「ふ~ん……なるほどね~」
「奈津美ちゃん…何見てるの?」


外見は敵で中身は彼女で


昼休みの時間、結は熱心に小説を見ている奈津美に声をかけた。
さっきからお弁当用の箸は握っているが手が全然動いていない。
それほどまでに奈津美が小説に夢中になることは今まで見たことがなかったので、
その内容に結は気になった。

「ああ、人物が入れ替わっちゃう話だよ」
「…??」
「あっ、ゴメンゴメン。意味分からないよね」

何のことだかわからない結の顔を見て奈津美は改めて詳しい内容を結に話した。

「仲の良い女の子2人がある日一緒に下校した時に、偶然ぶつかっちゃったら心が入れ替わっちゃったの。
 何とか元に戻る方法はないか…って考えているところまで家で読んだんだけどね…。
 続きが気になって気になって学校に持ってきちゃった」
「ふ~ん…珍しいね。奈津美ちゃんが漫画じゃない本に夢中になるなんて…」
「失礼ね~。私だって小説の1冊や2冊読むわよ」

そう言って奈津美はしおりを本の間に挟んで閉じると、ご飯を口にほうばった。

「でもさ…、実際入れ替わったら面白いと思わない?」
「…え?」

奈津美は箸を置くと再びその本について話し始めた。

「だから例えばさ、私と結が入れ替わっちゃうの!!そしたら結構楽しめるんじゃない?」
「どういうことで楽しむの?」
「例えば…私が結になってるんだから結の姿でヒムロッチに悪戯するとか!!」
「えぇ!?」

そんなことしないで!と結が言おうとした瞬間、後ろから2人が良く知っている声が聞こえた。

「無駄だ藤井、例え君が如月の姿で悪戯をしようとも…君の努力が報われることはないだろう」

2人同時に声の聞こえる方に振り向くと、
そこにはヒムロッチ…もとい氷室零一がファイルを片手に奈津美を睨みつけて立っていた。

「ゲッ!!ヒムロ……先生」
「小説に興味を持つことは良いが…あまり勉学には向いていない本のようだな?」

氷室は奈津美から視線を下に向けて奈津美が手にしている小説に目を細めた。

「当たり前でしょ?私が勉強するために小説読むだなんて…天と地が逆さまになってもありえません!」
「だろうな。」

奈津美の発言に思いっきり納得する氷室に少々奈津美はムッとしていた。
しかし隣で氷室と同じく納得している結に奈津美は思ってもいなかった。
氷室は奈津美に近寄ってきたかと思うと奈津美が手にしている小説をサッと奪った。

「あっ!!何すんのさ!」
「こんなくだらない本を読んでいたら授業に身が入らない、これは放課後まで私が預かっておく」
「酷~い!!昼休みの時間に読んでただけで取り上げるわけ?!」
「私が気がつかないとでも思っていたか藤井?君は先ほど 私の授業中に熱心に教科書 を見ていたようだが…」
「…うぐっ」

2人のおかしなやり取りを聞いて(見て?)結は少し疑問を感じたがその謎はすぐにわかった。
氷室は遠回しに言ってはいるが、恐らく授業中奈津美は教科書を盾にして小説に夢中になっていたのだろう。
だがそんな行動は氷室には通用しなく、お見通しだったようだ。

(…普段勉強していない奈津美ちゃんが熱心に教科書見てたら氷室先生じゃなくても気づくと思うけど…)
そんなことを思っていると氷室は奈津美の小説をそのまま持っていって教室を出ていった。

「あ~!!悔しい~…凄い続きが気になるのに~!!」
「まあ良いじゃない、今日家に帰ったらじっくり見れるんだから」
「む~……」

―――――――――――――――――………………


「まったく…こんな本の何処が面白いのか理解できない…」

職員室に戻り自分のデスクに腰をかけた氷室は藤井から預かった小説を見ながら呟いた。
如月と藤井が話していた内容を薄っすらと思い出し何気なく氷室は小説をペラペラとめくっていった。
かなり大雑把に文章を見ているが氷室には何が書かれているのか大体理解できていた。

「……ん?」
ペラペラとめくっていた手が止まる。
ページは既にクライマックスのシーンであった。

最後の展開が気になるわけではないがある文章を見て思わず氷室は見てしまった。

最後はこういう展開になった。
心が入れ替わってしまった女の子の1人は好きな男性に心が入れ替わったことを告げる。
まったくもって信じられない話だが男は信じた。

…そして。

他人の姿であることも関わらず少女は男に思いを伝える。

男はその思いを素直に受け入れた。


しかしある日、突然2人の女の子は元に戻ってしまった。

その時少女が思ったのは1つの不安。

もしも好きな男が自分ではなくもう1人の子が好きだったとしたら…。

元に戻った自分と別れようと言われないかという不安に襲われた。


「氷室先生」
「…!」

そこまで文章を見たところで突然氷室は声をかけられた。
振り向くと女子生徒がドア付近に立っていた。

「…どうした何か用か?」
「はい、あの…質問なんですけど…良いですか?」
「構わない」

そのまま氷室は小説を閉じた。


――――――――――――――――――――――

ビックリすることにまだ続きます。
長いですね~…
この後の内容は大体想像つきますな~。
長期連載(?)になるかもです…

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