JUNK ISLAND

第2話


第2話「イキシア」

ヴェイスはガーディアンズコロニーを出て、
4FのPPTスペースポートへと向かった。

PPTとはTTB社が運営する星間連結シャトルのことで、
ベクタートラックを使った宇宙船だ。

このグラール太陽系の元はフォトンという物質で出来ており、
それを利用することで推進力を得る。

ベクタートラックとはTTB社が開発した
グラール全土に広がる宇宙交通網を支える基幹システムのことで
空間中のフォトン濃度の違いを利用して
スピードをあげていくフォトンドライブシステムにより
近年のグラールの交通網はより安全にそしてより速くなった。

さすがにコロニーは全ての星の中間地点なだけはあり、
スペースポートはあらゆる種族の人ゴミができている。

ヴェイスはあたりをきょろきょろと見渡し、パルム行きのシャトルを探す。
「いつもながら何て人だ・・・。」

顔を曇らせ文句を言いながらもヴェイスはやっとのことで
パルム行きのシャトルに乗り込むことができた。

シャトルの中は以外と広く、スチュワーデスが淡々とパルムの説明を続けている。

パルムはキャストにより支配された機械の惑星で、
窓の下に広がる森も全て人工のものだ。

ヴェイスはスチュワーデスの話など頭に入らず、
教官とパートナーのことで頭がいっぱいだった。
「ガース教官と、淋さんか。どんな人なんだろう・・・」
彼の意識は適度に揺れるシャトルの中でだんだんと薄れていった。

次にヴェイスが気がついたときにはすでにパルムに着き、
ガヤガヤと人が降りている最中だった。

ヴェイスも慌てて荷物を取り、列の後ろに並ぶ。
「へぇー、ここがパルムか・・・。」
目の前には圧倒的な高さのビルがあり、車が空を飛びまわっていた。

「すっげぇー・・・。」

今までコロニーを出たことが無かったヴェイスは
ここまで発展した街を見たことがなく、その光景に
ヴェイスはただ呆然と立ちすくみ、景色をしばらく眺めていた。

「あ、そうだ・・・パートナーと教官が待ってるんだっけ・・・
 西地区ってどっちだよ・・・。」
ヴェイスはようやく用事を思い出し、目的地を探しだす。

周りを見渡し、西地区入り口というどでかい看板を見つけたヴェイスは
期待に胸をふくらませ、上機嫌で歩いていく。

少し冷たい風が肌をなでるが、
その冷たさはヴェイスにとって心地よいものだった。

西地区の看板の下には少し長いトンネルがあり、
そこをぬけると広い商店街に出た。

「えーっと、オープンカフェはっと・・・」

ヴェイスはキャストの人ゴミにまざり、にぎやかな町を見渡す。
すると、ヴェイスの左の方から商売をしている少女の声が耳に入った。
「コルトバジュースはいかがですかー?1杯120メセタですよー。」

見ると、赤と白の制服に身を包んだ明るそうなポニーテールの少女が
赤いジュースを手に持ち宣伝を行っている。

コルトバジュースとはパルムの名物でパルムに生息する原生生物
コルトバからとれるコルトバフォアをすり潰し、
スイートベリーで味付けしたものだ。

コルトバとは豚のような原生生物で顔は醜い。
しかし、顔が醜ければ醜いほど味は良質だと言われている。

「おぉ、俺一度は飲みたいと思ってたんだよな。
 それに、多分あそこがオープンカフェだろうな。」
ヴェイスはジュースにひかれ、人ゴミをかきわけ声のほうへ向かっていく。

人ゴミを抜けると、やはりそこが探していたオープンカフェだった。
周りを見渡し、ヒューマンとビーストがいないか確認するが
周りはキャストばかりで目的の人物らしき人影は見当たらない。

そのため、コルトバジュースを一つ頼み、
空いてる席で淋とガースを待つことにした。

ジュースを一口含むとまろやかな甘みと酸味が混じり何とも言えない味が広がる。

「うわ、これうまいなぁ・・・。」
さらにヴェイスは2杯の追加注文し、ジュースを堪能していた。

すると、後ろから若い女性の声が聞こえた。

「よくそんな醜い生物のものが飲めるな・・・驚嘆に値する。」

ヴェイスが振り返ると、そこには銀髪のセミロングの髪と白い肌にあわせたような
白い着物に白いブーツを履いた赤い眼の女性がたっていた。

「えと・・・あんたは?」
ヴェイスは突然かけられた言葉に状況を把握できていなかった。

「あぁ、すまない。淋=暁というものだ。
 この辺でヒューマンのガーディアンズを見なかったか?」

その言葉でヴェイスはやっと状況を把握した。
この女性がヴェイスのパートナーだったのだ。

「あぁ、それ俺だよ。俺はヴェイス。
 ヴェイス=ガルガードっていうんだ、パートナーだよな?よろしく!」

手を伸ばし握手をしようとすると、淋は明らかに嫌そうな顔をした。

「君が私のパートナーだったのか・・・意外だな。
 それと、すまないな。私は潔癖症なんだ握手はもちろん、
 半径1m以内に近づかれるのも嫌いだ。覚えておいてくれ。」

「半径1m・・・」
差し出した手のやり場に困ったヴェイスはその手を頭の後ろにやり、苦笑した。

(綺麗なんだけど・・・半径1mねぇ、うまくやっていけんのかな・・・。)

淋はヴェイスとは違うテーブルにつき、静かに紅茶を飲んでいる。
きまずい空気が流れ、ヴェイスは黙って教官が来るのを待つ。

待ち合わせの時間はとうに1時間はすぎていうのに一向に現れない教官。
すると、突然淋が口を開いた。
「教官、遅いな。」

たったこれだけの言葉だが、今までの重い空気が消し飛んだように感じられ
思わずヴェイスはそのまま感じたことを口に出してしまった。
「遅いよなー。これじゃ腕の方も期待できそうにないんじゃないか?」

その時ヴェイスの後ろから野太い声が聞こえた。

「あ?新入りが何ほざいてやがる。何ならここで試してやろうか?」

ヴェイスは硬直したまま後ろを振り返る。
そこには茶髪を短めに刈り上げた小麦色の肌のビーストの男がたっていた。

服の上からでもわかるような筋肉がついており
見た目はガーディアンズというよりローグスに近い。

彼の名は「ガース=アーノルド」ヴェイスと淋の教官である。

「まぁ、威勢がいいのは良いことだがな。坊主、覚えておけ。
 上官への逆らいは即刻解雇だぜ?」

そういってガースは少し声をやわらげ、ヴェイスを冷やかした。

「ってことは・・・あんたが俺らの教官ですか?」

淋は嫌悪感をむきだしで教官に言い放つ。
「待ち合わせ時間から1時間も遅れている。いくら教官でも許しがたいぞ。」

ガースは豪快に笑ってヴェイスたちを見た。
「ガハハハハ、まぁあれだ。道に迷ってなぁ、探すのに手間どったんだ。
 道を聞くにしてもキャストばかりで相手にもされなくてな。気にするな。」

「本当に大丈夫かよ・・・」
ヴェイスは言い知れぬ不安感におそわれ、淋は口を開く気にもならなかった。

「それはそうと、やっと全員そろったんだから自己紹介しないとな。
 知ってのとおり俺様はガースだ。主な武器はナックル。
 年は32でガーディアンズに入ってから15年はたつな。
 趣味は酒と、気ままに暴れることだ。そんなとこだな。
 あぁ、それと別にお前らの趣味はいいから
 ガーディアンズに入った理由を聞かせてくれ。
 それじゃ坊主、お前からだ。」

ヴェイスは突然ふられたことに驚き、少し考えて自己紹介を始める。

「え、俺からかよ。えーっと・・・俺の名前はヴェイス。ヴェイス=ガルガード。
 主な武器はソード。後はそうだな、セイバーもそれなりに使えるほうかな。
 ガーディアンズに入った理由は、人類を守りたいから!」

「人類を守りたいから・・・か。たいそうな理由だな。」
胸を張って同道と言う彼に対し、淋は苦々しい表情でヴェイスを見た。

「な、何だよ。悪いか?お前はどうなんだよ?」
慌ててヴェイスは反論する。

「そう慌てるな。次は私の番だな。私は淋=暁。
 ニューデイズ生まれのニューデイズ育ちだ。
 だが特にグラール教を信じているわけではない。
 それと私は潔癖症なんだ。教官も半径1m以内に入らないことをお勧めする。
 主な武器はライフルだ。あまり汚らわしい生物に近づきたくないからな。
 ガーディアンズに入った理由は原生生物の全滅だ。」
そういって淋はどこか寂しそうな表情を見せた。

「ふむ、まぁ理由があるのはいいことだな。
 俺様の入団理由は暴れたいから。だったからなぁ。
 それにしても半径1m以内に入ったらどうなるんだ?」
と、ガースは素朴な疑問を淋に投げかける。

「私がとくに意識してない場合は無意識にライフルを撃ってしまうんだ。
 私も人を殺したくないからな・・・みんな気をつけてくれ。」

(目がマジだ・・・気をつけよう。)
ヴェイスは背中に嫌な汗を感じていた。

そんな彼に対し、ガースは笑いながら淋に言った。
「凄い特技だな。ガーディアンズにはぴったりじゃねぇか。
 さてと、自己紹介もすんだし、さっそく実習に行くとするか。
 俺たちの最初の任務はディ・ラガンの巣の捜査と、遭遇した場合には駆除だな。
 街から近いところで見かけるはずのないディ・ラガンの目撃情報が入った。
 まぁ大きさからいって長く生きたものではないだろうから、
 俺一人でも可能なミッションだ。緊張するこたぁないな。」

ガースの言葉にヴェイスは正直驚きを隠せなかった。

ディ・ラガンとは、人里にはめったに現れない竜の一種で、
赤いうろこと二つに分かれた尻尾が特徴の竜だ。

大きさはだいたい7mから10mといったところであり、
竜の中では弱い部類に属する。

しかし弱いといっても竜であり、
普通の民間人では何もできず食い殺されるだろう。

それをエンシェント・ドラゴン(長く生きた竜の正式名称)ではないとしても
一人で倒すのは一人前のガーディアンズでさえ危険をともなう。
それを彼は軽く言い放ったのだ。

「ふむ、さっそくディ・ラガンか。相手にとって不足はないな。」
淋は嬉しそうにライフルの手入れを始める。
ヴェイスも負けてられずソードの手入れを始めた。

「よし、それじゃ準備ができ次第早速向かうぞ。
 まずは中継地点を目指して森を通過する。
 各自応急手当用のモノメイトを忘れるなよ!」

ガースはこれまでのふざけた態度がうそのようにキリッとした態度へと変わる。

ヴェイスも気が引き締まり、初めてのミッションに準備を始めた。

                               つづく


© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: