恋☆いろいろ☆★☆

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信頼



  でも、塾の先生は大好きだった。

  勉強も楽しかった。


  その塾で、私よりも一回り以上 年上の先生を好きになった。
  ”憧れ”ではなく”好き”だった。

  賢くて(当然だけど)、優しくて、大人で、たまに 少年で・・・

  タバコは、当時から嫌いだったけれど
  吸っている彼は好きだった。
  一寸しか吸わずに、長いまま灰皿に並べられるタバコを
  友人と笑った。

  「タバコはあんまり好きじゃない」
  とか、私達の理解を超えた事を話す彼が好きだった。

  怒っている自分が嫌で
  生徒に怒っている途中で それを隠す彼が好きだった。

  彼も私を”好き”と言ってくれた。
  「じゃあ、16になったら結婚してね♪」
  「いいよ」
  そんな会話をした。
  今思えば「そんなわけはないだろ!」と思うけれど
  当時は有頂天になった。

  彼が他の女の生徒と喋るのが嫌だった
  嫉妬する自分も嫌だった
  彼がそのせいで 怒った顔や 悲しい顔になるのが嫌だった


  2人きりで彼の愛車に乗って
  夜にドライブもした。
  シートベルトを探す私に、運転席から手を伸ばしてくれて
  顔が近づいたときに、思わず顔をそらしてしまった。

  あなたとの秘められた行為のチャンスを 逃した。


  デートもした。
  私が胸いっぱいで ご飯も少ししか食べられなくて
  残った食事は キレイに食べてくれた。

  彼がつけた香水が香って「くさい!」と言うと
  「女性に人気で、流行っているんだぞ!」とスネられた。

  私は今も、このときの香水の匂いを覚えている。
  名前なんて知らない。
  でも、体がおぼえている。
  私がすれ違って探す香りは、彼のもの・・・。

  他の人と付き合って、
  今だって愛する人がいても
  探す香りは、彼のものだけだ。

  高校受験が間近に迫った、ある日
  「高校に入ったら、俺のことなんて忘れるよ」
  そう言われた。
  他の先生や友達もいた。

  そんなはず無いのは、彼が一番良く知っていたはず

  終わりを告げられているようにしか聞こえなかった。
  「今は俺でも、まだまだ出逢う。忘れるよ」と、聞こえた。


  彼の真意はわからない。
  でも、とても 悲しかった。


  私は、高校に入学し、彼との接触をなるべく 避けた。

  最後にあった日
  なぜか強がってしまって「もう、あんまり来ないよ」と口走ってしまった。

  帰るときに、彼はあいまいな表情で
  階段の上から、手を振っていた。
  笑っているけれど、悲しい表情。

  「ほら、やっぱり」

       そう、思ったのかもしれない。

  強がった私は、自分からは動かなかった。
  彼が連絡してくれると 思っていた。思っていたかった。

  だけど、待っていても
  連絡は一向に、来なかった・・・。

  ある日、どうしても耐えられなくなって、電話をした
  出たのは 機械の音声「使われておりません」。
  かなり、動揺した。

  塾にも行ってみた、見知らぬ事務の女性が「辞めましたよ」と告げる

  どこに行ったのか、分からない。
  痕跡も残さない。
  でも、明らかな「さよなら」だった。


  それからしばらく、白い空間を漂い彷徨っていた。

                         そんな気がする。


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