屋台のジイサン、デビュー!




【ラーメンの屋台】が信号待ちをしておりました。

午前6時の少し前、
まだ商店街には人も車も見あたらないのでございます…
薄明るくなった東の空は曇っておりました。

信号が変わると
【腰の曲がったお爺さん】は屋台を引いてゆっくりと、
しかししっかりした足取りで歩み出します。
ご商売がら【腰】がすわってらっしゃいます、さすがに。
【コンビニ】に向かうところだった私は
なんとなくお爺さんと【平行して】進む格好になりました…

  * * *

…澄んだ【小鳥】の鳴き声が聞こえます。
はて、どこからでありましょう?…
おかしい、こんなカン高い声の小鳥は
下町の商店街には…いるはずがないのでございます。

ん?コレは【旋律】だ、フシになっている。鳥じゃない…

   「!」

私は【声ならぬ声】をあげていた、と思います…
それは【お爺さんの口笛】でありました。

  * * *

ややうつむき加減に、表情を全く変えず
黙々と大きな屋台を引きあげながら…
夜中じゅうラーメンを売った帰り…
早朝の商店街でお爺さんが口笛を吹いているのでございます。
途方もなくカン高く、そして楽しげな音色で…
頑固そうなお爺さんが、【口笛】を奏でつつ
寝ぐらに帰るのでございます…
おそらく誰も待ってはいない寝ぐらに。

ここはそんなに立派な町じゃないれけど
わりと【強い人達】の町であります…。
私はまだまだここに住みましょう。
少しは強くなれるまで…

頑張って…いい歳の取り方をしたいのです…■

(04.4.11)

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