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Cinnamon Sugar
*未知Days*
『未知Days 』
「 古びた店。 」
私は鶴部 篠 (つるべ しの)。
いつも通りの日常。
いつも通りの学校。
いつも通りの時間が過ぎてゆく。
そんな私には”退屈”という言葉が
毎日、毎日頭の中にあった。
篠には、夢もある。
篠には、家族もいる。
篠には、素敵な家庭だってある。
でも、”退屈”だった。
「はぁ・・なんでこう毎日一緒なんだろう……」
学校の帰り道、ふと気がついて、足が止まった。
「あれ・・こんな家みたいなの・・あったっけぇ・・・?」
篠はこっそり覗いてみた。
誰もいない。
「何、ココ・・。」
そこにはどこか、怪しげな、不思議な空気がただよっていた。
篠は、そうゆうのは好きだった。
不思議な未知の世界に憧れていた。
でもココは、未知の世界でも何でもない。
少し薄汚い、古い店のようなカンジだった。
「あれ・・?奥に扉がある・・。」
その部屋の奥に、古い茶色い扉があった。
篠はその店のような所に入った。
ガチャン!!!
ドアが閉まった。よくあるパターン・・と篠は確信した。
「やっぱ・・こうゆう時って入るよね・・・・?」
そっと足を踏み出すと、床がミシッとなった。
そうとう古いようだ。
目の前にあったドアを
篠は、ひとつ、つばを飲み込むと、
ドアノブを掴んだ。
「よし・・・!」
篠の目の先には信じられない光景が見えた。
雲の上?
いや、ちがう、辺りが真っ白な世界、とでもいうのだろうか。
「・・・ぇ・・・・?」
普通の声じゃなくて息を吐いたと同時に出てしまう声のような声が出た。
「おい!あんた!!」
「ふぇっ!?」
今度は神経と同時にノドも驚いたような声で叫んだ。
振り向いた。
その瞬間、辺りは雲のような世界じゃなく、真っ白な世界じゃなく、
最初に入った時の古びた店の光景に一気に変わったのだ。
*
「 時計。 」
その瞬間、辺りは雲用な世界じゃなく、真っ白な世界じゃなく、
最初に入った時の古びた店の光景に一気に変わったのだ。
「あ・・・あれ・・?」
急いで振り返ったが、もう、遅かった。
目の先には、本棚があった。
古びた、茶色いトビラなんてなかった。
篠は、いきなりの出来事が重なって、動きがクラクラしてきた。
(さっき・・・誰かに、「おい!あんた!!」って・・言われたよねぇ・・・?)
だが、そこには誰一人いなかった。
誰かが助けてくれたのかな?? なんて、思う暇もない程
そのまま、篠はヘタレこんでしまった。
「はぁ・・・今の・・なんだったんだろう・・。 夢でも見てるのかなぁ・・。」
ここで、ほっぺをつねる程、篠は幼稚な女の子じゃない。
夢と現実の区別くらい、篠にだって出来る。
だって、さっきまで、学校で、勉強をしていたんだ。
そのノートだってある。
今日の勉強が書き込まれたノートが。
さっきまで、帰り道で、子猫を見て、「迷子?」と思っていたんだから。
その子猫だって、今は親猫とならんで走っているんだから。
夢じゃない。 私は現実を見ている。
この目の先にあったのも、あの白い世界も、全て現実。
篠が、それを受け入れるのには、時間があった。
十二秒間。
座り込んで、床を見つめて、放心状態が十二秒間続く。
真っ白の世界と、この古びた店の現実なんて、似ても似つかない。
現実にはそんな世界、一度だってならない。
「現実・・・だよねぇ・・。だったら、もう一度、見てみたいな。」
篠はちょっとした欲望を口にしてみた。
だが、それは今、叶う事のない事。
なぜなら? それは、篠が振り返っても、二度振り返っても、瞬きをしても、
もう、トビラがないから。
篠は、急いで、腕時計を見た。
「やっばぁぁい!!!塾お遅れちゃうじゃぁん!!?」
(あれ・・・?)
腕時計は、四時二分十一秒の所で止まっていた。
「あれ!?あれ?何コレ!壊れてんの?え!?なんで?壊れた‥?」
篠がバシバシ叩くと、秒を示す針が、カチッカチッと動き始めた。
反時計回りに。
「直っ・・・あれ!?何コレ。逆じゃん!!!」
急いで本当の時間を調べなくちゃ。
塾に遅れちゃう!
私が、どうかなっちゃう!
怖いよ!変な風に怖いよォ。
どうしたら、いいの??
その店の出口を探した。 あった! ・・?
とりあいず、そこしかトビラがないのが分かると、
急いで、そのドアを開けた。
篠がゆっくり目を開くと、店の入った所だった。
つまり、出口だった。
「そ、そりゃぁ、そうだよねぇ?」
だって、ココから入ってきて、他にトビラなんて・・・・・
1つしか・・・なかったもん・・・・・。
篠は、時計の事を思い出すと、腕時計を見た。
ありゃ? 戻ってるじゃん・・・。
今までのって・・・なんだ・・?なんなんだろう・・?
篠は、そのまま塾の事なんか忘れて、ゆっくり家に帰って行った。
*
「 聞こえる声。 」
篠は、そのまま家に帰って行った。
その日は、別に、なにも篠には異変はなかった。
町にも。家族にも。あの古びた店にも。
ただ、たった一つ、異変があった。篠の夢だ。
いつもの夢より、すごく、怖かった。
小さい時に、お父さんとお母さんが黒い影に連れ去られて行った夢を見た。
その時は朝起きたとき、泣いていた。
でも、それより、怖かった。
ずっと、ずーっと悲しかった。
黒い空間でずっときりなく走っていた。
後ろからは、あの時の黒い影のようなものが
追いかけてきた。
だけど、うまく走れない。
水の中で走っているような。
その夢が覚めた頃には、その空間は消えていた。
後ろからも追ってくるモノはいなかった。
「はぁ・・・はぁ・・・。(どうして、こんな夢・・・。)」
今まで一度も見た事のない夢。こんな怖いのは初めてだった。
でも、頭痛とか、腹痛とか、めまいとか、そんなのは
ちっともなかった。
また、退屈な学校が終わると、いつもの帰り道。
篠は気になってしょうがなかった。
あのトビラの事。あの古びた店の事。
どうしても寄りたかった。
「よし・・・。」
あの古びた店まで、ゆっくり歩いて行った。
そこまでつくと、昨日のようにオドオドしなかった。
普通にその店の中へ入った。
「あった・・・!」
あの、トビラがある。
今度こそ・・・!!
入る事を決意した、そして、ドアノブを掴むと
手首を思い切り引っ張られたように
トビラが、開いた。
「え?」
勝手に開いた。というより、引っ張られるようにして開いた。
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ・・・・!!!!!」
勢い良く落ちてゆく。と思ったら、
ばふっっ!
クッションのような所に落ちた。
それもフカフカの。
辺りを見回すと、真っ白だった。
でも、あの時と何か違う。
下を見ると、雲のようで、綿のような所に座っていた。
「わぁ・・フカフカだぁ~! ちょ~気持ちいい~!」
上を見上げてみると、ずっと遠くの左ナナメ上に
茶色のものがあった。 トビラだ。
「・・・トビラ・・?」
上は空じゃなくて、真っ白い、今篠が座っている所のような感じだった。
「あぁっ!!どぉしょぉ・・・あそこまで・・・どうやったら帰れるんだろう・・。」
肩をすくめてガクッとした。
確かにあそこまで、飛べない。
「間違いだったのかなぁ・・・」
「そんな事ないんじゃない?」
かわいい女の子の声がした。篠より少し大人びた。
「えっ?だぁれ!?」
「待って。落ち着いて。今は見えないわ。」
篠は少し考えた。(じゃあどこかから、声を出しているのかなぁ・・。)
「う~ん、まぁそんな感じなのかな?」
「えっ!分かるの!?」
どうやら、この声は篠の思っている事が分かるようだ。
「でも、よく推理が出来たわね。前来たコは分からなくって帰っちゃったのに・・・」
声はフフっと機嫌良く、可愛らしく笑った。
「え?ここって前誰か来た事があるんですか!?」
「そうよ、あなたの落ちてきたトビラじゃない所からね。
あ、そうだ、言っておくわ。あのね、ココのトビラは
3の付く日しかココへ通じないの。」
篠はもっとパニックしてた。
3の付く日しか来れない?他にも、トビラがある?
私以外にも誰か来ていた?帰っちゃったって、帰れるのかな・・?
疑問がたくさんわいてきた。
「うん、それはまた後で教えてあげるわ。でもね、
ここに来たからには必ずやらなくてはならない事があるのよ・・。」
「なんですか・・?」
篠はんなの状況にもかかわらず、誰もいない方向に向かって喋り続けてた。
なにかを、求めて王様になるとか、なにかを、集めたり・・?
「ある人を、助け出さないといけないのよ・・・。」
助け・・・出す・・・? って、救助・・?
*
「ラト村のローメスフ村長」
「まぁ、そういう事になるわね。出来る?出来ない限り、
ここにいる意味はなくなる、すぐ帰ってもらうわ。」
と大人びた声は言い放った。
もし今ココでこの救助をしなかったら私はココに来た意味がなくなっちゃう。
せっかく、こんな、不思議な体験をしたのに、こんな所で終わっちゃうなんて・・嫌!
「そうよね、よかったぁ~・・・!」
嬉しそうに声を上げた。
「じゃあ私やります!救助してみせます!」
宣言するように大声で言った。誰もいないのに。
「で、私はどうすればいいんですか?」
「そうね、では、目をつむりなさい。」
そっと目を閉じた。
3秒くらいの間だったけど、なんか、感じた。
「いいわよ。」
「・・・・何?何か変わったの?」
「おい、あんたなんじゃ?どこのヤツだ?」
「・・へ?」
顔を上げると、白髪の白ヒゲのおじさんが立っていた。
怖そうでもあるけど、少し優しい面もありそうだった。
「へではなかろう!!『へ』などは返事にならん!!どこのヤツだと聞いておるんじゃ!」
「え、えっとぉ・・どこって・・・」
「”マグナザの園”から来た、と言うのよ。」
大人びた声。あの声!とりあいず、声の指示通り答えた。
「えっと・・マグナジャのえ・・あ、マグナザの園から来ました!」
かんでしまった。
「マグナザの園~?そうかぁマグナザから来たのか。で!
なにをしに来たのじゃ?」
「リンビイを助けに来た」
大人びた声は指示をするようにサッと言った。
「リ、リンビイを助けに来ました・・。」
「リンビイだと!?おぬし、本当にその気があるのかい!?」
「は・・はぁ・・・。」
「ったく、最近のコは何を考えてるんだかのぅ・・
まあ、そういうコもいるもんだ。しょうがねぇ、道が分かんなくて来たんだろ。」
「え・・?あ・・あぁ・・はいぃ・・・。」
「しょうもない返事するヤツじゃの。よし、うちへあがれ。
なんの、すぐじゃ。地図を書いてやる。」
「はい・・ありがとうございます・・。」
「よかったじゃない。運がいいわ。村長に出会えるなんて!
ローメスフ村長は、ラト村の村長さんよ、顔を覚えていただくように
名前もちゃんと言っておくのよ。」
「村長さんなんだぁ・・。運がいいの?私って」
歩きながら独り言のように喋ってしまっていた。
「なんじゃ?なんか言ったか?独り言は大きくなってから恥をかくから今のうちに直しておいた方がいいんじゃぞ。」
歩くのが少し早まった気がした。
「あ・・はい・・・!私・・篠っていいます!鶴部 篠です!」
「んぁ?シノ?あぁそうか。よろしくな、わしゃローメスフじゃ。
ここ、ラト村の村長を務めておる。ほら、あそこじゃ、わしの家じゃよ。」
「お・・・大っきいですねぇ・・・。」
広さは東京ドームの半分程だけどすごく広く感じられる。
3階建てだが、とても高く仕上げられている。
だけど、豪華でもない。どこか、少し、素朴な感じが目に映った。
「ホラ、はやく入らんか。ボーッとしてるでない!」
「あっはっはい!!」
放り出されたように中へ入ると、外側よりうんと綺麗だった。
「そうじゃ、これじゃこれじゃ。」
ふんふんと白ヒゲをなでて、その地図を見ながらこっちに来た。
「ま、座れ。これじゃよ。」
綺麗なイスを差し出すと、篠の前に地図を広げてみせてくれた。
「すごいですね、こんなでっかいんでスカ、ココの国って。初めて見ました・・・。」
「なにぃ?あんた、ティアーン地図も見た事がないのかい!?
一家に一枚はあるはずの地図じゃぞぃ!?」
「え・・・あ、あぁ!!!見た事あるやぁ!!これぇ!!」
完璧なウソなのがばれそうなくらい声が裏返ってしまった。
「それじゃ、これを持って行ってよい。うちにはまだ何十枚と予備がある。
地図を頼りにして進むんじゃぞ。・・・リンビイは”ディンソン園”におる。
ムークーマシンに乗ればすぐじゃ。」
篠はいろんな言葉がでて来て、何を言ってるのかよくわからないかった。
「わかりました。ありがとうございました!!」
「ふんふん、良い返事じゃ。気をつけるのじゃぞ。」
篠はとりあいず、その地図を受け取りその家をでた。
*
「 ディンソン園 」
「えっとぉ?リンビイはディンソン園にいる、と。あっあと、
ムークーマシンとか言うヤツに乗れば、すぐっと。」
ペンで自分の手にメモをした。
「おーーーい!そこのあんたぁーー!」
後ろの遠くの方から声が聞こえる。それもおじいさんと言うには老けてるが、
40~50代後半の声だった。
「なんですかぁ~…………へっ!?」
その声の主は、確かに、おじさんだった。けれども、
馬のような、オレンジ色のの動物2匹にサンタクロースのように
おじさんがソリのような大きい荷物置きみたいな所に乗っていた。
そこまで篠は走って行った。
「な、な、なんですか?」
「あんた、見ない顔だな。お?それはティアーン地図じゃないか。」
「は、はい。そ、そうです……。」
「で、君どこまで行きたいんだね?」
「……はぁ、はぁ、……え?」
「だから、地図なんて持っておったらドコかへ行きたいのだろう?」
「あ・・はい。」
「どこまで行きたいんだ?」
「えっ……えっとぉ、」
急いで自分の手を見た。
「ディンソン園……。なんですけど……。」
そのおじさんは、少し悩んでからこう言った。
「おぬし、なぜ、そこへ行きたいのだね?」
「えっ……?」
「なぜ、行きたいかと聞いておるのだ。」
「えっと……リンビイを・・・助ける……ため……。」
「…………なんじゃい、リンビイかの……。」
「え、えぇ。」
すると、そのおじさんは携帯のようなものを取り出して何かを話しだした。
そして、電話を切ると、
「ココで待ってな、もうすぐ、”ムークーマシン”がココにくっから。」
「あ。はい。ありがとうございます……。」
それから、1、2分したら丸い、宙に浮いた機械がやって来た。
その中にはウサギみたいな動物が乗っていた。
「なに~?ディンソン園まで行きたいって?」
「はい!」
「どうぞ、後ろに乗って。」
中は、オレンジ色で座席が前と後ろで4人乗れるくらいだった。
「じゃ、出発するよ。あ、危ないからちゃんとスィートベルトしめてね。」
「はい。」
スィートベルトとは、シートベルトというのは、すぐにわかった。
「いっくよ~!」
「はい!!!」
一気に宙に浮き、スピードが出てパ前に進んだ。
「ひゃあぁぁぁぁぁぁぁぁっ~………」
「ちゃんと掴むとこ掴んでおきなよ~じゃないと、飛んでっちゃうからね~!」
あっという間に、ディンソン園という所に着いた。
「はい、着いたよ。」
「は、はひ~………。」
「じゃあね、気をつけなよ?」
「はひ、ありがとうございまひはぁ……。」
そして、ディンソン園に着いた。
*
「 リンビイ・パーシー 」
「こ……ここで…いいのかなぁ…。」
「いいのよ。」
「あっど、どうも……。」
たびたび、あの大人びた声に助けてもらいながら
ディンソン園へ着いた。
篠の中には、疑問があった。
(どうして、みんな私が「リンビイを助けに行く』と言うと驚くのだろうか…
リンビイと言う人に何かあったのだろうか………。)
「ねぇ!なんで、みんな私がリンビイを助けに行くと、言うと驚くの?」
返事はなかった。
「ねぇってばぁ!!」
周りの人々は、みんな篠に着目していた。
なぜなら、ひとりで、空に向かって、叫んでいるのだから。
ハッと篠が気づくと、ちょっと、疑問ではないが
変な事に気づいた。
(私、なんかココの変な世界に来てから、なんか真面目じゃなくなってない…?
しかも、なんかキャーキャー騒ぐようになったし…。
いつもなら、こんな感じじゃないのに……なんでだろう…?)
「ほら、そろそろ周りの人に聞いた方がいい~んじゃあなぁいの?」
「えっ?」
気づくとそこはただの草原だった。
何もない、ただの草原。
ずっと歩いていたら、たどり着いてしまっていたのだ。
「あぁ!?ど、どうしよう!!えっとぉ……!」
とりあいず来た道を戻って人を探した。
「あ、あれぇ~?…全然人…いない…?」
さっきの人々はどこにもいなかった。
「あ~ぁ~~!もう………なんでよぉ……。」
その場にしゃがむと、影が篠の上にかかった。
「ねぇ君。何してるんですか?」
「え??あ……あぁ……あの!!!」
急に立ち上がるとその声の主は驚いて尻餅をついてしまった。
「リンビ……あ!大丈夫ですかぁ!?」
急いでその人を立ち上がらせると、話をした。
その人は、白い制服で、大学のような所の帰りだったそうだ。
「へぇ~………リンビイを…………。」
「はい…そうなんです。あの!!」
今まで、ずっと抱え込んでいた疑問をついに打ち明けた。
「な、なんで、皆さんは『リンビイ』と聞くだけで驚くんですか!?」
「……な、なんでって……。」
「く、詳しく教えて下さい!!」
「うん……。」
リンビイは、昔、この隣の村、サグキ・ヴィーナと言う所に住んでいた。
そこはとても、豪華な所で、リンビイはそこの王女だった。
また、”リンビイ・パーシー”と言う名もあった。
そして、リンビイにはファンビィという名の妹もいた。
だが、ある日、リンビイは大きな罪を犯してしまった。
その内容は、ディンソン村とサグキ・ヴィーナ以外には知らされていなかった。
他の村には、内密で、なにも喋ってはいけない。
リンビイはそのまま牢屋へ行って、貧しくしている。
決して、釈放されない。村の住民などは許してはくれなかった。
そんな重い罪は篠にも教えてはくれなかった。
妹、ファンビィはリンビイが牢屋に行ってから4日後に行方不明になった。
そして、未だに見つかっていない、という。
「そ、そんな事があったんですか……だからみんな……。」
「え?なにかあったのかい?」
「え、えっと、みんなリンビイの事を聞くと驚いてあんまり事を教えてくれなかったんです。」
「そうなのか…。」
気の毒なんだ。あの、姉妹は。と、学生の男は続けた。
「気の毒?」
「うん…。あの姉妹はね、いつも、裏で両親に叩き付けられたり、八つ当たりされたり
縛り付けられたり、ヒドい事をされ続けてたんだ。」
「そ、そんなぁ!ひどすぎるよ……。」
「だからきっと、リンビイは罪を犯したんだろう…。」
「……ありがとうございました。私、がんばります。」
「本当に、助けに行くのかい?」
「はい!絶対に、助け出してみせます!!」
あの時のように、最初に
あの声にであったように、大きな声で、宣言した。
「じゃあ、牢屋への行き方、教えてあげるよ。」
その学生はとても優秀で大学では優等生らしい。
だから、牢屋の行き方も知っていた。
「はい、はい、………ありがとうございます!」
「気をつけるんだよ。」
「はい!!」
そして、篠は、駆け出した。
*
「 牢屋 」
篠はてこてこと、歩きながら、白い制服を着た優等生にもらった
地図を見ていた。
「ねぇ、なんで…なんで、あなたは私にリンビィを助けに行かせたの?」
「なんでか…わかる?」
「わっわからないから聞いてるのに!!」
「…そうね…。」
気づいたら、その声は少し、元気がなくなっていた。
「どうしたの?元気無いよ?」
「なんでもないわよ。気にしないで、ほら。」
「あっ!そうだ!リンビイさんと、ファンビィさんて、なん才なんだろ?」
「ファンビィはきっと、20才くらいじゃない…。」
「じゃあ、リンビイさんは?」
「22才じゃない。」
「何年くらいリンビイさんは牢屋に入ってるの?」
「8年……って、あなた、なんでそこまで聞くのよ。」
「だ、だって……もっと知りたいんだもん。」
「そうだけど…他の人に聞けばいいじゃない…なんで私に聞くの…」
「ねぇ、ホントに元気ないよ?」
「気にしないで。ほら、前見なさいよ。」
「あっ……」危なっ…。
あと一歩で沼に足を突っ込む所だった。
何歩か、後ろに下がる、そして前を向く。
「あれ……もしかして…!」「そうね。」
「よし…!!」
牢屋だった。薄汚い、灰色っぽい色の建物だった。
篠は入れる所を探しながら駆け出した。
「この辺かなぁ。」
小さな入り口を見つけた。
はいはい状態で入ってゆくと明るい所に着いた。
外は昼間で明るいけど、それよりか、少し暗い。
「だ、誰かいますかぁ……?」
「……誰?」
あの声よりも、もう少し、大人だった。
急いで振り返ったせいか、髪がなびいていた。
そこには、真っ白いけど、少し灰色になったワンピースを着ている、
女の人がいた。薄い水色の髪が腰までのびている。
篠は、ちょうど、背後の壁のすぐに入って来れる穴から入って来たのだ。
「誰なの」
「え…っと、り、リンビイさんですか?」
「そうよ。」
「よかった…!た、助けに来ましたっ!!」
「助けに・・来たの?」
その瞳はとても潤っていて、涙目になっていた。
「はい、リンビイさんを助けに来ました。」
「どうして………」
「…早く、ここから逃げましょう。」
「…はい。」
小声で喋り終わると、リンビイの手錠を外して、穴の所へ連れて行った。
すると、むこうの、牢屋の入り口の方から男の声がした。
「ほーら…リンビイ。食事……おい!!!何をしている!!」
「り、リンビイさんをこんな事にするなんて、ひどいです!」
(やばい…なんか、この場と合わない事言っちゃった……?)
「貴様、何者だ!」
「リンビイさん、早くっ!!」
そういうと、穴からリンビイを支えて出て行った。
(どうしよう…大変な事になっちゃう…。)
「ま、待って‥」
少し逃げてはなれた所で、リンビイがかすれた声で言った。
「な、何ですか?」
すると、牢屋の方に手を向け、何か早口でいった。
「我が精霊の守護に誓う…我の身を削り、神に捧げる。
北の悪のキオクよ、北の悪き者どものキオクよ、
我のこの身の誇りを持ち…消え失せろ……!!」
言葉の最後と同時にリンビイの手から、牢屋の方に向かって真っ白い光が放たれた
「キャぁぁっっ………!まぶし…!!」
「目、つぶってなさい‥!」
そういうと、もっと光が強くなった。
「この場に身の力を神に捧げる…今、我の憎む者のキオクよ…消え去れ…!」
「お姉ちゃん……私も……やる!」
「ありがとう…ファンビィ……」
あの声だった。
「えっ……?」
少し目を開くと、そこには、二人の少女がいた。いや、正確に言うと、
女の人が、一人増えていたのだ。
金色の髪の少女と、銀色の髪の女の人。
「「我が精霊の守護よ、我達の身を削り、神に捧げる…
北の悪き者たちの記憶よ、消え去れっ!」」
すごいハーモニーになっていた。
気付くと篠は、その場で倒れ、気を失っていた。
(あれは……ファンビィさんなの…?)
*
「 別れ 」
「あ……あれ?」
「気づいた?篠さん。」
「あっはい…。あれっ??」
目の前には金色の髪の女の子と銀色の髪のリンビイがいた。
「あ、あなたは?」
金色の髪の女の子に目を向けて言った。
「私よ。」
あの声だった。聞き覚えのある。
「その声……私が最初に聞いた…。」
「そうよ。」
「でっでも!!」
声と体ではずいぶん違っていた。
「そっか、びっくりしちゃうわよね。お姉ちゃん、出来る?」
「うん、いいよ。」
そういうと、また呪文を早口に言って
ファンビィに向かって手を向けた。
みるみるうちにファンビィの体が光り
一気に光が伸びて行った。
「ふぅ…これが、私の本当の姿、よ。」
「え、えぇっ?」
確かに、この声とこの体ならちょうどいい。
「分かるわよね?」
「はい……。」
「分かると思うけど、改めてご挨拶するわ。
私はリンビイ・パーシー。リンビイね。
そして、このコが、私の妹のファンビィ・ルーシー。
ん~・・ややこしいから、『リンビイとファンビィ』で覚えてね。」
「は、はい……。」
「助けてくれてありがとう、篠さん。」
「ううん、私のおかげじゃないよ?
今まで会って来たここの村長さんや、大学生、
それに、ファンビィさんのおかげだもん!」
「そうね、私が助けてやらないと、何も出来なかったもの。このコったら。」
「こら、あんたは何も言えないでしょ~ファンビィこそ、
あたしがいなきゃ何も出来なかったくせに。」
「違うもん!!逃げ出すのは、一人で出来たよ!」
と、もめ合いが始まった。
(あちゃ………どうしよう…)
「あっあの!二人とも!やめて下さい!」
「「………あ…はぃ。」」
「ファンビィさん、なんで、私にリンビイさんを助けるように指示したんですか?」
「それはね、あなたの心が純粋で素直な子だったからよ。」
「そ、そうですか…。」
「あっ………空を見て。」
リンビイが言った。
空が真っ白に輝いていた。
「あなたのお迎えね。」
「えっ……?」
「あなたはもう帰らなくてはならないわ。」
「そ、そんなぁ……。」
「悲しまないで。私達はあなたに感謝しているんだもの。
こんな人に出逢ったの初めてだもの。とても嬉しいわ。」
「そうよ、私もこうして自由な身になれたんだもの。」
「でっでも!もし、また兵隊みたいなのが来て、リンビイさんが
連れ去られちゃったら……。」
「大丈夫よ、私がこれからうまくするわ。」
ファンビィが自信満々に胸を張って微笑んだ。
「でも……」
「心配しないで、コレからは二人で、頑張って行くわよ。」
「私達も、淋しいわ。でもね、あなたはここの世界の人間ではないの。」
篠の手をギュッと握り、目を見た。
「そうだけど…。」
「ほら、階段よ、登りなさい。」
空の光から、階段がおりて来た。
「もう…お別れね。」
「私、まだ話したい事、いっぱいあるんです!!」
とりあいず、階段を登りながら叫んだ。
「私達も、たくさんたくさんあるわ。でもね、神には逆らえないのよ。」
「あなたと、きっとまた会えるわ。」
「でも、もうこっちに来れないんでしょう!!」
リンビイたちの方を見て一生懸命叫び、一生懸命登る。
帰りたくないのに。 帰りたくないのに足が速い。
早く頂上に着いちゃうよ、やだよ。まだ行きたくないよ。
「きっと、あなたに会える!あなたの世界で!あなた自身の世界で!逢えるわ!きっと!」
「そう!あなた自身の世界に!私達はいるから!」
「でも……私………………」
続きを言おうとした所でまぶしさに目がくらみ目をつぶってしまった。
「「元気でね!!またね!!」」
そして篠は大きな光に包み込まれて行った。
私、還っちゃうんだ。もう、この世界に来れないんだ――――
*
「 ありがとう、ごめんね 」
「篠っ!?篠?目を覚まして!篠っっ……」
お母さん……?
確かに、お母さんだ。
でも、明らかに、コレは、夢だった。
変な空間から眺めているのが、よくわかった。
自分にお母さん泣いて、抱きついて揺さぶっているのが分かる。
お母さん、私、生きてるよ。泣かないで…
呼びかけても、声が出ない。夢だから。お母さんには聞こえない。
お母さんっ……!!!
「篠さん?大丈夫?」
次は、女の子の声だった。聞き覚えのある。
「……?」
「よかった!生きているわ!あのね、篠さん、
あなた、あの階段から落ちて来たのよ。」
「えっ……?」
「大丈夫よ、まだ階段はあるわ、あなたが、還らない限り…って
そういう言い方は、変よね。ここに来た人が、還らなければ
ならない時に来る階段だから。」
よく見るとそれはリンビイだった。一緒に喋っているのがファンビィだった。
「そ、そっか。ありが‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
『ありがとう』そう言おうとした時、
『とう』が勢いのいい光と、台風のような風に打ち消された。
「きゃぁあああああ!!!」
3人の女の子の悲鳴が上がる。
銀の髪と金の髪が風邪の流れる方に引っ張られるようになびく。
辺りが静かになったとき、篠は目を開いた。
「…これ…何……?」
さっきと場所が違うかのように辺りは、まっさらになっていた。
つまり、城も、木も、なにもかもが消えていた。
「神様が……お怒りだわ…あなたが私達を助けた事を知ってしまったわ……。」
「これは、罰……な‥のよ。」
「罰…?」
二人の方を見ると、さっきと様子が違った。
違うも何も、なにかがおかしい。
二人が、大怪我をしているのだ。
でも、篠は何ともなかった。
「私達が……罰を受けなくては…ならないの…。」
「だから…篠さん……早く…還らないとあなたまで…
罰を受けてしまうわ……」
「そ…そんな!私が、私がやったのに、
なんであなた達が罰を受けるの…!?」
「それは、あなたはここの世界の人間じゃないの、だからよ。」
「でも……!…だったら、私も、罰を受ける!」
「だめよ!!!!」
「篠さん、あなた、もう二度とあなたの世界へ還れなくなってもいいの……?」
「え…?」
「還れなくなってもいいの?あなたに、その覚悟がおありなの?」
「もう、二度と?……私の世界に還れないの?」
「……そうよ。…だから、早く、あの階段を上って……………」
次の瞬間、また、光が放ち、風が勢いよくこちらに向かって来た。
「早く…………!!!!!!」
「リンビイさん!!ファンビィさん!!!!!」
篠は階段を登り、登り、登った。
リンビイ達を確かめてみた。
「リンビイさん…ファンビィさん…。」
下を見ると、リンビイ達のいた場所が
赤く、血の色に染まっていた、ふたつの何かがあった。
「えっ………!?」
目にわっと涙がたまり、一気に流れ出た。
信じられない。
声がした。「「早く……早く……!!」」
篠は、我に返り、急いで頂上まで登り詰めた。
「はぁ……はぁ……ここ……?」
そこは、ガラスのような、透明になった広場のようだった。
そして、茶色い扉があった。
「もしかして…。」
急いで、その扉まで走りドアノブを掴んだ。
篠は振り返り、叫んだ。
「ありがとう!!!ごめんね!……!!」
「「さようなら、なんて、言わないで。」」
「じゃぁ、なんて言えばいいの!?」
強い風にふかれながら叫んでいた。
「「またね!って、元気でね!また逢おうね!って!!」
「また逢おうね!元気でね!!あたし忘れないから!」
「「私達もわすれないわ」」
思い切り叫んだ。目にはたくさんの涙がたまっていた。
そして頬を伝い流れた。
「ありがとう!」
そういうと、ドアノブを掴み一気にドアを開いた。
*
「 両親 」
今度こそ、お別れだね。
でも、あなた達のおかげで、私、なにか、身につける事が出来た。
ありがとう。リンビイさん、ファンビィさんーーーーーー。
それは、触った事のある、布団だった。
目をゆっくりと開いた。
そこは、見覚えのある机があった。
そこには、見覚えのある、タンスもあった。
そこには、お父さんとお母さんが
仲良く話をして、「篠もこっちへおいで」と
手招きして、お菓子を用意してくれる
暖かいリビングへ繋がる、部屋のドアがあった。
自分の部屋だ。
それは、確信できる。
(もしかして、私があの世界にいた時
こっちの世界では、ずっと寝ている事になっていたのかな。
もしかしたら、意識不明とか、行方不明になったりしていて
あの古いお店から発見されて…)
そこで篠は自分のお母さんが自分に泣きついて
名前を叫び上げている夢を思い出した。
(あれは…本当に起っていた事なのかなぁ。
今…お母さん、何してるんだろう。)
急いでベットから降りようとしたとき、
リビングへと繋がる、ひとつの部屋のドアが
がちゃりとなった。
(誰……?)
(お母さん…?)
「だから言っただろう…もう…篠は…
目を覚まさないんだ…医者の方だって
もう無理だと言っていたじゃないか!!」
お父さんだ。
「でもあなた!篠は…目を覚ますかもしれないのですよ!
どうして、あなたは医者の言う事や、周りの言う事に
耳を向けてしまうのよ!わたしが言った事なんて
ひとつも聞いてくれないのに…」
お母さん……!
ドアノブから手が離れるように
ドアノブが元に戻るように回転して
静かに動く。
パシンッ…
一つの叩かれる音がした。
お母さん?お父さん?
誰が…叩いたの?
「何するのよ!私があなたになにかしたの?!」
「あぁしたよ!!俺は周りの言う事を耳に向けているんじゃない!
自分の意見を言っているんだ!!それなのにお前はそれに
ちっとも気づいてくれないじゃないか!」
「それは…」
喧嘩?どうして?止めなくちゃ…
怪我しちゃう。大変な事になっちゃう…。
『怪我』と言う所で篠に瞬間的に
階段から見下ろしたときリンビイとファンビィが、
血の色に染まった所に倒れている光景が
瞳に浮かんだ。
「だめだよっ……早く…止めなくちゃ……!」
涙が目に浮かんだ。
そして、孤独な映像が篠の頭の中をよぎった。
もしここで、私が喧嘩を止めようと、
この部屋のドアを開いたら、きっと、二人とも驚いて
信じてくれそうにない。
だから「誰だ」とか「篠じゃない」だなんて
言われたら…どうしよう…。
だれだか…わからなく…なってるのかも…しれない…。
怖くて、怖くて、しょうがなかった。
でも、止めなくちゃ。
急いでベットを降り、ドアへと向かう。
たった、5、6歩だけど、長く感じられた。
怖いから。 とても怖い。
ドアノブを掴む。まるであの時のように。
「ありがとう!」って叫んだ時みたいに。
怖くて、悲しくて、あの光景がまた浮かぶ。リンビイさん…ファンビィさん…。
私、がんばる!
「だめぇ!!!!!」
勢い良く、ドアを開く。
そこには唖然と口を開いてヘタレこんでいる母親と
腹部を押さえ、指の間から血を流している父親がいた。
そして、二人の間。やや父親よりの床に先端が赤く染まった包丁があった。
遅かったんだ。
「篠…!?」
「し…の……ごめん…おとうさ………」
そういいかけた所で、倒れた。
「お父さん!お父さん!?」
「篠……生きてたのね…。」
なんでよ
「ねえ!なんで!どうして!?どうして殺したのっ…!?」
「よかった…篠が生きていてくれて…。」
どうして
「ねえ!なんでよ!」
「大丈夫…?頭…クラクラしない?」
なんで問いに答えてくれないの
「ねえ!お母さん!なんでお父さんを殺したの!?
なんで、あたしの質問に答えてくれないの!?」
いつもの、あたしだ。
あの世界のときみたいに、可笑しくなってないよ。私。
あんなテンションじゃないよ。こんな積極的な私に戻ってるもん。
大丈夫。リンビイさんとファンビィさんが教えてくれたんだ…。
「ねぇ!お母さん!」叫んだ。めいいっぱい叫んだ。
「お母さん、お父さんには、嫌で嫌でしょうがなかったのよ…。
大事な一人の娘が父親を待っているのに。それなのにっ……。」
篠が不幸な娘になってしまう。私は、もっと幸せな娘にしてあげたかったのに…
と、泣き崩れながら続けた。
「どうして?それだからって…私、別に…不幸なんかじゃないよ!!」
そう言うと篠は急いで、電話を取り、救急へと電話をかけた。
これで、いいの?
お父さんは、死んだ。もちろんお母さんに殺されて。
お母さんは、牢屋へ行って、20年間牢屋生活。もっと、かもしれないけど。
*
「 逢える 」
とりあえず、篠は伯母さんの家で預かってもらっていた。
しばらく、休んでいたが、とりあえず、学校へ行ってみる。
「あっ!鶴部さーん!」
高い少女の声が聞こえる。
振り向くと、クラスメイトだった事に気づく。
「久しぶりだねっ。どうして、学校休んでたの?」
あとから、もう1人が鞄を持たされながらやってくる。
「は、はぁ…はぁ…あっ!鶴部さん!」
くりくりした目で篠の目を覗いてくる。
「きいてないの。」
「え?先生、何も言ってないよ。『鶴部は今日も休みかー』とかしか。」
「うん、『珍しいなー』とか、言ってたよ。」
担任の、四十代後半の低い声を真似して、笑っている。
「ふーん。」
篠は興味のなさそうにして先を歩いて行った。
「えっ!待ってよ!鶴部さん!」
「待ってぇ!しょ、昌子ちゃんっ」
召使いのように、すこし太り気味の少女がてってと走ってくる。
「ねぇ、久しぶりにあったのに、そんな態度とっていいと思ってんの?」
篠はきつい目をしてくるくるカールの”昌子”と呼ばれる少女を見た。
「はぁ……久々に学校へ行こうと思ったのに、行く気失せちゃったよ…昌子さん。」
あきれたように”昌子”を睨みつける。
「何よぉ……!!!」
篠は先を早歩きで歩く。
(やっぱ、あの時と、私、なんか違ってるんだ。)
学校へ行くと、暑そうな顔をして、担任の先生が教室へ入って来た。
「今日は転校生がいます。2人。女子だ。仲良くしてやれよ」
そういうと、先生の後に続く2人の少女を見た。
一瞬で、心臓が凍り付いたように思えた。
しかし、そこで、心がなごんで暖かくなった所もあった。
そして、感情が溢れ出た。
分けも分からず、涙が出た。
その少女は金色の髪と銀色の髪をした少女達だった。
「リンビイさん……!ファンビィさっ……!!!」
大声では言えなかったが、小声で言った。
「うそ……………。」
確かに、リンビイとファンビィだった。
二人が並んだ瞬間、教室は、ゆっくりと静かになっていった。
外人のような、綺麗な髪に驚いている。
「はじめまして、夢野 藍(ゆめの あい)です。よろしくお願いします。」
小さな口を先に動かしたのは金色の髪の少女だった。
「はじめまして、藍の双子の姉、夢野 梨依(ゆめの りい)です。よろしくお願いします。」
次に小さな口を動かしたのは銀色の髪の少女だった。
すぐに分かった。顔も、声も、全く一緒だったから。
名前はきっと、リンビイは「リンビイ」の「リ」と「イ」を取ったのだろう。
ファンビィは「ファンビィ」の小さい「ア」と「イ」を取ったのだろう。
どちらも、ちゃんとした双子のように、「イ」が最後に着いている。
篠はわっと涙がたまったが、誰にも見えないように手で拭い、
転校生をじーっと見ている振りをした。
「じゃあ、鶴部さんと、川本君の後ろの席に、座って下さい。」
と先生が言うと、篠側を通る。
だが、その時。
先を歩く、妹、藍(ファンビィ)は右手をサッと動かし、
篠の手の所へ紙を置いた。
そして、篠に微笑んで、席に向かう。
姉、梨依(リンビイ)はそのまま篠に微笑んで
席に向かう。
そっと、その紙をひらくと、
『屋上で待ってるよ。 あい りい』
と書いてあった。
あい は黄色のペンで、りい は水色のペンで。
それぞれ、名前の最後にハートマークがついていた。
(……!やっぱりリンビイさん達だったんだ……!)
後ろを振り向き、サッと二人を見る。
梨依(リンビイ)口元が微笑んで、「放課後ね」と小さい声で言った。
学校が終わると急いで、屋上へ駆け上がった。
息をきらしても、きらしても、登り続けた、あの階段のときのように。
ばんっとドアを開くと、そこには、外を眺めている
金の髪と銀の髪がなびいていた。
「リンビイさん!…ファンビィさんっ……!!」
二人が振り向く。
微笑み、言った。
「ね、逢えるって言ったでしょう?」
「元気にしてた?」
「「篠さん」」
逢いたかった。きっと、逢えると思ってた。
還って来てから、ずっと、ずっと、心の中にいた。
信じていた。あの二人を。
きっと、逢えると言う言葉を信じていた。
私、ちゃんと、あなた達を守れたかな。
守れたよね。
だって、こうして、笑っていられるもの。
今、一緒に笑ってるのは、あの二人なのだから。
E N D
*
「ほんとに、篠ったら、泣いちゃって泣いちゃって。」
「うるさいなぁっ!でも、本当に悲しかったんだよ!?
血まみれになってて、二人が倒れてたからさぁ。」
屋上で、わいわいと騒ぐ。
”昌子”に見せた『篠』じゃなく、別の世界にいたときの『篠』で。
「そりゃあ!篠ちゃんがさっさと行ってくれないからよ~」
と、わざといじめるように笑いながら藍が言う。
「いいじゃないの、篠ちゃんがちゃんとこっちの世界に戻って来れたんだもの。」
微笑み、喧嘩を始めようとした二人を止める、梨依。
ここでは、もう、「篠さん」ではなく、「篠ちゃん」「篠」と呼び合っている。
「そ、そうなの?戻って来れない人、いたの?」
「まぁねぇ~。そうそういないのよ。私の言う事きいてくれる人。」
つんっと口を尖らせて藍が腕組みをする。
「ひどいよ、誰もきいてくれないなんてっ!!」
「落ち着いて篠ちゃんっ。中には、ちゃんときいてくれる人もいたのよ?」
「えっ?そうなの?」
地団駄を踏む篠の足が止まる。
「うん、でも、篠みたいに、ここ、良くないからさ。」
と、藍が人差し指で、こめかみ辺りを、とんとんと叩く。
「だから、兵隊に捕まっちゃうのよ。」
「そう、だからあの壁の穴からやってきた篠ちゃん見て、
あたし、びっくりしちゃったもの。」
口を押さえて笑う。
「みぃんな、門から堂々と入ろうとするのよ?
無理に決まってるのにさぁ?」
まったく、と言わんばかりの身振り手振りをする藍。
「そんな事言わなくてもいいんじゃない?
ファンビィの言う事、きいてくれる人いたんだから。」
「でもさぁ、お姉ちゃんのいる所とか、誰にもきかないんだよ?」
二人は、『ファンビィ』『お姉ちゃん』とあの世界の時のように呼び合っている。
「頭が固いねぇ~。頭が。でも、篠は違うよね。」
大人っぽい声の藍の手が篠の頭にのっかる。
「ほんと。」
梨依の手が篠の方にのっかる。
「え?え?」
「篠、あんたほんと幸運の人だよねっ!だってさ、あんな頭いい人に
会うなんて、すごいじゃないの。」
「壁の穴から入るとか、よく考えたわね」
「そ、そう?やっぱ、あたしってば、いい人じゃん?
なんか、お礼してくんなきゃなっ♪」
『えっ。』と藍が固まる。
フフっと優しく笑う梨依。
はははっ、ジョーダンだよぉ~ と篠が手を上下に振る。
「そうだ…篠、お父さん死んじゃって、お母さん、牢屋でしょ?」
「うわぁ。牢屋って言葉、もうきかないと思ってたのにぃ。」
梨依が『苦い!』と同じような顔をする。
「うんっ…なんで知ってんのっ…!?」
「なんでも、知ってるわよ、篠ちゃんの事なんだから」
「そうよ。」
ニッと笑う。
「あ、で、うちにこない?それで、お礼って事でさっ!」
片手を腰に当てて、もう片手が篠の方をぽんっと叩く。
「あら、それいいわね、いい事思いつくじゃないファンビィ!」
「でしょ?お姉ちゃんも喜ぶと思って。篠は?どう?」
「ん~そうだなぁ。伯母さんにきけば、きっといいって言ってくれるよ!!」
「ほんと!!」
「やったぁ!」
三人で、広い屋上の上で、輪になってくるくる回る。
あはははっ。と言う声が青い空に広がる。
篠は回されて、梨依は目もまわらずクスクスと笑う。
藍は、篠と梨依を見て笑い、回る。
藍は、現代っ子になじんでしまう子に。
梨依は現代っ子の中の、おしとやかの子に。
篠は、元気はつらつな面もあれば、クールな面もある子に。
あの世界にいた時、未知Daysだった事を、私は、覚えてるよ。
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