【 声 】


     「傘」により気持ちが通じた"彼女"と"彼"。
     サークルの集まりの後、二人だけで会うようになった。

     それぞれ車に乗り、秘密の場所で待ち合わせ。
     そしてどちらかの車に乗り、話をしたりドライブしたり。

     お互いのことを理解するにつれ、ますます魅かれあっていった。
     "彼女"にとって、こんなに気持ちがぴったり合う男性は初めてだった。

     "彼"と気持ちが通じあう前、"彼女"には結婚が決まった相手がいたが、
     自分の気持ちに疑問を感じ、結婚式の日取りを伸ばしていた。

     その疑問が何なのか"彼女"は今良く分かる。
     自分が求めていたやすらぎは"彼"の中にあったのだ。
     それが分かった以上、"彼"以外の人と結婚することはできない。
     しかし"彼"には・・・

     サークルの仲間、"彼"の家庭、自分の結婚相手、家族、周りの人達に対する
     罪悪感がのしかかる。
     それでも"彼"に会いたい気持ちはどうしようもない。

     一線を越えてはならないと思う気持ちは、お互いに押さえられなくなってしまった。

     そして"彼女"と"彼"は「声」を聞く。

     それはサークルの飲み会の後のこと。解散してから二人だけで待ち合わせ。
     "彼"の車は自宅から離れたガレージに置いてあり、そこで二人で話をしていた。

     どこからか「声」がする。

     耳を澄まして聞いていると、聞き覚えのある「声」。先程別れた仲間達の声だった。
     みんなで何かを話している。
     "彼女"と"彼"はお互いの顔を見合わした。二人がここで会ってることがわかったのか。

     しばらくて"彼"は車から降り、思い切ってガレージの周りを見回したが誰もいない。
     車に戻ると、また「声」が聞こえる。確かにすごく近いところから聞こえてくる。
     ガレージの周りには人が隠れるようなところはない。

     "彼"と"彼女"は不気味に思った。

     次のサークルの日、「声」の主達は何事も無かったように二人と話しをする。
     二人の関係もみんなには知られていないようである。

     あの「声」はいったい何だったのか。

     罪悪感からくる幻聴だったのだろうか。






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