僕等の世界

僕等の世界

雪の日の君-4-




――――昨日は暗かった空が今日は薄い青だった。


「・・・・いつから居たんだよ。」
「・・・ついさっき、だよ?」

昨日会った場所に行くと塀に凭れ掛かり座っていた女が空を見上げてた。
ついさっきだぁ?

「鼻赤い。」
「ぇ!?嘘;;・・・でもそんなに待ってないよ?」
「ったく、ほら・・・。」

俺は座ってるコイツに手を差し伸べた。
別に理由なんてねぇぞ!?
ただ俺が下向いて話すのが嫌だっただけだし!!

「嘘じゃないよ?ぁ、ありがと。」

手を掴み引き上げる。

「なら何でこんなに手が冷たいんだよ?」
「ぁ、ぇと、それは・・・;;」

ぁ、言い訳考えてる・・・。

「はぁ・・・コレしておけよ。」

俺はしていた手袋を外し言い訳を考えている目の前の女に渡した。

「ぇ、良いよ!?君の手が冷たくなるでしょ?」
「会ったばかりのヤツと次の日の約束するような奴が遠慮してんじゃねよ。」
「・・・じゃぁ、借りとく。」
「あぁ、そうしとけ。」

変な奴。
あんな約束こじつけてきたのに、手袋を貸すっつったら遠慮する。
変な女・・・。
もし俺が来なかったらどうするつもりだったんだよ。
そんな事を考えていると、何故か暫くどちらとも喋ろうとせず沈黙が続いた。


「・・・で、何?」
「・・・へ?」

先に口を開いたのは俺。

「昨日俺とした約束。何で俺がお前と会わなきゃいけないんだ?」
「別に、用は無いんだけど・・・。」
「用も無いのに俺はココに居るのか?」
「うん。」
「何だよ其れ;;」

呆れた。
何か用があるのかと思っていたが、本当に何も無いらしい・・・。

「ぁ、でもね!理由はあるんだよ?」
「何だよ?」


「明日も会いたいなぁって、思ったから。」


「ぇ・・・・・・・。」

立派な理由でしょ?と俺を見上げながら微笑む変な女。
その時俺は不覚にも、コイツのその微笑んだ姿に目を奪われた・・・。

「な、何だよ・・・馬鹿じゃねぇか。」

我に帰り、そう言って顔を逸らす。
顔が熱い。
きっと今の俺の顔は寒さの所為ではなく、コイツの所為で赤いだろう。

「失礼だなぁ!だって初めてだったんだよ、あんな可愛い事言う男の人に会ったの。」
「可笑しいんじゃねぇ?」
「可笑しくないよ!!」
「第一、可愛いなんて言われて喜ぶ男が何処に居んだよ!」
「ぇ、嬉しくない?」
「当たり前だろ!?」


今日も昨日と同じで他愛の無い話をした。

素直に、コイツと居るのは楽しいと思う。


また約束をした。
明日もココで会おうと・・・。
俺は
昨日みたいに、断る理由もあの女を不審に思う気持ちなんかも頭の片隅にさえ無かった。


――――だんだんと日が昇る。冷たかった風は少しだけど、暖かい春の風が混じっていた気がした。


1/18 UP

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: