RSプレイヤーによる日記のような何か兼レビュー倉庫

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パンツァーポリス1935



 誰よりも! 何よりも! 遠くへ! どこまでも!
 異世界の機甲都市「伯林」を舞台に繰り広げられるSFチックないわゆる「都市シリーズ」。時代は1935年。宇宙を目指す1人の青年が現れる。彼の名はヴァルター。彼は技師パウルとともに、宇宙に飛び立つための飛行艦カイザーブルクを完成させる。しかし、軍がその戦闘力に目をつけ、彼等は軍に追われる羽目に。様々な思惑、思考が交錯する中、果たして彼は宇宙に出ることができるのだろうか?
 この作品の魅力は、やはり読後の爽快感にある。作中の伏線、オスカーの葛藤やヴァルターらの自信に満ちあふれた台詞などから結末は割と容易に想像できてしまうのだが、その期待を裏切らない、スカッとくる物語である。また、それぞれのキャラクターの立ち具合もなかなかのものがある。自己主張の強い人間が何人も登場する中、話をこじらせず丸く収めているところが上手い。さらに、「爽快感」というワードに関連して、戦闘艦どうしのドッグファイトも見所だ。私は「灼眼のシャナ」の戦闘描写は「巧い」という一言で評価できるほど素晴らしいと思うが、それに勝とも劣らない描写である。
 ただ、ラストのシーンは今ひとつ盛り上がりに欠けるのではないかと感じた。長年の野望であり父の遺志を成し遂げた感動の瞬間なのだから、もう少し感動的に描いても良いのではないか、と思う。だが、作中にもあるとおり「あっけない」のは確かであるから、あえてあっさり描くのもありなのかもしれない。
 イチオシキャラクターは、ヴァルター達を追う空軍第五師団師団長のオスカー。彼は登場人物紹介にもあるが、「あらゆる意味で軍人の理想型」である。彼の、軍人としてそして人間として完成されたと言っても良いであろう理想的な人格は、読んでいて「これこそ『いい人』だ」と思わせる。この作品を読むときは、是非彼にも注目して読んで欲しい。

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