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本 ~三国志~
三国志
「三国志は、いうまでもなく、今から約千八百年前の古典であるが、
三国志の中に活躍している登場人物は、現在でも中国大陸の至る所に
そのまま居るような気がする。」 著者
吉川英治 三国志 一
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
後漢の建寧元年のころ。
今から約千七百八十年ほど前のことである。
一人の旅人があった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
日本では卑弥呼が邪馬台国を統治するころ、中国は後漢も霊帝の代、政治の腐爛は黄巾族を各地にはびこらせ、民衆は喘ぎ苦しむ。
吉川英治 三国志 二
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
「女の皮膚は弱いというが 鏡にかえて剣を抱けば
剣は正義の心を強めてくれる わたしはすすんで荊棘へ入る
父母以上の恩に報いるために またそれが国の為と聞くからに
楽器を捨て、舞踊する手に 匕首を秘めて獣王へ近づき
遂に毒杯を献じたり、右と左にそして最後の一献にわれを斃しぬ
聞ゆ――今、死の耳に 長安の民が謡う平和の喜び
我を呼ぶ天上の迦陵頻伽の声」
黄巾の乱は程なく鎮圧されたが、霊帝の没後 董卓が権力の中枢に就いた。
董卓の身辺には、古今無双の豪傑 呂布が常に在り、刺客さえ容易に近づけない。
その呂布が恋したのが、董卓の寵姫――――
傾国という言葉は『三国志』にこそふさわしい。
吉川英治 三国志 三
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
降将とはいえ、さながら賓客の礼遇である。
曹操は関羽を堂にむかえて、すこしも下風に見る容子はなく、おもむろに対談しはじめた。
「今日は実に愉快な日だ。曹操にとっては、日頃の恋が叶ったような――
また一挙に十州の城を手に入れたよりも大きな歓びを感じる。
しかし羽将軍には、どう思われるか」
「面目も無い――その一言につきております」
黄巾族の乱より十年、天下は大いに変わっていた。
献帝はあってなきものの如く、群雄のうちにあっては、曹操が抜きんでた存在となっていた。
吉川英治 三国志 四
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
ついに関羽は去った!
自分を捨てて玄徳のもとへ帰った!
辛いかな大丈夫の恋。――恋ならぬ男と男の義恋。
「……ああ、生涯もう二度と、ああいう真の義士と語れないかもしれない」
乱世の姦雄を自称し、天下を席捲した曹操も、関羽には弱かった。
いかな好遇をもってしても、関羽の心を翻すことはできない。
玄徳を慕って千里をひた走る関羽。 そして劇的な再会。
吉川英治 三国志 五
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
新野を捨てた玄徳は千里を敗走。曹操はなおも玄徳軍に対し、壊滅の策をたてた。天下の大魚をともに釣ろう、と呉に檄を飛ばす。しかし、これは呉の魏への降参を意味し――呉の逡巡を孔明が見逃すはずがなかった。
一帆の風雲に乗じ、孔明は三寸不爛の舌を持って孫権を説き伏せる。
かくて赤壁の会戦の大捷に導き、曹操軍は敗走する。
吉川英治 三国志 六
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
このとき丞相府には、荊州方面から重大な情報が入っていた。
「荊州の玄徳は、いよいよ蜀に攻め入りそうです。目下、彼の地では活溌な準備が公然と行われている」
曹操はかく聞いて胸を痛めた。もし玄徳が蜀に入ったら、淵の龍が雲を獲、江岸の魚が蒼海へ出たようなものである。
赤壁の大敗で、曹操は没落。かわって玄徳は蜀を得て、魏・呉・蜀三国の争覇はますます熾烈に――。
吉川英治 三国志 七
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
「三国志」をいろどる群雄への挽歌が流れる。
「斬れっ。斬るのだっ。――それっ関羽を押し出せ」
武士はかたまり合って関羽を陣庭広場までひき立てた。そして養子関平と並べてその首を打ち落とした。
時、県安二十四年の十月で、この日、晩秋の雲はひくく麦城の野をおおい、雨とも霧ともつかぬ濠気が冷ややかにたちこめた。
武人の権化ともいうべき関羽は孤立無援の麦城に、悲痛な声を残して鬼籍に入る。また、天馬空を行くが如き往年の白面郎曹操も、静かな落日を迎える。同じ運命は玄徳の上にも。
――三国の均衡はにわかに破れた
吉川英治 三国志 八
吉川英治 歴史・時代文庫 講談社 ¥760
曹真をはじめ多士済々の魏に対して、蜀は、玄徳の子劉禅が暗愚の上、重臣に人を得なかった。
蜀の興廃は、ただ孔明の双肩にかかっている。おのが眼の黒いうちに、孔明は魏を叩きたかった。
――かくて戦野は敵味方五十万の大軍で埋まった。
孔明、智略の限りを尽くせば、敵将司馬仲達にもまた練達の兵略あり。
連戦七年。 されど秋風悲し五丈原、孔明は星となって堕ちる。
孔明の死後、魏は初めて、枕をたかうして眠ることを得た。
が、魏の国運は、なお旺だった<。これはおそらく良臣や智識が多かったに依るだろうが、曹操以来の魏は、何と言っても、士馬精鋭であり、富強であった。
中でも、司馬仲達は、魏にとっては、まず当代随一の元勲だった。自然、彼の一門は、隆々、威勢を張るにいたった。
そして―――・・・・・・
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