ぶらっくぱんさぁ

ぶらっくぱんさぁ

裏アンセムレポート1


この世界は「輝ける庭」と呼ぶにふさわしい
楽園となった。
生命の根源たる清らかな水にはぐくまれて、
香り高き花が咲き乱れ、民はだれもが
楽園に満ちた笑顔で日々を過ごしている。

だが光あるところは必ず闇がひそむ。
先日のレポートにも記したが、この楽園を
守るためにも、私は「人の心の闇」の謎を
解き明かさねばならない。

まずは人の心の奥底を探る実験を行おう。
我が6人の弟子のひとりであるゼアノートが、
自ら被験者に志願してくれた。
数年前に行き倒れていたところを救って以来、
私に仕えてくれている青年である。

あの時、彼はいっさいの記憶を失っていたが
その後めざましい研究心を示し、私の教えを
またたく間に吸収して深い知恵を身につけた。
いささか精神的に未熟な点もあるが、それは
若さゆえの問題であろう。

心理実験によってゼアノートの心をさぐれば、
心の奥に閉ざされた過去が呼びさませるかも
しれない。
弟子のひとりエヴェンも、ゼアノートの記憶に
強い興味を抱いているようだ。

けれど本当に彼でよいのだろうか。
たしかにゼアノートはたぐいまれなる才能の
持ち主ではあるが……。

優秀すぎるのだ。人を超えたほどに。

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