誰も知らない小さな国

誰も知らない小さな国 誰も知らない小さな国


著 者: 佐藤さとる
挿し絵: 村上勉
出版社: 岩波書店 1969年

「コロボックル物語」1冊目。日本を代表するファンタジー作家が、私家版
として発行した本が、今でも読み次がれる名作となりました。
イギリスの児童文学に影響を受けたと思われる、緻密で繊細なストーリー
と、リアルな情景描写が、計算され尽くした物語の深さを感じさせます。

主人公は、子供の頃、誰にも秘密の場所を持っていました。小山と杉林と
小川に囲まれた三角形の平地です。小さな泉と真っ赤な椿の花、山にはふ
っくらとみずみずしいふきもありました。主人公はここで出会った顔見知
りのおばあさんに、不思議な話を聞くのです。こういう山には魔物が住ん
でいるのだと。けれどその魔物は、ときには悪戯もするけれど、村を守っ
てくれる守り神だったのです。それは「こぼしさま」と呼ばれていました。

戦争を挟んで、大人になった主人公は、懐かしい小山に戻ってきます。杉林
はなくなっても、静かな小山に主人公は喜びを覚え、いつかこの場所を買い
取って、自分のものにしたいと願います。
同時に、主人公は自分の回りに小さな影が走ることに気がつきます。何かが
主人公の側にいるのです。それはあの「こぼしさま」に違いありません。
主人公は、小山に住む準備とともに、「こぼしさま」の正体を調べ始める
のです。それは、アイヌに伝わる「コロボックル」によく似ていました。
コロボックルとは、「ふきの下の神様」という意味なのです……。
日常的なストーリーの中で、ふっと不思議なことが起こる、さりげないファ
ンタジー世界への誘いが絶妙です。読めばきっと、コロボックルに会いた
くなることでしょう。



この本は実は小学生の時に手に取ったことがあるのに、とっかかりがあま
りよくなくて読まなかったのです。出だしがおもしろくないと、子供って
結構あきっぽかったりするじゃありませんか。高校か大学で結局読んだの
だけど、小学生で読まなかったのを心底後悔しました。
コロボックルといういわゆる親指ほどの小人が出てくる話しです。
主人公はふつうの大人。コロボックルというのはアイヌ語で「蕗の葉の下
の人」とか言う意味。小人って日本語ではひとくくりでしか言わないけど、
英語ではきちんと使い分けあるんですよね。「白雪姫」に出てくる大き目
の小人はドワーフ。このコロボックルと同じ大きさはリリパッドだったと思います。
おっと横道にそれてしまいました!このコロボックル、もちろん普通の人
には見えません。透明というのではなく、目に留まらないくらい素早い動
きをしているんです。そいれがどうして主人公と出会ってどうなるかは読
んでのお楽しみにしておきますが、この本読んだ後そのへんにコロボック
ルがいないかと思っちゃいました。そう思えるほど楽しいんです。

続編で「豆つぶほどの小さな犬」「星から落ちた小さな人」「ふしぎな目を
した男の子」とあります。大人でも楽しんで読めます。小学校高学年くら
いから読めると思います。お子さんいらっしゃる方、ぜひ一緒に読んでみ
てください。不思議で素敵な世界をお子さんと共有できますよ~~。

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