あるいは同朋たる君へのエール


あるいは同朋たる君へのエール
kuroneko1

深夜の荷卸し作業を終えて作業員と検品に入っていたら
視界の隅を黒ネコが通過するのがわかった。


「おっちゃん・・ネコやで・・」

「おうっ!」

「またワルサしょるんちゃうか・・・
 キャトフード狙ろとるで・・・!」

「ああ、あれはそんなことせ~へん・・!」

「なんで?」

「あれはカタギのネコや!」

「か・・かたぎ?」

「せやっ!、ニャン太郎ちゅうねん♪」

「誰がツケたん?」

「ワシや!」


雄ネコにニャン太郎とはなんと安易な・・・ナマエ・・

白髪まじりの角刈イカツイ顔のおっちゃんは目をほそめている。


「でも、オレのこと睨んどるで・・・」

「オマエのこと不審者やと思っとるんやろ!」

「ネコにまで疑われとるんかいなオレは・・・
 でも、なんで・・・?」

「アイツ、いま警備員やっとるねん!」

「け・・・ケ・イ・ビ・・・・」

「おぅよ!・・警備や・・よう~やってくれとるぞ!
 物・・パクッたら引っかきよるゾ・・♪
 がぁはははhhhh・・・・」


いくらリストラの世でもヒト切ってネコ使うかよ?
警備やったら犬やろが・・・いや犬でもなぁ~・・・


作業終了後事務所にておっちゃんのテンマツ記に聞き入る。

「もともとは、普通のノラやってん・・いまでも違いないけど・・
 時々顔見せよるんで弁当の残りをやってたら懐いてしまいよってな・・
 それからやねん・・~~~~~~~」

始まりはごく普通のネコとオッチャンの物語であったが・・・

このニャン太郎・・黒毛にグレーのマダラの模様が少し
・・・あまり大きくはない

ノラにしては会社のモノに手を出さず
(運送会社のホームには猫の好物らしき物が幾らでも
 荷物として送られてくる)

ネズミも出なくなり女性事務員には感謝される。
悪戯しにくる他のヤクザ猫を追い払う。等々・・・・・

なにより、それなりにネコとして可愛い顔している。
社員の中には「アイフルのクーちゃんより金かせげるで!」と言う者も・・
(クーちゃん一応・・・犬なんやけど・・!)

そんなこんなでいろいろあるが、認知され社内を闊歩するようになった。


事件はある日起こった!

大抵の運送会社の門は終日開けっ放しである、定期便なんぞも
時間通り来るようでこない・・!
それに、門番なんて置いてるところは滅多にない。
ホームの上にはお宝が山ほどつんである・・・・
この会社もご多分にもれず・・・その通り・・・・

一仕事おえたおっちゃんがメシの後・・・・・
テレビのエロ場面にカブリツキになっていた時のことである
どっから入ってきたのかニャン太郎がいきなりおっちゃんの
ズボンを引っ掻き始めた・・・

低い声で 「みゃぁ~・・」 とも

このニャン太郎・・普段はエサが欲しくとも・・・・・
おっちゃんから1mの所に前足を揃え、視線を送って
振り向くまで近寄る事がないという・・・
あくまで、品行方正・白・発・中・・のネコである。

「なんじゃ・・・エサやったやろが・・・・」

パッとニャン太郎はドアーの前まで跳びさがる・・
そうして、おっちゃんの顔をみあげる・・・・

「ジャマすんな・・!」

視線は再び画面の方へ・・・でも
テレビの濡れ場面なんてアッという間に終わってしまう。

「ええとこやったのに・・・・・!」

ニャン太郎は再びズボンを引っ掻きだした

「ナニをやとんじゃい・・・!」

捕まえようとしたおっちゃんの手を潜りぬけ
ドアーの前に逃げ帰る・・・・
腰を上げたおっちゃんを見て、こんどはドアーから
半身だけを見せた。

ネコがネコだけにおっちゃんも・・・「?・・・!」

「なにを見つけたんや・・・・?」

商品ホームに続くドアーは彼により半開きにされており
音も無く・・・一人と一匹は外に出た・・・・

n-4-4


振り返りながらチョロチョロ歩く猫足の止まった先は
監視の効かないホームの隅・・・・・!

「コラッー!何やとんじゃい!」

翌朝、警察もやって来て現場検証なども行ったらしが
物色の跡はあるものの幸い被害は無く事無きを得たという。

ここには大事な取引先の荷物も置いてあり、もしもその一つ
でも無くしたら・・・・この厳しい御時世である
明日からは取引中止になり、会社は甚大な損失を被るこに
なったかもしれない・・・・・。
会社の警備体制が強化されたのは言うまでも無い事である。

おっちゃんの強烈な一喝が盗人を退治したのだが・・・
ニャン太郎の不思議な能力と崇高な愛社精神が
大きなドロボウネズミを退散せしめたのである!。


このネコ、用がある時はドアーのノブを回して入ってくるらい・・


その他、不審人物通報・・・二件

    事務所施錠忘れ通報・・・・・一件

    事務所窓閉め忘れ発見通報・・・・・二件

(不審人物に関しては、道を尋ねに来た他社の運転手・・・・!)


ニャン太郎への褒章は、キャットフードの支給及び給仕係り(希望者)の創設のみ。

おっちゃん曰く・・・
「年寄り雇って座らしとくより・・・よほど役に立つ!」

この話に感動したオレは夜食の購入にコンビニへ寄った折
自身のエサとニャン太郎の為の 高級ネコ缶 を求めた・・・

取って返して件の事務所へ・・・・


「おっちゃん・・・アイツにコレやって・・・・」

「オマエやれや・・!」

「喰ってくれるかな~」

「喜びよるゾ~・・・・・・
 何時もは・・ポリポリ、カリカリだけやからなぁ~」

オレが呼んでも現れなかったのに
おっちゃん呼ぶとスクッと出てきた・・・

紙の皿に盛り付ける・・・・
マグロとシラスのミックスフード・・・


「ほれ、ほれ・・・・」


最初は警戒して睨んでいたが・・・おっちゃんが勧めると・・・

チロリチロリと食べだし・・・そのうちに・・・・

「ウヲオオオオ・・・こんな夜中にうまいもんだっしやがって~・・」

ってな感じで喰らい始めた・・・・どれっ・・ちょと・・

n-1


「おっと!・・さわったるな!・・ネコでも食事中は失礼や・・!」


食い終わったニャン太郎がおっちゃんにジャレついてくる・・・
オレもノドなどスリスリ~~・・・ネコもゴロゴロ~~~~

「どやっ・・・これでオレも・・・・・?」

「ええ線行ってるんちゃうかい~^^^^^」

ニャン太郎はおちゃんの膝の上で丸まりはじめた・・・

ええもんやなぁ~・・ネコの満足そうな顔を見ていると・・
こっちまで満足で・・・眠たくなってきた・・!

おおおっイカンイカン・・!

「ニャン太郎・・・朝まで勤務は残ってる・・・・ぞっ!」肉球プニュッ・・!

「みにゃぁ~・・・・オマエもな・・・・」

しばらく猫らしい演技を続けていた彼だったが
トッ・・聞こえてきた物音に反応して立ち上がり・・・
スーっと外へ出て行くのであった。


「・・・・ちゅう~こちゃ・・・なんでもアホとカシコがいる・・
 オマエもネコ見習うてガンバラないかんな!・・・
 ところで、まだええのんかい?」

時間を忘れて話し込んだようである。

「おおきに!お先です・・・」

「・・・・・!」

もしやとは思ったが、事務所の外にはその気配は無く・・・

トラックだけが居眠りしたようなアイドリングを続けていた。

出発ゲートで一旦停止すると支柱の上に黒い塊が一つ・・

「・・・ニャン太郎・・・!」「オイデオイデ♪♪」

はしゃぐ人間をしばらく見つめていたが・・kuroneko2


ヤツはちょっと困ったように視線をそらせ、闇に消えていった。


ラジオ深夜便は退屈なジジババの感想文をよんでいた

自分の会社まであと一時間ぐらいだ、
夜の高速はいつもの通りすいている・・・

今度、手柄をあげたら何をクレテやろうか・・・・


入社以来ボーナスカットの男が猫の 賞与 を考えていた。


© Rakuten Group, Inc.
Design a Mobile Site
スマートフォン版を閲覧 | PC版を閲覧
Share by: