小説⑤長編


ジャンル***シャーマンキグ小説
作者***怜サン

1章  山の中の旅館 (1)

「7時50分・・・。8時の電車にのってくからあと10分しかない・・・。なのに
・・・」
まん太は自分の腕時計から、周りへと顔を向けた。そしてかなり興奮している。
「何で葉くんとアンナさんが来ないんだ~!!」
ホームの中でかなり響いた。連休なのだが、家族連れの人やらでにぎわっている。ま
ん太の大声に近くを通っていったいくつかの家族がびっくりしてまん太の方を見てい
た。いや、大声を出していなくても、多分誰かはこの集団を見てしまうだろう。チャ
イナ服が1人(蓮)、変な髪型が2人(ホロホロ・竜)、そして異常にちっちゃい人
間(まん太)にたまおとピリカだ。
「まあ、葉はゆるいからな。どうせ寝坊か何かであろう」
蓮が言った。そしてその隣からは、馬孫がどこからともなくと出てきていた。
「むむ・・感心しませんな。坊ちゃんを待たすとは・・・」
「いや、っていうかそろそろ時間で、葉くんたちが来ないっていうのに、蓮も馬孫も
ゆっくりしてない?」
まん太が半分あきれてしまいながらも、ホームの時計と自分の時計とを見比べなが
ら、階段の方を見て、2人がくるのを待っていた。
「あれ?たまおちゃんは、ダンナとオカミと一緒じゃなかったのかい?」
竜が顔を赤くしてあたふたとするたまおに聞いた。たまおの顔がどんどん赤くなって
いった。
「あの・・・えっと、葉様とアンナ様は、途中どこかによるといって・・・」
「お~~~い」
階段の方から葉の声が聞こえてきた。全員一斉に階段の方に振り返り、葉とアンナが
完全に階段から上り終わるのを見た。
「葉・・・くん?と、アンナさん?」
葉が、背中にどでかいリュックをしょって、頭には帽子、服は山にでものぼるような
のを来て汗をかいていた。後ろのアンナは、コートを着て歩いていた。
「ちょっと・・・何?その格好は!?」
「おっ、葉、えらく良い服着てんじゃねえか」
「いや、ホロホロ・・・そうじゃなくて」
出発まであと3分になった。
「何って、山に行くんでしょ。だったらこれくらいは用意しておかないと」
「そうなんよ、途中で店によってたら、こんなに買っちまって・・・」
首に巻いたタオルで額の汗をぬぐいんがら葉が言った。お手上げ状態だ。
「そのわりにアンナさん、全然普通じゃない?」
「当たり前よ。葉が全部持ってるんだから」
「そういうことだ、まん太(泣)」
これでやっと全員がそろった。この8人で旅行に行くことになったのだ。電車に乗る
前に、葉はいつもの服に着替えて、小さい旅行かばんの中に必要なものを持って電車
に乗った。
「旅館だから、そんなのいらないよ。葉くん」とまん太に言われたからである。
「ふー。なんとか電車には間に合ったようだな」
8人は固まって、目的地につくまで、トランプをしたり、話をしたり、居眠りしたり
・・。そうして時間をつぶしていった。


電車が止まった。終点の駅のようだ。それと同時に、葉たちが泊まりにいく旅館があ
る
のもこの終点の町だ。
「こりゃあ何とも・・・りっぱな田舎だな」
ホロホロが東京とは全く違う見慣れない風景をじっくりと見ながら言った。ホロホロ
のいう通り、全くの田舎である。本当にこんなところに旅館なんてあるのだろうか、
と疑いたくなるくらい、りっぱな田舎だった。
「おい、まん太、本当にこの町か?」
「ちょっと待って竜さん・・・。地図見るから。・・・そうだよ、ここで良いんだ
よ。
でも・・・本当に寂しいね・・・」
「とりあえず、歩くか」
葉がいつもの調子で言って、地図を持って歩くまん太を先頭に、みんなは駅から出
て、
田舎道をずっと歩いていった。
「あっ、見ろよ。あそこ!何か看板があるぞ。『旅館 銀のすず』あそこじゃねぇか
?
俺らが泊まる場所って・・・」
「本当だ!竜さんありがとう!」
「か・・・看板には、この先3㎞って書いてありますね・・・」
たまおが言うと、みんなが一斉に看板の方を見て叫び声をあげた。
「何だそりゃ~!!3㎞も・・・!?3㎞も歩くのかよ!」
「ねえ、まん太・・・。ちょっと聞いてもいいかしら」
「な・何?アンナさん・・・」
まん太がつばをゴクリと飲む。やばい・・・。アンナさんを怒らせた!?
「この先3㎞って、どの道のこと?」
そこには道らしい道はなかった。ただ、森の中に向かって、←の看板があるだけだっ
た。「まさか、この森の中にあるというのではなかろうな」
「いや・・・そのまさかかも」
こうして、8人全員は、森の中へと入っていった。


「ふぅー!!やっと着いたぜ・・・まともな道に」
ホロホロが先頭をきって、森の中から抜け出した。8人は、森の中をさまようこと1
時間ちょっと・・・やっとの思いで、森から出られることができた。しかし、誰を見
ても
服はボロボロで体にはいくつかの切り傷かすり傷があった。・・・アンナでさえも、
ボロボロとまではいかないものの、服に汚れがあった。
「あ、あの建物そうじゃない?ほら、『銀のすず』って書いてある!」
ピリカが大声をあげた。確かにそうだ。『銀のすず』と書いてある。ここが葉たち8
人が2泊3日泊まることになっている旅館だ。
「早く中にはいっちまおうぜ」
「俺も竜の言う通り、早く中に入りてぇぜ」
「お、何だホロホロ。やけに気があうじゃねえか」
「たまにはな」
8人は早速、『旅館 銀のすず』に入ることにした。しかし、この時、ある不思議な
こと
に気づいたのは、蓮とアンナだけだった。
「(なぜこの旅館には全く人の気がないのだ・・・)」
「(おかしいわね・・・。まるで人がいないじゃないの。それに・・・何かを感じ
る)」
2人は、何も言わず、他の6人の後についていき、中の様子をさぐることにした。


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