スーパーアイドルlongzi

誕生


深い意識の底でぼんやりと目覚めた。
ここは何処かもわからない。
ただある存在。
どんな概念もない。
ただ意識があるだけ。

それからまた時が流れた。
今度は意識がさらにはっきりしてきた。
自分が置かれている世界に疑問を持つようになる。
気だるい感じ。
足を曲げていることに
違和感を感じた。

この世界にどれだけの限りがあるだろう。
足を伸ばしてみる。
と同時に衝撃が走る。
ゴムのような感触。
気持ち悪い。
ここは狭い場所で、
そんなに広くないことを初めて知った。
もう二度と足を伸ばすまいと思った。

それから沈黙の時間が流れた。
フィルターを通して外の声がしきりに聞こえてくる。
車がどうだとか、そのためだけに
壁を思いっきり足で蹴り上げてみる。
早く外に出たかった。
その会話の内容のものを見られないことがもどかしかった。

しばらくして、
自分の位置をむしょうに変えたくなった。
果たして可能なのだろうか。
肩や足を使ってさかさまになろうと四苦八苦する。
わりと簡単に位置を変えることができた。
が、その瞬間
首に巻きつくものがあった。
それは私の首を容赦なく締め付ける。
ここで死ぬのは嫌だと必死にもがいた。
先ほどまでとは異なり、
戻るのは容易ではなかった。
時間が経っていたのだろう。
位置を変えたときよりもさらに自分の世界は狭まり
動く隙間などなかった。

必死だ。
こんなところで死にたくない。

もとの位置に戻ることだけに
全エネルギーを注いだ。
そして私はこの死からようやく免れた。
安堵のため息をつき
胸をなでおろした。


いよいよその時がきた。
私はそれまでの気持ちと一転した。
嫌だ。出たくない。
しかし、自分の意思とは無関係に
頭が吸い寄せられていく。

決められたその日。

深い闇がいっきに襲う。
狭い!苦しい!息が出来ない!
とにかくここを抜け出さなければ確実に死ぬだろう。
肩を必死にねじ込む。

突然、光が目の前に現れた。
やっと私はこの狭い道を抜けて出てきた。
私は不安だった。
生まれてきてしまった責任をどうすることもできない。
深い絶望と不安とが自分を支配していた。

「これからどうやって生きていこう」

はじめての呼吸に合わせ、
私は泣いてやろうと思った。
張り裂けんばかりの声で。
ほかにこの不安を静めることはできなかったから。
とにかくただ泣くだけだと思った。

© Rakuten Group, Inc.
X
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: