[はじまり]

☆ [はじまり] 
昔からリストカットをしていた訳ではない。
小学生の頃はカサブタを掻きむしり、血が出るまで掻きむしり、
手に付いた血や、傷口の血を舐めていた。
火も好きだった。要らない紙の物を細かくちぎり、
灰皿やフライパンの上で燃やしていた。
水が流れているのを見るのも好きだった。
水道の蛇口から水をザーっと流し、時が忘れる程眺めていた。
誰かに咎められるまで。
洗濯機が回っているのも見ていた。でも音が嫌だった。
砂時計も好きだった。でも長くても5分、普通で3分だから、
つまらなくなった。もっと長い時間のがあれば良いのに。
カサブタを掻きむしる癖が止まらず、寝る時も無意識にやってしまう。
夜は縛って寝たりもしたが、なかなか寝付けず、
意地でも自分で取ってしまうので止めた。
そんな癖のせいで私の足にも腕にも汚くシミになって残っている。
私は水着を着たり、体操着になったり、ミニスカートは穿けなくなった。
でもいい加減病気のように肌に跡が残る事に抵抗を覚え、
他に血を吸える、血が見れる行為はないかと思い、
思いついたのが剃刀で腕を切る事。リストカットだった。
私は痛い事が苦手だ。嫌いだ。注射も採血も嫌いだ。
病院では看護士に子ども扱いされるぐらいの怯えようだ。
「ためらい傷」と言われるし、思われるが死ぬ気はない。
死にたいと思ったらもっと深くやる、それか他の方法で。
「何故リストカットをするのか?」それは人それぞれだと思う。
私の場合は、血が見たいからだ。自分が流す血が見たいから。
だが決して誰かを傷つけたり、動物を殺したりしない。
他人を傷つけるのは嫌だ。そんな事をする気はない。
ストレスでどうしようもなくなった時、辛い事があった時、
その思いを逸らす為だ。今の自分の状況からの逃避。
切る事で実質的な痛みを得て、気持ちを紛らわせる為だ。
夏、半袖の季節・水着の季節。腕にある無数の切り傷を隠すためにサポーターをする。
聞かれたら「植物にかぶれた」と言う。蒸れて本当に痒くなるが仕方ない。
「入れ墨でも入れてるんじゃないか」と思われてるかもしれない。
冷静になった時傷は、私を勇気付けてくれる物ではなく、
不安にさせる。恥かしい痕でしかない。
そう思っても発作的に習慣化していたが、やっと止める時が訪れた。
私にとってそう思わせる事が起きたのだ。
☆

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