【目次】
お届け先には不思議を添えて(似鳥鶏)/ボールがない(鵜林伸也)/恋のおまじないのチンク・ア・チンク(相沢沙呼)/横槍ワイン(市井豊)/スプリング・ハズ・カム(梓崎優) (「BOOK」データベースより)
東京創元社から面白そうな短編アンソロジーが出ました。
5人の作家は、登竜門の賞をとったりデビュー作が好評を博したりしている期待の新星とのこと。
そして、作品のモチーフは学園ものミステリー。
<放課後>です!ときめきます!
『お届け先には不思議を添えて(似鳥鶏)』
『理由あって冬に出る』( 感想を書いています
)シリーズですっかり親しくなった(一方的に)葉山くんが主人公。
相変わらずの、巻き込まれ&首ツッコミの案配がいい感じです。
DVDへダビングしてもらうために発送した大量のVHSが、先方に届いた段階で再生できない状態になっていたのはなぜ?
柳瀬さんは登場しないけれど、いつものメンバーに加えて葉山くんの妹もいい味を出しています。味といえば、葉山くんは結構お料理上手のようです。
『ボールがない(鵜林伸也)』
これからデビュー作が刊行になる作家さんとのことですが、ごく自然な会話や独白の中に、実に巧みな仕掛けがあります。
高校野球部補欠メンバーの練習後、見つからない1球はどこに?
どの登場人物のことも、このシチュエーションも、作者が愛してやまないのだろうということがにじみ出ていて、愛すべき一篇になっていました。
『恋のおまじないのチンク・ア・チンク(相沢沙呼)』
『午前零時のサンドリヨン』( 感想です
)の続編です。望んでいた須川くんとの再会を果たすことができました!
学年集会を終えて戻った教室の教卓に、皆のバレンタインチョコが山積みになっていた?
相変わらず、初ちゃんとの間の距離を測りかねて、あ~じゃないか、こ~かもしれない、と、うじゅうじゅ思いがちな須川くんだけれど、今回はちょっと…仕掛けたりなんかしてくれて、やるじゃん!
作者の世界観も板についてきている感じで、読み易くもあり、バレンタインデーを前にしたこの時期にぴったり。楽しみました。
『横槍ワイン(市井豊)』
5篇中唯一、大学を舞台にした学園もの。
冒頭<お酒は二十歳になってから>という一行がありますが、映像サークルのメンバーが集まってお酒を飲みながらDVD鑑賞をする、その席での事件の真相をさぐる話。
大学の芸術学部という設定も面白かったし、意外なところに張られたヒントを見つけられず、推理を外して悔しくもあり、微笑ましくもあり…の一篇でした。
『スプリング・ハズ・カム(梓崎優)』
5篇のラインナップの、トリがこの作品というのも納得。
高校卒業15年後の同窓会を舞台にしたミステリーで、卒業式におきた忘れ難い事件の真相を推理するというストーリーですが、とにかく1ページ目から引きつけられました。
過去と現在を行き来しながら、状況描写も自然に会話に織り込んで、実に丁寧に推理が構築されています。
真相を知って思わず、引き返してもう一度読みなおしてしまいました。
全体を音楽が漂っているような美しさもあり、結末のせつなさは短編だったのを忘れてしまうほど。
『 叫びと祈り
』も是非読みたいと思います。
それぞれの作品ごとに違う画家の口絵も楽しめます。
もちろん、これまでのシリーズがあるものには、その表紙と同じ画家です。
なんて贅沢!
そして、編集者によるそれぞれの作品解説も付録されています。これが、作品への、そして作者への愛にあふれていて、とってもいいんです。
東京創元社万歳。
丁寧に書かれた作品たちは、ミステリーとしても上出来であるばかりでなく、読んでいる私をタイムスリップさせて学舎へと運んでくれました。
若いって、めんどくさい。一言口にしてしまえば何でもない事を隠そうとして、こんなことになっちゃうんですから…
でも、それを笑って許しあえるのもまた若さ。
読む間、若さを楽しめて、そして読後も、これから読む本への期待でフレッシュな気持ちにさせてくれる一冊です。
図説密室ミステリの迷宮 2011.05.24 コメント(1)
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