僕等の世界

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雪の日の君-1-




――――それはある寒い雪の降る朝のコト。


「寒っ・・・」

珍しく俺はあまりの寒さに負け早く起きてしまった。
折角の休み、どうせならもっと寝ていたかった;;

「もう1月だぜ?なんでこんなに寒ィんだよ・・・。」

まだ誰も起きてない家の中、静まり返った部屋の中で俺は黙々と寒さに対しての愚痴を口にする。

虚しいコト極まりない。


ふと、やけに暗い外に気付きかじかんだ手でカーテンを開けてみる。

「ぁれ?」

俺は窓の外を見て驚いた。


「・・・雪じゃん。」


少しばかりだが、雪が降っている。
俺の住んでいる地域では幾ら寒くても雪が降る事なんて滅多に無かった。
俺の記憶の中でも、地元で雪が降っていたのを見るのは片手で数え切れる程。
どうせ降るなら、こんな中途半端な量じゃなくて積る位降って欲しい。

「外・・・出てみるか。」

俺はこんな寒いのに何故か外に出る支度をした。
これが本能ってヤツ?
ガキじゃねぇけど、ワクワクする・・・。
まぁ、これがガキっつーもんだけど。

コートを羽織り手袋をして外に出ると予想通り寒かった。


「ぅっわ、やっぱ寒ィ;;」

吐く息が煙草の煙の様に白くて余計寒さが倍増した気がする。
鼻と耳が痛い。

「積んねぇかなぁ・・・。」

空を見上げ冷たい雪を顔に受け止めながら、自分でも聞こえるか聞こえないか位の声の大きさで呟いた。


「少しくらいなら積るかもよ・・・?」


「そっか、楽しみだな・・・。」
「そうね。」


「・・・・って、ぇえ!?」

さっきまでは俺以外誰も居なかった筈の静かな道。
さっきと同様で独り言を口にし続けて居た俺。
さっきまで誰の気配もしなかった筈・・・なのに。


「君、今気付いたの?」


何時の間にか後ろに立っていた同い年くらいの見た事も無い女。
首を傾げ俺の方を見ている。


「ぇ、お前・・・誰?」
「人の名前聞くときは自分を名乗ってから、常識でしょ?」

と、人差し指を立て得意げ笑う。
・・・何だコイツ;;

「別に名前聞いた訳じゃねぇだろ。」
「・・・屁理屈。」

その女は眉間に皺を寄せ俺に近づいてきた。

「うるせぇよ。」
「ま、名前は良いよ。それより君可愛い事言うんだね。」

少そう言って少し微笑むとコイツより高い俺を見上げてくる。

「可愛い事・・・?」
「『積らねぇかなぁ』『楽しみだな』ほら、可愛い事言ってるでしょ?」
「っ!?お前それ今すぐ忘れろ!!」

独り言を聞かれていたと気付いた俺は驚き、恥ずかしくなった。
普通誰だって恥ずかしくなるだろ?

「嫌。」
「嫌じゃねぇって!!」

嫌って何だよ;;
それに、何で俺は今会ったばかりの女とこんなこと話してるんだ?

「だって可愛かったし。」
「っ・・・!!(コイツ、絶対面白がってやがる!!)」

ムカツクやら恥ずかしいやら、小さな脳みそしか入っていない俺の頭は既に混乱してしまっていた。

寒い冬の家の外。
何で俺はこんな所に居るんだ?
自分で出てきたくせに其れさえも判らなくなった。


――――雪は未だ、俺達の元へと静かに降っている。


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