そよかぜ

そよかぜ

第1話




第1話始まり



風の国亞龍宮謁見の間

「王よ、貴方は既に用済み。最早生きている必要は無いのです。」

「貴様、我に刃向かうというのか!」

真夜中の謁見の間に2人の男の声がこだました。

「私の本性を知った今貴方様を生かしておくわけにはいかないのですよ、お許しください」

「うぬぬ、我とて王だ。簡単にはやらr」

ザクッ!!

「貴方としゃべっている暇さえ惜しい・・・消えろ。」







アステマ王国首都エレヘム


「号外!!風の国の絶王が暗殺されたよ!」

アステマの首都エレヘムの賑わう市場通りを号外を撒き散らしながら青年が駆け去った。

「絶王暗殺される。下手人はアステマの刺客か?っか、こりゃ大変だ。」

地面に落ちている号外を1部拾いながら読み上げた。

「どうする?皐月?」

「どうするもこうするも、とりあえず王様に会わなきゃ何にも始まらないでしょ」

号外を拾った少年の隣に同じくらいの歳の少女が立っていた。

「でもさ、あの城すっげ~警備厳重そうだぜ?入れるか?」

少年はエレヘムの中心にある巨大な城を見上げていった。

「別に、あたし達だけじゃないんだからさ。夜まで待てば時雨君に会えるでしょうし。」

「時雨なら簡単だな。安心したよ。」

2人は笑いながら賑わう市場の中へと消えて行った・・・。




アステマ王国エレヘム城謁見の間

「どういうことだ!!わが国が刺客を送ったという証拠はあるのか!」

「そんなことはどうでも良いこと!風の国の侵攻を止めることが最優先だ!」

「刺客が送っていないことがわかれば風の国は侵攻をやめるはずだ!!」

「何故そうだと言える!風の国の陰謀かもしれんのだぞ!!」

謁見の間では武官と文官の果てしない話し合いが行われていた。

王は眠ったように黙ったままそれを静かに聞いていた。

「いい加減にせんか!王の御前であるぞ!」

文官のトップらしき老人が一喝すると場が一気に白けた。

「アステマ王、ご意見をお聞かせください。」

老人が王にそう言うとアステマ王は静かに口を開いた。

「・・・・・・待つ。」

アステマ王はそう一言言うとすぐに自室へと消えて行った・・・。

残された群臣達は唖然としたまましばらく無言の時が流れた。



「待つとは、どういうことか。誰か来るとでも言うのか?」

武官の一人が言い出した。

「ふん、そんなことは私こそ知りたいな。」

「ローガス将軍は何か知っておりませんか?」

武官の問いかけに武官のトップローガスは無言で首を横に振った。

「では、レイアス卿はお知りに?」

同じ文官が今度は先ほどの老人レイアス卿に同じ問いかけをした。

「わしもそのことについては何も聞いておらん。兎に角、今は待つしかないであろう。」

レイアス卿も困った顔をしながら答えた。

「とりあえず、王も下がられたことだし、今日の会議はこれまでじゃ。」

そう言われると群臣は次々と退出して行った。






~夜~エレヘム城城壁付近


「なあなあ、マジで忍び込むの?」

あの市場の少年が小さな声で囁いた。

「私たちが堂々と正門から入れるほど身分が高いとでも?」

市場の少女が呆れたように言った。

「だって、俺らは他国の使者だぜ。何でいけないんだよ。」

少年は不服そうに愚痴を漏らした。

「あのねぇ、私たちはジイヤの秘密命令で来てるの。だから、公の場に出ちゃいけないのよ。」

少女は少し切れ気味だった。

「そんな切れるなよ。俺だって好きでこんなことやってるんじゃないしさ。」

「じゃあ愚痴ばっかり言わないでちょうd」

「五月蝿いぞお前ら。見つかったらどうする!!」

今まで座りながら静かに何かやっていた少年が2人の頭を叩いた。

「お前らな、ホントに自分達の仕事わかってんのか?」

「・・・ゴメン。」

2人は気まずそうに謝った。

「ほら、準備できたからさっさと上るぞ。」

3人は静かに王の部屋の窓までかかっている縄を上っていった。



「ところでホントにあの部屋がアステマ王の寝てる部屋なのか?」

縄を半分ぐらい上ったところで少年が囁いた。

「紅、君は僕を馬鹿にしてるのかい?」

時雨がムッとした様に答えた。

「そうよ、時雨君はあんたとは違うの。」

皐月も時雨の肩を持っている。

「なんだよ、2人して。これじゃ俺が悪者じゃねえか。先行ってるぜ。」

紅は拗ねて一人でどんどん上っていってしまった。

「ったく、紅ったら。まだ子供なんだからぁ。」

皐月が紅を追いかけて行こうとした瞬間だった・・・

「誰だ!!そこに居るのは!!」

闇を切り裂く一線の光の先に衛兵が一人立っていた。

「しまった、見つかった!!戻れ!」

時雨は大声で叫んで紅を呼び戻そうとしたが、既に3人は光にかんかんに照らされていた。

「時雨君?紅?何処いるの?」

少し下のほうから皐月の声が聞こえる。

しかし、急な明かりに3人とも目をやられて自分のいる位置さえままならなかった。

「くそっ、強行突破するぜ!」

上のほうから紅の声が聞こえた。

「事を荒立てるな!俺たちの任務を忘れたか!!」

時雨が精一杯の声で紅に呼びかけた。

「じゃあどうすりゃ良いんだよ!見つかっちまったんだぞ!」

紅は語気を強めて叫んだ。

「ここは大人しく捕まろう。これ以上事を荒立てちゃダメだ。」

時雨はやっと目が馴れ始めて紅の姿を補足出来た。

時雨は一気に縄を伝って紅のところまで上ってきた。

「捕まるのは一番不味いだろ。それこそ国と国の問題になる!」

「違うんだよ。捕まればアステマ王に会える筈だ。その時密書を出せば済む事だ!」

時雨は早口に紅を説得した。

「でも、戦わずに捕まるなんt」

「衛兵を斬ったらそれこそ問題だ!皐月は既に捕まってる。」

時雨は紅に言い訳する暇を与えなかった。

「後のことは光に任せよう。今は何もしないのが一番だ!」

時雨の説得に納得したのか紅は縄を降りていった・・・。








エレヘム城地下の牢獄



「で、どうするんだこれから?武器とか全部取られたぜ?」

紅はさっきからまだ不服そうに時雨に突っ掛かってくる。

「でも密書は無事だ。これさえ見つからなければ後は光に任せれば良い。」

時雨は冷静に答えたが、内心はかなり不安だった。

(城の警備がこれほど厳重だとは、計算外だったな。光が間に合ってくれれば良いが・・・。)



「でもさ、光ってこのこと知ってるの?」

唐突に皐月が時雨に聞いた。

「そのことは問題ない。捕まる前に俺が黒鳩を放ったからもう伝わってると思う。」

「時雨ってホント隙無いわよねぇ、誰かさんと違って。」

皐月は紅を見ながらにやけて言った。

「ふん、どうせ俺は計画的じゃねぇよ。」

「また拗ねた。」

単純な紅の反応を皐月は面白がって笑った。

「五月蝿いぞ!静かにしろ!」

守衛の声が牢獄内に響き渡った。

キキーー

牢獄の扉が開く音が響き渡った。

コツ・・・コツ・・・コツ・・・コツ・・・

牢獄に靴が石の床に当たる音が響いた。

背の高い男は時雨の牢の前に来ると低く深い声でしゃべり始めた。

「明日午前10時からの会議で貴様等の処置が言い渡される。謹んで受けよ。」

「すいません、ひとつ良いですか?」

時雨がすかさず質問した。

「なんだ、答えられる範囲でなら答えよう。」

「はい、明日の会議に俺らはでられるんでしょうか?」

男は表情を変えずに答えた。

「ああ、王の御前で王自らお前たちの罪状を読み上げる。」

「ふん、なるほど。」

時雨は少し考え込んでいる。

何か思ったのか男は、

「期待するな。お前たちは縄に縛られ周りは兵士ばかりだ。暗殺など出来るはずがない。」

「暗殺?俺らが?ばっかじゃねぇの、何で俺らが暗殺なんてしなきゃならねんだよ。」

紅はさも不服そうにブーたれた。

「お前らは王の暗殺のために城に潜り込もうとしたのではないのか?」

「違うよ、俺たちは寧ろ王の味方をすr」

「なんでもないで~す。気にしないで下さい。こいつちょっと変なんですよ。」

皐月があわてて下手な言い訳を言い出した。

「ふ、変な奴が暗殺者とはな。風の国では相当人がいないらしい。」

男は少し顔を崩したがすぐにまたまじめな顔になった。

「質問はもう無いな。以上だ。」

そう言うと男は早歩きで牢獄を出て行った・・・。



「はぁ、俺らは風の国の暗殺者か。」

しばらくの沈黙の後、紅が言い出した。

「まあ、それが普通の心理だ。そして明日俺らが何を弁解しても無駄だと言うことでもある。」

時雨は少しも慌てた風は無かった。

「じゃあどうするんだ?もう詰みってか?」

「いや、王に会えるなら都合が良い。明日の会議の場で密書を直接渡す。」

「なるほど、なら安心だ。じゃあ俺は明日のためにもう寝るは。」

言うが早いか紅の牢から鼾が聞こえてきた。

「なんつう、無神経なんだ。偶にこいつが羨ましくなるよ。」

「やめてよぉ、時雨君も紅みたいになったら私が大変なんだから。」

皐月の怒った声が聞こえてきた。

「はは、冗談だよ。・・・でも、明日のために寝たほうが良いかもな。」

「もう、いやな冗談やめてね。おやすみ。」

「ああ、おやすみ・・・。」


3人は直ぐに寝静まった。

明日のために・・・・・・。

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