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2016年05月06日
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シリーズ「遺跡を学ぶ」の最新刊である。である以上は、流動激しい弥生像の最新情報も少しは入っているかもしれないと思い手に採った。

内容(「BOOK」データベースより)
丹後半島の付け根、日本三景の一つ天橋立をのぞむ丘陵上の弥生墳墓から、全国的に珍しいライトブルーの輝きを放つガラスの腕輪が出土した。鉄製武器も副葬し大陸とのかかわりがうかがえる“王墓”から、弥生時代の北近畿に生まれいづる「クニ」の姿を探究する。(以上紹介文書終わり)

当時、天橋立が存在していたかどうかの記述がなかったのは、残念でならない。けれども、この本に詳しい遺跡地図が載ったので、是非とも行って観たい遺跡巡りの地域になった。

舟底状木棺という棺を初めて知った。大きな木棺と台形の角が取れた長方形。その中央をくり抜いて遺体と副葬品が朱を埋葬する。こういう形も珍しいが、銅くん(銅製腕輪)、鉄剣の多さ、ヤスという漁労具、そして全国に四例しか出土例がない(おそらく弥生時代で最も美しい工芸品)ガラスの腕輪の副葬品の凄さ。その数十年後には、赤坂今井墳墓という弥生時代最大規模の出現も考えると、丹後地域に極めて有力な弥生王国があったのは確かである。そして、副葬品があまりにも華やかで、かつ武器が多い。私はこの王族たちの戦闘的な性格を想像せざるを得ない。

弥生時代末期の弥生像について新しい知見はあまりなかった。北近畿をめぐるモノの流れをスケッチしていたが、あまりにもラフ過ぎて違和感を覚えたということをメモしておきたい。墓壙内破砕土器の供献儀礼は興味深い。著者は楯築遺跡の破砕土器や破砕聖物の供献とは別物と考えているようだが、何らかの関係性を疑わざるを得ない。

丹後は古墳時代になって、墓制が途絶えて、やがてまた大和体制として復活する。古事記には載ってはいないが、ここは大和王権が出来る前に、王制が滅ぼされたと見ていいのではないか。ここにこそ、最も大きな戦乱があった。しかし記紀には残さなかった。日本には馴染まない武力王制だったためではないか。

2016年5月読了





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最終更新日  2016年05月06日 12時02分06秒
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Re:北近畿の弥生王墓 大風呂南墳墓(05/06)  
どんぐり さん
はじめまして。
船底状木棺という名称は当時京都府埋文センターの石崎氏が提唱なさったものです。
当時は刳抜式木棺についての発掘例があまりなく、石崎氏は準構造船の下部に似ていると思われて命名されたようです。
赤坂の未発掘の一例は際立って巨大ですが、その他のケースは、京都府以外にもあります。

岡山県・女男岩遺跡の棺底がカーブを描くケースや楯築の第2埋葬なども刳抜式木棺ではないでしょうか。奈良県のホケノ山もそうではないかともいわれています。

北九州にも沢山あります。

近藤義郎『楯築弥生墳丘墓』のなかで、大風呂や赤坂例を木棺ではなく木槨ではないかと示唆されています。考えてみる価値はあると思いました。

丹後での弥生時代から古墳時代の研究は2000年の『丹後の弥生王墓と巨大古墳』雄山閣以降は新知見はなさそうです。

肥後氏の墓壙上・内の供献土器破砕の研究は一連の流れがあることを示されています。それを鑑みると、丹後と楯築とで墓壙上での丸石の置くということに関連が無いと言われると説得力が高いですが、
実際に、両遺跡を見て(石は見れませんが)、資料を見てみると、どうして関連がないと言い切れるのか、教えてほしくなります。
(2016年05月10日 10時53分26秒)

Re[1]:北近畿の弥生王墓 大風呂南墳墓(05/06)  
どんぐりさん
>はじめまして。
>船底状木棺という名称は当時京都府埋文センターの石崎氏が提唱なさったものです。
>当時は刳抜式木棺についての発掘例があまりなく、石崎氏は準構造船の下部に似ていると思われて命名されたようです。
>赤坂の未発掘の一例は際立って巨大ですが、その他のケースは、京都府以外にもあります。

>岡山県・女男岩遺跡の棺底がカーブを描くケースや楯築の第2埋葬なども刳抜式木棺ではないでしょうか。奈良県のホケノ山もそうではないかともいわれています。

>北九州にも沢山あります。

はじめまして。
船底状木棺は、そんなにあったんですね。勉強不足です。

私は素人の特権を活かして好き勝手にこの時代を妄想するのが、考古学関係の記事の特徴になっています。しかし、事実と違うことを妄想したくはありません。今後ともいろいろと教えていただければ嬉しいです。

>近藤義郎『楯築弥生墳丘墓』のなかで、大風呂や赤坂例を木棺ではなく木槨ではないかと示唆されています。考えてみる価値はあると思いました。

>丹後での弥生時代から古墳時代の研究は2000年の『丹後の弥生王墓と巨大古墳』雄山閣以降は新知見はなさそうです。

>肥後氏の墓壙上・内の供献土器破砕の研究は一連の流れがあることを示されています。それを鑑みると、丹後と楯築とで墓壙上での丸石の置くということに関連が無いと言われると説得力が高いですが、
>実際に、両遺跡を見て(石は見れませんが)、資料を見てみると、どうして関連がないと言い切れるのか、教えてほしくなります。

-----
近藤先生の本とかがいまは手元にないので、確認できなかったのですが、そんなことを書いていたのですね。そんなことをきくと、突然大きくなった国の姿といい、なんらかの関係がありそうですね。ますますこの地域に行ってみたくなりました。夏の旅の1番候補になりました。ありがとうございます。 (2016年05月11日 11時14分11秒)

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