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📖 第一章:無極の村
風は静かに山を撫で、木々の葉はささやくように揺れていた。
その村は、地図にも載らぬほど小さく、時の流れからも忘れられたような場所だった。人々は自然と共に生き、争いを知らず、ただ季節の移ろいに身を任せていた。
凌風は、その村の片隅に住む少年だった。
生まれつき体が弱く、走ることも、跳ぶことも、他の子供のようにはできなかった。だが、彼には一つだけ、誰にも負けないものがあった。
それは、 静かに世界を観る目
だった。
祖父・凌白は、かつて武の道を歩んだ人物だった。
今は老い、畑を耕しながら、孫に「養生功」を教えていた。
「風を感じろ。風は見えぬが、確かにそこにある。気もそうだ。目に見えぬが、感じることはできる」
ある朝、凌風は祖父と共に「五行体操」を行っていた。
木功では両腕を横に広げ、風を受けるように。火功では指先を天に向け、陽の気を集めるように。
その動きは、まるで自然と一体になる儀式のようだった。
「爺様、僕の動き、変じゃない?」
「変かどうかは、心が決める。型は鏡だ。お前の心が揺れれば、型も揺れる」
その言葉に、凌風は黙って頷いた。
彼の心は、確かに揺れていた。何かが足りない。何かが、呼んでいる。
その日の午後、村に一人の旅人が現れた。
黒い衣を纏い、背には長い棒を背負っていた。目は鋭く、だがどこか哀しげだった。
「この村に、太極拳を知る者はいるか」
その声に、祖父はゆっくりと立ち上がった。
「太極拳は、知るものではない。感じるものだ」
旅人は名を「鶴影」と名乗った。
彼は、かつて黒鶴門に属していた武者であり、今は放浪の身だという。
その夜、祖父と鶴影は、村の広場で静かに向かい合った。
言葉はなく、ただ型が交わされた。
風が止み、空気が張り詰める。凌風は、初めて「勁」というものを目にした。
鶴影の動きは、力強く、だが無駄がなかった。
祖父の動きは、柔らかく、だが芯があった。
二人の型は、まるで陰と陽の舞のようだった。
その戦いの後、鶴影は凌風に言った。
「お前の目は、風を見ている。だが、雷を知らぬ」
「雷 …
?」
「雷は、意だ。風は、気だ。太極拳は、その両方を知る者の拳だ」
その言葉が、凌風の心に火を灯した。
彼は、太極拳を学ぶことを決意する。
祖父は静かに頷き、村の外れにある石碑へと彼を導いた。
そこには、古びた文字が刻まれていた。
「太極は無極より生じ、動静の母なり。動にして分、静にして合。陰陽の母なり」
凌風は、その言葉を胸に刻んだ。
そして、旅立つ決意をした。
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