真理を求めて

真理を求めて

2006.01.18
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宮台氏が書いた 「選挙結果から未来を構想するための文章を書きました」 にトラックバックをした、さいとうさんの 「都市型保守と都市型リベラルでは説明できない」 も再読して考えてみようかと思う。何か新たな発見があるかも知れない。

さて、宮台氏は、「選挙結果から未来を構想するための文章を書きました」では、前半部分で選挙前の分析と予想を、後半部分では、選挙後の未来を見通した構想を語っていた。その表題から察すると、主要テーマは後半部分の未来の構想にあると思われる。そういう読解を前提としてさいとうさんのトラックバックを再読してみよう。

さいとうさんは、「選挙結果の全体的な傾向を自分の今までの理論体系の中でどう位置づけるかという分析なので」と、宮台氏の文章を読んでいるが、これは主要テーマを見誤ったのではないだろうか。

宮台氏は、選挙結果を後追い的に解釈して「農村型保守と都市型保守と都市型リベラルという3つの政治軸」を提出したのではなく、すでに選挙前に現状分析として、この3つの傾向を現実の中に見ていたのである。そして、農村型保守が崩壊して都市型保守にシフトすることも、選挙結果から導いたのではなく、共同体の空洞化や過剰流動性というものから論理として導いている。

宮台氏は、選挙前にすでに都市型保守の成長を語っており、自民党が小泉支持層としてそれを取り込むことも予想していた。「不安のポピュリズム」という論理がそれを導いている。これは、選挙の結果そうなったから、自民党の支持層が地殻変動を起こしてシフトしたと解釈しているのでは決してない。むしろ、選挙の結果というのは、自分が提出した論理の正しさを証明する実験として捉えているのだと僕は思う。

これに対しさいとうさんは、「ただこの3つの政治軸と都市型保守における「ヘタレ保守」の隆盛などの地殻変動が、70年代の欧米のような新自由主義の勝利をもたらしたとする説には説得力に欠けるものがあるように思います」と語っている。この部分を僕は「疑問」だと解釈した。なぜなら、ここでの主張が、宮台氏の主張に対する反対ではなく、「説得力に欠ける」という表現をされているからだ。もう少し説得力があれば、宮台氏に賛成しようと言うことだと解釈して、僕は「疑問」だと受け取ったわけだ。

さいとうさんが「説得力に欠ける」と思ったのは、「特にヘタレ保守の部分に関しては、女性の中では「つくる会」や「2ちゃん右翼」に相当するような地殻変動は起きていないように思います」と語っているように、女性の支持層が、宮台氏が提出したような図式に当てはまらないのではないかという、現実認識から出てきたものだ。



宮台氏は、選挙前に理論展開として、選挙の背景の分析から選挙の結果を予想した。ところが、さいとうさんは、これを選挙結果から現状を分析するものとして読んでしまったように僕には見える。この部分を指して、宮台氏は、 「トラックバックへの返答」 の中で、「残念ながら初歩的な読解ができていません」と指摘したのではないだろうか。

なお、さいとうさんが、このような読み方をしてしまったのはなぜかと想像してみると、それはさいとうさんの中にある「ヘタレ保守」という都市型保守のイメージが、「つくる会」や「2ちゃん右翼」などに代表されるものというタイプとして強く先入観としてあったのではないかと感じる。そのため、そのようなものが女性の中に見つからないと、女性にはヘタレ保守がまだ育っていないのではないかとも思えてしまうのではないだろうか。

そのようなイメージで宮台氏の文章を見ると、宮台氏が、女性に対しては説明が不足しているのではないかと感じてしまうのではないだろうか。つまり、さいとうさんの現実認識から抽象されてきたヘタレ保守が、宮台氏が抽象的に語っているヘタレ保守と重ならなかったことが、宮台氏の文章の意味を取り違えた、すなわち「誤読」をしたことにつながったのではないかと思う。それを、僕は以前の文章では、抽象の方向性を間違えたのではないかと書いた。

宮台氏は、現実を具体的に語る前に、「過剰流動性と生活世界空洞化で不安になり、「断固・決然」に煽られるヘタレ保守」と、ヘタレ保守を抽象的に定義している。そして、その象徴として「新しい歴史教科書をつくる会」「2ちゃん右翼」などをあげている。この具体的な両者から、ヘタレ保守という概念を抽象してきたのではなく、ヘタレ保守という概念が先にあって、その概念に該当する存在として、象徴的なものとして両者をあげていると考えられる。

ところが、この両者がヘタレ保守の概念を作るイメージだと思うと、この両者に似ていないものは、ヘタレ保守だと思えなくなってくる。しかし、条件によっては、「過剰流動性と生活世界空洞化で不安になり、「断固・決然」に煽られる」という特性はさまざまな出現の仕方をする。だから、「新しい歴史教科書をつくる会」「2ちゃん右翼」などの存在が、女性の中に見つからなくても、ヘタレ保守としての存在は、他の現れ方をするのではないかと考えなければいけない。

その、他の現れ方として宮台氏は、「『NANA』における(初期の)ハチのような形を取るのだと書いてあるではありませんか」と答えている。つまり、女性にとっては、「ハチのような形」こそが象徴として現れてくるのだと語っている。

さいとうさんが、この言葉をどう受け取ったかを想像することは興味があることだ。さいとうさんは、「自分も『NANA』に関する記述は投稿前に読んでいましたが、この事例を象徴とした都市型保守やヘタレの論述には懐疑的でした」とトラックバックのエントリーのコメントで語っている。つまり、この記述を読んではいたが、それが女性におけるヘタレ保守の象徴だという読み方はしていなかったと言うことだ。

これは、「見えても見えず」というような現象と同じ構造を持っている。我々は、視覚映像という点では、光を発するものを「見ている」はずだが、それをすべて記憶にとどめるわけではない。「注意」を向けていないものは、それが映像として網膜に達していても、認識としては見えていない。同じように、文章を読んでいても、それが注意を引かないものであれば、深く意味を考えずに読み飛ばしてしまう。

このことを指して、「読み落とし」だと解釈することも出来る。「見えても見えず」の「見えず」だと解釈すれば、「読み落とし」だ。しかし、「見えても」の見える方の解釈を取れば、これは「読み落とし」ではない。一応は読んでいたと解釈することも出来る。どちらに解釈するのも、その視点の違いを伝えるだけのことである。どちらに解釈したからと言って、その解釈だけで何かが分かると言うことはない。

むしろ、「見えても見えず」という矛盾の方にこそ注目し、なぜそうなったかを考えるところに、いろいろと勉強になる教訓が発見出来る。強い先入観を持って物事を眺めるというのは、我々には避けられぬことだ。そして、その先入観が、注意を向ける対象を限定することも良くあることだ。そうすれば、表現されたものの本当の意味を、先入観によって違う意味に受け取る可能性も出てくる。



宮台氏は、「トラックバックへの返答」の中で、「下の下の文章「選挙結果から未来を構想する文章…」に対する[次世代情報都市みらいblog]さんからのトラックバックありがとうございます」という文章を書いている。ここで語られている「ありがとうございます」は、率直な意味での感謝の気持ちだと思う。「ありがとうございます」といいながら、その意見を門前払いするというようなことは、宮台氏はしないものと僕は思っている。

宮台氏には、その天才性を感じる。そして、多くの天才たちはまた、非常に尊大な面も見せたりもするのだが、僕は、宮台氏というのは非常に誠実な人間だと感じている。「ありがとうございます」と語りながら、相手を馬鹿にするようなイヤミな人間ではないと思っている。これは、率直に感謝を述べているのだと僕は受け取る。それは、多くの人が陥りやすい誤りを説明するのに、ちょうどいい材料を提供してくれたという感謝の気持ちではないかと僕は感じる。ここでは、最後に


「なお私がどんなにおっちょこちょいだとは申しましても、今回のご指摘のような素人レベルでの分析ミスはあり得ないものとご承知おきください。ずっと高いレベルでのコメントをお待ち申し上げております。」


とも語っている。この文章に多少の尊大さを見たい人もいるかも知れないが、これも僕は、単に率直な事実を語ったものと、好意的に受け止めている。「素人レベルでの分析ミス」の内容がどういうものであるか、具体的に語るのは難しいが、論理的に単純な穴があるような分析ミスはしないという意味かなと思う。この文章は、宮台氏以外の人間が語ると、尊大な感じを受けてしまうかも知れないが、宮台氏が語る限りでは、僕には率直な言い方のように感じてしまう。

この「トラックバックへの返答」では、



 この件についてはhttp://www.miyadai.com/index.php?itemid=281の「携帯電話の社会学的機能分析?コミュニケーション変容の社会的意味(連載第三回)」をお読み下さい([続きを読む]も忘れずに)。回答が明示してございます。」


と書かれている。今度は、このことを考えてみたいと思うが、「明示してございます」と書かれているにもかかわらず、その内容はすぐにはわかりにくい。宮台氏にとっては「明示」なのだろうが、大部分の人間にとっては必ずしも「明らか」ではない。それを、少しでも明らかにすべく解釈してみようかと思う。





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最終更新日  2006.01.18 09:44:10コメント(0) | コメントを書く


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