糸電話

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虹神殿



 ウチの文をさらーっと見回していただいて「あ、このヒト、ひょっとして『個性的な絵柄』が好きなんじゃないのかな、しかも一般の女の子にはあんまりウケないようなやつ」と御推察の方もおいでかもしれませんが(笑)、このまんがはまた「とびきり個性的な絵柄」です。絵柄に関しては、独特の「薄布が空を飛ぶ感じ」がすきでした。
 ちなみに私は個性的な絵がすきというよりは、むしろ物語のおもしろい漫画が好きでして、そういう観点で喋ると、何故か個性的な絵柄がそろってしまうのでした。もちろん個性的な絵柄が嫌いという意味ではありません。けっこう好きです。

 昔「日出処の天子」という山岸さん(御大)の漫画があって、そっちは「少女向け政治系漫画」としてかなり有名だったのではないかと推察しているのですけれども、(掲載誌も「LaLa」だったような...)、やっぱり少女向け政治系漫画である「虹神殿」のほうは、連載当時から、どちらかといえば「知る人ぞ知る」な漫画だったのではないか、という気がします。

 私、実は遺跡マニア少しはいってまして(笑)、好きな遺跡ベスト3とか語れてしまうヒトだったりするんですが、「虹神殿」に目をとめたのは、まず遺跡でした。この物語の舞台はアジアとおぼしき発展途上国で、国にあるものといえば、「空神」の神殿の巨大遺跡と、あとはコーヒー農園くらいのもの…そんな場所が舞台なのです。

 エエトコのぼっちゃんが政治絡み家柄絡みで苦労して、ときどき神殿遺跡に逃避している話といってしまえばそれまでなのですが、そこにときどき「空神」が現れて、不思議な会話になったり…またたあいない場面になったりします。あの「空神」の感じがすごく印象的で、今も忘れられません。

 最後のほう...クライマックスとでもいうのでしょうか、主人公が怪我をひきずって真っ暗な神殿の階段を神面塔に向かって上がってゆくシーンがあります。
 涙ぼろぼろの感動というものとは質的に違う感動があったのを覚えております。意識の脱構築と再構築がみごとに果たされる瞬間ですので、上手く主人公に同調できていれば、得難いなにかをこの漫画から得ることができるだろうと、今、私は思っています。昔はそんなこと考えずに読んでいたましたが(笑)。

 特筆すべきキャラですが、なんと日本人の開発途上国援助関係の役人がでてきます(渋!)。このおじさんが、じつにほのぼのしていていいのです。この国の事情がわかっていなくて危機一髪の目にあったりもしますが、...この本を読むと「日本人のよさって案外こういうものなのではなかろうか」と思えました。最近の商人様や仕事やさんはもっとシビアでしょうけれど...笑。

 今どき古本屋にもあるかどうか。ハードカバーのものより、一冊にまとまってる分厚い総集編(A5)がオススメです。

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