全59件 (59件中 1-50件目)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはまれに魚うを烹にて子等こら皆が うましうましといひて食くふ時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん連作楽しいのは、たまに魚を煮て子ら皆が「うまいうまい」と言って食べている時。註作者・橘曙覧には男ばかり三人の子がいた。長男の井出今滋(いで・いましげ)は、明治維新後教育畑を歩み、のちに山梨県師範学校(現・山梨大学教育人間科学部)校長。明治天皇の行幸(ぎょうこう・みゆき)の供奉(ぐぶ・お供)などを務めた。また、父・曙覧の遺稿をまとめ、「志濃夫廼舎(しのぶのや)歌集」として明治11年(1878)上梓。俳句・短歌の巨人・正岡子規の激賞を受け、近代短歌の魁(さきがけ)と目されるに至った。特にこの「独楽吟」連作52首は、和歌史上の珠玉の名作といわれる。こうした、いわば卑近な日常生活、家庭・家族愛を詠んだ歌は、万葉集の山上憶良の数首を除けば、日本の詩歌1300年の伝統にほとんど欠けていた要素であり、大きな盲点であったといえる。こうした歌風を称して、現在の歌壇では「ただごと歌」という。「ただならぬこと」の対語であり、時代の趨勢のリアリズムである。ドラマチックなことなんて、普通そんなに起こらない。
November 20, 2022
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは朝起きいでて 昨日きのふまで無かりし花の咲ける見る時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 「独楽吟どくらくぎん」連作楽しいのは朝起き出してきのうまでなかった花が咲いているのを見る時。橘曙覧全歌集 岩波文庫【送料無料】 価格:1,134円(税込)
March 22, 2012
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはすびつのもとにうち倒れ ゆすり起こすも知らで寝し時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 「独楽吟どくらくぎん」連作楽しいのは 炭櫃(すびつ)のもとに寝そべって家族が揺すり起こすのにも気が付かないで寝入っていた時。註すびつ:暖房・湯沸し用の大型の火鉢(角火鉢?)のことを、やや擬古的に表現したか。
February 13, 2011
コメント(1)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは雪降るよさり 酒の糟かすあぶりて食くひて火にあたる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 「独楽吟どくらくぎん」連作楽しいのは 雪降る夜に酒粕を炙って食べて火鉢に当たっている時。註よさり:もと、夜が来ること。転じて、夜そのものを指す。「さり」は動詞「さる」の連用形体言。「さる」は、現代語「去る」の語源だが、古くは方向を問わず移動することを指し、多くの場合「近づく、来る、訪れる」の意味に用いられた。 幻の銘酒「越乃寒梅」の酒粕 【石本酒造】 1kg 2月12日新入荷!価格:600円(税込、送料別)
February 13, 2011
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは炭さしすてておきし火の 紅あかくなりきて湯の煮ゆる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 「独楽吟どくらくぎん」連作楽しいのは 炭を差し捨てておいた火が真赤に熾(お)きて湯が沸いた時。註おき:「置き」と「(火が)熾(お)き」を掛けている。
February 13, 2011
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)正月むつきたつすなはち華のさきはひを 受けて今歳ことしも笑ひあふ宿志濃夫廼舎(しのぶのや)歌集正月元日が来た。だから梅の華の祝福を受けて今年も笑い合う明るいわが家。註橘曙覧:江戸末期に早くも近代的感性をたずさえ、それまでの因循姑息な陋習に沈滞していた「月並和歌」ではない、平明で写実的(リアル)な「近代短歌」を準備したと正岡子規によって絶賛された、幕末・越前(福井)の歌人。事実、この歌のような身近な家族のモチーフが、万葉集以来実に千年間、和歌の世界からほとんど失われていたのは事実であり、後の世から見れば驚くべきことであった。この「正月」は旧暦(太陰暦)なので、今でいう1月末から2月上旬頃に当たる。早咲きの梅がそろそろ咲きそめる頃。正月むつきたつ:正月一日である元日になること。ちなみに、「朔(ついたち)」は「月立ち」の音便。さきはひ:「幸い」の上古語。(神霊などに)祝福されること。ここではたぶん、(華が)「咲き」と掛けてある。宿:「わが家」の意味。本居宣長の流れを汲む国学者らしく、ここでは万葉時代の上古語の意味で用いている。
January 3, 2011
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはふと見てほしくおもふ物辛からくはかりて手に入れしとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん 終楽しいのは、ふと目に留まって欲しいと思っていた物を辛うじてやりくりして手に入れた時。註辛くはかりて:辛うじて図って。何とか金の工面をして。* 以上、和歌史上に銘記される名作「独楽吟」連作52首のご紹介でした。
February 19, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは野山のさとに人遇あひて我を見しりてあるじするとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、旅先の野山の里でたまたま人と遇ってその人が私を見知っていて、もてなしてくれる時。註あるじする:主となって客人を接待する。もてなす。
February 18, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは野寺山里のでらやまざと日をくらしやどれといはれやどりけるとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、野寺や山里を歩き巡って一日を過ごし、知った人に泊まっていけと言われて泊まった時。
February 17, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは数ある書ふみを辛からくしてうつし竟をへつつとぢて見るとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみは、たくさんの文献をやっとのことで辛うじて写本し終えて、綴じて見る時。
February 17, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは鈴屋大人すずのやうしの後のちに生れその御諭みさとしをうくる思ふ時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみは、本居宣長先生の後に生まれそのお諭しを受けたと思う時。註鈴屋大人すずのやうし:国学の大成者・本居宣長。
February 17, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは蝦夷えみしよろこぶ世の中に皇国みくにわすれぬ人を見るとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみは、異民族の文化を喜ぶ世の中に日本の伝統を忘れない人を見つけた時。
February 17, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは神の御国みくにの民として神の教へをふかくおもふとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん註「日本は天皇を中心とする神の国」という森喜朗元首相の発言みたいだが、明治維新を思想的に主導した国学者の一人として、神道は橘曙覧の根本思想であった。
February 17, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはほしかりし物銭ぜにぶくろうちかたぶけてかひえたる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、かねてから欲しかった物を巾着(財布)を逆さに傾けて、やっと買えた時。
February 16, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは庭にうゑたる春秋はるあきの花のさかりにあへる時時ときどき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみは、庭に植えた春秋の花の盛りに命あってまた逢えた時々。 栃木・宇都宮市内で、昨年3月3日と18日に撮影。
February 15, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは好よき筆をえて先まづ水にひたしねぶりて試みるとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、いい筆を手に入れて、先ず水に浸し舐めて筆おろしをする時。註ねぶる:「舐める」の意味の古語。
February 15, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはわらは墨するかたはらに筆の運びを思ひをる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、子供たちが墨を磨っている傍らで運筆を思いめぐらしている時。
February 15, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは衾ふすまかづきて物がたりいひをるうちに寝入りたるとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、蒲団にもぐって寝物語をしているうちに寝入ってしまった時。註衾ふすま:「ふとん」の雅語的表現。かづく:「潜る」「かぶる」意味の古語。「物がたり」の相手が、妻か子供らか、あるいはその両者なのかは、原文からははっきりしないが、いずれにしても家族を詠んで微笑ましい一首である。
February 14, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは田づらに行きしわらは等らが鋤鍬すきくはとりて帰りくる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、田んぼのあたりに行っていた我が子らが鋤や鍬を手に取って帰って来た時。註自家の田畑で、子供たちが甲斐甲斐しく草取りの手伝いでもしてきたのだろうか。農薬が未発達の当時、萌え出る雑草の処理は大変な作業だった。
February 14, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはいやなるひとの来たりしが長くもをらでかへりけるとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、嫌いな人が来たものの長居もせずに帰って行った時。
February 13, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは小豆の飯いひの冷えたるを茶漬てふ物になして食ふ時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、小豆ご飯の冷えたのを茶漬けというものにして食べる時の野趣。
February 13, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはつねに好める焼豆腐うまく烹にたてて食はせけるとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみなのは、かねがね好物の焼豆腐を妻が上手く料理して食べさせてくれた時。
February 12, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは木の芽煮やして大きなる饅頭まんぢゆうをひとつほほばりし時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみなのは、香ばしい茶を淹れて大きな饅頭を一つ頬張った時。註* 原文の「にやす」には、さんずいに「論」の字の旁(つくり)の文字が使われていますが、ネット上で表示できないので、やむなく「煮やす」と表記します。木の芽(を)にやす:茶を淹(い)れることの雅語的表現。茶を熱湯で濾し出す。「煮やす」には「業を煮やす」などの成句もある。
February 11, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはたのむをよびて門かどあけて物もて来つる使ひえし時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、「お頼み申す」と家の者を呼んで、門をあけて到来物を持って来た使いを受けた時。註たのむをよぶ:他家や他所を訪れた際に、最初に「頼もう」などの挨拶をすること。
February 11, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは明日あす物くるといふ占うらを咲くともし火の花にみる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、明日戴き物があるという占いを咲いた灯火の花に見る時。註当時、燈火の芯が花のように咲いて見えた時には、翌日良い到来物があるという俗信があったという。現在でも言う「茶柱が立つ」などの類いの縁起担ぎであろう。占(うら):「占い」の古語。「うらない」の「ない(なひ)」は「行い」「商い」などと共通の、継続的動作を示す造語成分。
February 11, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは人も訪とひこず事もなく心をいれて書ふみをみる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、人も訪ねて来ず、何も変わった事もなく熱中して書を見ている時。
February 11, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは三人みたりの児こどもすくすくと 大きくなれる姿みる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、三人の子供がすくすくと大きくなってきた姿を見ている時。註三人の児ども:今滋、咲久、早成。
February 10, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは機はたおりたてて新しきころもを縫ひて妻めが着する時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、わざわざ機織りをして、新しい着物を縫って、妻が着せてくれる時。註たて:わざわざ・・・する。cf.「言い立てる」「荒立てる」。■橘曙覧の世界
February 10, 2009
コメント(2)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは家内やぬち五人いつたり五いつたりが風だにひかでありあへる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいことは、家族五人が五人とも風邪さえ引かず(まして重い病気などはせず)揃っている時。
February 10, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは客人まれびとえたる折しもあれ瓢ひさごに酒のありあへる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、突然の客が訪ねて来た折も折、瓢箪に酒がたまたまあり合わせた時。註客人(まれびと):語源は「稀人」。まれに来る人の意。音便化して「まらうど(まろうど)」とも訓ずる。
February 9, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはとぼしきままに人集め酒飲め物を食へといふ時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、乏しいなりに人を集め酒を飲め、物を食えと言っている時。
February 9, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは湯わかしわかし埋うづみ火を中うちにさし置きて人とかたる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、湯を沸かし沸かし灰に埋もれて半ば消えかかった炭火を火鉢の中に抛って置いてしみじみ人と語らっている時。
February 8, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは昼寝目ざむる枕べにことことと湯の煮えてある時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、昼寝から目覚めた枕辺にことことと鉄瓶の湯が煮え滾(たぎ)っている時。
February 8, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは昼寝せしまに庭ぬらしふりたる雨をさめてしる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、昼寝をしていた間に庭を濡らし降った雨を目覚めて知った時。註小野小町の名歌「花の色はうつりにけりないたづらにわが身世にふるながめせし間に」(古今和歌集113、 小倉百人一首9)や、「うたた寝に恋しき人を見てしより夢てふものは頼みそめてき」(古今和歌集553)などの本歌取りと思われる(くまんパパ説)。 松岡映丘「うたたね」
February 7, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは心をおかぬ友どちと笑ひかたりて腹をよるとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、気のおけぬ友同士と笑い語り合って腹をよじって抱腹絶倒する時。
February 7, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは炭さしすてておきし火の紅あかくなりきて湯の煮ゆる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、炭を注(さ)し捨てておいた火が真赤に熾(お)きてお湯が沸く時。註おき:「置き」と「(火が)熾きる」を掛けている。
February 7, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは銭ぜになくなりてわびをるに人の来たりて銭くれし時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、金がなくなって侘しい思いをしているところに人が来て金をくれた時。註揮毫などの潤筆料。昔の文人墨客(ぶんじんぼっかく)には、こういう臨時収入があった。
February 6, 2009
コメント(2)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは世に解きがたくする書ふみの心をひとりさとり得し時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、世に難解だとされる書物の真髄を独りでに理解し会得した時。
February 6, 2009
コメント(2)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは書ふみ読み倦うめるをりしもあれ声知る人の門かどたたく時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、読書に飽きた折も折、声を知っている人が訪ねて来て門を叩く時。
February 3, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは雪降るよさり酒の糟かすあぶりて食くひて火にあたる時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、雪降る夜に酒粕を炙って食べて火鉢の火に当たっている時。註よさり:夜が来ること。転じて、夜そのもののこと。「さり」は動詞「さる」の連用形体言。「さる」は、現代語「去る」の語源だが、古くは方向を問わず移動することを指し、多くの場合「来る」の意味に用いられた。英語「come」の用法と似ている。
February 3, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはそぞろ読みゆく書ふみの中うちに我とひとしき人をみし時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、何気なく読んでゆく書物の中に私と志(こころざし)が同じ人を見た時。註伊勢物語「思ふことただにぞ言はでやみぬべき我と等しき人しなければ(思うことをそのまま言はないで自重すべきだね、私と同じ人はいないのだから)」の本歌取り。
February 3, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはまれに魚うを烹にて子等こら皆が うましうましといひて食くふ時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん連作楽しいのは、たまに魚を煮て子供ら皆が「うまいうまい」と言って食べている時。註作者・橘曙覧には男の子ばかり三人の子がいた。長男の井出今滋(いで・いましげ)は、明治維新後教育畑を歩み、のちに山梨県師範学校(現・山梨大学教育人間科学部)校長。明治天皇の行幸(ぎょうこう・みゆき)の供奉(ぐぶ・お供)などを務めた。また、父・曙覧の遺稿をまとめ、「志濃夫廼舎(しのぶのや)歌集」として明治11年(1878)上梓。明治の俳人・歌人正岡子規などの激賞を受け、近代短歌の魁(さきがけ)と目されるに至った。
February 2, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは門かど売りありく魚うを買ひて烹にる鍋の香かを鼻に嗅ぐ時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみなのは、門前を売り歩く行商人の魚を買って妻が煮炊きする鍋の香りを鼻で嗅いでいる時。註ありく:「歩く」の古語。「魚」も、ここではもしかすると上古語「いを」と読ませるのかも知れない。烹にる:調理・調味して煮る。割烹(かっぽう)する。
February 2, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは物識人ものしりびとに稀まれにあひて古いにしへ今を語り合ふとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみは、物識りな人と稀に出会って今昔(こんじゃく)のことを語り合う時。
February 2, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみはあき米櫃こめびつに米いでき今一月ひとつきはよしといふとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、空だった米櫃に米の蓄えが出来、あとひと月は大丈夫だという時。
February 1, 2009
コメント(2)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは常に見なれぬ鳥の来て軒のき遠からぬ樹に鳴きしとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、日頃見慣れない鳥が来て家の軒先から遠くない樹で鳴いた時。
January 31, 2009
コメント(2)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは尋常よのつねならぬ書ふみに画ゑにうちひろげつつ見もてゆく時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみなのは、尋常ならざる傑出した書に絵画にと、うち展(ひろ)げながら次々と目を運んでゆく時。
January 31, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは意こころにかなふ山水やまみずのあたりしづかに見てありくとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しみは、意に適う山や川や庭園のあたりをしづかに見ながら散策する時。
January 30, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは心にうかぶはかなごと思ひつづけて煙艸たばこすふとき志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいのは、心に浮かんで来るさまざまな思いつきを思いつづけて煙草を吸っている時。
January 30, 2009
コメント(0)
橘曙覧(たちばなのあけみ)たのしみは朝起きいでて昨日きのふまで無かりし花の咲ける見る時志濃夫廼舎しのぶのや歌集 独楽吟どくらくぎん楽しいことは、朝起き出してきのうまで無かった花が咲いているのを見つけた時。
January 30, 2009
コメント(0)
全59件 (59件中 1-50件目)