恐さと励ましと挑戦


           冒険教育 野外編


春休み中にラボ・スプリングキャンプ(長野県黒姫)に行ってきました。春は高学年対象のリーダー養成キャンプです。サマーキャンプと違って、私より背が高く私より長くラボ活動をしている子ども達に囲まれ、テューターという身分を忘れさせてくれた魅力あるキャンプでした。

さて、キャンプではいつも2日目に野外活動プログラムがあります。自然の中での活動は気持ちの良いものですが、それ以上にことばを話すためには、人とのコミュニケーションを図ろうとする気持ちが重要ということに気づかされました。

「ハイロープコース」
立木に仕掛けたさまざまなロープや板。下から見上げたときは「ああ、あの高さでロープをつかんで渡ればいいのね」と思うくらいで、高さに対して自分がどのくらいの恐怖感を持つのかなど考えませんでした。

集合してまずは、名前と顔を覚えるゲームに取り組みます。上に登ってからコースに入った仲間を励ましたり、コースを譲りあったり、安全確認の呼び合いをするために名前を知っていることが必要だからです。
さて、充分な説明と安全装備の点検・取り扱いの練習をして、ハイロープコースのキーワード「信頼」「励ましあい」「挑戦」を復習して、いざ、上へ!!

のんびりかまえていたものの、上がってみてその怖さに足はすくみ、命綱の金具を扱う手が思うように動かないさまにぐっと緊張感がつのりました。高さというものがこんなにも恐怖として自分の身にのしかかってくるとは!高い倍率の中、遠く北海道から来たという優先権でやらせてもらっているのに、木にしがみつついてはいられないと「つなわたり」を始めたものの、途中でバランスがくずれるやもう怖くて怖くて体が動かなくなるのです。「右手を持ち替えて!」と指示を受けても手が離せない。頭で指示を出しているのに体が動かない。ある意味でパニック状態です。そうすると仲間が私の名前を呼んで「できる!絶対に大丈夫だから!」と励まします。

まわりの人たちからの励ましと「持ち替えて!」のように次の動作を引き出す単純な指示を出し合います。じれったくなるほどの時間をかけて端までわたり終えると、不思議にもその瞬間、言いようのない達成感と仲間への感謝の気持ちと「自信」が生まれてきます。
その自信は、仲間の励ましと自分の挑戦する気持ちがなければ絶対に生まれてこないのです。

ハイロープコースには、単に理屈や自分ひとりの頭と身体ではわかることの出来ないものが潜んでいました。

振り返ってみると、ハイロープでの体験は子ども達の日常であると思いました。大人から見ればわかりきったことでも、子どもにとってははじめてゆえに怖くて前に出られないことがたくさんあります。

でも周りからの励ましを受けたり、人がやっているのを見て一歩を踏み出し、やり遂げ、自信をつけていくことのくり返しが子どもの生活なのです。


恐怖が励ましにより挑戦となり、達成感が自信を生み出しました。初めて会った人同士でも仲間とのコミュニケーションができれば助け合え、自信をもらえるということを知りました。
(NEWSLETTER 66号 2000年4月号)


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