行こか戻ろかイギリス生活

行こか戻ろかイギリス生活

Joaquin Cortes


Royal Albert Hallの内部
今日はRoyal Albert HallにJoaquin Cortesのショーを観に行った。
私はホアキンのビデオを持っていたりするのだが(人から貰った)、正直、彼のサパテアートの凄さは認めるものの、すぐ脱いじゃうところとか、やたらに観客から拍手をもらいたがるところなんかが実はイマイチ好きになれなかった。まあでも、一フラメンコ練習生として一回位はこの知名度抜群のスター様を拝見しておかなければと思い、とりあえずチケットを買ったのだ。

当日は「ライブ8」と重なっていた事もあって、私のモチベーションは限りなく低い。今日の公演は、2005年5月にメキシコで初演されたばかりという「Mi Soledad」。今回は、カリビアンなどの南米音楽をふんだんに取り入れ、基本的に歌と音楽が主役、ホアキンはその音の流れに溶け込んでいくコンセプトらしい。テーマは、悲しみ、苦しみとか。。

あいにく、公演のパンフレットを帰り道で失くしてしまった為、出演者・演目等は確認できないが、ダンサーはホアキンのみ、あとはギター2人、シンガーが男女合わせて6名、その他、カホン、チェロ、アコーディオン。。と結構な大所帯だ。

幕があがると、舞台の中央のせり上がりの穴の中に、上半身裸のホアキンが肩から上だけを出して登場。ステージ横のスクリーンにホアキンの表情が逐一アップで映し出される。ひとしきり苦しみを表す演技が終わった後、今度は全裸・体操座りのホアキン(勿論肌色の海水パンツ着用)がスポットライトの中に浮かび上がる。2列程前に座っていた若い女性客2人が、ここでお互いに顔を見合わせてにんまり。明らかにホアキンの裸を見て喜んでいる。

慌ててズボンをはいた後、今度はステージ上でまたまた苦しそうに転げまわる。転げ廻りつつ、手や足でコンパスを刻んでいる辺りはさすがだ。立ち上がっての悲しみの演技の間中も、足は休む事なく動いている。お、これは凄いかも。。と身を乗り出す。会場に設置してあるスクリーンを見ていると、まるでホアキンのプロモーションビデオでも見ているような錯覚に陥る。完成された演技だ。

それにしてもここまでの約10分程で、既にバックの面々の音楽性の高さに圧倒される。勿論人数が多いせいもあるが、他のフラメンコの舞台では中々感じる事のできないレベルの迫力だ。6人のシンガーは小奇麗な黒の衣装を着ているが、ヘレスの街角にでもいそうなバリバリフラメンコのおばさん、おじさんといった雰囲気。彼らの表情たっぷりに歌う様子(実は、演出の為、演技指導を受けたのではないかと思うほど、絵に描いたように素晴らしい感情表現だった)とその力強く深い歌声にどんどん引き込まれていく。

公演パンフに説明されていた通り、第一部は南米テイストを取り入れた音楽中心だったが、2曲目の演奏が終わって、カリブを意識してかグレーのソフト帽に白いシャツ、ジーンズで出てきたホアキンを見て思わず息が止まった。か、かわいいっ。。
はりゃあ、これが彼の魅力か。。いやあ、華があって、かわいくて、綺麗で、踊りはほぼ完璧、荒業を繰り広げながらも美しく、かつ、力強い。ここで私は完全にホアキンの虜。何故彼がフラメンコのトップダンサーとして、他のセレブリティーと同じ扱いで華々しく雑誌でインタビューを受けたりしているのか、完全に理解した。この人は紛れもないスターなのだ。

第二部、黒のスーツで登場したホアキンがSolea por Buleriasと確かサンブラを披露。それぞれ25分、30分という長丁場を踊るうち、ジャケットを脱ぎネクタイを取っていくホアキンに会場から黄色い声援が飛ぶ。どうもスペイン系の「追っかけ」がいるらしい。
この第二部では、予想以上にフラメンコそのものの踊りが見られて良かった。普通にブレリアステップやジャマダをするホアキンを見て、ああ、彼と同じ踊りを習っているんだななんて、ちょっと感慨に浸った。同じ踊りとはいえ、その素晴らしい身体能力にはもう唖然としてしまうしかない。フラメンコを知り尽くしたその演技は、今まで見てきた男性ダンサーの中では、やはり全ての面で一番だと思った。

ホアキンのもう一つの凄さは、フラメンコには縁もゆかりもなさそうな観客を集め、しかも、フラメンコ云々抜きで彼らを楽しませる事ができる点であると思う。音楽面での完成度も魅力の一つなのか、観客全員がステージを心から堪能していた。
冒頭で、すぐ観客から拍手を貰いたがるなんて失礼な事を書いちゃったが、最後には「この拍手よ、ホアキンに届け」とばかりに身を乗り出して手を叩いている自分がいた。最後はほぼ全員によるスタンディングオベーションとなり、私も超満足。いい公演だった。


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