朝、

俺はいつものように家を出るとそのまま彩がいる病院へと足を向けた。


彩が事故にあってからというもの俺はそれが習慣となっていた。


彩に語りかけたり、花を飾ったり…

もしかしたらそれが俺の唯一安らげる時だったのかもしれない。


Shadows&lights―蘭の章―


朝仕入れたばかりのカーネーションを手に俺は彩がいる病室へ向かった。

彩は基本的にどの花も好きであったので飾る花に悩むことはない。


ただ過去に一度だけ。

「私、あのお花が好きなの」と無邪気に笑って指を指した花があった。


それは白い花。


―――鈴蘭の花であった。


しかし鈴蘭の花は仔猫の住む家には置いていない。

いや、それ以前に現時点では時期はずれなのだ。


一度ぐらいは彩の病室に鈴蘭を置きたいが見舞いむけの花ではないのが残念だ。


彩の病室の前に立ち静かにドアを開ける。


彩は相変わらず目を閉じたままである。

耳をすませば静かに呼吸音が聞こえる。


「彩、ほら。今日はカーネーションを持ってきたんだ。」


答えてくれとほんの少しだけ願いながら俺は彩に話しかける。

だが、もちろん反応は返ってはこなかった。

いや…きっと彩は俺の声が聞こえているんだと思う。

ただそれを表現することが出来ないんだと俺は信じていた。


「綺麗だろう?今日仕入れたばかりだからな…。ここに飾るぞ」


花に少しだけ水をかけて花瓶に花を生ける。

病室内には微かに花の匂いがする。


俺はベッドの傍に置いてある椅子を自分に引き寄せ着席した。

特に語ることもなく俺はしばらく彩の表情を伺う。

いつか…もう1度笑顔を見せてくれる時が来てほしい。


そんなことを思いながら―――


しばらくぼんやりした後、

俺はふと病室内にある時計を見た。


時計の針は午前9時半。

そろそろ仔猫の住む家に行かなければならない時刻だ。


「彩、俺そろそろ行くな。…また明日来るから」


静かに席を立つと俺は病室を後にした。

病院を出ようとするときいつも彩の世話をしている看護婦に声をかけられた。


「あら、藤宮さん。また妹さんのお見舞いですか?」

「…ええ。」

「毎日毎日藤宮さん…妹さんに話しかけていますよね。今の妹さんにとって1番の治療法になると思いますので、
 いっぱい話しかけてあげてくださいね。」

「…はい、そのつもりです。…ところで…まだ彩の意識は戻らないんですか?」

「それは仕方がないですよ。…今藤宮さんのやっていることを続けていれば…いつか意識も回復するかと…」

「…いつかっていつですか?」

「……藤宮さん」

「はい?」

「どうしてそう焦っているんですか?」

「……焦る?」

「妹さんと1秒でも早く話したいのはわかります…。でも焦っても仕方がありません。
 今はただ妹さんの意識を戻すために藤宮さんが出来る限りのことをするしかないんです」

「………」

「焦らないで…頑張りましょう」


そう言って看護婦は立ち去った。

俺はと言うとその場を動かずただ黙って地面を見つめていた。


“俺は彩に何を言いたいがために焦っているんだろう?”


――――謝りたいのかもしれない。


守れなかったことを。

助けられなかったことを。

頼りない兄貴だということを。


幼いころに言った彩の言葉。

夢を追いかけ続ける彩。

俺はその夢の手助けをすると約束した。

自分はやりたいことなんてなかったから。

夢なんてなかったから。

彩が俺の全てだったから。


でもその約束すら果たせなくて。

守れなくて。

頼りなくて。

弱くて。

ゴメンとただ一言。


俺は言いたいのかもしれない。


俺が死ぬ前に。

お前の前から消えてしまう前に。

ただ一言。

「ゴメン」……と。


病院を出て仔猫の住む家に向かう途中に小さな公園を通り抜けようとすると、
ブランコの傍に鈴蘭の花が一輪だけ落ちていた。

何気なく拾いしばらく鈴蘭の花を見ると小さい女の子が俺をじっと見上げていた。

「……君のか?」

俺の問いに女の子は小さく頷く。

俺は少しかがんで女の子の前に鈴蘭の花を手渡すと女の子は笑いながら去っていった。


去っていく女の子の後姿を見て俺は幼い頃の彩の姿をうっすらと思い出した。

彩と似ても似つかない女の子を見て何故思い出したのかはわからない。


もしかしたら彩が好きだった鈴蘭の花の匂いを嗅いだからであろうか?

そんなことを思いながら俺は小さな公園を後にした。


――――――――――――――――――――――――――――

はい、思いっきり意味不明。(爆
何を書きたかったのか…ただアヤの日常風景を書きたかっただけなんですけどね(;;)
これは一応15000HIT記念のフリー小説です。
他にもケン・オミ・ヨージ編がありますのでそちらの方もご覧してみてくださいませ(何


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