RSプレイヤーによる日記のような何か兼レビュー倉庫

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狼と香辛料


 この作品はまず、ファンタジーであるのに剣や魔法ではなく商業の世界を描いたという点で、非常に個性的だ。ギミックとして使われる為替や先物の話が物語をユニークに染め上げている。基本的に商人たちの知恵比べを題材にしており、ホロのキャラクターも独特の言い回しやセリフで老練な印象を与え、いわば「大人のファンタジー」といった雰囲気に仕上がっている。
 また、近年増加中の小説型ビジネス書としても魅力的だ。作中、金貨や銀貨、物価変動の話題が出てくることが多く、経済の初歩を学ぶことができる。これについての批評は読売新聞紙上でもされていて、大絶賛の文面が載っている。本書では貨幣の種類が多く、普段の商売にも貨幣の交換が必要だった中世という時代の空気を経済の面から感じることができるのだ。つまり、読売新聞の言葉を借りるなら、「貨幣という現在では軽視されがちな経済の本質を勉強できる」作品でもあるわけである。
 ただ、以上の特徴から導かれることに、「万人受けはしない」ということがあげられる。商売の駆け引き話がメインなわけで、そこに興味や面白みを感じない読者は、どうしても退屈になる。ホロを救い出す場面の、ロレンスとマールハイトとの長い掛け合いなどは、そのいい例だ。「万人受け」を目指すのであれば、長ったらしい駆け引きのシーン(そこが魅力でもあるのだが)をもう少しスリムにしても良いと感じた。

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