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第百三段【本文】 むかし、男ありけり。いとまめにじちようにて、あだなる心なかりけり。深草の帝になむ、仕うまつりける。心あやまりやしたりけむ、親王たちの使ひたまひける人をあひ言へりけり。さて、寝ぬる夜の 夢をはかなみ まどろめば いやはかなにも なりまさるかなとなむ、よみてやりける。さる歌のきたなげさよ。【注】〇まめなり=まじめだ。勤勉だ。健康。〇じちようなり=実直だ。律儀だ。〇あだなり=『角川必携古語辞典』の〔ことばの窓〕「あだ」と「まめ」によれば、「あだ」は、花が実を結ばないことを原義とするともいわれ、内実がなく、空虚なことを示す。一方「まめ」は、実があること、誠実で実意のあることを示す。〇深草の帝=仁明天皇。京都深草山に葬られたのでいう。〇仕うまつる=お仕えする。「仕ふ」の謙譲語「つかへまつる」のウ音便。〇心あやまり=心得ちがい。魔が差すこと。〇親王=皇子。天皇の子・子孫。〇使ふ=そばめとして使う。『伊勢物語』六十五段「むかし、おほやけおぼして使うたまふ女の」。〇あひ言ふ=契ってねんごろに語らう。〇さて=そうして。〇寝ぬ=眠る。〇はかなむ=頼りなく思う。 〇まどろむ=しばらくうとうとする。〇いやはかな=いっそうむなしい状態。 〇なりまさる=ますます~になる。『竹取物語』「この児、養ふほどに、すくすくと大きになりまさる」。〇きたなげさ=見苦しさ。【訳】むかし、男がいた。とても勤勉で実直で、いい加減な気持ちがなかった。仁明天皇にお仕えしていた。魔が差したのだろうか、皇子たちが、そばに置いて用事を言いつけて使っていた女性と契ってねんごろに語らうようになった。そうして、女に送った歌。あなたと共に眠った夜の、夢のような嬉しい記憶を頼りなく思って、もう一度鮮明に見ようとしばらくうとうとしたところ、ますますむなしい状態になることだなあ。と作って送った。そんな露骨な歌の見苦しさよ。
April 30, 2017
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【本文】昔、内舎人なりける人、おほうわの御幣使ひに、大和の国にくだりけり。【訳】むかし、ウドネリだった人が、オオミワ神社の官幣使として、大和の国に下ったとさ。【注】「内舎人(ウドネリ)」=中務省に属する職。帯刀して宮中を警備し、また、宿直や雑役にあたる。行幸の際には、供をして警護する。ウチノトネリ・ウチトネリともいう。百五十五段に既出。「おほうわ」=「おほうわ」は「おほみ(ミ)わ」の誤写かと考えられている。すなわち、奈良県の三輪山のふもとにある大神神社。「御幣使(みてぐらづかひ)」=格式の高い神社に対し、祈年祭・月次祭・新嘗祭に、朝廷から神祇官を通して幣帛をささげる使者。官幣使。【本文】井手といふわたりに、きよげなる人の家より、女ども・わらはべいできて、このいく人をみる。【訳】井手という土地付近で、こざっぱりとした民家から、女どもや子供が出てきて、この使者を見た。【注】「井手」=歌枕。京都府綴喜郡井手町。山吹と蛙の名所として和歌によく詠まれる。「きよげなり」=こぎれいだ。「わらはべ」=子供。また、貴族や寺に使われる召使。【本文】きたなげなき女、いとをかしげなる児を抱きて、門のもとにたてり。【訳】こぎれいな女が、とてもかわいらしい赤ん坊を抱いて、門のところに立っていた。【注】「きたなげなし」=こぎれいだ。見苦しくない。「をかしげなり」=かわいらしい。【本文】この稚児の顔のいとをかしげなりければ、めをとどめて、「その児こち率てこ」といひければ、この女寄りきたり。【訳】この赤ん坊の顔が非常にかわいらしかったので、目を留めて、「その赤ん坊をこっちへ連れてこい」と言ったので、この抱いていた女が近寄ってきた。【注】「率(ゐ)る」=連れる。【本文】近くて見るにいとをかしげなりければ、「ゆめ異男したまふな。我にあひたまへ。おほきになり給はむほどに、参りこむ」といひて、「これを形見にしたまへ」とて帯を解きてとらせけり。【訳】近くで見ると、たいへんかわいらしかったので、「決してほかの男と結婚なさるな。私と結婚なさい。この子が大きくおなりになる時分に、参上しよう」と言って、「これを記念になさい」と言って、帯を解いて与えた。【注】「をかしげなり」=なんともかわいらしい。「ゆめ~な」=「けっして~するな」。「あふ」=結婚する。「形見」=遠く別れた人を思い出すきっかけになるもの。【本文】さて、このしたりける帯を解きとりて、もたりける文に引き結ひて、持たせていぬ。【訳】そうして、この巻いていた帯を解いて手に取って、持っていた手紙に引きむすんで、与えて立ち去った。【注】「さて」=そうして。そこで。【本文】この児、今年六七ばかりありけり。この男、色好みなりける人なれば、いふになむありける。【訳】この子は、今年六歳か七歳ぐらいだった。この男は、恋愛の情趣を解する人だったので、こんなふうに言ったのだった。【注】「色好み」=恋愛の情趣を解する人。石田穰二訳注『伊勢物語』第二十五段の注に「最も古くは、どんな女性でも選びうる、またそうするほど家、国が栄える、男性の理想像を意味したが、平安時代、一般には単に粋人とか、多情な人とかに用いられた」と見える。【本文】これをこの児は忘れず思ひ持たりけり。【訳】こう言われたことをこの子は忘れず使者のことを思って記念の品を持っていた。【注】「これ」=官幣使の掛けた言葉と形見の帯。【本文】かくて七八年ばかりありて、又同じ使にさされて、大和へいくとて、井手のわたりにやどりゐてみれば、前に井なむありける。【訳】こうして七・八年ほどたってから、再び同じ官幣使として派遣されて、大和の国に行くというので、井手の付近で宿泊して、みてみると、前に井戸があった。【注】「さされ」=派遣されて。使いにやる。さしつかわす。『今昔物語集』巻十六「使ひをさして、多くの財物を持たしめて」。【本文】かれに水汲む女どもがいふやう、 (この段は原文がここで途切れている)【訳】彼に向って水汲み女がいうことには、【注】「水汲む女」=水汲みに従事する女。こういう肉体労働に従事する下働きの女性を雑仕女(ゾウシメ)という。
September 2, 2016
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【本文】在中将、二条の后の宮まだ帝にもつかうまつり給はで、ただ人におはしましける世に、よばひたてまつりける時、ひじきといふものをおこせて、かくなむ、おもひあらばむぐらの宿に寝もしなむひじき物には袖をしつつもとなむのたまへりける。【訳】在中将が、二条の后の宮が、まだ帝にもお仕えなさらず、普通の貴族の身分でいらっしゃった時期に、呼びかけて求婚もうしあげていたあるとき、ひじきという物を送ってきて、添え状にこのように歌がかきつけてあった、愛情がもしあるなら、むぐらの生い茂っているような粗末な家でもきっとあなたと夫婦の契りを結んで共寝もするだろう。この着ている着物の袖を下に敷いてでも。と歌のなかでおっしゃっていた。【注】「在中将」=在原氏で近衛中将に任じた者。在五が中将(在原業平)。「二条の后の宮」=清和天皇の后、藤原高子。藤原の冬嗣の孫、長良の子にあたる。「后の宮」=皇后または中宮の尊敬語。「つかうまつる」=「つかふ」の謙譲語「つかへまつる」のウ音便。目上の人の傍らにいて、その用事をする。お仕えする。「ただ人」=天皇・皇族などに対して臣下。「よばふ」=言い寄る。求婚する。古い風習として、男性が女性へものをいう。「おこす」=よこす。送ってくる。「むぐらの宿」=蔓草が生い茂りからまった家。荒れ果てた貧しい家。『伊勢物語』三段に見える。「ひじきもの」=「ひじき」と「引き敷物」を言い掛けた。【本文】かへしを、人なむわすれにける。【訳】返歌を、この男は忘れてしまった。【注】「かへし」=歌による返事。【本文】さて、后の宮、春宮の女御ときこえて大原野に詣で給ひけり。【訳】ところで、二条の后が、春宮の女御と申し上げた時分に、大原野に参詣なさった。【注】「大原野」=平安遷都後、藤原氏が奈良の春日大社を小塩山のふもとに勧請して氏神とした大原野神社がある。祭神は、天児屋根命(あめのこやねのみこと)。京都府乙訓郡(今の京都市西京区)大原野にある。【本文】御供に上達部・殿上人いと多くつかうまつれり【訳】御供として上達部や殿上人が多数付き従いもうし上げていた。【注】「上達部」=大臣・大納言・中納言・参議および三位以上の者。上級の役人。「殿上人」=四位・五位および六位の蔵人の中で特別に清涼殿の殿上の間にな人。中流貴族。【本文】在中将もつかうまつれり。【訳】在五が中将(在原業平)も、その参詣の一行に付き従いもうしあげていた。【注】「つかうまつる」=「つかへまつる」のウ音便。【本文】御車のあたりに、なま暗き折りにたてりけり。【訳】お車の付近に、うすぐらい時に、立っていた。【注】「なま」=中途半端なようすを表す【本文】宮しろにておほかたの人々禄たまはりて後なりけり。【訳】御神殿のところで、大部分の人々がご祝儀をいただいてのちのことだった。【注】「みやしろ」=ご神殿。「おほかた」=大部分。「禄」=祝儀。ほうび。ふつうは衣服が与えられた。【本文】御車のしりより、たてまつれる御単衣の御衣をかづけさせたまへりけり。【訳】御車の後部から、お召しになっていた単衣の御着物を祝儀としてお与えになった。【注】「たてまつる」=「着る」の尊敬語。ご着用になる。お召しになる。「かづく」=褒美の品として衣服を肩にかけて与える。祝儀を与える。【本文】在中将たまはるままに、大原やおしほの山も今日こそは神代のことをおもひいづらめとしのびやかにいひけり。【訳】在五が中将(在原業平)は、頂戴するやいなや、大原の小塩山の神も、今日こそ神代のことを思い出されることだろう。と周囲の人に聞こえないように口ずさんだ。【注】「たまはる」=「受く」「もらふ」の謙譲語。いただく。頂戴する。「しのびやかに」=目立たないように。「いふ」=詩歌などを口ずさむ。「おしほの山」=歌枕。京都市西京区にある山。【本文】昔をおぼしいでてをかしとおぼしけり。【訳】昔交際していたころのことを思い出しなさって心ひかれる思いをなさった。【注】「おぼしいづ」=「おもひいづ」の尊敬語。「をかし」=心惹かれるようす。
August 8, 2016
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【本文】同じ内侍に在中将すみける時、中将のもとによみてやりける、秋はぎを彩る風の吹きぬれば人の心もうたがはれけりとありければ、【訳】同じ内侍のところに在五中将、在原業平が通っていたときに、内侍が業平の中将のところに作って送った歌。秋の萩を色づける風が吹いたので、私に対するあなたのお心にも飽きがきたかと疑われるなあ。という歌が書いてあったので、【注】「同じ内侍」=染殿の内侍。百五十九段に既出。「すむ」は、男が妻と決めた女の家に通って泊まる。「秋萩」は、秋に花の咲いた萩を特に称賛していう語。「~とあり」=「~と書かれている」。【本文】かへし秋の野をいろどる風はふきぬとも心はかれじ草葉ならねばとなむいへりける。【訳】内侍の歌に対する返事の歌、秋の野を吹いて草木の葉をさまざまに彩る秋風がたとえ吹いても、私の心はあなたから離れるつもりは無い、枯れることはありませんよ、草の葉ではないのだから。と心境を歌に作った。【注】「かへし」=返事として作った歌。「秋風」=「飽き」を掛けて、心変わり・冷淡な気持ちなどのたとえ。「かれ」=「離れ」と「枯れ」の掛詞。【本文】かくて住まずなりて後、中将のもとより衣をなむ、しにおこせたりける。【訳】こうして業平が通わなくなってのち、業平の中将のところから、着物を仕立てによこした。【注】「おこす」=送ってくる。よこす。【本文】それに「あらはひなどする人なくていとわびしくなむある。なほ必ずして給へ」となむありければ、【訳】その際の添え状に「洗い張りなどをする人がいなくてとても困っている。大変でしょうがきっと仕立ててください。」と書いてあったので、【注】「あらはひ」=物を洗うこと。洗濯。金澤庄三郎編纂『広辞林』に「あらはひなどする人のなかりければ」という例を引く。「わびし」=困ったようす【本文】内侍、「御こころもてあることにこそはあなれ。大幣になりぬる人のかなしきはよるせともなくしかぞなくなる」となむいひやりたりける。【訳】それに対する内侍の返事の手紙に「ご自身の御心によって今の苦境があるようだ。多くの女性から引くてあまたの大幣のような状況になったあなたの悲惨なところは、結局はこれと決めた一人の女性がいないために、たよるところがなくこんなふうに泣き言をいっているようなところです。」と言って送った。【注】「大幣」=幣の美称。神に祈るとき、ささげるもの。榊に麻苧や木綿(ゆう)を用い、のちには織った布・紙・絹などの細かく切ったものを用いた。神祇官・上卿以下が手をかけて祓をする。使用後は水に流された。『伊勢物語』第四十七段を参照されたい。「よるせ」=流れ寄る浅瀬。男が一か所に身を寄せる妻のところを暗示する。【本文】中将、ながるともなにとかみえむ手にとりてひきけむ人ぞ幣としるらむとなむいひける。【訳】それに対するさらなる中将の返事に、たとえ寄る瀬がなくて流れていても何だと見えるだろうか。手にとって引きよせたとしたら、そのとき初めて人は幣だということがわかるのだろう。という歌を作った。
August 7, 2016
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【本文】染殿の内侍といふいますかりけり。【訳】染殿のないしというかたが、いらっしゃった。【注】・染殿の内侍=未詳。一説に右大臣藤原相良の娘、また一説に権掌侍藤原因香の娘。染殿は藤原義房の邸宅の名で、のちに京都市上京区の地名となった。・「内侍」は、掌侍(ないしのじょう)。後宮女官の三等官。【本文】それを能有の大臣と申しけるなむ、時々すみたまひける。【訳】それを右大臣能有と申し上げたかたが、時折、彼女の家に通っておられた。【注】能有=文徳天皇の子で右大臣。(八四五~八九七年)。【本文】物をよくしたまひければ、御衣(おほむぞ)どもをなむ預けさせ給ひけるに、綾どもを多く遣はしたりければ、「雲鳥の紋の綾をや染むべき」ときこえたりしを、【訳】物事をなんでも十分にこなしなさったので、お着物類をおあずけになっていたが、あやぎぬを多く送ったところ、「雲と鳥の模様のあやを染めるのがよろしいか」と申し上げたところ、【本文】ともかくものたまはせねば、「えなむ仕うまつらぬ。さだめうけ給はらむ」と申したてまつりければ、【訳】うんともすんとも返事をおっしゃらなかったので、「ご指示がないと処理いたしかねます。御取り決めをうかがいましょう。」と申し上げたところ、【注】・「ともかくも」=ああしろともこうしろとも。・「のたまはす」=「いふ」の尊敬語。・「つかうまつる」=「す」の謙譲語。・「うけたまはる」=「聞く」の謙譲語。・「たてまつる」=謙譲の補助動詞。【本文】大臣の御返り事に、くもとりのあやの色をもおもほえず人をあひみで年の経ぬればとなむ宣へりける。【訳】大臣の返答のお手紙に、雲や鳥の模様の色も区別がつかない。愛するあなたに合わずに何年もたってしまったので。とおっしゃったとさ。
August 7, 2016
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【本文】大和の国に男女ありけり。【訳】大和の国に男と女とがいたとさ。【本文】年月かぎりなく思ひてすみけるを、いかがしけむ、女をえてけり。【訳】長年互いにこのうえなく愛して暮らしていたが、どうしたのであろうか、別に女をつくったとさ。【本文】なほもあらず、この家に率てきて、壁を隔てて住みて、わが方にはさらによりこず、いと憂しとおもへど、さらに言ひも妬まず。【訳】それだけではなく、新しい女をこの家に連れて来て、壁を隔てて住んで、わたしのほうへは、いっこうに寄りつかない。元の妻は非常につらいと思ったが、けっしてねたましい気持ちを口にしなかった。【本文】秋の夜の長きに、目をさましてきけば、鹿なむ鳴きける。【訳】秋の夜の長いときに、目を覚まして聞くと、シカが鳴いていた。【本文】物もいはで聞きけり。【訳】だまってじっと聞き入っていたとさ。【本文】壁をへだてたる男、「聞き給ふや、西にこそ」といひければ、「なにごと」といらへければ、「この鹿のなくは聞きたうぶや」といひければ、「さ聞き侍り」といらへけり。【訳】壁を隔てている夫が、「あの鳴き声をお聞きになりますか、西にシカがいますよ」といったところ、「なにごとですか」と返事をしたので、「このシカの鳴き声が聞こえますか」と言ったところ、「たしかにそのようにシカが鳴くように聞こえます」と返事したとさ。【本文】男、「さて、それをばいかが聞きたまふ」といひければ、女ふといらへけり。 我もしか なきてぞ人に恋ひられし 今こそよそに 声をのみきけとよみたりければ、かぎりなくめでて、この今の女をば送りて、もとの如なむ住みわたりける。【注】・しか 「このように」という意とシカの意を言い掛けた。【訳】夫が、「ところで、あのシカの声をどのようにお聞きになりますか」と言ったところ、元の妻がさっと返答したとさ。わたしもシカと同じように鳴いてあなたから恋い慕われたものですよ、今でこそよそにあなたの声だけを聞くような寂しい境遇となってしまいましたが。と歌を作ったので、夫は元の妻が作ったこの歌をこのうえなく称賛して、新しい妻を送り返して、もとのように初めの妻とずっと暮らしたとさ。
April 8, 2013
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【本文】同じ帝、立田川の紅葉いとおもしろきを御覧じける日、人麿、 立田川 紅葉ばながる 神なびの みむろの山に しぐれふるらし 帝、 立田川 紅葉みだれて ながるめり わたらば錦 中や絶えなむとぞあそばしたりける。【注】・立田川=奈良県竜田付近を流れる川。紅葉の名所。・御覧ず=ごらんになる。・人麿=柿本人麻呂。・みむろの山=三室山。「みむろ」は、神が天から降って宿る場所。・錦=金糸や銀糸など五色の糸で美しい模様を織りだした厚手の絹織物。転じて、色とりどりの美しいもののたとえ。・しぐれ=秋の終わりから冬の初めにかけて、降ったりやんだりする冷たい雨。【訳】同じミカドが、竜田川の紅葉が非常にみごとなのをご覧あそばされた日に、柿本人麻呂が作った歌、 竜田川に 紅葉が流れているよ ああやって、木々の葉が色づいたところをみると、上流の神が降臨なさるという三室山には 時雨が降ったらしく思われる。ミカドがお作りになった歌、 竜田川 色とりどりに紅葉した葉が入り乱れて流れているように見える もしも、あの川を渡ったら、せっかくのニシキが中央で裁断されてしまうだろうか。
May 14, 2012
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【本文】昔、ならの帝につかうまつる采女ありけり。顏容貌いみじうきよらにて、人々よばひ、殿上人などもよばひけれど、あはざりけり。【注】・ならの帝=奈良に都があったころの天皇。文武天皇のこととも聖武天皇のこととも平城天皇のことともいう。・采女=地方の豪族の子女で、後宮にはいって天皇の食事の世話をする女官。・よばぶ=言い寄る。求婚する。【訳】むかし、奈良時代の天皇にお仕えするウネメがいたとさ。顔立ちが非常に上品で美しく、男たちが求婚し、テンジョウビトなども求婚したが、結婚しなかったとさ。【本文】そのあはぬ心は、帝をかぎりなくめでたき物になむ思たてまつりける。【訳】その、結婚しなかった真意は、ミカドのことを、このうえなくすばらしいおかただと、お思いもうしあげていたからだったとさ。【本文】帝召してけり。さて後又も召さざりければ、かぎりなく心憂しとおもひけり。夜昼心にかかりておぼえ給つつ、恋しくわびしうおぼえ給ひけり。【訳】あるときミカドがお召しになったんだとさ。そうして、そののちは二度とお召しにならなかったので、ウネメはこのうえなくつらいと思っていたとさ。夜も昼も、ミカドのことが気にかかっておいでで、恋しくもつらくも感じていらっしゃったとさ。【本文】帝はめししかど、ことともおぼさず。さすがにつねにはみえたてまつる。なほ世に経まじき心ちしければ、夜みそかに猿沢の池に身を投げてけり。【注】・猿沢の池=奈良市にある池の名。【訳】ミカドは一度は彼女をお召しになったが、とくに何ともお思いにならなかった。そうはいっても、職務上、ふだん姿をお見せもうしあげていたとさ。そうはいうものの、彼女は「もうこのまま生きているわけにはいかない」という気がしたので、夜分こっそり宮中を抜け出して、猿沢の池に身を投げてしまったとさ。【本文】かく投げつとも帝はえしろしめさざりけるを、ことのついでありて人の奏しければ、きこしめしてけり。いといたうあはれがり給て、池のほとりにおほみゆきしたまひて、人々に歌よませ給ふ。【注】・しろしめす=お知りになる。・奏す=天皇に申し上げる。【訳】こんなふうに彼女が身投げしたともミカドはご存知なかったが、なにかの機会に、ある人がお知らせしたので、ミカドがお聞き及びになった。ミカドは非常に気の毒がりなさって、池のほとりにお出かけになって、人々に哀悼の歌をおつくらせになったとさ。【本文】柿本の人麿、わぎもこの ねくたれ髪を 猿沢の 池の玉藻と みるぞかなしきとよめる時に、帝、猿沢の 池もつらしな 吾妹子が たまもかづかば 水ぞひなましとよみたまひけり。さてこの池には、墓せさせ給てなむ帰らせおはしましけるとなむ。【訳】柿本人麻呂が作った歌、わが最愛の人の 寝乱れた髪を 猿沢の 池に生える美しい藻かと 思って見るのが悲しい。と作ったときに、ミカドがお作りになった歌猿沢の 池も冷酷だなあ わが最愛の人が 美しい藻をかづくように もしも頭から飛び込んだなら水が干上がればよかったのに。そうすれば彼女は溺死せずにすんだであろうに。とお作りになったとさ。そうして、この池のほとりに、彼女の墓地をお造らせになって宮中にお帰りになったとさ。
May 13, 2012
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【本文】昔大和の国葛城の郡にすむ男女ありけり。この女かほ容貌いときよらなり。としごろおもひかはしてすむに、この女いとわろくなりにければ、思ひわづらひて、かぎりなくおもひながら妻をまうけてけり。【訳】昔、大和の国の葛城の郡に暮らす男女がいたとさ。この女は、顔立ちも姿もとても清楚で美しかった。長年相思相愛で暮らしていたが、この女の経済状態が悪化してしまったので、思い悩んで、この上なく愛しいとは思いながらも男は別に妻をもうけてしまったとさ。【本文】このいまのめは富みたる女になむありける。ことにおもはねど、行けばいみじういたはり、身の装束もいときよらにせさせけり。かくにぎははしきところにならひて、きたれば、この女いとわろげにてゐて、かくほかに歩けどさらに妬げにもみえずなどあれば、いとあはれとおもひけり。心ちにはかぎりなく妬く心憂しとおもふを忍ぶるになむありける。留まりなむと思ふ夜も、なを「往ね」といひければ、わがかく歩きするを妬まで、異業するにやあらむ、さるわざせずばうらむることもありなんなど、心のうちにおもひけり。【訳】この新しい妻は裕福な女だったとさ。格別に愛していたわけではないが、男が訪ねて行くととてもよくねぎらい、男の着る衣装もとてもこざっぱりと着せたとさ。こうして男が裕福な生活に慣れて、たまに先妻のところに訪ねて来ると、先妻は非常に経済的に困窮したようすでがまんしており、こうして男がよその女のところをほっつき歩いても、いっこうに嫉妬しているそぶりも見せずにいるので、とてもいじらしいと思ったとさ。心中では、このうえなくねたましく辛いと思うのを我慢しているのであった。男が、今夜は家にとどまろうと思う夜も、先妻が「お出かけなさい」と言ったので、男は、自分がこんなふうによその女のところに出歩くのを焼き餅も焼かずに、先妻は浮気しているのであろうか、そうでもなければ自分を恨むこともあるだろうなどと、心の中で思ったとさ。【本文】さていでていくとみえて、前栽の中に隱れて男や來るとみれば、端にいでゐて、月のいといみじうおもしろきに、頭かい梳りなどしてをり。夜更くるまで寢ず、いといたううちなげきてながめければ、人待つなめりとみるに、使ふ人のまへなりけるにいひける、風吹けばおきつしらなみたつた山よはにや君がひとり越ゆらむとよみければ、わがうへをおもふなりけりとおもふに、いとかなしうなりぬ。この今のめの家は立田山こえて行くみちになむありける。【訳】そうして、出かけると見せかけて、庭先の植え込みのなかに隠れて、愛人の男が来るかしら、と思って見ていたところ、屋敷の部屋の端に出て腰をおろして、月がとても美しく見えるころに、頭髪に櫛を入れてかきなでなどして身なりを整えていた。夜遅くなるまで寝ず、とても深いため息などをついてぼんやり遠くを眺めていたので、浮気相手の男を待っているようだと思って見ていたところ、使用人で前にひかえていた者に向かって次のような和歌を詠んだとさ。風が吹けば海の沖の白波が立って危険ですが、足元が暗くて危険な立田山の山道を夜中に愛するあの人は独りで越えるているのだろうか。と胸中の思いを和歌に作ったので、先妻は私の身の上を心配しているんだなあと思うにつけても、非常に愛しくなった。新しい妻の家は竜田山を越えて行く途中にあったとさ。【本文】かくて、なほ見をりければ、この女うち泣きて臥して、金椀(かなまり)に水をいれて胸になむ据へたりける。「あやし、いかにするにかあらむ」とて、なほみる。さればこの水熱湯にたぎりぬれば、湯ふてつ。又水を入る。みるにいとかなしくて走りいでて、「いかなる心ちし給へば、かくはしたまふぞ」といひてかき抱きてなむ寢にける。かくてほかへもさらに行かでつとゐにけり。【訳】こうして、さらにようすを見ていると、この先妻が、泣きながら横になって、金属の容器に水を入れて胸のところに置いたとさ。「ふしぎだ。どうするのだろう」と思ってなおも様子を見ていた。そうしたら、この水が熱湯にぐらぐらと沸騰したので、先妻は湯を捨てた。また水を入れた。この様子を見ていたら非常に愛しくなって、男は植え込みから走り出て、「どんなお気持ちがして、こんなことをなさるのか」と言って、先妻の体をかき寄せて抱いて寝たとさ。こうして、よそへもまったく行かずにずっとこの先妻の家にいたとさ。【本文】かくて月日おほく経ておもひけるやう、「つれなき顏なれど、女のおもふこといといみじきことなりけるを、かく行かぬを、いかに思ふらむ」と思ひいでて、ありし女のがりいきたりけり。久しく行かざりければ、つゝましくてたてりけり。さてかいまめば、我にはよくてみえしかど、いとあやしき様なる衣をきて、大櫛を面櫛にさしかけてをりて、手づから飯盛りをりけり。いといみじとおもひて、来にけるままに、いかずなりにけり。この男は王なりけり。【訳】こうして月日が多く流れて思ったことには、「表面上はそしらぬ顔であるが、女の胸中は非常に激しいものがあるのに、こうしてずっと訪問しないのを、どんなふうに新しい妻は思っているだろうか」と思い出して、例の女の元に行ったとさ。長いこと訪ねなかったので、遠慮して外に立っていた。そうして、垣根のすきまからのぞき見たところ、自分の前ではいい格好をして見せていたが、とてもみずぼらしいようすの着物を着て、大きな櫛を額の髪に突き刺していて、自分の手でご飯をよそっていたとさ。非常にだらしがないと男は思って、引き返してきたまま、二度と新しい妻のところへは行かなくなってしまったとさ。この男は親王の子だったとさ。
October 30, 2011
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【本文】又おなじ人、大弐の館にて秋の紅葉をよませければ、しかのねは いくらばかりの 紅ぞ ふりいづるからに 山の染むらむ【注】・おなじ人=桧垣の御という女房。・大弐=小野好古。・館=小野好古が藤原純友討伐のために筑紫に下向していたときの宿舎。【訳】また、おなじ桧垣の御が、小野好古の宿舎で秋のもみじを歌にお作りになったところ、鹿の鳴き声は、どれほど赤いのだろうか。声をふりしぼって鳴くのにつれて、どうして山がこんなに染まるのだろうか。と詠んだとさ。
April 27, 2011
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【本文】桂のみこ、嘉種に、つゆしげみ 草のたもとを 枕にて 君まつむしの 音をのみぞなく【注】・桂のみこ=宇多天皇の皇女、孚子内親王。第二十話に見える。・嘉種=源嘉種。官は従五位下、美作の守に至った。桂のみことの話は第七十六話にも見える。【訳】桂のみこが、源嘉種に作って贈った歌、夜露が多いので、その夜露の置いた草のたもとで、松虫が鳴くように、自分の着物のたもとを枕として伏しながら、あなたの来るのを待ちかねて声をあげて泣く私ですよ。
March 7, 2011
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【本文】公平(きむひら)がむすめ死ぬとて、ながけくも たのめけるかな 世中を 袖に涙の かかる身をもて【注】・公平がむすめ=「きむひら」は「きむひこ」の誤写で、従五位上、大膳の大夫をつとめた橘公彦のことかという。百十話に見える。・ながけく=形容詞「ながけし」の連用形。長い。・たのめ=下二段の「たのむ」の連用形。あてにさせる。【訳】公平の娘が、もう死ぬときが近いというので、作った歌、こんなに長くも、あの人は私に、あてにさせたことだなあ、はかない男女の仲を。袖に涙がかかってばかりの、こんな男運の悪い我が身に。岩波日本古典文学大系では「こうして泣き泣き死んでゆくはかない人の身でありながら、思えば人生を長いものと頼みにしてきたことだった」とするが、この話の前後、第百十五・百十七話の和歌が、別人の話ではあるが、いずれも恋を詠んだ歌なので、うえのように恋についての歌として訳した。
March 7, 2011
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【本文】右の大臣、頭におはしける時に、小弐のめのとのもとによみてたてまつりける、秋の夜を まてとたのめし ことのはに 今もかかれる 露のはかなさとなん、あきもこず露もをかねどことのははわがためにこそ色かはりけれ【注】・右大臣=藤原師輔。藤原忠平の子で、正二位、右大臣に至った。(908……960年)・頭=藤原師輔は、(931……935年)にかけて蔵人頭をつとめた。・小弐のめのと=詳しい伝記は不明。一名、しげのの内侍。『後撰集』に「ふきいづるねどころ高く聞ゆなり初秋風はいざ手馴らさじ」という歌を収める。【訳】右大臣が、まだ頭でいらっしゃった時分に、小弐のめのとと呼ばれた女房に、作って差しあげた歌、秋の夜がくるのを待ちなさい、そうしたら逢いましょうと、私に当てにさせたお言葉という葉っぱに、今もかかっている露のように今も期待を置いている私は、もうすぐ秋が終わって約束が破られそうなはかない思いでいますよ。と書いてあったとさ。それに対する小弐のめのとの返歌、まだ秋も来ていないように、貴方に飽きを感じているわけでもなく、露も置いてはいませんように、あなたとお逢いしていませんが、お約束した言葉という葉っぱは、木の葉の色も時が経てば変わるようにったるのですね私にとってすっかり変わってしまいました。
March 5, 2011
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【本文】おなじ女、人に、大空は くもらずながら 十月(かみなづき) としのふるにも 袖はぬれけり【注】・大空はくもらずながら=大空が曇れば当然雨が降ることになる。雨はふらないけれども、の意。・十月=旧暦十月。時雨月の別名もあり、「かむなづき時雨のつねか我がせこが宿のもみち葉散りぬべく見ゆ」「神な月時雨ふり置ける楢の葉の名におふ宮のふることぞこれ」「かむなづき降りみ降らずみ定めなき時雨ぞ冬の初めまりける」「かみなづき曇らでふるや槙のやの時雨にたぐふ木の葉なるらん」 のように、時雨が降る時季とされる。【訳】同じ女(源宗于の娘)が、ある人に大空は、曇らないけれども、神無月は、今年もまた冬が来て一年が経過するにつけても、時雨が降らないから地面は濡れないけれども私の袖は涙で濡れることだなあ。
February 23, 2011
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【本文】深草の帝(仁明天皇)とまうしける御時、良少將といふ人いみじき時にてありけり。【注】・深草の帝=仁明天皇。・良少将=良岑宗貞。のちの僧正遍昭。【訳】時の天皇を深草の帝と申し上げた御代に、良岑宗貞少将という人がおり、人生の全盛期だったとさ。【本文】いと色好みになむありける。【訳】非常に恋の道に長けた男だったとさ。【本文】しのびて時々あひける女、おなじ内裏にありけり。【訳】人目をしのんで時々デートしていた女が、同じ宮中にいたとさ。【本文】「こよひかならずあはむ」とちぎりたる夜ありけり。【訳】「今夜必ずデートしよう」と約束していた夜があったとさ。【本文】女いたう化粧して待つに音もせず。【訳】女が、念入りに身なりを整えて待っていたが、音沙汰もなかった。【本文】目をさまして、「夜やふけぬらん」と思ふほどに、時申音のしければきくに、「丑三つ」と申しけるを聞きて、男のもとにいひやりける、人心うしみつ今は頼まじよといひやりたりけるにおどろきて、夢にみゆやとねぞ過ぎにけるとぞつけてやりける。【訳】目を覚まして、「夜が更けてしまったかしら」と思っていると、時を知らせる声がしたので、聴いていると、「丑三つ」と言ったのを聞いて、男の所に作って贈った歌あなたの心が冷たくてつらい目に遭いました、もう丑三つ時にもなりましたから、あなたなんかあてにしませんよ。と作って贈ったところ、男がそれを読んで、寝ぼけまなこもパッチリ覚めてあなたが私を恋しく思ってくださるなら、あなたが夢に見えるかなと思って寝過ごすうちに子の刻も過ぎて丑の刻になってしまったなあ。と、女が贈ってきた和歌に七七の下の句を付けて返信したとさ。【本文】しばしとおもひてうちやすみけるほどに、寢過ぎにたるになむありける。【訳】逢いに行くまでちょっとの間だけ、と思って、ちょっと休んでいるうちに寝過ごしてしまったのだったとさ。
February 6, 2011
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【本文】故式部卿の宮うせたまひける時は、きさらぎのつごもり、花のさかりになんありける。堤の中納言のよみたまひける、さきにほひかぜまつほどの山桜人の世よりは久しかりけり【注】・故式部卿の宮=宇多天皇の皇子、敦慶親王。延長三年(930)に亡くなった。・堤の中納言=藤原兼輔。敦慶親王の母、胤子のいとこにあたる。【訳】敦慶親王がお亡くなりになった時は、二月の末で、桜の花盛りだったとさ。そのときに堤の中納言がお作りになった歌、花が咲き匂い、風が吹いて散るのを待つあいだのはかない命である山桜の花も、人間の世界よりは寿命が長いのだなあ。【本文】三条の右のおとどの御かへし、春々の花はちるともさきぬべしまたあひがたき人の世ぞうき【注】・三条の右のおとど=三条右大臣、藤原定方。敦慶親王からみて母方の伯父。【訳】三条の右大臣の返事の歌、毎年毎年、春の花はたとえ散ってもきっと再び春になれば咲くにちがいない、それにひきかえ二度と会うことができない人間の世界はつらいものだ。
December 28, 2010
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【本文】ゑしうといふ法師の、ある人のおほむつかうまつりけるほどに、とかく世中にいふことありければ、よみたりける。里はいふ山にはさはぐ白雲のそらにはかなき身とやなりなむとなむありける。【注】・ゑしうといふ法師=未詳。・おほむ=「御」のあとに名詞が省略された形。ここでは読経によって病気平癒などを祈る役目であろう。【訳】エシュウという法師が、ある人の験者をして差し上げたところ、とかく世間で噂がたったので、作った歌。人里では噂をしている、山寺では騒ぎがおきているが、いっそ白雲のように空で定めなくはかない身となってしまおうかしら。【本文】又この人の御もとによみたりける、あさぼらけ我身はにはのしもながら何をたねにて心生ひけむ【訳】また、この人の所に作って贈った歌、朝ほのぼのと夜が明けてきた時分に私の身は庭の霜のような低く賤しく、じきに此の世から消えてしまうものなのに、何が原因であなたを慕う気持ちが芽生えたのだろうか。
November 23, 2010
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【本文】十日、さはることありてのぼらず。【訳】二月十日、差し障りがあって、今日は川をさかのぼらなかった。【本文】十一日、雨いささか降りてやみぬ。かくてさしのぼるに東のかたに山のよこほれるを見て人に問へば「八幡の宮」といふ。これを聞きてよろこびて人々をがみ奉る。【訳】十一日、雨がサアーッと降ってやんだ。こんなわけで棹をさし川をさかのぼっているときに、東方に山が横たわっているのを目にして、人に質問したところ、八幡神社だと答えた。これを聞いて喜んで人々が拝み申し上げた。【本文】山崎の橋見ゆ。嬉しきこと限りなし。ここに相應寺のほとりに、しばし船をとどめてとかく定むる事あり。この寺の岸のほとりに柳多くあり。ある人この柳のかげの川の底にうつれるを見てよめる歌、「さざれ浪よするあやをば青柳のかげのいとして織るかとぞ見る」【訳】山崎の橋が見えた。嬉しいことこの上ない。ところで、相応寺のそばに、しばらく船を停泊してこれからの予定を決めた。この寺の岸のほとりに柳がたくさん植えられている。ある人がこの柳の姿が川面に映っているのを見て詠んだ歌。「ちいさな波が打ち寄せるその波紋を、まるで青柳の川面に映る細い枝を使って織っているのかのように見た。
March 6, 2010
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【本文】八日、なほ川のほとりになづみて、鳥養の御牧といふほとりにとまる。【訳】二月八日、依然として川のほとりでぐずぐずして、鳥養の牧場という所のそばで宿泊した。【本文】こよひ船君例の病起りていたく惱む。【訳】今晩、船の主たる客が例の船酔いが起きて、たいへん苦しんだ。【本文】ある人、あざらかなる物もてきたり。よねしてかへりごとす。男ども密にいふなり「いひぼしてもつつる」とや。かうやうの事所々にあり。今日節みすればいをもちゐず。【注】○あざらかなる物 新鮮な物。鮮魚。○かへりごと 頂戴物に対するおかえし。返礼。○節み 節忌 肉食をせず、精進潔斎するよう定められた日。【訳】ある人が、鮮度のよい品物を持ってきた。米で返礼した。男たちが密かに言うようだ「ご飯粒を使ってムツを釣るとはこのことだ」とか。このような事態が各地であった。今日は肉食をせず精進潔斎する日なので、魚などもらっても不要なのだ。
February 13, 2010
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【本文】七日、けふは川尻に船入り立ちて漕ぎのぼるに、川の水ひて惱みわづらふ。船ののぼることいと難し。【訳】二月七日。今日は川尻に船が進入し漕ぎのぼったが、川の水量が減って行きなやんだ。船がさかのぼるのが非常に困難だった。【本文】かかる間に船君の病者もとよりこちごちしき人にて、かうやうの事更に知らざりけり。【訳】そうこうしている間に、船の御主人の病人は、もともと無骨な人なので、こんな事情を全く知らなかった。【本文】かかれども淡路のたうめの歌にめでて、みやこぼこりにもやあらむ、からくしてあやしき歌ひねり出せり。そのうたは、「きときては川のほりえの水をあさみ船も我が身もなづむけふかな」。これは病をすればよめるなるべし。【注】「きとき」は、遙々やって来る意の動詞「きとく」の連用形。【訳】こんな具合だったが、淡路の国の老女の歌に感心して、都自慢のつもりでもあろうか、やっとの思いでへんてこりんな歌を作り出した。その歌は、「ここまで遙々やってきたものの、川をさかのぼる人工の水路の水が浅いので、船も我が身も悩む今日だなあ。」これは、船酔いの病気をするから、こんなふうに詠んだのにちがいない。【本文】ひとうたにことの飽かねば今ひとつ、「とくと思ふ船なやますは我がために水のこころのあさきなりけり(るべしイ)」。この歌は、みやこ近くなりぬるよろこびに堪へずして言へるなるべし。【訳】一つだけの和歌では自分の気持ちを十分に表せなかったので、もう一つ詠んだ歌、「早くと都に着けばいいのになあと思う船を行きなやませるのは、私にたいする川の水の心が浅いのだなあ。」この歌は、きっと都が近くなった喜びを抑えきれずに表現したのであろう。【本文】淡路の御の歌におとれり。ねたき、いはざらましものをとくやしがるうちによるになりて寢にけり。【訳】淡路の老女の歌にくらべて劣っている。いまいましい、言わなければいいのに・・・と残念がるうちに、夜になって寝てしまった。
January 24, 2010
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【本文】二日、雨風止まず。日ひとひ夜もすがら神佛をいのる。【訳】二月二日。雨と風が止まない。昼間は昼間じゅうずっと、夜は夜で一晩中神仏に風雨がやみますようにと祈った。【本文】三日、海のうへ昨日のやうなれば船いださず。風の吹くことやまねば岸の浪たちかへる。これにつけてよめる歌、「緒をよりてかひなきものは落ちつもる涙の玉をぬかぬなりけり」。かくて、今日暮れぬ。【訳】三日。海の上が昨日と同じようなので、船を出さない。風が吹き止まないので、岸の波が勢いよくぶつかっては引いていった。こんな天気であることにかこつけて作った歌、紐をより合わせても、その甲斐のないものは、こぼれ落ちて積もる涙の玉を貫くことがないからなのだなあ」。こんな調子で、今日は暮れてしまった。
December 26, 2009
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【本文】三十日、雨風ふかず。海賊は夜ありきせざなりと聞きて、夜中ばかりに船を出して阿波のみとを渡る。【訳】正月三十日、きょうは雨も風も吹かない。海賊は夜は海上に出没しないという話だと聞いて、夜中ごろに船を出して阿波の海峡を渡る。【本文】夜中なれば西ひんがしも見えず、男女辛く神佛を祈りてこのみとを渡りぬ。【訳】夜中であるから西も東も見えない。男女ともに神仏に祈りを捧げてこの海峡を渡る。【本文】寅卯の時ばかりに、ぬ島といふ所を過ぎてたな川といふ所を渡る。【訳】午前五時ごろに、ぬ島という所を通過してたな川という所を渡る。【本文】からく急ぎて和泉の灘といふ所に至りぬ。今日海に浪に似たる物なし。神佛の惠蒙ぶれるに似たり。【訳】ひどく急いで和泉の灘という所に着いた。今日は海に波に似ているものも無く海面がとても穏やかだ。神仏のご加護をいただいているようである。【本文】けふ船に乘りし日より數ふれば、みそかあまり九日になりにけり。【訳】今日で船に乗った日から数えると、三十日と九日にもなってしまった。【本文】今は和泉の國に來ぬれば、海賊ものならず。【訳】現在は和泉の国にやって来たので、もう海賊もへっちゃらだ。
December 15, 2009
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【本文】廿九日、船出して行く。うらうらと照りてこぎゆく。【訳】正月二十九日。今日はようやく船を出して行く。久しぶりにうららかに日が照って海原を漕ぎ進んでゆく。【本文】爪のいと長くなりにたるを見て日を数ふれば、今日は子の日なりければ切らず。【訳】爪がとても長くなってしまっているのを見て、こんなに伸びるほど日数がたっちゃったかなとおもって改めて数えてみたら、今日はちょうど子の日の節句であったので、切るのをやめた。【本文】正月なれば京の子の日の事いひ出でて、「小松もがな」といへど、海中なれば難しかし。ある女の書きて出せる歌、「おぼつかなけふは子の日かあまならば海松をだに引かましものを」とぞいへる。【訳】正月であるから、都の子の日の行事を思い出して、「小松があればなあ」と言ったが、海の中だから入手困難だなあ。ある女性が書いて差し出した歌、「定かでないが今日は子の日だったかしら、もし私が海女だったらせめて小松の代わりに海松だけでも引いて手に入れるのになあ」と書いてある。【本文】海にて子の日の歌にてはいかがあらむ。又ある人のよめるうた、「けふなれど若菜もつまず春日野のわがこぎわたる浦になければ」。かくいひつゝ漕ぎ行く。【訳】海での子の日の歌としては出来栄えはいかがなものであろうか。また、その場にいる人が詠んだ歌、「子の日の節句は今日であるが、若菜さえも摘まない、春日野が我々の漕いで渡る海岸には無いから」こんなことを言いながら漕ぎ進んで行く。【本文】おもしろき所に船を寄せて「ここやいづこ」と問ひければ、「土佐のとまり」とぞいひける。【訳】美しい場所に船を漕ぎ寄せて「ここはどこか」と船頭に質問したところ、「土佐の泊まり」だと答えた。【本文】昔、土佐といひける所に住みける女、この船にまじれりけり。そがいひけらく、「昔しばしありし所の名たぐひにぞあなる。あはれ」といひてよめる歌、「年ごろをすみし所の名にしおへばきよる浪をもあはれとぞ見る」。【訳】むかし、土佐という場所に住んでいた女が、この船の客にまじっていた。その者がいうことには、「昔、ほんのしばらく住んでいた場所の名と同じだ。なんだかしみじみする」と言って詠んだ歌、「何年も暮らした地名と同じ名を持つ場所だから、やってきて打ち寄せる浪をもしみじみなつかしく感じられる」。
November 28, 2009
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【本文】廿七日、風吹き浪あらければ船いださず。これかれかしこく歎く。男たちの心なぐさめに、からうたに「日を望めば都遠し」などいふなる事のさまを聞きて、ある女のよめる歌、「日をだにもあま雲ちかく見るものを都へとおもふ道のはるけさ」。【注】○かしこし 大いに。○からうた 漢詩。○日を望めば都遠し 陳羽《読蘇属国伝》「腸断帝郷遥望日」。東晋の明帝の故事。明帝、諱を(司馬)紹といい、あざなを道畿という。元帝の長子。幼くして聡哲、元帝の寵愛すこぶる厚し。まだ明帝が幼児のとき、元帝の膝の上に座り、長安から来た使者と会った。元帝は、「太陽と長安は、どっちが近いか?」と明帝に聞いた。明帝は「長安です。太陽の辺りから来た者など、聞いたこともありません。長安からなら、今も人が来ている。だから長安の方が近いと思う」と答えた。元帝は、明帝のこの答えにとても感心した。翌日元帝は、宴席で官僚たちに同じ質問をした。官僚たちは、「太陽の方が近いと思います」と答えた。元帝は落胆して言った。「なぜ、そんな変なことを言うのか」と。官僚たちは「目を上げれば、太陽を見ることができます。でも、長安は見えません」と答えた。元帝は官僚たちの答えを聞いて、ますます明帝の賢さを確信した。【訳】二十七日。風が吹き、浪が荒いので船を出さない。この人もあの人もとても嘆いた。男達が気晴らしに、漢詩の「日を望めば都遠し」などという詩句を口ずさむのを聞いて、ある女性が詠んだ歌「太陽をさえ天雲のそばに見えるのに、早く都へ帰りたいとおもうその道がなんとはるかなことよ」。【本文】又ある人のよめる。「吹くかぜの絶えぬ限りし立ちくれば波路はいとどはるけかりけり」。【訳】また、ある人の詠んだ歌「吹く風が止まないあいだずっと波立って打ち寄せてくるので、波路はいっこうに進めず、ますます遥かなことだ」。【本文】日ひと日風やまず。つまはじきしてねぬ。【注】○つまはじき 親指の腹に人差し指の爪を掛けて強く弾くこと。不満な気持ちを発散させる動作。【訳】結局一日中風がやまなかった。みんなつまはじきして、ふてくされて寝てしまった。【本文】廿八日、よもすがら雨やまず。けさも。【訳】二十八日。一晩中雨が止まなかった。今朝もまた雨。
November 3, 2009
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【本文】廿六日。まことにやあらむ。海賊追ふといへば、夜はばかりより船をいだして漕ぎくる。【訳】正月二十六日。本当であろうか、「海賊が追ってくる」というので、夜中ぐらいから船を出して漕いで来た。【本文】道にたむけする所あり。楫取してぬさたいまつらするに、幣のひんがしへちれば楫取の申し奉ることは、「この幣のちるかたにみふね速にこがしめ給へ」と申してたてまつる。【訳】船路の途中、海神への手向けをする場所があった。船頭にぬさを奉納させたところ、ぬさが東方へ散ったので船頭が申し上げたことには、「このぬさの散った方角へ船をすみやかに漕がせてくださいませ」と申し上げた。【本文】これを聞きてある女の童のよめる、「わたつみのちぶりの神にたむけするぬさのおひ風やまずふかなむ」とぞ詠める。【訳】これを聞いて、ある少女が詠んだ歌、「海の奥底の海神さまに手向けをするぬさが東へ散ったように東へ向かう追い風よ、やむこと無く吹いておくれ」と詠んだ。【本文】このあひだに風のよければ楫取いたくほこりて、船に帆あげなど喜ぶ。その音を聞きてわらはもおきなもいつしかとし思へばにやあらむ、いたく喜ぶ。【訳】ところで、風向きが良いので、船頭が調子にのって、「船に帆をあげろ」などと嬉しそうである。その音を聞いて、子供も老人も胸中早く帰京したいと思っていたからであろうか、とても喜んだ。【本文】このなかに淡路のたうめといふ人のよめる歌、「追風の吹きぬる時はゆくふねの帆手うちてこそうれしかりけれ」とぞ。ていけのことにつけていのる。【訳】この船旅の客のなかにいた淡路島の老女という人が詠んだ歌、「追い風がとうとう吹いた時は進む船の帆布を張って、手をたたいて喜ぶほど嬉しかった」と詠んだ。天気のことにかこつけて祈った。
October 8, 2009
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【本文】廿三日、日てりて曇りぬ。此のわたり、海賊のおそりありといへば神佛を祈る。【訳】正月二十三日、日が照って、のちに曇った。この近辺では、海賊襲来の危険があると言うので、神仏に無事を祈った。【本文】廿四日、昨日のおなじ所なり。【訳】正月二十四日、きのうと同じ場所である。【本文】廿五日、楫取らの北風あしといへば、船いださず。海賊追ひくといふ事絶えずきこゆ。【訳】正月二十五日、船頭たちが、北風が具合わるいというので、船を出さない。海賊が追いかけてくるという話しがたえず耳に入る。
September 13, 2009
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ここからは『劉随州集』外集酬劉員外月下見寄 章八元夜涼河漢白、卷箔出南軒。過月鴻爭遠、辭枝葉暗翻。獨(一作高)謠聞麗曲、緩歩接清言。宣室思前席、行看拜主恩。【韻字】軒・翻・言・恩(平声、元韻)。【訓読文】劉員外の月下に寄せらるるに酬ゆ。 章八元夜涼しくして河漢白く、卷箔南軒を出でたり。月を過ぐる鴻は遠きを争ひ、枝を辞する葉は暗に翻へる。独り(一に「高」に作る)謡麗曲を聞き、歩を緩めて清言に接す。宣室前席を思ひ、行ゆく看ん主の恩を拝するを。【注】○劉員外 劉長卿。○河漢 あまのがわ。○箔 竹のすだれ。○鴻 大型の雁。○麗曲 美しい楽曲。○緩歩 ゆっくり歩く。○独謡 ひとりで節をつけて歌う。○清言 高尚な言葉。○宣室 古代の宮殿の名。転じて天子の居る宮殿。○前席 もと地面に席を置いて坐る。転じて、席を前に進める。○主恩 君主のご恩。天子の恩。【訳】劉長卿が月下に寄せられた詩に答えた詩。夜の涼しき空には白き天の川くして河漢白く、竹のすだれを巻き上げて南の窓より身のりだす。大きなガンは月の前よこぎりながら遠くゆき、枝を離れて落ちる葉は暗がりのなかひるがえる。美しき曲聞きながら独り節つけ歌うたい、あゆみを留めて高尚な話に耳を傾ける。いつかは都の宮殿で天子のそばに座を占めて、君は親しく主の恩を拝することも遠からじ。
August 17, 2008
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「ブログクルーザー」は、すべてのブロガーをつなぐ新しいコミュニケーションツールです。どなたでも無料ですぐにマイプロフィールと名刺を持つことができます。 使い方は簡単!まず、マイプロフィールを作成します。自分のアピールポイントとブログのURL、そして関心あるキーワードを入力するだけ!ブログクルーザーの一番の楽しみは、同じキーワードを登録しているブロガーを探すこと、そして、見つけてもらうこと!あなたのブログで熱く語っているテーマを登録しておけば、同じ趣味や関心を持つユーザーがきっと訪れてくれます。更に、マイプロフィールにリンクする名刺を作り、自分のブログや名刺ポータルに貼ってアピールすることができます。名刺をユニークな画像で作成すれば、アクセスアップ間違いなし!新登場の名刺ポータルにも積極的に名刺を貼ってアピールしてください。さっそく登録して、関心事の近い“同志ブロガー”を探してみませんか! サービス紹介と登録ページはこちら>>http://www.so-net.ne.jp/blogcruiser/名刺ポータルはこちら>>http://www.so-net.ne.jp/blogcruiser/theme_portal.html http://www.so-net.ne.jp/blogcruiser/ わたしが書いているブログは、ごらんの通り漢詩についてのものです。今は個人的な興味(惰性?)から唐の詩人、劉長卿という人の詩をよんでいます。 だから、同じように漢文について書いている人とか、趣味の釣りについて書いている人、マージャンについて書いている人、あるいは、おいしいコーヒーについて書いている人なんかとお友達になれればいいかな?w このたびソネットが「ブログクルーザー」というサイトをたちあげて、友達の友達は皆ともだちだ、式?に、すべてのブロガーをつなぐ新しいコミュニケーションツールを提供。 だれでも無料で、自分のアピールポイントとブログのURL、関心のあるキーワードを入力するだけで簡単にマイプロフィールを作成できるんだって。 これで同じキーワードを登録している仲間をすぐに見つけたり、また相手にも見つけてもらうことが可能になった! あなたがブログで扱っているテーマを登録しておけば、同じ趣味や関心を持つブロガーが訪問してくれるかも(*^_^*)。 おまけに、マイプロフィールにリンクする名刺を作ったり、自分のブログや名刺ポータルに貼ってアピールも・・・キラリと光る名刺をつくれば、アクセス数も格段にアップ・・・かもよっ!(^_^)v 新登場の名刺ポータルにも名刺を貼って積極アピールしよう。そこにいるあなた、さっそく登録して、ブログ仲間を探してみない? この記事をよんで少しでも興味をお持ちになったかたは、ブログクルーザーのサイトをチェック!http://www.so-net.ne.jp/blogcruiser/
March 13, 2007
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さあ夏が近づいてきました!!海に行ったり、浴衣を着て花火大会に出かけたり・・・ そんな夏にぴったりな髪型といえばアップスタイルですよね。この夏、モッズ・ヘアから4つのアップスタイルを皆様に提案します。モッズ・ヘアは、パリのファッションショーや一流モード誌の撮影で活躍するヘアメイクのプロ集団が立ち上げたサロン。その高い技術が人気を集め、今では世界で300店舗以上を誇る、世界トップレベルのサロンです。現在でも数々の世界的ブランドのファッションショーや一流モード誌を手掛け、またカンヌ映画祭のオフィシャルサロンを務めるなど、常に流行の現場に立会い、最先端のヘアスタイルを発信しファッション業界をリードする存在です。そんなモッズ・ヘアがこの夏提案するのは、プロのテクニックを取り入れて作り上げるワンランク上の4種のアップスタイル。モッズ・ヘアのヘアスタイリストが教えるプロならではのテクニック「サロン・シークレッツ」とともに、わかりやすく紹介しています。「難しそうだからなかなか挑戦できない・・・。」「自分でやってもうまくいかない・・・。」「いつもとは一味違うアップスタイルに挑戦したい。」そんな方は今すぐモッズ・ヘアのサイトで「夏のアップスタイルの秘密」をご覧ください!アップスタイルの提案はもちろん、その作り方からワンポイントまで、サロンの秘密がぎゅっと詰まっています。これさえマスターすれば夏のアップスタイルはお手のもの!この夏はモッズ・ヘアのテクニックをマスターして、ワンランク上のアップスタイルを楽しんでください。 また、今なら本場パリのモッズ・ヘアサロンへご招待するキャンペーンを実施中。詳しくはホームページをご覧下さい!!http://www.mods-style.com/blog.html バックウエイトヌーベルバーグに活躍したフランス女優達の表情を捉えた、後頭部とフロントに重心をおいたルーズなアップスタイル。バックのボリューム感があたらしいhttp://www.mods-style.jp/upstyle/four/backweight/popup.html シニヨンポップ流線形シニヨンがポイントのレトロでPOPなフレンチスタイルhttp://www.mods-style.jp/upstyle/four/pop/popup.html シニヨンブレイドイノセントな三つ編みをシニヨンにアレンジした小粋なフレンチカジュアルhttp://www.mods-style.jp/upstyle/four/brade/popup.html パインアップパイナップルのような、トップから流れ落ちるボリュームが大胆なイメージを演出http://www.mods-style.jp/upstyle/four/up/popup.html 他にもWEB上で多数のサロン・シークレッツを紹介しています。是非チェックしてみて!! シャンプー、トリートメント、スタイリングスプレー、スタイリングワックス、カラーワックスなどの商品ラインナップはこちらから。URL : http://www.mods-style.jp/products/index.html 夏らしいヤシの葉を彷彿とさせるようなバックウエイトなんかもいいけど、個人的にはシニヨンブレイドが おとなしめながらも、すこしオシャレという感じがするところが、いいのだ。オシャレというのは派手にするものではなく、さりげなく控えめなところに価値があるように思う。
June 10, 2006
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日本コカ・コーラ株式会社から「からだ巡茶」が新発売。 (http://www.cocacola.co.jp/products/lineup/karadameguricha/index.html)。‘自然な健康’への意識が高まる中、ヨガやピラティスなど‘体の巡り’に着目した健康法が注目を集めています。「からだの巡茶」は‘体の巡り’に気を遣うことで体の中からキレイを目指す無糖茶です。「からだ巡茶」は薬日本堂社のノウハウをもとにセレクトされた8種類の東洋素材(どくだみ、熊笹、杜仲茶、はすの葉、クコ葉、みかんの皮、高麗人参、霊芝)と4種類の茶葉(烏龍茶、緑茶、黄茶、プーアル茶)がバランスよく配合されています。広末涼子さんのTV-CMでも話題です(http://jyoka-keikaku.jp/)。 東洋医学の漢方に基づいた考え方で、体の構成成分として考える“気・血・水の巡り”をよくし、体の中の毒素を排出する事で自然治癒力を高め、身体の美容や健康を回復させることを言います。特に現代女性は、ダイエット、食生活の乱れ、運動不足などで新陳代謝を低下させているために効果的と考えられます。‘体の巡り’を良くすることで、昨今流行の“デトックス”効果を得ることもできます。また、毒素を排出するだけではなく、毒素が溜りにくい体質にすることができます。更に、ストレスの緩和、生理活動、新陳代謝、自律神経、免疫などすべてが健康な状態となり、免疫力も向上し、心身ともに充実して快適かつ見た目にも生き生きとして美しい状態になります。現代女性にとって理想的な健康法と言うことができるかも知れません。この‘体の巡り’については、5月25日(木)のNTV系列「おもいッきりテレビ」でも取り上げられました。 デトックス けっきょくは現代社会のツケなんですよね。こういうものが必要になるのは。交通機関の発達は運動不足や肥満をもたらし、飽食は体脂肪と体内毒素をもたらす。近所のお医者さんが、「人間の体は川と同じようなもの。川は流れのゆるい端のほうにゴミがたまりやすい。」と言ってました。さあ、心あたりのあるあなたも「からだ巡り茶」飲んで体のお掃除してみたら?
May 24, 2006
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宿懷仁縣南湖寄東海荀處士 劉長卿向夕斂微雨、晴開湖上天。離人正惆悵、新月愁嬋娟。佇立白沙曲、相思滄海邊。浮雲自來去、此意誰能傳。一水不相見、千峰隨客船。寒塘起孤雁、夜色分鹽田。時復一延首、憶君如眼前。【韻字】天・娟・邊・傳・船・田・前(平声、先韻)。【訓読文】懐仁県の南湖に宿し、東海の荀処士に寄す。夕に向(なんなん)として微雨斂まり、晴れて開く湖上の天。離人正に惆悵し、新月愁ひて嬋娟たり。佇立す白沙の曲(くま)、相思ふ滄海の辺。浮雲自から来去し、此の意誰か能く伝へん。一水相見ず、千峰客船に随ふ。寒塘孤雁起(た)ち、夜色塩田を分つ。時に復た一に首を延べ、君を憶へば眼前のごとし。【注】○懐仁県 江蘇省■(「章」の右上に「夂」、右下に「貢」。カン)楡県の西北の旧■(カン)楡。○荀処士 劉長卿の友人らしいが、未詳。「処士」は、仕官しないでいる在野の才人。○斂 やむ。○離人 旅人。○惆悵 悲しみ嘆くようす。○嬋娟 美しいようす。○佇立 しばらく立ち止まる。○滄海 青海原。○塩田 海水を引き入れ、水分を蒸発させて塩を製するために設けられた海岸の砂地。【訳】懐仁県の南湖に宿泊し、東海の荀処士に贈った詩。夕暮れちかく雨はやみ、湖上の空に雲晴るる。旅人心しょんぼりと、空の月まで悲しげな。白い砂浜たたずみて、海のほとりに君おもう。来ては去りゆく空の雲、伝えよう無きこの気持ち。湖の果て見通せず、舟にしたがう千々の峰。土手に飛び立つ雁一羽、夜目に見ゆるは塩田か。時折首をさしのべて、君のおもかげ眼にうかぶ。
May 2, 2006
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「宣伝会議」といえば、広告・マスコミ業界を目指す人ならご存知の、業界での出版・教育事業に半世紀以上の歴史を持つ有名会社。でも、グループ会社で業界特化の人材紹介会社があることを知らない人は意外と多いのではないでしょうか?「株式会社マスメディアン」はそんな、業界で長年培った独自のネットワークを如何なく発揮し、業界人のキャリアアップを応援する人材紹介会社です。広告代理店をはじめ、制作プロダクション、TV関係、Web関係、一般企業の広報・PRなどなど、広告・マスコミ業界を網羅し、これまでのキャリアを活かして業界内でさらなるステップアップを目指す方々に、さまざまな求人を紹介しております。最近では特に、ネットに関連した求人に注目が集まっており、日々新しいビジネスモデルが提案され、案件もどんどん増えています。しかも、業界でよりよい転職を希望される方のため、マスメディアンでは、業界の幅広い知識を持つキャリア・アドバイザーが、無料で転職相談をおこなうなど、サービスも充実しています。今話題の「表参道」にある「マスメディアン」。個性的なエントランス(写真)は、まさにあなたが広告・マスコミ界でキャリアアップし、もっと輝くための入り口(エントランス)です。求人紹介だけでなく、ガイダンスや相談会など、広告・マスコミ業界人に向けて、常に新たな情報を発信する場所、それが マスメディアンなのです。 紹介実績企業 電通、博報堂、ADK、大広、読売広告社、JR東日本企画、デルフィス、朝日広告社、日本経済広告社、フロンテッジ、オリコム、電通東日本、電通ヤング&ルビカム、JR西日本コミュニケーションズ、JIC、電通西日本協同広告、アイプラネット、新東通信、国連社、ビデオプロモーション読売エージェンシー、小田急エージェンシー、コモンズ、コスモ・コミュニケーションズ、双葉通信社、たき工房、日本デザインセンター、ライトパブリシティ、エージー、レマンサイバーコミュニケーションズ、サマンサタバサ、ワコール http://www.massmedian.co.jp/ 「株式会社マスメディアン」および「株式会社宣伝会議」は、「正社員紹介」または「転職支援」を提供する会社です。
April 14, 2006
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「春」は、どこへ行っても気持ちがいい!出張でも、旅行でも、思わず外に飛び出したくなりますよね?しかも、新入学・新入社、花見にゴールデンウィークまで、イベントも豊富でますます心が躍ります。そんなお出かけの際に貴重で嬉しい存在が、ソラーレ ホテルズ & リゾーツの展開する「チサンブランド」のホテル。明るく、清潔で、くつろげる、まさに3拍子揃った部屋に、フレンドリーに対応するスタッフ。皆様の様々な利用シーンに応えてくれます。そんなソラーレでは、SMART BIZをテーマに、新生活スタートキャンペーンとゴールデンウィークキャンペーンを実施中。皆様の新しい生活・遊びを応援する宿泊プランや、お父さん・お母さん必見の家族向けキャンペーンまで、皆さんに喜んでいただける企画が盛りだくさんとなっています。是非、この春はチサンホテルでお過ごしください! ゆったりとくつろげる大きなベッドと、部屋全体をやさしい印象にする明るい照明。柔らかい暖色系のアクセントカラーとアイボリーベースの壁は、お部屋をよりいっそう落ち着いた雰囲気に演出します。女性向けにデザインされたレディースルームは全国12のチサンブランドのホテルで体験できます。また、4月1日よりレディス用アメニティセットを一新し、DHCの基礎化粧品やポーラのヘアケア製品を採用しました。これを記念して6月末まで各ホテルで様々なレディスプランを実施中です。詳細は⇒http://www.solarehotels.com/ladies_room/index.html ソラーレ ホテルズ & リゾーツの公式ウェブサイト(PC・モバイル)で提供するご宿泊料金は、他のどのウェブサイトで予約するよりも、確実に最も安い「最低価格」を保証します。もし、他サイトからの予約の方が1円でも安い場合は、その料金でお泊り頂き、さらに1泊無料宿泊券を贈呈いたします。詳細は⇒http://www.solarehotels.com/cp/bestrate.html プランからのご予約で、チサンホテルをはじめ、全国のソラーレ ホテルズ & リゾーツに宿泊いただくとJALのホテルマイルが200~300マイル確実にたまります。詳細は⇒http://www.solarehotels.com/mile/jal.html 4月1日からANAのマイレージプランも登場。プランからのご予約で確実にANAマイルが獲得できます。詳細⇒http://www.solarehotels.com/mile/ana.html チサンホテル全店をはじめ、全国33のホテルで「Edy」が使えます。お支払いがスムーズで簡単に。詳細⇒http://www.solarehotels.com/cp/edy.html 「ソラーレ スマイレージ カード」は、宿泊ポイントがたまるのはもちろん、ためたポイントをホテルの宿泊だけでなく、1ポイント1円からレストランなどホテル館内の施設やショッピングにも使えるお得なカードです。また、会員にはお得な宿泊レートやレストランでのサービスもあります。期間中に新規入会するとニンテンドーDS Liteとソフト2本(「えいご漬け」+ 「もっと脳を鍛える大人のトレーニング」)が当たるキャンペーンを実施中。出張でためたポイントをソラーレグループのリゾートホテルで使うこともできます。詳細は⇒http://www.solarehotels.com/cp/smart_biz/index.html この春公開予定の家族みんなが楽しめるアニメ映画「アイス・エイジ2」。キャンペーン期間中にゴールデンウィークプランでご宿泊されたお客様に「アイス・エイジ2」の劇場招待券やオリジナルグッズが当たるプレゼントキャンペーンを実施します。詳細は⇒http://www.solarehotels.com/cp/gw_present/index.html http://www.solarehotels.com/ 行き届いたもてなしのホテルに、格安料金プランで宿泊できて、航空会社のマイレージもたまるという、お得なおはなし。女性利用者にうれしいレディースルームプランや、家族向けキャンペーンも開催されており、ゴールデンウイークに、どこに出掛けようか迷っている人は、一度上記サイトを訪れてみてはいかがでしょうか?
April 10, 2006
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送徐大夫赴廣州 劉長卿上將壇場拜、南荒羽檄招。遠人來百越、元老事三朝。霧繞龍山暗、山連象郡(一作嶺)遙。路分江■(「品」の字のように「水」を三つ書く字。ビョウ)■(ビョウ)、軍動馬蕭蕭。畫角知秋氣、樓船逐暮潮。當令輸貢賦(一作職)、不使外夷驕。【韻字】招・朝・遙・潮・驕(平声、蕭韻)。【訓読文】徐大夫の広州に赴くを送る。上将壇場に拝せられ、南荒羽檄招く。遠人百越に来たり、元老三朝に事(つか)ふ。霧龍山を繞つて暗く、山象郡(一に「嶺」に作る)に連つて遥かなり。路分れて江■(ビョウ)■(ビョウ)、軍動きて馬蕭蕭たり。画角秋気を知り、楼船暮潮を逐ふ。当に貢賦(一作職)を輸めしめ、外夷をして驕らざらしめよ。【注】○徐大夫 未詳。「大夫」は、官吏の身分の一つで、卿と士の間に位置する。○広州 広東省と広西壮族自治区。○上将 全軍の総大将。○壇場 将軍を任命するさいに設置される、土を高く盛った所。○南荒 南方の野蛮な土地。○羽檄 鳥の羽をはさんで、火急の用であることを表した、ふれぶみ。○遠人 遠くの土地にいる人。○百越 むかし越と呼ばれていた浙南・福建・広東あたり。○元老 国家に多大な貢献をした老臣。○三朝 宮廷の燕朝(天子が休むところ)・内朝(天子が政治を行うところ)・外朝(朝臣が政治を行うところ)。○龍山 広東省楽昌県の南の山。あるいは、広東省英徳県の北の山か。○象郡 象県(広西省象県)か。○■(ビョウ)■(ビョウ) 水がひろびろと限りないようす。○蕭蕭 馬のいななくようす。○画角 絵のかいてある笛。○秋気 秋のけはい。○楼船 二階建ての屋形船。やぐらのある大船。水上の戦争などに用いた。○輸賦 税をおさめる。○貢賦 みつぎものと租税。○外夷 外国人をいやしんでいうことば。【訳】徐大夫がお役目で広州に向かうのを見送る。壇の上にて上将にめでたく任ぜられし君、南蛮からは羽挿した火急の知らせ、きみ招く。遠く越の地おもむくか、朝に仕えし重臣よ。龍山あたり霧深く、象郡とても遥かなり。路は分れて川ひろく、軍は移動し馬ぞ鳴く。角笛ひびく秋のそら、暮潮に浮かぶいくさ船。税をきちっと納めさせ、いい気にさすな外人を。
April 9, 2006
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「ごみごみした都会では暮らしたくない!でも、都心に近いロケーションは譲れない!」。住まいを選ぶ際、こんなワガママは無理だと思っていますか? 実は意外に簡単に実現できるんですよ。このワガママを実現してくれるのが、最近人気の「大規模開発タウン」です。「 大規模開発タウン」は、郊外に多いものの「つくばエクスプレス」など都心に直結した路線沿いにあり、通勤通学の時間はまるで都心に住んでるかのように短くなります。もちろん郊外を立地としているので、一戸建てを中心とした、自然あふれる静かな町並みを実現し、豊かな環境のなかで「マイホームのある暮らし」を楽しむことができます。日本最大級の住まい探しサイト「住宅情報ナビ」では、そんな人気の大規模開発タウンを、女性レポーターがムービーで紹介する人気コーナー『街の扉』を展開しています。この度、この人気コーナー『街の扉』が大リニューアルします! そこで、皆様からリニューアルしたこのコーナーをレビューして頂ければと思います。これから家を買おうと思っている方も、まだ買う予定のない方も、是非このコーナ-の「こんなところが良かった!」「こんな情報がもっと見てみたい!」 というレビューをして頂ければ幸いです。よろしくお願いします。 http://www.jj-navi.com/shuto/ ・ とかく住宅情報は、写真や間取り図のみ・・・というサイトも多いですが、このサイト『街の扉』では、ムービー再生機能によって、たとえば海岸沿いの湘南の物件などは、海の色や波まで見えたり、道路や歩道の幅なども立体的にみられ、子供の通学には安全か、とかいったことも視覚的にとらえられ、検討できるところが、便利でうれしいですね。 http://www.jj-navi.com/house/01/edit/shuto/jj/special/machi/index.html?vos=nmsjprsm10100031005000・ 『街の扉』トップページ
March 31, 2006
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從軍(六首)其三倚劍白日暮、望郷登戍樓。北風吹羌笛、此夜關山愁。迴首不無意、■(「濾」の「思」を「乎」に換えた字。コ)河空自流。【韻字】樓・愁・流(平声、尤韻)。【訓読文】従軍 其の三。剣に倚(よ)る白日の暮、郷を望まんとして戍楼に登る。北風羌笛を吹き、此の夜関山に愁ふ。首(かうべ)を回(めぐら)せば意無きにあらず、■(コ)河空しく自から流る。【注】『全唐詩』では五首め。○倚 もたれる。よりかかる。○戍楼 敵を見張るために設置したやぐら。○羌笛 西方のえびす(チベット族)が吹く笛。○関山 関所のある山。ここでは楽曲の名「関山月」の意であろう。王昌齢《従軍行》「更に羌笛を吹く関山月」。○迴首 ふりかえってみる。○■(サンズイの右上に「虍」、右下に「乎」。コ)河 ■(コ)沱。山西省に発し河北省で黄河に注ぐ河。【訳】夕暮れ楼に登りては、剣にもたれて、郷見やる。北風にのる笛の音は、これぞ関山月ならん、さびしさまさる曲ぞかし。かえりみするは思いあり、■(コ)沱はつれなく流れゆく。
March 17, 2006
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寄靈一上人(一作皇甫冉詩,一作郎士元詩) 劉長卿高僧本姓竺、開士舊名林。一去春山裏、千峰不可尋。新年芳草遍、終日白雲深。欲徇微官去、懸知訝此心。【韻字】林・尋・深・心(平声、侵韻)。【訓読文】霊一上人に寄す。高僧本姓竺、開士旧名林。一たび春山の裏に去らば、千峰尋ぬべからず。新年芳草遍ねく、終日白雲深し。微官に徇ひて去らんと欲すれば、此の心を訝かるを懸知せん。【注】○霊一上人 93番に既出。○高僧 徳の高い僧侶。○本姓竺 じつは霊一上人の俗姓は呉であるが、生まれながらの仏教者ということを強調するために天竺の「竺」を本姓と表現したものか。○開士 よくみずから悟りを開き、他人にも信心を生ぜしめるところから、菩薩の別名。転じて、僧の敬称。○懸知 予知する。【訳】霊一上人に贈る詩。上人さまは、もともと天竺のお方かとおもわれるほど仏教に通じておられ、ふるくから有名な山林の寺で菩薩の道をきわめようとなさっておられる。いったん春の山中にこもってしまわれたら、多くの峰をさがしまわっても容易にはお会いできますまい。新年を迎えて香りの良い草も山じゅうに生え、一日中白い雲がわき起こるような深い山中での仏道修行。私がつまらぬお役目にしたがって任地に行こうとすれば、きっと上人さまは「あいつはなぜ、いつまでもくだらぬ宮仕えをしているのだろうか」と怪訝にお思いになるでしょうね。【参考】 赴無錫別靈一上人(一作劉長卿詩、一作皇甫冉詩。) 郎士元高僧本姓竺、開士舊名林。一入春山裏、千峰不可尋。新年芳草遍、度(一作終)日白雲深。欲問(一作徇)微官去、懸知訝此心。 赴無錫寄別靈一淨虚二上人(一本有還字)雲門所居(一作劉長卿詩、一作郎士元詩。) 皇甫冉高僧本姓竺、開士舊名林。一入春山裏、千峰不可尋。新年芳草遍、終日白雲深。欲徇微官去、懸知訝此心。
February 8, 2006
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「ランキングジャパン(Ranking Japan)」(http://www.rankingjapan.com/)は、今話題のキーワードや、売れているもの、人気のものetc.世の中のいろんなランキングをしりたいあなたのためのランキングポータルサイト。ブログで話題のキーワードがリアルタイムでわかる「きざし語ランキング」、独自のアンケート集計にもとづくオリジナルランキング(「笑っていいとも タモリの後はこの人ランキング」等)、Amazonの売り上げ情報とむすびついた「売れ筋ランキング」など様々なランキングコンテンツを提供中。 ★今ならオープニングキャンペーン実施中!★ (http://www.rankingjapan.com/campaign.php)サイトオープンを記念して、ウィルコムのスマートフォン「W-ZERO3」、iPod、PSP、ゲームボーイミクロなど素敵なプレゼントが当たるキャンペーンを実施中です。
January 26, 2006
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長門怨 劉長卿何事長門閉、珠簾只自垂。月移深殿早、春向後宮遲。▲(クサカンムリのしたに「惠」。ケイ)草生■(「門」のなかに「月」。カン)地、梨花發舊枝。芳菲自(一作似)恩幸、看著(一作卻)被風吹。【韻字】垂・遲・枝・吹(平声、支韻)。【訓読文】長門怨 何事ぞ長門を閉ざし、珠簾只(ただ)自から垂るる。月深殿に移ること早(すみやか)にして、春後宮に向かふこと遅し。▲(ケイ)草■(カン)地に生じ、梨花旧枝に発す。芳菲自から(一に「似」に作る)恩幸あるも、看著す(一に「卻」に作る)風に吹かるるを。【注】○長門怨 楽府題の一。「長門」は、漢の宮殿の一つ。長門宮。武帝の陳皇后が寵愛を失って、ここで暮らした。○何事 なぜ。どういうわけで。○珠簾 真珠で飾ったすだれ。○後宮 后や女官のすむ宮殿。○▲(クサカンムリに「惠」。ケイ)草 香草の一種。○■(「門」のなかに「月」。カン)地 静かな土地。○芳菲 かぐわしい草花が美しく咲きにおう。○恩幸 天子の寵愛。【訳】長門怨どういうわけで長門宮は閉鎖され、玉すだれがただむなしく垂れ下がっているばかりなのか。奥深い宮殿に早くも月が傾き、後宮にはなかなか春がやってこない。ひとけなくひっそりとした敷地には香草が生じ、古びた枝には今年も梨の花が咲いている。香りが良い草花があれば人が来るように美人がいれば天子もおでましになるであろうが、草花が風に散りやすいのと同様に天子の寵愛もさめやすいのをまざまざと見る思いだ。
January 14, 2006
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使還至(一作自)菱陂(一作波,一作坡)驛渡■(サンズイのみぎに「師」。シ)水作 劉長卿清川已再渉、疲馬共西還。何事行人倦、終年流水閑。孤煙飛(一作出)廣澤、一鳥向空山。愁入雲峰裏、蒼蒼閉古關。【韻字】還・閑・山・關(平声、刪韻)。【訓読文】使ひして菱陂駅に至り、■(シ)水を渡りて作る。清川已に再び渉り、疲馬共に西還す。何事ぞ行人倦み、終年流水閑かなり。孤煙広沢に飛び、、一鳥空山に向かふ。愁ひは雲峰の裏に入り、蒼蒼として古関を閉づ。【注】○使 公務ででかける。○菱陂駅 いまの河南省信陽市の南の三里店付近。○■(シ)水 いまの、■(シ)河。源は河南省信陽県の西南に出で、北流して信陽市の南を経て、東北して羅山県の西北に至り、淮河に入る。○疲馬 つかれたウマ。○行人 道を行く人。○終年 一生涯。○広沢 広いさわ。○雲峰 雲のかかったみね。○蒼蒼 あおあおした色。【訳】公務で菱陂駅に行き着き、■(シ)水を渡って作った詩。この清らかな川を再び渉り、疲れた馬と共に西へ還る。どういうわけか道行く人も倦み、一年中流水が静かにながれている。ぽつりと一つ見える煙も広い沢のほうへ飛び去り、一羽の鳥がひっそりとして静かな山へと向かう。雲のかかった峰の中に入ると私の悲しみは増し、あおあおと木々の茂った薄暗いなか、古い関所の門が閉じられた。
December 7, 2005
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ガンバッテイル質屋さん
October 2, 2005
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過前安宜張明府郊居 寂寥東郭外、白首一先生。解印(一作考滿)孤琴在、移家(一作家移)五柳成。夕陽臨水釣、春雨向田耕。終日空林下、何人識此情。【韻字】生・成・耕・情(平声、庚韻)。【訓読文】前の安宜の張明府が郊居に過(よ)ぎる。寂寥たり東郭の外、白首の一先生。印を解きて孤琴在り、家を移して五柳成る。夕陽水に臨んで釣り、春雨田に向(お)いて耕す。終日空林の下、何人か此情を識らん。【注】○過 たちよる。○安宜 宜安の誤りか。宜安県の治所は今の江蘇省宝応県。○張明府 劉長卿の知人らしいが、未詳。○郊居 郊外の住居。 ○寂寥 ひっそりとして、さびしい。○東郭 町の東側の外囲い。○白首 年老いて頭髪が白い。○解印 官印のひもを解く。官職をやめることをいう。○五柳 陶淵明は家に五本の柳をうえて自ら五柳先生と称した。○臨水 川の畔に行く。○向 場所を示す前置詞。○田 はたけ。○終日 一日中。○空林 ひとけのない寂しい林。○何人識此情 白居易《山下留別仏光和尚》詩「労師送我下山行、此別何人識此情」(師の我を送りて山を下りて行くを労ふ、此の別れ何人か此の情を識らん)。【訳】前任の安宜の張長官の郊外の住居に立ち寄る。ひっそりとさびしい、町の東のはずれ、そこに白髪頭の一人の立派な人士がおられる。官職を退いて琴をつまびき、郊外に転居して庭には陶淵明にならって五本のヤナギを植えておられる。夕日をあびて川で釣りをし、春雨のそぼふるなか畑を耕す。一日中そんな静かな林のそばの暮らし、いったい誰がこんなのんびりとして静かな暮らしの良さがわかろうか。
September 26, 2005
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送李秘書卻赴南中(此公舉家先流嶺外,兄弟數人倶沒南中) 卻到番禺日、應傷昔所依。炎洲百口住、故國幾人歸。路識梅花在、家存(一作看)棣萼稀。獨逢廻雁去、猶作舊行飛。【韻字】依・歸・稀・飛(平声、微韻)。【訓読文】李秘書の南中に赴くを送る。(此の公は家を挙げて先づ嶺外に流され、兄弟数人倶に南中に没す)卻つて番禺に到る日、応に昔依る所を傷むべし。炎洲百口住まり、故国幾人か帰る。路には梅花の在るを識り、家には棣萼を存すること稀なり。独り廻雁の去るに逢へば、猶ほ旧行を作(な)して飛ぶがごとし。【注】○李秘書 劉長卿の知人であろうが、未詳。「秘書」は、秘書郎。宮中の図書係。○南中 ひろく中国の南方の地を指す。○嶺外 いまの広東省の地。○番禺 広東省の県名。○炎洲 暑い南方の土地。○百口 一家のひとびと。○棣萼 ニワウメの花がいくつも集まって美しいことから、兄弟の交情の美しさをたとえる。○廻雁 北へ帰る雁。【訳】李秘書が南中に赴任するのを見送る。(彼は一家こぞって先に嶺外に流され、兄弟のうち数人は南中で亡くなった)かえって番禺にもどられる日、きっと昔身をお寄せになった所で兄弟の死をお悲しみになるのでしょう。南方の地に大勢がとどまり、故郷へ帰るものはほとんど無い。路にはどこに梅花が在ったかもしっておられようが、家にはニワウメの花はまばらなろうに、兄弟が何人か亡くなってしまった。独り北へかえる雁の群れに逢へば、ちょうど南に来たときと同様に一羽も欠けずに列をなして飛んで帰るようで、兄弟の欠けたあなたにはおつらいでしょう。
September 25, 2005
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秋夜肅公房喜普門上人自陽羨山至 山棲久不見、林下偶同遊。早晩來香積、何人住沃洲。寒禽驚後夜(一作獨夜。一作後晩)、古木帶高秋。卻入千峰去、孤雲不可留。【韻字】遊・洲・秋・留(平声、尤韻)。【訓読文】秋夜肅公の房にて普門上人の陽羨山より至るを喜ぶ。 山棲久しく見ず、林下偶(たまたま)同遊す。早晩香積に来たれ、何人か沃洲に住(とど)まらん。寒禽後夜に驚き、古木高秋を帯ぶ。卻つて千峰に入つて去らば、孤雲留むべからず。【注】○肅公 劉長卿の知人の僧のであろうが、未詳。○房 寺の僧に与えられた一室。○普門上人 劉長卿の知人の僧のであろうが、未詳。○陽羨山 江蘇省宜興県にある山。 ○山棲 山中での住まい。○同遊 連れだって旅行する。ここでは、同じ時期に旅行したことをいうのであろう。○早晩 いつか。いずれ。○香積 この名の寺は各地にあって、未詳。○沃洲 浙江省新昌県の東にある山。○後夜 六時の一。夜明けごろ。仏教語としては、午前二時から午前六時ごろ。○高秋 空が高く澄み渡る秋。○孤雲 世捨て人のたとえ。【訳】秋の夜に肅公の房で普門上人が陽羨山からやって来られたのを喜ぶ。 山暮らしで長いこと普門さまにはお会いしませんでしたが、きょう林のなかのこの房でたまたまいっしょになりました。いつか香積寺に来てくださいませ、私もいつまでも沃洲にとどまっているつもりはございません。寒中の鳥は後夜に驚いて鳴き、古木はすっかり秋のけはい。あべこべに幾つもの峰が重なった山奥に入ってしまわれたら、もはや空にぽつんと浮かぶ雲とおなじで誰も引き留めることはできますまい。
September 24, 2005
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送朱山人放越州賊退後歸山陰別業 越州(一作中)初罷戰、江上送歸橈。南渡無來客(一作信)、西陵自落潮。空城垂故(一作細)柳、舊業(一作井)廢春苗。閭里相逢少(一作誰相見)、鶯花共寂寥。【韻字】橈・潮・苗・寥(平声、蕭韻)。【訓読文】朱山人放の越州の賊退きて後に山陰別業に帰るを送る。 越州初めて戦罷み、江上帰橈を送る。南渡来客無く、西陵自から落潮。空城故柳垂れ、旧業春苗廃す。閭里相逢ふこと少く、鴬花共に寂寥たり。【注】○朱山人放 朱放。劉長卿の友人。字は長通。襄州の人。越の■(炎のみぎにリットウ。セン)溪に隠棲す。曹王皋の江西を鎮ずるや辟されて節度参謀となる。貞元の初め、拾遺として召されたが就かなかった。31番に既出。「山人」は、俗事を捨てて山に住む隠士。○越州 治所は今の浙江省紹興市。○賊 反乱軍。○山陰 県名。治所は今の浙江省紹興市。○別業 別荘。○帰橈 乗って帰る船。○南渡 浙江省奉化県の東北に在り。○西陵 浙江省蕭山県の西の西興鎮。もと固陵といった。○空城 ひとけのない、ひっそりと静まりかえった町。○旧業 ふるい別荘。○閭里 郷里。○寂寥 ひっそりとしているさま。【訳】友人の隠士朱放が越州の反乱軍が撤退して後に山陰の別荘に帰るのを見送る。 越州はやっと戦乱がおさまり、川のほとりで君が船で帰るのを見送る。君が去れば南渡にも訪問客が無くなり、西陵へは自然と潮が引いてゆく。君の故郷では乱を避けて人が減り、がらんとした町には柳の古木が枝を垂れ、かつて暮らしていた別宅では昨年の春に植えた苗が枯れてしまっているだろう。君が故郷にもどってしまえば、もうめったに逢えないし、チョウセンウグイスも花も共にひっそりとして、さびしそう。
September 23, 2005
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寄會稽公徐侍郎(公時在王傅) 搖落淮南葉、秋風想越吟。鄒枚入梁苑、逸少在山陰。老鶴無衰貌、寒松有本心。聖朝難税駕、惆悵白雲深。【韻字】吟・陰・心・深(平声、侵韻)。【訓読文】会稽公徐侍郎に寄す。(公時に王傅に在り) 揺落す淮南の葉、秋風越吟を想ふ。鄒枚梁苑に入り、逸少山陰に在り。老鶴衰貌無く、寒松本心有り。聖朝税駕難く、惆悵す白雲の深きを。【注】○会稽公徐侍郎 劉長卿の知人らしいが、未詳。○揺落 風を受けてひらひらと散る。○淮南 唐代の道の名。淮水以南の地。いまの湖北・江蘇・安徽省の一部。○越吟 荘■(潟のサンズイのない字。セキ)は楚の執珪に官したが、故国を忘れず越国の歌を吟唱したという。○鄒枚 漢の文人で、梁の孝王に仕えた鄒陽と枚乗。○梁苑 兎園。漢の文帝の次男、梁の孝王の庭園。ここで四方の豪傑や学者を集めて盛大な宴を催した。○逸少 王羲之。字は逸少。琅邪郡臨沂の人。秘書郎、江州刺史、護軍、右軍将軍、会稽内史に官す。官を退き、会稽に遊んで書を楽しんだ。永和九年(353)、蘭亭に清遊の人士を集めて詩文の会を催した。晩年は五斗米道に傾倒。若くして書を好み、漢魏以来の書を集大成し、能書家としても知られ、子の王献之とともに二王と称される。「蘭亭序」「十七帖」は著名。 (321-379年。一説に303ー361年)。 ○山陰 秦は山陰県を置いた。治所は今の浙江省紹興市。○衰貌 おとろえた容貌。○聖朝 聖天子の御代。○税駕 馬車から馬を解きはなって休息する。○惆悵 恨み嘆く。失望して悲しむ。【訳】会稽公の徐侍郎に贈る詩。(公は現在、王の補佐役である) 淮南の地方の木々の葉は風に散り、秋風が吹くと荘■(セキ)が越の歌を吟唱した故郷への思いを想像する。鄒陽も枚乗も梁の孝王の庭苑に入り、王羲之は山陰県に住んだ。老いた鶴は衰えた容貌は無く、寒中の松は昔の気持ちを忘れず青い葉を茂らせている。聖王治めたもう御代では馬車から馬をはずして休むまもなく、天子の取り巻きが空の厚い白雲のように天子の明徳を覆い隠してしまうのを悲しみ嘆く。
September 22, 2005
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送張司直赴嶺南謁張尚書 番禺萬里路、遠客片帆過。盛府依横海、荒祠拜伏波。人經秋瘴變、鳥墜火雲多。誠憚炎洲裏、無如一顧何。【韻字】過・波・多・何(平声、歌韻)。【訓読文】張司直の嶺南に赴きて張尚書に謁するを送る。番禺(ハングウ)万里の路、遠客片帆過ぐ。盛府横海に依り、荒祠伏波を拝す。人は秋瘴を経て変じ、鳥は火雲に墜つること多し。誠に憚(はばか)る炎洲の裏、一顧を如何ともする無きを。【注】○張司直 劉長卿の友人であろうが、未詳。「司直」は、裁判官。公明正直を司る官。○嶺南 唐代の道(ドウ。地方行政区画)の一。五嶺(湖南省の衡山から東、海に至る山系の五つの嶺)の南。広東省・広西省。○謁 お目通りする。偉い人に会う。○張尚書 未詳。「尚書」は、唐代の行政の中央最高官庁の長官。○番禺 広東省番禺県。○万里 きわめて遠い距離。○遠客 遠方へ向かう旅人。○片帆 一方にだけ帆を揚げた船。○盛府 幕府。役所。○横海 漢の将軍の名号。○荒祠 あれはてたほこら。○伏波 漢の将軍の名号。○秋瘴 秋の瘴気(人を病気にする高温と湿気)。○火雲 燃え立つような夏の雲。○炎洲 南方の地。○無如……何 ……をどうすることもできない。○一顧 ちらっと見ること。また、目をかけて世話すること。【訳】張司直が嶺南に赴任して張尚書にお会いしに行くのを見送る。番禺までは万里の路のり、遠くへ旅立つ君をのせた片帆の船が通り過ぎてゆく。幕府は横海将軍をたよりにし、荒れはてた祠のそばで伏波将軍の任務をはたす。南方では環境が厳しく人は秋の瘴気にあたると体調をくずし、鳥は夏の雲がうかぶ空の暑さにたえきれず墜ちることも多いという。ほんとうに心配なのは南方の地にあって、君が張尚書様から目もくれられないことだ。
September 21, 2005
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送崔載華張起之■(門のなかに虫。ビン)中 不識■(ビン)中路、遙知別後心。猿聲入嶺切、鳥道問人深。旅食過夷落、方言會越音。西征開幕府、早晩用陳琳。【韻字】心・深・音・琳(平声、侵韻)。【訓読文】崔載華・張起の■(ビン)中に之(ゆ)くを送る。 識らず■(ビン)中の路、遙かに知る別後の心。猿声嶺に入ること切(セツ)に、鳥道人を問ふこと深し。旅食夷落を過ぎ、方言越音に会す。西征幕府を開き、早晩陳琳を用ゐん。【注】○崔載華・張起 いずれも劉長卿の友人らしいが、未詳。2番に既出。○■(ビン)中 福建省。2番に既出。○別後 別れて以来。○猿声 サルの鳴き声。もの悲しいものとされる。○鳥道 鳥しか渡れないような険しい道。山の尾根。○旅食 よその土地で暮らす。○夷落 未開の異民族の住む集落。○方言 お国なまり。○越音 越(エツ)の地方の発音。○西征 西方へ向かう。○幕府 将軍の本営。節度使の政務をとる所。○早晩 いずれ。いつか。○陳琳 三国魏の文人。広陵の人。字は孔璋。建安七子の一。文章をよくし、もっとも檄文に長じた。(?ー217年)。【訳】友人の崔載華と張起が■(ビン)中に行くのを見送る。 ■(ビン)中の路は通ったこともないが、遠くからでも別れてからの辛さは想像がつく。猿の声は悲しげに嶺にひびき、人を訪問するにも鳥しか通らぬような深く険しい山道を通らねばならぬ。未開の異民族の集落に旅をつづけ、越の地方の聞き慣れない発音や方言にでくわすかもしれぬ。それでも、そのうち朝廷が節度使を西に派遣して幕府を開けば、いずれ陳琳のようにすぐれた文人である君たちを登用することであろう。
September 19, 2005
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題元録事開元所居 幽居蘿薜情、高臥紀綱行。鳥散秋鷹下、人間春草生。冒嵐歸野寺、収印出山城。今日新安郡、因君水更清。【韻字】行・生・城・清(平声、庚韻)。【訓読文】元録事が開元の所居に題す。幽居蘿薜の情、高臥紀綱の行。鳥散じて秋鷹下り、人間春草生ず。嵐を冒して野寺に帰り、印を収めて山城を出づ。今日新安郡、君に因つて水更に清らかなり。【注】○元録事 劉長卿の友人であろうが、未詳。「録事」は、州郡の属官(地方官庁の事務官)で、文書や帳簿を管理する。○開元 安徽省にあった寺の名前か。○所居 住居。ここでは寺の敷地内に間借りしていたか。○幽居 しずかな住まい。○蘿薜 ふつう「薜蘿」と書き、カズラのことであるが、詩では平仄の都合で往々にして語順を逆にする。○高臥 世俗にわずらわされず、高尚な心で暮らす。○鳥散秋鷹下、人間春草生 「鷹」は厳格な役人である元録事、「鳥」は不正をはたらく悪人、「春草」は、庶民を指すのであろう。すなわち、立派な役人がいれば、悪人がはびこらなくなり、庶民がのびのびと生活できるということを暗示しているのであろう。○紀綱 国家の制度や規則。○嵐 山にたちこめるモヤ。○印 官印。○新安郡 安徽省歙県。【訳】元録事の開元の住居を詠んだ詩。君の住まいは周囲の木々にカズラが茂りるような山奥、世俗にわずらわされることなく、高尚な心を持っているのに、規律をはずれたような行いはしない。秋に鷹が舞い降りると他の鳥は散りぢりに逃げ、世間には春の草が生じる。山にモヤがたちこめているにもかかわらず野寺に帰り、官印をしまって山の城壁を出る。現在の新安郡は、君のおかげで川の水までもいっそう清らか。
September 19, 2005
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歳日作 建寅迴北斗、看歴占春風。律變滄江外、年加白髮中。春衣試稚子、壽酒勸衰翁。今日陽和發、榮枯豈不同。【韻字】春・中・翁・同(平声、東韻)。【訓読文】歳日の作。建寅北斗を廻り、歴を看れば春風を占む。律は変ず滄江の外、年は加はる白髮の中。春衣稚子に試み、寿酒衰翁に勧む。今日陽和発し、栄枯豈に同じからざらん。【注】○建寅 陰暦正月の別名。旧暦一月ごろに北斗星の柄の部分が寅(すなわち東北東)を指すのでいう。○看歴 こよみを見る。○律変 音律が変わる。春には雪や氷が解けて川が増水し、川音がちがって聞こえることをいうか。○滄江 広々とした青緑色の川。○白髮 しらが。○春衣 春の着物。あわせ。○稚子 幼い子供。○寿酒 祝い酒。正月のおとそは年長者から飲むのが昔の中国の習慣。○衰翁 年取ったじいさん。○陽和 春ののどかさ。春の穏和な気候。○栄枯 人や家の栄えると衰えると。【訳】元日の作。正月には北斗七星の柄が東北東を指し、暦を見ると、もう春風がふく季節。ひろい川の川音も変わり、年とともに白髪も増えた。幼子の着物も春物になり、おとそを老いぼれに勧めてくれる。今日から春の暖気が増すが、人の世の栄枯盛衰はどうして平等でないのであろう。
September 18, 2005
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