JUNK ISLAND

第7話


第7話

ガースの送別式は壮大に行われた。
あの人柄だ。それはもうたくさんの人が集まり涙を流した。
だが大概の人たちはひとしきり泣いた後、豪快に笑い彼を見送った。

俺は・・・ただ隅のほうでただ一人沈んでいただけだった。
俺がもっと強かったら。俺が援軍を呼ぶのがもっと速かったら・・・。
悔やんでも悔やみきれない思い。俺がガースを殺した・・・。

顔を膝にうもれさせ、ただ時間が過ぎるのを座って待っていると、
誰かの人影が俺を光から遮った。ふと顔を上げてみると、そこにはオリビアさんがいた。
俺は言葉につまった。何を言っていいのかわからない。そもそも発言する権利があるかもわからない。
黙っている俺に彼女は優しく声をかけてくれた。

「何そんなとこでふさぎこんでるの?彼を見送ってはくれないのかしら?」
口に人差し指をあて、少々笑いを含んだ声で冗談めかした言葉をかけてくれる。
何故彼女は俺を責めないのか?やっと働いた思考回路は少しずれていた。

「何故・・・俺を責めないんですか?」
俺はとっさに聞いていた。そんなことを聞いてどうするのかも考えずに。

「そんなことを考えてたのね・・・。いい?あなたのせいなんかじゃないの。
あなたを責めるなんて・・・そんなことしたら彼に怒られちゃうわ。」

「でも・・・俺がもっと強かったら・・・。」

彼女は、はぁっとため息を吐いて、

「そんなこと考えてたらキリがないわよ?それだったら私はどうして彼をミッションに行く前に止めなかったのか、とか
どうして私もついていかなかったのか、とかにもなっちゃうでしょ?」

「でも、それは仕方なくて・・・」

「そう!仕方ないのよ。私が止めなかったのも、あなたがまだガースを助けれるほど強くなかったのも仕方ないことなの。
だから、誰の責任でもない。ほら、淋ちゃんがあなたを心配して待ってるわ?
私には奴をどう励ましていいかわからないから代わりに励ましてやってくれってこーんな怖い顔で頼まれたんだから。」

彼女は眉間にしわを寄せて淋の物まねらしきことをやった後、ニコリと笑ってくれた。
それにしても淋が俺を心配していたなんて・・・奇妙なこともあるものだ。
俺は彼女に手をとられ、淋のそばまで連れてこられた。

「お前だけに非があるのではない・・・私にもあるのだから、その・・・何だ。あまり気にするな。」

淋らしい変に堅苦しいしどろもどろの励ましのような言葉を聞いて俺もオリビアさんも思わず笑ってしまった。
少し・・・心が軽くなった。

「あなた達はきっと大物になるわ、だって私の自慢の彼の生徒なんだもの。」
オリビアさんは別れ際に力強く親指を立て最後まで笑みを絶やさずニューデイズに帰っていった。
彼女はこれからはガーディアンズにもう一度入り、医療班の教育に力を注ぐらしい。
ガースが愛した場所を守りたいんだそうだ。何て強い人だろう・・・。
俺も彼女やガースのように強くなりたいと、そう心から思った。

オリビアさんを見送った後、俺と淋は別れて、それぞれの部屋に入り、しばしの休みをとった。
明日からの任務に備えるために・・・。









古ぼけた目覚まし時計が朝を告げる。
まだ寝たりないがそれはそれ。仕事なのだから起きなければならない。
ヴェイスはのそりとベッドから起き上がり、まだジリジリと鳴っている目覚ましをとめた。

のそのそと支度しながら、今日はどうなるのだろうかと寝ぼけた頭で考えていた。
昨日ガースの送別式が終わり部屋の電子板を見てみると、ガーディアンズ本部からの呼び出しが
書かれていた。今後の俺らの動き方を説明するのだろう。
寝ぼけた頭で考えてもしょうがないので、さっさと本部に行くことにした。

コロニーの真ん中に堂々と設置されてあるエスカレーターで頂上まで上り、
これまたどでかいコロニーの象徴であるガーディアンズ本部に足を踏み入れた。

朝も早いことで、本部に人はまばらにしかいなかった。まっすぐに受付まで進んでいく
途中に、偉そうに足を組んでソファーに座っている淋と目があった。

「まったくお前は朝に弱いな・・・集合5分前だぞ。」
理解不能な不満が飛んでくる。5分前なんてむしろ理想的ではなかろうか。
だが逆らうと面倒なので素直に謝る・・・何て情けない。

「悪かった。んでお前はいつ来てたんだ?」

「ほんの5分前だ。」
あんま変わらねぇじゃねぇか、という突っ込みをこらえ、そうか。と相槌を打っておく。
成長したなぁ、俺。

二人そろった俺たちは今日の指令を受けるべく受付のミーナさんの所に歩いていく。
ミーナさんは俺たちを見かけると気の毒そうに話しかけてきた。

「あ・・・そのぉ、昨日はご愁傷様でした。でもガースさんはとても凄い方ですね。
エンシェント・ドラゴンの討伐は史上3人目です。きっと後々も語り継がれていきますね。」

「ありがとうございます。俺たちもガースを目指してこれから頑張っていきます!」

「ふふっ、その調子ですよ!あ、そうだ指令でしたね・・・少し待ってください。」
ミーナさんは微笑みを浮かべ、その後自分の仕事を思い出したかのように慌てて資料を探し始めた。
普段は仕事できるんだけど、たまーに抜けてるんだよなこの人・・・。

「あ、ありました。えーっとあなた方二人は、今日で・・・え?あれ?あのぅ・・・ペア解散だそうです。」

俺と淋は思ってもみなかった言葉に顔を見合わせる。
すると気まずそうにミーナさんは言葉を続けた。

「えと、どうやらSEEDが活発化して人手が足りないそうなんです・・・。
だから少しでも戦力になる方々は一人にしてしらみつぶしにSEEDを狩るそうです。」

「そう・・・ですか。」
俺は言葉につまった。いつかは離れるとは思っていたが、まさかこんな早くに一人で
ミッションを達成しなくてはならないとは思ってもいなかった。

戸惑いながら淋を見ると、彼女は普段と変わらない表情で
「そうか・・・」とだけ呟いた。

俺はモトゥブの原生生物の駆除に。淋はニューデイズの原生生物の駆除らしい。

「これで私たちはいっぱしのガーディアンズということだな。
ヴェイス。短い間だったが楽しかったぞ。お前となら・・・また組んでもいいな。」

淋は別れ際に微笑んで手を振ってくれた。俺も手を振り返し彼女を見送る。
俺は一人前とまではいかないが一応使える、と判断されたらしい。
俺はまたいつか淋と組んだ時足手まといにならないように訓練を積もうと決意した・・・。




半年後、俺と彼女はまたペアを組むことになる。 

続く

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