サムライ1




   サムライ1



 夢を見る

毎日、とか、定期的に、とかじゃない。

ほんとにたまに、そして不定期になんだけど、

その夢はいつも私の心を食らう。

そんな夢を見る

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 いつもの様に目が覚めた。
でも今日はやっぱりあの夢を見ていた。
あの夢。
ほんとにたまにしか見ないんだけど、そうだな、イメージを色で表すと…なんだろ、白の様な黒の様な。

いつも見るその夢は、いつも目が覚めると忘れてしまう。
だけど今日だけは違った。
それはものすごく鮮明に、そして前に見た夢の記憶までも思い出していた。

----そうか、私はこの夢の中の登場人物でもあるんだ。
でもその外見は私じゃない。一体誰?
全く違う外見だけど、でもそれは明らかに私で、私以外の何者でもなかった。

「怖い…」

 ふと、その夢のことを考えてると、口をついてその言葉が出てきてしまった。
今は昼休みだった。友達のユイと教室の一番後ろの席で二人でお弁当を食べていた。
ユイはもちろん何のことだかまったくわからないといった感じで、私をきょとんと見ていた。
「? どうしたの?アサカ。今度のテストの結果のこと??」
言い忘れていたけど、アサカとは私のことである。
とりあえず今ここで自己紹介でもしておいた方がいいのかな。
私は森アサカ。東高校2年。
友達は青山ユイ。同じく高2。同じクラスの私の一番の友達。

 ユイは脳天気なもんだから、私がテストの結果のことで『怖い』と言っていると思っていたらしい。
「違うよ…実はね…」
とりあえずユイに私は何のためらいもなくこの夢のことを話した。
でもユイは
「あっははははは!!それ考えすぎ!!だっておかしいよその夢!!
ていうか普通の夢だよー!!」
…信じてない。
「だって!こんなにリアルなのに…」
「アサカの言ってる夢を考えてみても、話は飛んでるし、リアルタイムでもないし、第一どんなリアルな夢でも話自体に現実味がないもん!!」

…確かに。
私が今ユイと逆の立場でもそう思う。こんな夢、所詮夢。というよりむしろ、夢でないとありえない。
でも私の頭の中から離れることはなかった。
それでも、「いつか消えるだろう。印象的だった夢はその日一日は消えないものだから」という考えでいた。
…もちろんそれでも消えるものではなかったけれど…。

 私が見た夢がどういうものだったのか。ホントに断片的だけど、話しておいた方がいいかもしれない。
というより、話さないと、まったくわからないからね。


  いつからその夢を見るようになったの?

そういわれてもわからないんだけど。

  その夢の『話』はいつから始まったの?

それもわからない…。だって夢ってそんなもんでしょ??

 覚えてる夢の中で、一番古いのはコレかな?

 気が付くと、まるで昔の家のような…お寺の様な建物の下にいた。
そこが本当に建物の下かどうかはわからないけど、とにかくいっぱい柱が立っていて、真っ暗で、天井が意外と低かった。
本当に光がなくて怖かった。この時の私は、現実と夢がシンクロした状態で、『あっちに行っちゃ駄目』とわかっていても、夢の中の私は思うように動いてくれなかった。
真っ暗で真っ暗で、本当に怖かった。
だけどそんな中に、ぼうっと一つの緑色の光が見えた。
---光!!
そう思って安心したのか、夢の中の私はそこに駆けだした。
でもそこに近づいてはいけなかった。
そうだね、おかしいけど、その光はまるで霊だった。よくテレビの心霊写真に出てきそうな。
その光を追っていたはずなのに、気付いた時にはその霊に首を食らわれていた。
「!!」
夢の中の私は叫び声にもならないほど驚いていた。
でも首からは血は流れ出ず、気付いたらその霊もいなくなっていた。
そして周りを見渡すと、柱という柱にすべての霊が隠れていて、こっちを見ていた。
本当に怖い夢だった。
一つ目の夢は、そこで終わった。


次に見た夢は、前回とまったく同じに近かった。
柱からのぞく、たくさんの霊。
----またこの夢か!!と思った。
まだ2度目の夢なのに、私はうんざりしていた。精神的にやばかったみたいだった。
その段階で、夢の中の私はどうしてここにいるのか、何をしているのかがわからなかった。
でも一つだけ違った。
そこには、霊ではなく、人がいた。
確かに人だった。
 そこだけ、明るく見えた。
顔がどんなだったか覚えてない。でも男だった。そして結構背も高かった。
その男がどういう話をしていたか覚えてないけど、なんとなく、同業者だった。
そしてまた、目が覚めた。
何となく、その時は夢の内容は覚えてないんだけど、びっくりした気分で目が覚めた。
悪いびっくりではなかった。うれしいような、そう、その男がいて、不安が取り除けたような。


 それから似たような夢を見続けた。
その男とはだんだん仲良くなっていた。
それからの夢は本当に断片的で、それでもわかったことは、私はその霊のようなものを退治消し去る仕事をしていて、旅を続けていた。
でもベテランではなくて、アマだった。
そしてその男は、夢を見るたびにだんだんと顔なんかもはっきりしてきたんだけど、
同業者のアマではあったが、その能力ははかりしれないといった、いわゆる天才だった。
それでも努力家でもあって、同じく旅をしていた。
ただしどうしてどうしてそういう霊がいるのか、どうしてそういう仕事をして旅を続けているのかはまだわからないけど…。

 そして夢の中の私はその男と、いわゆる友達以上恋人未満という、なんだか初々しい関係になっていた。
それについてはさすがにその夢に何かを感じた私でも
『欲求不満かも?』
と不安なり焦りなり感じたけど…。

 そしてここからがこの夢のことを考えるきっかけとなった、一番リアルな夢。この夢は普通に勉強中に、しかも昼間に家でうとうとしながら見た夢だった。
そんな短時間の間に、リアルに、しかも断片的でない夢をみた。
やっぱり夢での時間と現実の時間の経過は違うらしい。
向こうがすぎるのが早い。
さすがそこは夢、といったところか。

 夢の中での私は、一つの旅館にいた。
旅館といっても、現実とは違って、まさに夢の中、と言った感じ。
派手な飾りがあって、ものすごく広い。
そして私たちがいたのは寝室だった。
その寝室の形も異常だった。
ベッドがあるんだけど、その数!!
ものすごく広い部屋に、何十個もベッド。学校でいうと、3クラスぐらいは一人ずつベッドに寝れる。
こんな部屋、一体どうやって使うのかわからないけど、そこの女将らしき人が、
「お願いします」
といって私たちに仕事を依頼した。

どうやら夢の中の私は、現実と同じく怖がりらしい。
霊が怖いくせに、そいういのを退治する仕事をしている。本当におかしい。

「う~~!こっわー!!こんな部屋だから、やっぱりたっっくさんいるんだろうね…」
とか言ってるし。

でも今までと違う仕事場に、なんだか二人は浮かれていた。
いわゆる修学旅行気分。結構お気楽。


 でもそこにいたのは私たちだけじゃなかった。
もう一人、子供がいた。女の子で、すごく冷めた厳しい目をしていた。
なんていうか、すごく生意気。偉そうだし。
でもなんでそういう態度なのかすぐにわかった。
その子は同業者で、しかもベテラン、というより、有名な人だった。
まさか!こんな小学生の低学年ぐらいの子が?!
コッチ(現実)の私はシンクロ状態でそう思った。
こんな子供だけど、年齢不詳らしい。

この少女の話は、雑音が入ってほとんどわからなかったんだけど、なにやら
「あなたたちのお手並み拝見ね」
のような、
「まだまだ甘いのよ」
みたいなことを言ってたような気がする。
ムカッ!!

 そして私たちは二人でこのだだっ広いベッドの片隅に、客を装ってころがりこむ。
…ベッドは1個分離れていた。
何だかドキドキな展開だった。
まさに私の欲求不満なのでは?!と思わせるにはばっちりな状況。
そして「もしやこんなことがあったから鮮明に夢を覚えてるのでは?!」とも思った…。
私って…。

 夢の中の私はただ怖かったみたいだった。現実の私はこんなにドキドキしてるのに、なんて無防備なの!とツッコミたくなった。
「ねぇ…====、もいっこベッドつめていい?」
男の名前だけ、雑音が入った。
私はその男の名前が気になった。
男は少しだまりこんで、
「…もうちらほら出始めてきてる。あんまり動かない方がいい。」
と言って、私を拒んだ。でも私はなんだか怖いし、悲しいしで、男の言うことを聞かずに隣のベッドに移った。
そしてそれでも怖かったのか、思いベッドをずずっと引きずって、男の方に寄せた。
「バカ」
現実の私と、男の声がかぶった。
きっと同じこと考えてる、って思った。
男はこっちを振り向いた。
その時気付いた。あぁ、私はこの男のこと、好きなんだな。
『私』が夢の中の私だけなのかはわからない。
シンクロしているからかもしれない。
ドキドキしていた。
「やっぱさ、こんな遅くまで起きてると、お腹すくね」
「うん」
「なんか食べる?バックの中にお菓子ぐらい入ってるけど」
「うん」
「じゃちょっと取ってくる」
そういう会話で、ふと、私は後ろを向いて、バックに手を伸ばし、中を手探りで確かめた。
その時、シンクロしている意識が一瞬とんだ。
そして、夢の中の私の手が止まった。
私は再び、シンクロ状態に戻った。
男の、彼の手が、自分を覆うように、抱きしめられた。

さすがにこんなシーンがあったこと、ユイには言ってない。というより言えるハズがなかった。
でもこれがきっかけで、この男がきっかけで、私はこの夢と一歩近くなってしまったと思う。
というより、夢に引きつけられてしまったような感覚。
この男の腕が、まるで現実の私を縛るように引っ張り出して、そこからなかなか抜け出せなくなってしまった。


シンクロ状態だった私は、その時、ほんの少しの時間だけ、夢の中の私と、同一した。
シンクロとは違う。
一つの意識になった。
それはすぐに剥がされたけど、その時鮮明に男を見た。
そして私はその男の名前を呼んだ。


「…サムライ…」

『サムライ』そんな名前だったんだ。
嘘みたい。そんなイメージどこにもないのに。

一つになった瞬間、夢の中の私がどれくらいサムライを好きなのかが、わかった。
シンクロしている時よりも、直に伝わった。

スキ。

なんだか懐かしい気分だった。
そうか、私、こんなスキを感じたのは、久々だからね。

 名前を呼んだ後、またすぐに私はシンクロ状態に戻った。
そして現実に引き戻されそうになっていた。
「いや!戻りたくない!!離れたくない!!サムライと、もう少しだけ、いたい!!」

初めてこんな気分で引き戻された。
というより、無理矢理現実に戻されるのはこれが初めて。
今までは普通に目が覚めるといった感じだったから。
すごく、切なかった。

気付いたら、私は泣きながら目を覚ましていた。

これが最後の夢。

まだ何一つわかっていないのに、こんなあやふやなままで終わられた私の夢。

つづく



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