)


no. 578 あかるいせかい
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/12/24(Sun) 00:09:51

さくら、さく
のはら、

くも、ゆく

かぜ、ふれる

そらの、はだ

やわらかい

いとしいを

あなたが

さそう

あめ、ふる

しと、しと、

あかるいせかい

みえないせかい


no. 579 プレゼント
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2006/12/26(Tue) 23:25:42

メリークリスマス

この喜ばしき日に

あなたにプレゼントを差し上げます

ストーブのブローチ

熱いので気をつけて


no. 581 紡ぐひと
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/01/09(Tue) 08:25:38

春まだ浅きころ

ちいさなひと
ひとり
紡ぐ
ちいさな糸車で

緑の糸で
織る
葉っぱ

できて

きれいきれい
ちいさなおてて
ぱちぱち

ぺろりとなめて
枝にくっつけ
また
ぱちぱち

よく
できた

よい
日だな

鳥さん
さむく
ないかい

虫さん
おいしいかい

よい
日だな


no. 583 もうすぐ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/01/12(Fri) 11:33:47

もうすぐ順番が来ますね
あなただけのバス

先日バスに乗ったときは
後部座席にかわいい女の子がひとり
くっと口を閉めていました

最前席ではおばさんが
クッキーを焼いていて
焦げてしまったと怒っていました

焦げたクッキーを
誰も見ようとしません
車掌すら

外を良く見たいのに
ガラス窓は随分ふいていないので
濁って見えます

あの女の子に
外を良く見せてあげたいのに

外には鳥が飛んでいるのに
花はもうすぐ咲くかもしれないのに
空も次第に明けてくるのに

おばさんは
文句をいいながらまたクッキーの生地をこね始めました

女の子の口から
くっくっと声が漏れますが
くるしい、なのか
くそくらえ、なのか
クッキーちょうだいよ、なのか
わかりません

わかりませんとも

さあバスが来ましたよ
あなただけのバス

乗り越しをしないように

お気をつけて下さい


no. 589 そうね、
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/02/21(Wed) 00:56:02

そうね、
つらいって言っていても
過ぎていってしまうね

いつまでもつらいままなら
全部、忘れずにいられたかな
過ぎていって
ここに
落ち着いたかな

場所
掘るの
難しかった
あんなに
泣いた跡が
くっきりなんて(笑)

そうね、
今もまだ
だいぶ寂しい

寂しいです
寂しいのだ
寂しいっす

いないもん
しょうがないもん
しょうがないじゃん

ずっと寂しいまま

寂しさに
かしいでいく肩を
両手で支えて

歩くね
歩くよ
歩くのです


no. 590 マトリョーシカ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/02/24(Sat) 22:14:32

マトリョーシカ
遠いロシアのおもちゃ

わたし桜が見たいの
季節が来たら見られるでしょ

見られるけどねマトリョーシカ
あれらはだんだんに痩せ細る

ならわたしと同じね
だんだんに小さくなる

そうだねマトリョーシカ
君はどこまで小さくなるの

そうね電子顕微鏡で
見てもまだ続きがあるわ

そんなに小さくなって
一体どこまでいくの

ナノの世界にいくわ
それからピコ
それからフェムト
それからアト
それからゼプト
それからヨクト
手のひらの大きさのわたし
小さくなるまでに
どんどん身体から飛び出して
子どもの子どもの子どもの子ども
(数えられない数)個にもなった

マトリョーシカ
君はどこ?

わたし桜が見たいの
季節が来たら見られるでしょ

桜が見られたら
私またもとに戻るわね
それまでに
(数えられない時間)年ほどかかるけど

あなた
生きていられて?

多分生きているけどねマトリョーシカ
僕はだんだんに痩せ細る

ならわたしと同じね
だんだんに小さくなる

小さくなったあとは
だんだんに大きくなって
またもとの大きさ

怖いことはないわ


no. 593 ミルクセーキ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/04/02(Mon) 18:08:16

ミルクセーキをくるくるかき回す

渦巻きできた

うずうずうず

イチゴひとつぶ埋めてみた

ぶくぶくぶく

イチゴ沈んで何か言ってる

ぶつぶつぶつ

何かいいことあるかもしれない

うずうずうず

下のイチゴは潰れてる

つぶつぶつぶ

下はピンクに染まったよ

ピンクミルクイチゴセーキ



いいこと あった


no. 594 私は変わりたい
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/04/05(Thu) 23:08:20

私は変わりたい

もっと小さく
狭く
矮小で
醜い

もっと低く
後ろ向きで
奇妙で
下劣

もっと陰気で
可愛そうで
みすぼらしく
意地汚い

バスルームの排水溝にひっかかっているようなあれに

そして上から降ってくる熱いシャワーを見上げる

不思議そうに


no. 597 夏の早朝
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/04/23(Mon) 21:04:10

雑木林に入ると
あの人は
無造作に捕まえて
透き通った緑色のカブトムシを手のひらにのせてくれました

風がよく通る夏の早朝のことです

それはひんやりしてずしりと重く
硬い甲冑も透けていて
折りたたまれた薄い羽根も
脈打つマルピーギ管(というのだと教えてくれました)も
よく見えて

振り上げる角は
日差しを反射するほどではないでしたが
ひっそりとひかり
奥の方の山を持ち上げるかのようでした

しばらくまじまじと見させてもらったあと
もとあった所に放してもらいました

小川の水を飲むかい、と聞くのでうなづくと
手を引いて小川まで連れて行ってくれました
小川の底には沢山の小石が
ぶ厚くも軽い絹のような清水になでられて
ゆらめいて涼しそうでした

小川の水を手ですくって飲んで
あれっ、と言いました
何か耳の奥がごそごそするから

耳をこちらへ傾けてごらん。
その人の手のひらの方へ耳を傾けると
ころりと何かが落ちました

今日は薄荷のドロップだ
おかしそうに笑うと
あの人は白い楕円のそれを口に放り込みます

風がよく通る
夏の早朝のことです


no. 598 カステラ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/04/27(Fri) 00:41:40

カステラ色の
太陽が
昇っては消え
昇っては

ひるるるるると
鳥が通り過ぎた
後には何も

風さえ
いや風は
熱を運んでき

熱風
それで
フェーン現象
山から駆け下りる風
木々よく燃える

燃えて火で
丁度よく焦げ目

カステラをちぎる
冷たい指先はかなしい


雨雲は乾いてしまったから


もぐもぐ食べておしまい。


no. 600 始発電車
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/05/16(Wed) 00:10:30

午前4時53分の
冷たい空気にしめられて
電車は静かに
なる

乗り込んで座る
私ともう一人

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

窓の外は小雨でけぶり
しんとして薄暗い

鳥が二、三羽飛ぶ中
暗い雲を溶かすように
朝が始まってゆく

(それはどこかちがうせかいの
はじまりのようで)

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

誰も触れない吊革
今はまだ
吊革の仕事はなく

電車に合せて並んで揺れている

私は隣にいる人と
少し話しながら
駅で飲むコーヒーのことを考える

(それはどこかちがうせかいの
にちじょうのようで)

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

溶け出した朝は
雨を白色に変え

小雨はやがて
やむ気配がする

(それはどこかちがうせかいの
へんかのようで)

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

(どこかちがうせかいへ

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

(どこかちがうせかいのはじまりへ

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

(どこかちがうせかいのにちじょうへ

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

(どこかちがうせかいのへんかへ

タタンタタン・・・・タタンタタン・・・・

午前4時53分始発の電車は
午前5時45分に駅に着き

上の空は白み
雨はもうまばら
朝の匂いがかすかにして

私は駅に降り立ち
隣にいる人と
駅で飲むコーヒーのことについて話す


すべるように発車のベルは鳴り

始発電車は朝日へ溶けていった


no. 601 聞いている
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/05/22(Tue) 22:48:40

君が最後に夢を見たのはいつ?

教えて欲しい

君の嘆きの理由を

君の声が
涙が聞こえる
とても
つらい
とても 
言葉では 受け止められない ほど の

教えて欲しい

君が最初に嘆いたのは いつ
君が最初に夢を捨てたのは

君は泣かない
歯を食いしばる

聞いている
君の涙が落ちる 音を

ささやこう
あの尾根へ沿って
初めて夢を捨てた
あの
悲しい日のことを

深く濃い谷へ
君はそっと落とした

捨てられた 夢は
待っている ひざを抱え
君が谷間を照らすときを

いつかいけるだろうか
あの尾根へ沿って
初めて嘆きを知った
あの
つらい日を振り切り

聞いている
君の涙が落ちる 音を

隠さないで
隠さないで

君の捨てた夢は

待って いる

僕は聞いて いる

教えて欲しい

君が最後に夢を見たのはいつ?


no. 604 昔話 三日坊主
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/07/12(Thu) 13:49:58

三日坊主のあれやこれ
つまらなくって家出した

ダイエット途中でやめたらダメデッショ
日課なら日記続くか三日かな
英会話夢の中だけええ会話~

軽口川柳ぽんぽこ出ます

あっちから
ほんとの坊主がやって来た

あーこれこれ三日坊主や
 はいはいなー
うろちょろされたらかなわんなー
 なんででしょー

これ、この稲穂、さぼっとる 
実らんわー
ほれ、あの太陽、さぼっとる 
暗いわー

 たまにはいいでしょー
 坊さんも、たまには

たまにはって三日しかやってないじゃろが

 ですが、行くとこありませんしー

うん、うん、あそこならよい

そして三日坊主のあれやこれ
言われたとおりに住み着いた

餅に三日月、コジキ・・・

それからというもの、

餅腹は三日でよいことになったそうな。

三日月は飽きっぽくなり「やっぱ痩せたいーやっぱ太りたいー」と色んな形になったそうな。

コジキは三日坊主ととても仲良くなったそうな。

 やー、三日たってもやめないなんて、すごいすごい!
 やー、それほどでも・・・・

果てて。


no. 605 さくらんぼ
 ふるる ◆FURUT68Mg6
 2007/07/23(Mon) 16:40:52

舞いながら踊り
錯乱をしている
さくらんぼの髪飾り
大きく育ってしまい
押しつぶされてしまい

二度ともう会えない
さようならのよろこび
ごめんあまのじゃくで
ありがとうも言えない
さようならのよろこび
手をふって泣いて

しんとした鳥かご
羽根を差し込めば鳴く
ついばんださくらんぼ
乱暴にした口づけ
血までにじませて華やか

離れていくほんとう
こんにちはのかなしみ
ごまんあまのじゃくで
あいしてるも言えない
こんにちはのかなしみ
抱きしめて泣いて

ふたりきっとまた出会う
手にとって見つめる

それはきっとさくら
舞い落ちていくほんとう
悲しくはないほんとう




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