前門の虎、後門の狼 <年子を抱えて>

前門の虎、後門の狼 <年子を抱えて>

お祭りワッショイ!千葉マリン




 千葉マリンスタジアムには何度か行ったことがある。ヤクルト‐阪神では、ヤクルトの主催試合だというのに阪神ファンのほうが多く、バックスクリーンを挟んでライト側まで黄色い人たちが溢れていた(私もその一人であった。持っていたのは外野自由席のチケットで、球場に到着するのが遅かったためにやむを得ずそこに座ったのだが、一応ここはヤクルト側だから、大っぴらに騒ぐなと警備員に釘をさされた)。阪神ファンは本拠地でなくともこんなに大勢集まるのか…と驚いた。そして敵地でも六甲おろしは遠慮なく吹き荒れるのだ!

 勿論、ロッテの試合を見に行ったこともある。ロッテの応援団は阪神に劣らず熱狂的である。メガホンを使わず手拍子が主で、みんなユニフォームを着ていて、声が揃っていて…。しかし、今年ほど球場が満員になったことがこれまでにあっただろうか。

 ロッテは連勝街道を突っ走り、パ・リーグで首位に立っている。あの強い強いソフトバンクの上にいるのだ。強いから客の入りがよくなったのだろうと思っていた。今年からセ・パ交流戦が始まって、我らが阪神タイガースとの対戦もあるから注意深く見ていたのだが、単に強いから客が入るというわけではなさそうである。

 球場の前には出店のテントが並び、プロ野球70年にして初の交流戦を記念してのTシャツなどが販売されていた。正面入り口付近にはステージが設けられ、試合開始1時間前にロッテのチアガールによるダンスが披露された。試合の合間には、花火が打ち上げられた。その数、なんと300発というから驚いた。何なんだ、このお祭り騒ぎは…。東京湾の埋立地にポツンと建っていて、無機質なマリンスタジアムだったのに(少なくとも私が通っていた当時は)、随分と明るい雰囲気になったじゃないの~!

 昨年はスト騒動もあったし、巨人戦の視聴率が過去最低になるなど、プロ野球の人気は落ちていると言われているのに、ここ千葉マリンは活気がある。ファン獲得のために関係者がよほど尽力したのであろう。海浜幕張駅にはロッテ選手のポスターが張られ、発車ベルはロッテの応援歌になったという。さらに、入場券を駅で買うことができるようになったそうだ。駅の隣にある「マリーンズボールクラブ」では、ロッテの応援ユニフォームを購入すると、その場で好きな選手の背番号を貼り付けてくれるとのこと。よ~し出陣だ!と、球場に着く前から、わくわくするね!

 球場では、ベンチ上の通路にサインコーナーが設けられた。メジャーリーグのように、選手とファンが近くなった。とてもいいことだと思う。選手とファンの交歓だけでなく、息をのんで試合を見守るという意味でも緊張感があっていいと思う。横浜スタジアムは、内野のフェンスを6メートルから1.5メートルに下げたし、東京ドームも、エキサイトシートというネットのない席を内野の一角に設けた。ボールが飛んできたら危険だが(よそ見なんかできないよ)、これを自分のグラブでキャッチしようものなら一生の宝物だ。

 試合前には、スタメンの選手が一塁側ベンチでファンに挨拶する。選手のみならずバレンタイン監督も出てくる。5回終了時点では、ファンがグラウンドに下りてその日のイベントに参加できる。勝った日のヒーローはマスコミ用のインタビューに続いてライト側でファン相手のインタビューに応じる。スタッフと選手が一体となって、ファンを楽しませる努力をしている。「お客様は神様」だからね…(笑)

 球団消滅やストの強烈な衝撃があって、プロ野球は初めて目を覚まし、己の姿を省みた。ファンは厳しい視線を送っている。今年は、かねてからパ・リーグの悲願であったセ・パ交流戦が導入され、50年ぶりに新規参入した楽天への関心も高く、熱気ある開幕を迎えたものの、喉元過ぎれば何とやらとばかりに、改革が進まないままなら、ファンはどんどん離れていく。プロ野球は国民的娯楽であると、いつまでも旧態依然で胡坐をかいてはいられないのだ。

 それにしても、交流戦はおもしろい。いつもの顔ぶれでのんべんだらりとやっているより、刺激や緊張感が伝わってくる。今までは、オールスターか日本シリーズでなければ対戦できなかった相手と対戦できるのだ。それも真っ向勝負で!オールスターはいわばお祭りだから、変化球はほとんど投げない、どうしてもバッター有利だもんね。日本シリーズだって、12球団のうち2球団しか出場できないしね。交流戦が始まるまでは、セ・リーグでは中日が2位阪神に5ゲーム差をつけて独走していたのに、対戦がないままあっという間に差が縮まってしまった。これも交流戦のおもしろさだと思う。

 しかし、昔から言われる「人気のセ・実力のパ」はやはり真実なのだろうか、と思わざるを得ないほど、セ・リーグのチームが負けているような気がするのだが…。



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