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とりあえず、たくさん寝て数日後、岩崎くんに電話をした。「とつぜん辞めてごめんね」泣きながらそんなこと言うアタシに彼は面くらっているような様子だったが、とりあえず、話を聞いてくれたので、なんとなく気持ちが落ち着いた。職場が一緒じゃなくなったらもう会えなくなるのかも思うような気弱なアタシと違い、自分が会いたくなれば、いつでも誰にでも会いに行けると思っている強かな岩崎くんの性質がうらやましかった。「またなぁ。」そう締めくくってくれる岩崎くんに、誰にも言えない寂しさが、救われた。
2007.05.24
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あたしはその月の最後に、『ハレルヤ』を辞めた。今の店長に変わってからというもの自らの出世のために人件費削減策を実施したためホールは、ひとたび混んだらどうにもならない人数しか配置されず、お客さんとの間に立たされているアタシ達としてはそれでもできるかぎり必死にオーダーを受けドリンクを作り、料理を運び食器を下げジョッキを洗うこととなった。たくさんのものをなるたけ一度に運ぼうとしているうちに腱鞘炎になり、あまりにもたくさんのテーブルから呼ばれ続けるうちに過呼吸になったので、仲間に恵まれ楽しい思い出いっぱいあったけれど、もう無理だと思った。キッチンで楽しそうに働いている彼の背中をもう見れないのかと思うと気持ちが揺れたけれども、これで彼との接点がなくなってしまうかもしれないと不安だったけれど仕方がないと思った。
2007.05.23
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向かい合いの席が苦手な岩崎くんなのでカウンターで隣り合って座ることが多いけれど、最近の居酒屋は、親切に2名様用個室がたくさんあるので、あたしは、まじまじと岩崎くんの顔を見つめていた。まじまじと見つめると、彼は照れたような恥ずかしそうな、ちょっとそんな表情をする。それがなにを意味するのか、人の顔色を伺うのは得意だけれども大好きな人の気持ちというのは、なかなか冷静に読み切れない。それに岩崎くんは、ウソも上手だから。冷房が効きすぎていたため、早めに店を出て駅前のスーパーでピールと缶チューハイを買って、続きはうちで飲んだ。引越し疲れでいつもより早く眠くなってきたあたしに、「まだねるなよぉ・・・!」と元気な岩崎くんは言った。「・・・いっつもトットと先に寝ちゃうくせにぃ。」あたしはフトンに横になりながら言った。部屋の中を物色されて見せたくないもの見つけられたらヤダなと思ってウトウト眠気に抵抗していたら、そんな気持ちを察してか否か、「オレ、テレビ見ながらもうちょっと飲んでるからひろちゃん、無理しないでもう寝なぁ。」と言った。彼の後ろ姿越しに、F1インディアナポリスの映像が流れていた。車のスピード感が、細かな心配をどこかに飛ばしてしまいあたしは眠りに落ちていった。
2007.02.07
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比較的さわやかな初夏の日曜日だったが、休みなく動いていると、やはり暑かった。新しい部屋にどんどん荷物を運び入れ、おおよその配置に段ボールを積み上げた。ひとりでやったら荷物と一緒に転落していたに違いないであろうロフトにも岩崎くんの力を借りて段ボールを引き上げた。予想以上に早く引っ越しは片付いてしまったが、まだ全く日は暮れていなかった。麦茶を飲み、新しい部屋のベランダで一服していた彼が「まだこんな早いのか、じゃあ今日は帰ろうかな・・・」という雰囲気なのを見て、さみしくなった。「お礼におごるからさ。軽く飲もうよ!」気持ちを悟られないように、元気に言ってみた。「そうだな・・・じゃあ飲んでこうかな。」飲み屋はまだやっていなかった。18時開店のお店が多いようだったが土間土間は17時開店らしい。「あと10分くらいだから、そこらへんフラフラしてこようか。」そう言って、商店街を歩き始めた。
2006.10.03
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駅に迎えに行くと彼はタオル持参でやってきた。当人のあたしより引っ越し気分だな、と思った。だって、どのくらい時間と体力がいるか見当もつかないし、これで岩崎くんがいないとしたらぐったり憂鬱な日のはずだったから。とりあえず、どんどん段ボールに入れてすぐに運び出せる用意はしていた。7月の始めで、天気もよく暑かったので部屋に着いたら、とりあえず麦茶で一息ついた。「ふう・・・」これからどういうふうに作業をすすめてどのくらい時間がかかるかわからないけど、とりあえず、今日中に全部運び出さなければいけない。そう考えて、動き出す気になれないでいると、「よし、さっさと片付けちまうか。」岩崎くんが腰をあげ、首にタオルを巻いた。まず、段ボール5~6個くらいずつを階段の下まで降ろし、隣の階下まで回り込んで運び、最後に2階に運び上げる・・・という3段階で作業を行うことにした。「ひろちゃん、運び出す荷物を玄関先に積み上げてってよ。そしたらオレが階段おろすからさ。」階段がせまくて、あたしだと、大きな重い荷物などは支えきれずに動きがとれなくなったりしたので、言う通りにした。岩崎くんは、中学ではちょっと陸上をやっていたらしいけど高校は軽音だし、まったく体育会系ではないのにさすがに男の人は体力があるなぁと思った。交互に隣の入口まで運んでいたら、見ていた向かいの建築会社の方が貸してくださったらしく、岩崎くんが台車に5~6個段ボールをまとめて押してきた。おかげで作業効率がかなり上がった。
2006.09.10
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話は前後するが、グループ展の直前、あたしは引っ越しをしていた。東京にきてからずっと、叔母さん所有のアパートの1室を貸してもらって住んでいたが、築30数年を越えて、いよいよ建て直すこととなったからだ。それに伴って、隣の、以前祖母が住んでいた跡地に建てたアパートの1室に移るのだった。隣の建物へ引っ越すだけだから、物理的に見れば簡単そうだけれど、エレベーターの無い、狭い階段の2階から2階へなので、ちょっと考えれば、荷物を持って階段で途方に暮れることは想像できた。冷蔵庫や大きな棚などは、アパートを建ててくれた建設会社の方が運んでくれることになったけれど、それ以外の本が詰まった重たい段ボールや大きな衣装ケースを運ぶ時などは、荷物もろとも階段から転げ落ちてしまうかもしれない。こういうときはやっぱり、男性の力が必要だと思い、岩崎くんに手伝ってもらおうともくろんだ。ただ頼んでも、「やだ~、めんどくせ~」って言われそうだから、先月1万円貸してあげたことを恩に着せつつお願いしてしまおうと計画を練っていた。ある日、仕事帰りの電車でおそるおそる言ってみたら、「うん、いいよ!」と、意外もにあっさりと引き受けてくれた。(らっきぃ。)岩崎くんに手伝ってもらえるなら、憂鬱な引っ越しも、楽しみになってきた。
2006.08.23
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うすいベージュのキャミソールにデニムのサブリナパンツ。岩崎くんの話から想像していた地味な女性ではなく、化粧っけはないけれどかなり男性をそそる服装だと思った。きっと、彼とのデートだからに違いないけど。・・・でもなんかしっくりこない。岩崎くんの開放的で自由奔放な笑顔とその後ろにいた彼女の人見知りで潔癖そうな表情。水と油みたいに正反対だと思った。やっぱり彼女は完全にだまされているかもしれない。だって、子供みたいに人見知りして黙っているなんてかなり純情な人だろう。数々の彼のウソに感づいていながらも付き合っているという印象が持てなかった。複雑だった。たとえば、彼女が懐が深そうな大人の女性でなおかつ、岩崎くんの明るさと共通の強さを持っているならば、とてもお似合いのカップルだと思ったろう。もしくは天然でとっても個性的なタイプとかでも納得いっただろう。お似合いな2人を見れば、納得して身を引く気持ちが出てくるかもしれないと思ったけれど、逆だった。よけい心に火がついた気がした。2人帰ってほんとにすぐ、まいちゃん達が帰ってきた。「ちょうど今、岩崎くん達帰っちゃったよ。」そう言うと「え~っ、あたしも彼女見たかったのに!」そんなことを言った。あたしも見てほしかったと思った。そしてあたし以外の人の客観的な意見を聞きたかった。
2006.07.30
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2人は絵を見終わってしまって、まだあたしもまいちゃんも戻ってこないから諦めて帰るところだったらしい。岩崎くんに一目でも合えて、神に感謝した。と同時に、唯一席を離れている間に来るなんて・・・という気持ちも沸いていた。「来てくれたんだ!?」「あぁ、来るって言ったじゃん。どこ行ってた?もう見終わっちゃったじゃねぇか。」「だって~。もう来ないのかと思ったから、ご飯食べに行っちゃったよ。」岩崎くんの陽気な笑顔とは相反して、彼女は人見知りをする小さな子のように、岩崎くんの斜め後ろに隠れるようにしてはずかしそうに立っていた。少しオドオドしているようにも見えた。彼女はあたしと同い年のはずなのに、意外だった。このくらいの歳になれば、お愛想でもにこやかに挨拶するか、それとも敵対心をあらわにするか、どちらかするのではないかと思っていたのに。「せっかく来てくれたから、みんなで写真撮ろうよ!ゆかさんも一緒に。来てくれた人とみんな撮ってるんだ。」彼女が乗り気じゃないみたいで2人ともその場から動いてくれなかったのでその提案は流れた。彼女はお手洗いに行くと言い、その場を離れた。「・・・本当に絵見てくれた~?ねぇ。じゃあどの絵が良かったか言ってみてよ。」「そうだな~、あのネオンサインと花が描いてあったやつが良かったかな。彼女はまいちゃんの絵が好きだって言ってたよ。広い部屋に住んでたらああいう絵を飾りたいなって。」「もうすぐまいちゃんも戻ってくると思うよ。」「そうか。でも今日はここ来る前にもいろいろ歩いて、彼女が疲れたって言うからさ。もうそろそろ帰るよ。まいちゃんによろしく言っといてよ。」「・・・わかった。きっと残念がるよ。」そんな話をしていたら、ちょうど別のお友達が訪ねてきたので、慌ただしく2人を見送った。エレベーターに乗り込む二人を目の端で追いながら、友達が元気よく話し始めた近況に相槌をうっていたが、全くうわの空だった。
2006.07.16
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地下の蕎麦屋であたし達は冷やしとろろ蕎麦を食べていた。彼は来ないとほとんど諦めてはいたものの、友達とのおしゃべりにも身が入らずに携帯電話の電波が悪いことが気になって仕方なかった。そば湯で割ったそばつゆのわさびが思いのほかツンと効いて、諦めと期待でいっぱいになっている心臓をシゲキした。小一時間くらい蕎麦屋にいただろうか。そろそろ戻ろうかということになり友達を駅の近くまで送って会場のある4階に戻るためにエレベーターに乗った。エレベーターが開くと何人か、降りるために待っていた人がいた。そのなかで、赤いTシャツを着た男の人が人なつこい笑顔を容赦なくこちらに向けてきた。・・・一瞬誰だかわからなかったが、確かに彼が立っていた。どうやら散髪に行ったらしく初めて見る短髪だった。そしてゆかちゃんが隣にいた。目が大きくはっきりした顔立ちの、でも人見知りで他を寄せつけないような潔癖さを滲みだしていた。以前、京葉線できっとそうだと予測していたひとがやはり彼女だった。
2006.07.09
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グループ展は7月の金土日の3日間で行われた。他の展示を見に来たお客さんも通りがかりに入ってくれたり、それぞれの友達がかけつけてくれるのでけっこうな賑わいになった。初めての試みだったけれど、たくさんの人に見てもらいたいという望みはかなえられた。・・・なんだか、純粋に好きなことをやって楽しいということは初めかもしれないな、と思った。岩崎くんは、日曜日にゆかちゃんと一緒に見に来てくれると言っていたが、午後3時を回ったけれど、まだ現れる気配がない。・・・だいたい彼女と来ると言ってもなんと言って連れてくるのだろうか?そもそもヤッちゃった女のところに彼女をつれてきて、彼自身は平気なんだろうか?彼女があたしのことを見て、なにか感づいたりする心配はないのだろうか?それとも、彼女を連れてくることによってゆかちゃんが本命だということをあたしにアピールしたいんだろうか?いずれにしてもどこかおかしいけれどおかしくても、彼女連れでも、かまわないから岩崎くんに来てもらえたらうれしいと思っていた。・・・でも、彼女が来たくないと言ったから来られなくなったのかも知れないし、夜更かしして出かけるのが億劫になったのかもしれない。もう、来ないだろうと思って見に来てくれたほかのお友達と遅いお昼を食べに出かけてしまった。
2006.06.20
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4枚目は美瑛のひまわり畑。北のやわらかい日差しに育てられているので東京の眩しいひまわりとは違って、おだやかな黄色をしている。5枚目は学校の中庭。日曜大工で作ったような木製のテーブルとブロックに板を渡しただけのベンチ。その上に桜の枝が影を落とす。スイセンやパンジーや・・・の鉢植えがたくさん置かれ、日の光を誇らしげに受けて、ゆれていた。描くのに疲れたとき、授業をちょっと抜け出して誰もいないその中庭を見下ろしていた。・・・学校というのは、いいものだ。お金を稼ぐことと自分のやりたいこととの狭間で悩みつづけていることから、『学ぶ』という大義名分のもとに束の間、開放してくれる。社会のキビシさから目を背けていられる隠れ処のようなものだ。昼下がりの中庭を眺めながら、そんなことを考えたりした。・・・岩崎くんのことを忘れていられるのは描いているときくらいかもしれない。
2006.06.08
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3枚目は、小さい頃花見に行った、地元の浄水場の絵を描いた。大人になってからも、帰省するたびにひとりで車を運転して行く場所だ。とてもよく手入れされた庭園だが、山の上にあり、いつもほとんど人はいなかった。桜の季節はもちろん好きだが、初夏の生命力に満ちた若い緑が非常に好きだった。気配が強烈に澄みきっていて、下草に映る木漏れ陽が風に揺れているのを見るとめくるめくような気持ちになった。都会にいると、人間のつながりがすべてのような気がしてしまうけれど、誰もいない山の上で、こんなにたくさんの美しい生命が躍動しているのだ。そんな感じを描きたいと強く思った。
2006.05.31
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2枚目は、新宿靖国通り。まだ終電前でいろんな人達があふれていて、その頭上に光り輝く居酒屋や、コーヒーショップや、エプソンや、カラオケショップの看板が、キラキラ万華鏡のようだった。一時の快楽を求めたりさびしさをまぎらわすために飲み過ぎたり心の奥の方で処理できずにいる想いをすべて受け入れてくれる街だと思った。欲望に正直で、おおらかで、ある意味潔い。なんだかそれは岩崎くんと似ていた。人混みは苦手だったはずなのに、今はそんな新宿が好きだ。
2006.05.20
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まず、描いたのは、『ハレルヤ』に向かうとき、地下の改札口を出て、地上に登る階段から見える青空。ほんの一瞬だけれどビルの合間から、大気圏の外側まで届きそうなくらい高い空が見通せる。このせまい東京でうごめいているあたしたちってとてもちっぽけな存在だなと感じる場所だ。
2006.05.15
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展示テーマは『風景画』に決まった。DMは、舞ちゃんとあたしが担当することになった。誰か1人の絵を使ったり、9人全員の絵をコラージュするのは今イチということで、シンプルに文字だけか写真にしようとの方針だった。展示テーマと全員の名前を、英語や漢字でレイアウトしたものや、学校や、その近くを撮影した写真に文字を載せたものを作成して次の話し合いに持っていったところ、あたしが撮影した写真を用いたものが使われることになった。その写真が予想以上に受けが良くて、なんだかうれしかったが、絵ではないのがちょっとフクザツだった。本番まであと1ヶ月位あるけれど、絵はなにを描こうか、それが問題だった。最悪、いままで学校の宿題用に描いた風景などもあるが、せっかくなんだから新しいのも描きたいなと思っていた。・・・そんな感じに日々の生活は、にわかに活気づいていった。バイトに絵に、とてもいそがしいのにぜんぜん平気なのが不思議だ。なにか、ちいさな目標でもそれに没頭できている間は、(生きている意味の見つからない焦燥感)とか、(漠然とした無力感)とか、(将来の不安)とか、(恋愛の悩み)とか全部忘れている自分がいた。(あたし、けっこう単純だな。)そう思った。でも、単純に生きているときの方がシアワセなんだ。たぶん。
2006.05.02
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絵の学校のお友達・舞ちゃんに誘われて、グループ展に参加することになった。初めての体験で、ちょっとドキドキしていた。舞ちゃんと、その同級のお友達・佐久間くんが中心となって準備は進んでいった。友達のそのお友達などに声をかけて総勢9名の参加者がなんとか決まり、顔合わせに、学校帰りのフレッシュネスバーガーに集まった。アート系の話し合いはただでさえ理論的ではないうえに、大抵、佐久間くんとそのお友達の野田くんはビールを注文するし、話はあっちこっちと気の向くままに飛びまくった。なかなかなにも決まらない。やらなきゃならないことは合理的に進めたいタイプの舞ちゃんとあたしにはこの能率の悪い話し合いが、カルチャーショックだった。・・・というか、ときにイラついた。特に舞ちゃんは、中心になって動いていただけにかなりのフラストレーションをおぼえたようだ。しかし、そんななかでも区の施設を借りて行うことや借りるにあたってのテーマを決定したり1人当たりの予算や、絵を展示できるスペースの配分やDM作成など、だんだんと決まっていった。
2006.05.01
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今夜、あたしは岩崎くんのおもちゃかもしれないけどそれでもいいと思った。彼とあたしと、めくるめくように楽しんだんだから、それでいいと思った。
2006.04.30
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その振動は、あたしの胸に触れるとくすぐったいような、心地よい水の流れのような刺激を与えるのだった。そしてそれは身体のなかを駆け巡った。岩崎くんが積極的だし、あたしが感じるのを喜んでくれるので(・・・なんかラクチン。)と思いながら彼に身を任せていった。さらにクリトリスからヴァギナへ、すべるように細やかな振動が伝っていく。身体の内部で、振動は腰のほうまで響いて、隅々まできれいサッパリ、緊張感を追い払ってしまった。なんか眩しい感じ。「・・・岩崎くん、あたしイッてしまいそう。」「え~っ、まだダメだよ。」彼はコンドームを装着し、あたしの中に入ってきた。ローションとローターの効果で全く痛みも感じずに、スムーズだった。ピストン運動されてもぜんぜん痛くない。彼の動きに身を委ねていると岩崎くんが、ふと動きを止めうれしそうに「見てみなよ、こんなに入ってるよぉ!」と言った。体勢的に、見づらかったけれど、どうやら彼のモノが根元深くまで、しっかりと入ってるようだ。「こんなに入ったの、初めてだねぇ」ってそれをうれしそうに報告してくれる岩崎くんがあたしはうれしかった。
2006.04.23
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(そんなこと言われてもなぁ、期待にそえるかどうか・・・。)ちょっと心配がよぎった。・・彼の手があたしの髪をなで、首筋から胸をさわると身体の中を南国の風が駆け抜けるようだった。彼の身体と触れ合うの、なんと気持ちいいことだろう。タイトの中に手をしのびこませ、太ももの内側に触れてきたので、あたしは彼の首に腕をまわし、再びキスをした。ローションを、彼は手に取りあたしの内股辺りから上の方へたっぷり広げていって、指先で攻めた。ちょっとヒヤッとしたローションの感触がいつもよりあたしを感じさせた。そして彼は、ローターを箱から取り出し電池を入れた。スイッチを入れるとモーターがまわって振動するしくみになっていた。その振動に触れると、どんな感じがするのだろうか。すごく感じちゃうのかな。それともあんまり感じられないのかな。好奇心と不安が混じり合っていた。
2006.04.15
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きれいめのラブホに入って、まずはシャワーを浴びた。彼が先にあがったので、ボディソープの柑橘系の香りに包まれながらのんびりと身体を洗った。酔いも少し抜け、気持ちよく風呂からあがると岩崎くんは、ソファで煙草をふかしながらテレビを見ていた。バスタオルを巻いただけで、一緒にビールを飲みながらひとしきりくつろいだ後、「ひろちゃん、スカートはいてよ。」と言うので、岩崎くんのシャツと先ほど買ったレザータイトスカートをはいた。パンティははかない。導かれるままにベッドに倒れ込み、キスをした。彼との抱擁は、南の島で過ごすバカンスのようだ。どこまでも青い空、どこまでも蒼い海、生きることの肯定、楽しむことへの肯定・・・。「今日はオレが攻めるからねぇ。」いままで、一方的に攻められた経験は少ないのでちょっと、ドキドキした。
2006.04.14
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明け方近くの歓楽街を通り抜け、大久保辺りまで歩き、洋服屋さんに入った。そんな時間でもやっているショップがあるとは驚きだったが、お値段も驚く位お安かった。2~3軒見てまわり何着か「これいいんじゃない!?」とか言いながら試着して、レザーちっくなミニスカを買った。明け方近くの歓楽街を通り抜け、大久保辺りまで歩き、洋服屋さんに入った。そんな時間でもやっているショップがあるとは驚きだったが、お値段も驚くほど安かった。2~3軒見てまわり何着か「これいいんじゃない!?」とか言いながら試着して、レザーちっくなミニスカを選んだ。店を出て歩いていたら、岩崎くんが、「ひろちゃん、スカート履いてよぉ。」と言うではないか。(なんでだよ!)と普段なら思うところだが、こんな明け方近くで人通りも少なかったし、酔って気が大きくなっているので建物の間で、履いていたフレアースカートの下からレザータイトを履いてフレアを脱いだ。そんなこすらスリリングでなんだか楽しかった。お酒と彼のマリョクだと思う。そして、ドンキホーテに行き、缶ビールやつまみと、ローションとローターを買った。知らなかったけど、ドンキホーテには、食品からブランド品・衣類・アダルトグッズまでなんでも揃っていて、(・・・すごい!)と思った。
2006.04.10
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「このあとどうする?」まだ始発までには少し時間があった。「・・・どうしようかな。」岩崎くんのとなりで眠りたかったけれど自分からは言えなかった。「泊る?」「・・・そうだねぇ。」「じゃ、決まりね!」花園神社を抜け、ゴールデン街を通り抜けてラブホ街へ向かっていた。「じゃあさぁ・・・」・・・なんでも、彼はレザーのタイトスカートや、ショートパンツをはいた女性を見るととても興奮するそうだ。そういえば、以前にもそんなこと言っていたっけ。ようするにそういうのフェチっていうんだ。「ひろちゃんといっしょにそういうのやってみたいんだけど付き合ってくれる?」今日は楽しくお酒が飲めていい気分になっていたのでそのくらいお安いご用と思った。
2006.04.09
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来たときにいたサラリーマンや広告系2人組はすでに帰り、かわりに、白いセクシーなスーツをきた女性が、マスターのヒロちゃんの正面に座っていた。キュッと引き締まったお尻が魅惑的なひとだ。彼女はどうやら、ヒロちゃん知り合いらしく、ときおり小声で言葉をかわしていた。「あの娘、風俗で働いてる娘で、どうやら、ヒロちゃんに気があるみたいなんだ。」岩崎くんが、後からそう教えてくれた。どうりでそそる感じがすると思った。岩崎くんはいつものように、楽しそうにいろいろな話をしてくれた。ヤクルトスワローズのファン感謝デーに行ったときの話や、天然キャラの森田さんが「さつま揚げ2つ」の注文を、「本日のパスタ2つ」と勘違いして、作り上げてから、自分で気づいてさりげなく隠した話とか。最後にキューバリバーを頼むことにした。「オレも同じのにしようかな。」彼は言った。なぜだか、ここのキューバリバーはピリリと喉に沁みる。今日はそれも心地よかった。
2006.04.08
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『炙りや』を出て、歌舞伎町から三丁目方面をブラブラ歩いていた。もう午前3時近いというのに、この街はまだまだ人であふれている。『Clarks Dale』の扉を開けると、ラフなファッションの男性2人組とサラリーマン風の1人、薄暗い店内に佇んで見えた。あたし達は、その間の席に座った。マスターのヒロちゃんはあたしたちと同い年らしいが、いまだにとんがった性格をしていた。・・・こういう人が、真にワルなのかも知れない。いかにも普通で、美人でも色気がある訳でもないあたしみたいなのはバカにしているような雰囲気があった。岩崎くんは一見普通に見えて、実はまったく破天荒な男なのでヒロちゃんとは、ウマが合うのかも知れない。しょっちゅう飲みにきているようだった。あたしは1人ではとうてい来る気にはなれなかった。日曜日なら、担当しているユウちゃんが、にこやかで人当たりもやわらかなので、1人でも来たいと思ったけれど。岩崎くんには、2つ年下の妹がいた。彼女は、中学時代は岩崎くんよりも非行に走っており、自宅で友達とシンナーを吸ったり、恐喝をして警察に補導されたりしていたそうだ。そんな彼女も、いたって普通な広告会社のサラリーマンと結婚していまは2児の母だそうだ。妹さんに比べれば、岩崎くんは、表立っては派手な行動はしていなかったらしい。でも影で暗躍していたようだ。「いまは時効だと思うけれど、ホントひとには言えないようなことしてたからな。」・・・なにをしていたんだか、興味津々だ。
2006.03.21
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彼は、きっと女の子のキャパは非常に広いと思う。なんせ、3ケタなわけだし。来るもの拒まず去る者追わなさそうだし。お勉強とか嫌いなタイプだけど女の子を喜ばせる方法とか、相手に合わせる術とか、そういうところはとっても長けていた。でも一番の才能は、なんでも楽しんでしまえるところだ。その自由さと広さに、あたしは、どうしようもなく魅かれていたんだと思う。
2006.03.20
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彼は、お酒はだいたいなんでもイケた。芋焼酎は、匂いが苦手だと言っていたが、それ以外のお酒は、日本酒も、焼酎も、ワインも、ウイスキーも、OKだった。特に好きなのは、ジンと日本酒みたいだ。食べ物は、案外苦手なものが多くてというか、ネギとタマネギが嫌いなのでそれらの入った料理がたくさんあるということなんだけれど。(重要な基本食材なのに、しかも調理人のくせに、ネギ嫌いで大丈夫なのか)と思うけれど。あと、甘いものも全然ダメだ。1口も食べないくらい必要ないらしい。コーヒーや紅茶もほとんど飲まない。甘いものは嫌いだけれど、コーヒーには砂糖とミルクをいれる。好きな食べ物はチーズがトッピングされたようなものとか、イタリアンはいろいろ好きみたい。あと、竹輪のテンプラとか、練り物系も好きみたいだ。よく、居酒屋で注文している。あたしは、お酒は、とっても弱くて、日本酒やウイスキーはほとんど飲めない。ネギやタマネギは大好きだ。サブウェイでタマネギを抜いてもらったり、そばの薬味のネギを入れないなんて、気が知れない。毎食デザートが欲しいくらい、甘いものは大好きだ。お酒がダメなかわりに、コーヒーや紅茶は大好きだ。でも、チーズがトッピングされたようなものは大好きだ。イタリアンも好き。
2006.03.18
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その夜は、たしか水曜日だったと思う。思いがけず、あたしにとってはインパクトの強い、長い夜のはじまりだった。『ハレルヤ』を終え、どうやら彼女とケンカしているらしい岩崎くんと新宿は歌舞伎町の『炙りや』という居酒屋に行った。暖かい季節になってきていたので仕事後のビールは身体に沁み込む感じがした。「ここ、料理がけっこう美味しいんだよ。」彼が言う通り、アボガドロールもポテトのチーズ焼きもアジのお造りも、どれもうまかったし、付け合せや盛りつけもよかった。エビのマヨネーズ炒めは、彼の好きな一品だった。メニューにそれがあると、いつも注文していた。ここのは、エビもプリっプリだ。
2006.03.17
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そういえば、高校時代、よく渋谷で遊んでいた彼は、マクドナルドなどで、店に入って最初に目が合った娘に突進して行くという方法でナンパをしていたらしいと言っていたから、そういう人から見たら、躊躇し過ぎになるのかも知れない。それにしても、「腹をすかせたオオカミ」とか「狙った獲物は絶対逃がさないハンター」のようなどうもうなナンパ法だと思った。「でも、案外確率高いんだよ。」相手の娘も目が合った瞬間にある種の運命を感じちゃうのかも知れない。袖触れ合うのも多少の縁と考えれば、たしかに、縁があると言えなくもないし・・・。・・・岩崎くんのその積極性を少し分けてほしいくらいだ。
2006.03.16
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舞ちゃんとあたしには、ケンちゃんが1番人気だったと伝えたら、「なんだよ、言ってくれれば良かったのに。」と彼は言った。「・・・だって、岩崎くんがケンちゃんは松島さんみたいな色白でとってもスリムな娘が好みだって先に聞いちゃったからさ。」「そうだったっけ?でも、そんなことかまわず、いいと思ったら行っちゃわなきゃ。」などと岩崎くんらしいことを言った。
2006.03.15
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帰りの電車で、合コンのときの話をした。岩崎くんが話してくれたことには、佐野くんには実は胸の大きな彼女がいるそうだ。昔からそういう女性に魅かれてしまう性分らしい。(なんだよ~、合コンなんだから、ほんとに彼女いない人にしてよ~。)と、思ったが、佐野くんが足りないメンバーを集めてくれたらしいし、仕方がないか。
2006.03.14
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『ハレルヤ』は、ビヤホールか居酒屋のような店なので、冬は牡蠣鍋やおでん、春は筍の刺身やふきのとうの味噌和えなど、およそ洋食レストランらしからぬメニューも登場した。最近春だからなのか、ときどき(1時間過ぎてるのに、岩崎くん休憩から戻ってこない)と思っていると、あわてて寝起きの顔でタイムカードを押しにきたりして、30分ぶんの時給を損したりしていた。松島さんに、岩崎くんから返してもらったお金の半分を渡すと、「ひろちゃん、つおいねぇ。」と言われた。そうなのか、と思った。
2006.03.13
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この日の岩崎くんは、少し調子に乗りすぎていた。松島さんが引くような発言も少しみうけられた。翌々日、『ハレルヤ』で顔を合わせた岩崎くんはバツの悪そうな顔をした。あたしも、怒り心頭だったので仕事帰りの喫煙所で黄色いパーカーで一服していた岩崎くんに、「自分がなにしゃべったか覚えてるの?」「・・・楽しくない飲みなのに、ワリカンは納得いかないんだよね。」と、詰め寄った。また、バツの悪い顔をしていたから「もしかして、覚えてないの?」と聞くと、「・・・途中から、ちょっとな。」どうやら、酔っぱらって記憶がないらしい。初めて岩崎くんと飲みに行った次の日もそういえばバツの悪い顔していたなぁ、と思い出した。(そうか。そういう顔をしたときは途中から記憶がないときなんだ!)初めて納得がいった。それにしても、一昨日の飲みは岩崎くんひとりで楽しんじゃってる感じでタダでさえ、ストレスがたまっていたから飲みに行ったのにさらにストレスがたまった感じで思い出すほどにムカつく。「いっつも、岩崎くんがたくさん飲んでるだから金返してよね~!!」と、涙目で怒りをぶちまけた。そうしたら、「・・・これでいいか?」と1万円を財布から出した。案外、あっさりと折れたのでビックリしたが、松島さんとあたしが払った額とほぼ同じだったので、とりあえず、スッキリした。
2006.03.12
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松島さんは、生ビール、岩崎くんは、ギネス、あたしは、ジン・フィズで乾杯した。松島さんは、『ハレルヤ』で3年くらい前から働いていて、岩崎くんはもっと長く、5年くらいいるので、あたしが知らない時代の人間関係についても話題になった。以前、岩崎くんが付き合っていた彼女が、すぐ近くにある系列店で働いていたそうだ。今はもう辞めていないようだが。その彼女は、松島さんの元カレが、松島さんと付き合う前に好きだった女の子なんだとか。社員の宮島さんは、昔、高倉さんと付き合っていたかとか。岩崎くんと2人で飲みに行ったときは話す相手は、必然的にあたしになるわけだけど、今回みたいに3人で、しかもバーテンの娘とも親しい店だと松島さんに気を使って話を振り、お店の子に説明し、しかも、女の子に囲まれてイイ気になってあたしをオチに使ったりした。最初は楽しく話を聞いていたが、岩崎くんが、2~3回カチンと来ることを口走ったのでだんだんストレスがたまってきた。親しいから後回しにされるということもあるけれど、あたしだって、発散したくて飲みにきたんだから楽しくなかったらやりきれない。でも、松島さんや店の女の子は楽しげに聞いているのでこの雰囲気をブチ壊す訳にも行かずとりあえず、愛想笑いで過ごしていた。
2006.03.11
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松島さんもいるので、安心して肩肘張らずに、でも品よく飲めるショットバー『24th street』に行った。彼女は焼酎好きだし、普段は安めの居酒屋によく行っていてこういうお店は初めてのようだった。岩崎くんは、家から近く常連なので、バーテンの真子ちゃんやゆきこちゃんからいつもチヤホヤ扱われていた。彼自身、いつも陽気に飲むたちなので、店員さんも、他の難しいお客さんの相手をするより岩崎くんと軽口たたいてるほうが気が楽で楽しいのかもしれない。カウンター席に、彼を真ん中にして、右に松島さん、左にあたしが座った。
2006.03.10
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「いいけど。」「わーい。」「松島もいたよな。さそってみたら?」「え、いま出たところだから・・・、じゃあ、ちょっと待ってて!」ロッカーを出て1分くらいの、改札手前で松島さんに追いついた。「松島さん、今日飲みいきませんか?」「今からかぁ・・・どうしようかなぁ。でも、明日仕事夕方からだし、行っちゃおうかな。」松島さんは焼酎が好きで、結構、仕事帰りに彼氏とかと飲みに行って、朝まで飲んで、あまり眠らずに次の日も出勤したりしていた。仕事同様、遊びにもアグレッシブな人だった。『ハレルヤ』は、平日は23時閉店なので、それから飲みに行くということは、当然始発コースなのだ。
2006.03.09
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『ハレルヤ』の帰り、松島さんと店をでて新しくなったロッカー室に向かうと男女共有スペースにできた喫煙所で岩崎くんが一服していた。今日は、紺色のトレーナーを着ている。いそいで着替えて行ってみると、まだいた。となりに座ってバージニアスリムライトを1本吸った。その頃あたしは日に2~3本くらい喫煙するようになっていた。「ホステスがよく吸ってる銘柄な。」彼はそんなこと言った。ストレスがたまっていたので「今日、飲みいこうよぉ。」と言ってみた。
2006.03.08
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そんな感じなので、あたしは、財布はロッカーに置いてきて、その日使う現金だけ小分けにして持つようにした。他の人達も、忘れると困るので貴重品袋に預ける人は少なくなった。・・・結局、お金を盗んだ犯人はわからないまま日々は流れていった。状況的に内部の犯行の可能性が高いため、むやみに疑えないし、深追いしても後味が悪いことになるので、再発もなかったし、まぁ、これで良かったのだろう・・・。
2006.03.07
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何人も被害者がいたので、店長は、貴重品袋を作った。出勤したら、財布をその中に入れてレジをあずかる社員が、その下にある金庫で管理することになった。最初はみんな財布をあずけたが、そのうち、帰りに受け取るのを忘れて店を出て困る人が何人もあらわれた。閉店後の裏口は、外からは戻れない構造になっているので、店に電話をして中から開けてもらわなければ中に戻れない。もしみんなが店を出た後だと次の日まであきらめたほうが早くなってしまう。レジ担当の社員が、忘れている人がいないか確認してくれることもあったが、閉店作業のあわただしさにまみれてしまうことも多かった。あたしも一度忘れて、改札で定期を出そうとして初めて気づいた。まだ店に人がいたからなんとかなったけれど、もうちょっと遅かったら、お金も定期もなくて途方に暮れるところだった。
2006.03.06
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お客さんや外部の人が盗むということは場所的に不可能だ。とすると、やはり、内部の犯行だろう・・・。最近『ハレルヤ』に来た新しい人は、2週間くらい前に入ってきた朝番の島津くん。3月から転属になってきた社員の浅沼さん。スられた人は、みんな夜勤務なので、犯行はやはりランチタイムから閉店して帰るまでの間だろう。だとすると、朝番の島津くんには無理そうだ。浅沼さんは、仕事もままらなないほどのんびり屋なので常に人が行き来しているところで財布を物色したりするのは出来ないだろう。動機のありそうな人は、病院通いで体調もイマイチだし、お昼もすごく節約して金銭的に逼迫している清水さん。経済的に余裕はなさそうなのに、バリバリ働いているのは馬券を買うためかと思うくらい、毎週真剣に競馬新聞を読んでいる古市さん。あと、調理場の森田さんはプライベートが謎につつまれていて、どうやら借金があるとの噂もある。この3人には経済的動機がありそうだ。荷物を置いてある棚には、毎日新聞各紙が置いてあり、従業員が休憩のときに読んだりしている。たまに、そこでスポーツ新聞選びに没頭している岩崎くんや佐々木くんにも可能性はあるかも知れない。
2006.03.05
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次の出勤日、社員の松野くんに何となく言ってみたら、「ひろちゃんも!?俺もなんか最近、札が減ってるなぁってことあったんだ。」今年から『ハレルヤ』に転属になってきた社員の亜美ちゃんも「え~っ、あたしもだよ!!」と言うことになり、他にも聞いてみると、2~3人、そういう人がいた。これは、明らかに誰かにお金を抜かれているということだろう。みんな出勤すると、客席からは影になっているけれど、料理をとりにいったり、食器を下げたりするときに常に視界に入る棚に、荷物を置いていた。お客さんから呼ばれないときに待機している位置からも良く見える。だから、そこにある荷物から財布を物色してお札だけそっと抜き取るなんて、不可能に思えた。どんなにアイドルタイムで人手が少ないときでも、開店前や閉店後の作業中でも、いつ、誰が通るかわからない。明らかな空白の時間は、存在しないように思えた。
2006.03.04
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ここのところ、毎冬2回ほどニセコへスキー遠征している。・・・と言っても遊びだけれど。地元なので、やはりスキーは北海道に帰らなきゃ気が済まなかった。そして、そのたびに『ハレルヤ』のみんなにお土産を買ってくるのだが、圧倒的1番人気は六花亭の『マルセイバターサンド』だった。『白い恋人』や、『夕張メロンゼリー』など、いろいろ買ってきたこともあったが、それがわかってからは、バターサンド一本やりだ。好き嫌いが激しく、甘いものに非常にうるさい清水さんも納得の味だ。初めて買っていったときに、「お金払うから、こんど北海道帰るとき10個入り2つ買ってきてもらえる?」と言われたので、いままでなにげなく食べていたマルセイバターサンドを大いに見直したものだ。「冷蔵庫でよく冷やしてから食べた方がおいしいよ。」そんなことも教えてくれたりして、地元のあたしよりも愛をもって味わっているようだ。岩崎くんは、甘いものに全く興味がないので、調理場の中では、お酒もイケるが甘いものもOKな鈴木チーフとお酒が飲めなくて甘いものが好きな菅野さんと、そのときどきの洗い場のおばさんだけにお裾分けした。4月に入り、歓迎会などで『ハレルヤ』は賑わっていた。平日の夜は、背広姿のサラリーマン男性がお客さんの95%を占めるくらいのビヤホールと化していた。「とりあえず生中10個ね。」とか言われるので、みんな自然に生中(生ビールの中ジョッキ)をどんどん速く注げるようになっていった。そんなある日、仕事帰りのコンビニでお金を払おうとしたら、たしか3万はあったはずなのに1万円札が1枚しか残っていなかった。(あれぇ・・・?)たしか、先月もそんなことがあった。そのときは自分が忘れていただけかと思っていたのだが、今回は、明らかに万札が少なくなっていた。
2006.03.03
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新宿駅で、なんとなく2人だけで話してから帰りたいなあと思っていたら、舞ちゃんが「コーヒー飲んでく?」と言うので、彼女も話したかったんだなぁと思いつつ、駅地下の喫茶店に入った。「悪い人じゃないよね。」タバコをふかしながら、舞ちゃんは岩崎くんのことをそう言った。「話だけ聞いてるときは、どんなとんでもない男だろう?と思ってたけどさ。」たしかにそうだろうな、と思った。「舞ちゃんは誰がいちばんタイプだった?」「あたしケンちゃんかなぁ。」「あたしも。」いちばんクールでオトナな雰囲気のケンちゃんが舞ちゃんも気に入ったようだ。岩崎くんから「ケンちゃんのタイプは、細くて色白な娘なんだ。松島とかいいかも。」なんて聞いていなければ、もうちょっと積極的に話しかけたのに・・・なんて思った。ケンちゃんに、カラオケの時「岩崎、今日はシリとかださないでまともだなぁ。・・・2人でカラオケ行ったことあるんでしょ??そのときもこんな感じだった?」と聞かれたから、多分、2人でよく遊んでいることも知っているだろう。岩崎くんが、あたしとのことあけっぴろげに全部話してることだってあり得る。あたしが舞ちゃんに話しているみたいに。そんなケンちゃんにアタックするのは、やっぱり難しいじゃないか。そりゃあ、あたしだけを愛してくれる彼氏がいたらすごくいいと思うけれど、でも、手当たり次第、積極的に迫りたいほど、オトコがほしいわけでもないし・・・。そんなこと言ってるから彼氏できないのかな。。。「佐野くんも藤澤くんも楽しい人だったけどね。」とっても楽しい人達だし、なんといっても岩崎くんより常識の範疇できちんと地に足付けて生きている気がするから、実際、結婚とか考えたお付き合いをするなら、もちろん彼等の方が良いに決まっている。なのに、あたしは常識なんて全く意味を持たない岩崎くんのような男にどうしても魅かれてしまうのだから、やっかいだ。(困ったなぁ)と思いつつ、コーヒーをすすった。
2006.03.02
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岩崎くんは丸の内線の四谷辺りで見た白い光の話をした。あたしはその話を聞くのはは3回目くらいだから、同じところで、同じように間をおいて盛り上げようとしているな、とかそんなこと思いながら聞いていた。話が鉄道にむいたのをきっかけに、彼のトークに火が付いてしまったようだ。寝てないので、ハイテンションになってきたのかも知れない。『電車でGO』が異様に好きなことは知っていたが、ほんとうに鉄道オタクだった。酔っぱらいで夜の街が似合う、いわゆる鉄道マニアの人達とはまったく違うイメージの人間なのでなんだかしっくりこないのだけれど、どうやら、実際には行かないのに時刻表を見て乗り継ぎの予定を立てたり、車両ナンバーとか系とかチェックしてたり、そこの工業地帯で働いている人しか改札から出られない駅にも行ってみたりもしているらしい。みんな、寝てないせいかニコニコしながら鉄道話を聞いていたが、(なんか長くないか・・・)と思い始めた頃、佐野くんが「・・・っていうか、もう鉄道の話はいいだろ。」と、彼の暴走を止めてくれた。あたりさわりなくいいタイミングで止めてくれたのでさすが、付き合いの長い親友だと思った。20歳位の頃、みんなで湘南にナンパに行ったことや、その中のひとりはその時ナンパした娘とずっと付き合っていて結婚まで行きそうだとか、岩崎くんを砂の中に全部埋めて女の子が通りかかったら驚かした話とか、そのあとしばらくは目から砂が出てきた話とか、ケンちゃんは、自分が暮らしている以外に膨大なレコードコレクションのために1室借りて常に空調を効かせてあるとか、修学旅行で先生にみつからないようにお酒を買い込んだ話とか。・・・午後から予定のある人もいるのでもうそろそろお開きの時間になった。夜じゅうずっとみんなと一緒にいたのでなんだか解散するのがさみしかったけれど、もう、これ以上遊びまわる元気も残ってなかったので徒歩や地下鉄の男性陣と別れて、舞ちゃんと新宿駅に向かった。気持ちのよい晴れた日だった。こうして人生初めての合コンは終わった。
2006.03.01
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ジョナサン新宿一丁目店は、隣のヘッドパワーというライブハウスでパンク系のバンドを見た帰りのファンでごった返していた。みんな髪がパッツンだったり、アイメイクガッツリだったり、ファッションもスゴかったが、楽しげにファン同士の交流を繰り広げていた。そんな不思議な空気のなか、あたしたちは窓際の席でスクランブルエッグセットや、パンケーキなんかを注文した。いつもはきっとみんな、朝食なんて食べないけれど。岩崎くんは、もちろん、モーニングでなくビールとつまみを注文した。みんなタメだし、若くもないから合コンっていうウキウキ感ももうなくてマッタリと和んでいた。男性陣は、幼なじみだけあって昔話に花が咲いた。最初、藤澤くんも、佐野くんや岩崎くんと一緒にバンドをやっていて、しかもドラムだったこと。でも、すぐ辞めちゃったこと。藤澤くんは高校時代、岩崎くんと一緒に六本木で飲み歩くようになってお酒に興味を持ち、バーテンのアルバイト始めたこと。それが、もうすぐ自分の店を持つことにつながったということだった。
2006.02.28
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ゆかちゃんであろう人物を発見できた満足感と、彼女が岩崎くんの恋人だということへのしっくりいかない感じが混在していた。もっと、いかにも岩崎くんと似た雰囲気とか、個性的とか、共通点があれば納得できたのに。なんだか余計、あたしの心に火がついてしまった。・・・・・藤澤くんは、さすがにバーテンダー暦が長いだけあって、場を盛り上げるのがとてもうまかった。福山を物まねで歌ったり、おもしろい話をいろいろ聞かせてくれた。カラオケも終盤になると、岩崎くんも(どうせだれも聞いちゃいない)と思ったらしく常にエンターテイメントな彼にはめずらしく、孤独に熱唱したりしていた。そろそろ5時をまわったようだ。カラオケ店を出ると、空が白々と明るくなっていた。長野さんと佐藤さんは、電車も動き出したので帰ると言う。途中から、2人の世界に入ってしまっていたのできっと合コン、イマイチ楽しんでもらえなかったんだろうけれど、まぁ仕方ないな・・・。残った6人は、気づけばみんなタメだ。岩崎くんと佐野くんとケンちゃんと藤澤くん。みんな四谷の小中学校時代の同級生だった。あたしは、小中時代の友達なんて全くの音信不通だから、大人になっても、こんなふうに仲良しでいられるなんてとてもうらやましかった。幼なじみの男性陣4人と、舞ちゃんとあたしでまだ人のまばらな靖国通りを歩いた。
2006.02.27
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八丁堀で彼女は電車を降りた。あたしも急いでホームに降り立った。一定の距離を置きながら、見失わないように後を追った。エスカレーターを上り、JR改札を出たところで、彼女はまっすぐに日比谷線には向かわずに、トイレに入ってしまった。その辺りは、券売機のある狭い通路だし、ただ立ち止まっている人は誰もいないところで待ち伏せには都合の悪いところだった。なにげなく、券売機のあたりを行ったり来たりして彼女が出てくるのを待っていたがなかなか現れない。・・どうやら、人混みにまみれて見失ってしまったらしい。できれば、銀座のお店に入るところまで見届けて確証を得たかったのだが、やはり素人の尾行だから、うまくはいかなかったようだ。でも、ジャストな時間にあらわれた同年代の女性は他にみあたらなかったし、しかも身長や顔立ちも彼から聞いていたことにあてはまっていたし、乗換の駅も合っているのだから、まず90%くらいの確率で、彼女がゆかちゃんだろう。
2006.02.26
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2ドアほど離れたところに、彼女はいた。いくつか空席もあったが、立ったまま窓から外の景色を眺めている。ショートカットが伸びてきたくらいの髪型で、後ろが少し長いので、ゴムで束ねていた。目がぱっちりと大きく色白で丸顔だ。身長は160センチ以上あるだろう。茶色いコートに黒のズボンを履いていた。よく見たい気持ちを抑えて、チラチラっとさりげなく、視線に気づかれないように観察していた。かなりの条件が当てはまっていたから、多分彼女がゆかちゃんなんだろうな。でも、岩崎くんのイメージとはまったく相容れない印象だ。彼女は、潔癖というかスキがなさそうというか、むやみに人に近づいてほしくないような雰囲気を醸し出していた。あの感じだと、岩崎くんがゆかちゃんに隠れていろんな女の子と飲みに行ったりエッチしちゃったりしていることも気づいていないのかも知れない。気づいているのに受け入れているようなおおらかさとは正反対の、まっすぐな生真面目さを感じた。だとするとちょっとヤバいかも。“あたしが”ではなくて、“彼と彼女の関係が”だ。・・・でも、まだ、彼女が100%ゆかちゃんだと決まった訳ではない。とりあえず、次は八丁堀で日比谷線に乗り換えるかどうかだな。
2006.02.25
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そこであたしは何をしたかというと、オーソドックスに待ち伏せだ。ゆかちゃんはあたしの顔を知らないから、恐れることもないのだけれど、あたしもゆかちゃんの顔を知らないので、暖簾に腕押し状態で、全く見当がつかないかも知れない。そんな期待と不安が入り交じった気持ちで、葛西臨海公園駅に降り立った。30分ほど、駐輪場にそれらしいものはないか探したりしたが、自転車は数えきれないほどあり、しかも名前の書いてあるものはごく僅かなのでこの方法では手がかりは掴めないようだ。あとは、1つしかない改札の脇で、それらしい人が通らないか、うろうろしながら見ていた。銀座で17時から働くには、遅くとも16時19分東京行きに乗らなくてはならないだろう。もうそろそろ、タイムリミットだ。半分諦めて、ホームに行きその電車を待っていた。電車が到着し、ドアが開いて待っていた人達が乗り込む頃、階段を駆け上がってきて電車に駆け込む女の人がいた。歳の頃は、あたしと同じくらいに見えた。急いであたしも電車に乗り込んだ。
2006.02.24
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いままで、岩崎くんから聞いたゆかちゃんの情報をまとめると、・週6日、日曜以外は夕方から銀座の和食店で働いている。・住んでいるのは京葉線の葛西臨海公園。・年齢は、あたしや岩崎くんと同じ。・身長は、あたしより大きくて、きっと160センチ台。・昔は45キロくらいでとても痩せていたが、最近太って50キロを越えたらしい。・駅からは、自転車で移動。・誕生日は10月11日。岩崎くんとちょうど1ヶ月違い。・彼とぜんぜん違って濃い顔らしい。・髪は、彼好みのショートにしていたが、最近伸ばし始めた。・・・そんなところだな。
2006.02.23
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岩崎くんの、鮮やかな山吹色に近い黄色のトレーナーは彼女からのバレンタインの贈り物らしかった。胸に簡単な線画のイラストが入っていてそれが、ちょっとあたしたちの年齢にはかわいらしすぎると思ったが、岩崎くんのキャラクターには合っていなくもない。彼女は色違いで黒を持っているらしいが、あまり似合わなそうな気がする。岩崎くんと違って目がぱっちりと大きくて濃いめの顔立ちだからだ。なぜ、あたしはゆかちゃんの顔を知っているかと言うと、・・・じつは、岩崎くんのことが大好きになってしまってから、彼女はどんな子なのかすごく気になって、こっそり見に行ったことがあるのだ。
2006.02.22
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