RSプレイヤーによる日記のような何か兼レビュー倉庫

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ミミズクと夜の王


 「美しい」という言葉がとても似合う物語だ。正統派のおとぎ話とでも言おうか、読者を力強く引き込んでくる。一途なミミズクと、威厳溢れる夜の王との純愛物語で、王道を行くしっかりしたストーリー(つまりシンプル)と多くの印象的な「絵になる」シーンによって非常に美しく仕上がっている。本当にシンプルで、そのシンプルな物語をじっくり読めるというところが最大の長所なのだろう。めでたしめでたしのエンディングは、ひねりがないともいえるが、読者はそういうものを望むものだ。かく言う私もその一人である。
 この「美しさ」を出すという点で、ライトノベルに必須ともいえる挿絵や口絵を入れなかったことが成功の一つの要因になっている。キャラクター達の魅力を文章で伝えられているため、下手にイラストを入れてしまってイメージを崩すということがないのだ。文字だけで美しさを伝えるという、ライトノベルには無い異色の美しさも持っている。ここに磯野氏による表紙イラストが相まって一般書籍のような印象も受けられ、面白い。「表紙買い」をした読者は意外と沢山いるのではないだろうか。
 居場所のなかったミミズクが、何も望むことなく生きてきた彼女が、自ら望んで選んだ場所。人という存在に絶望し、夜を選んだフクロウ。そんなふたりの、ほとんど交わす言葉もないながらも、しっかりと果たされていた優しい気持ちの在りように、読んでいて心が温まる物語だ。

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