星の髪飾り

星の髪飾り

2007/04/15
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散る前に魅せる秋の山は、限りなく女らしく変貌する。

そして裕子の心も、若き青空と対比されながら秋色に染まっていく。 

 叩き込んだスティックが手作りの布袋に収まった。 バックの底で「あとは腕さばきのみ!」

と言っている。 

 こうして裕子のドラム教室通いが始まった。

メンバーは誰もそのことに気付いていない。レッスン前の土曜の午後、裕子の足は奇妙に

動き、まな板を連打する包丁も不思議なリズムを奏でる。

長年厨房にいた小林のアンテナが、いち早くそれらをキャッチする。 小林は食材を

取りに冷蔵庫に向かいながら、裕子が踏んでいる二枚のダンボールの破片を見る。

けれど理解に苦しむ人ではないと思い、微笑みを仕舞ってラインに戻る。

 裕子の手足はあちこちで動いた。 厨房、家のキッチン、浴室、信号待ち、スーパーの

レジ待ち、駅のホーム。

「タンタン、タカタン、タカタカタカドン」

「ツツタツ、ツツタツ、ツツタッツツ」

「ターン、ツターンツ、タタ・・・・・・」


「ライブは俺のギターソロから入ろうぜ」

 数日後、メンバーは休憩室で竜也の提案書に注目していた。 

クリスマスソング、ビートルズのイエスタデー、ポルノグラフィティーの愛が呼ぶ方へ、

ラストに完成度の高い奏のソロ。

「わかる? 完成度の高いものは客の反応がいいから最後に持ってくる」

「ええ!私の歌が最後・・・・・・」

 裕子も千尋も竜也の言葉にコクリと頷く。 そして矢沢が奏の肩をそっと叩いて、ほぼ決定。

イカレタ暖房が効きはじめた頃、裕子は極秘レッスンに、奏はコンビニのアルバイトに、

千尋は保育園にと散って行った。 

一時間の休憩の後、二人の勇士も足取り軽く各々の戦場に戻っていった。



 夕飯の下拵えを終えた裕子が、拡大コピーされた楽譜と睨めっこしながらドラムの前に

スタンバっていると、秀明がふらりとやってきた。

「何?今日はゴルフに行かなかったのね」

「おまえ、踊るか叩くかどっちかにしろよ」

 裕子は楽譜から少し目を離したが、振り返らないでいた。 キャッチした乾いた声に

冷ややかな目線。 

「あのねえ、やることちゃんとやっているでしょう! 女房が他の何かに夢中になるのが

そんなに嫌? ただごろごろして煎餅や饅頭食べて、テレビみて笑っていればいいの?」

「な、な、何だよ急に」

「だってそうでしょ。言ったでしょ?イブまでは忙しいって」

 秀明が後ずさりした。

「防音対策、家事、あとは?」

「そういうことじゃない」

「あのねえ、私、みんな知っているんだから!」

「ん?」(やっぱり)

 覚えがあると、反射的に過去を振り返る男の単純。

「ああ、わかった!一言で十倍返すんだな、女って奴は」 (ひらきなおってるし)

「邪魔しないでよ、二度とないチャンス。私だって心が未亡人だったことあるのよ!」

「時効・・・・・・」

「何が?」

 裕子が振り向いた。 シンバルの一つも思い切り打とうか? そういう顔をしている。

「ああ、やっぱりあったんだ」

 あっけらかんとした裕子に、秀明はただ呆然としていたが、裕子の視線に耐えられなく

なったのか、意味不明な独り言を言いながら部屋を出て行った。

「感謝は感謝。けじめはけじめ。仕返しのつもりは微塵もないけれど」

 裕子の目は再び楽譜に向けられた。

「♪ イエスタデー オー!マイ トラブル ふうふう エンドレスー (タンタンターン)

でもー淡々タンタン タン突く単 タタ タン タン タン タン 嘆タターン 」





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最終更新日  2007/04/15 07:06:28 PM
コメント(8) | コメントを書く


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ツツタツ ツツタツ  
ごろごろして煎餅や饅頭食べて、テレビみているのは8歳とし下の我奥様。
防音対策はヤマハのアビテックスで完全のはずが、外からは漏れているタイコの音が聞える。ハズカシイ。 (2007/04/15 03:52:31 PM)

山小屋では  
ちぎれ雲  さん
夜は闇に閉ざされるので、星はよく見えます。もう星座も入れ替わり、オリオンから白鳥に代わりますが、オリオンの近くのスバル星雲も、はっきり見えます。東京の高層ビル群ですが、あれ、正直、ぼくには醜悪にしか見えません。それがあと、14のビルを建てる計画があると、嘆いている友人も多いですね。ビル風の影響を、国は考えてもいないのですかね。那須の森は年々、痩せていきます。東京は年々、嫌な感じに変貌していきます。ぼくも実は、都民であり、家族は東京にいるのですが、野ネズミが膝を駆け抜けていく、この山小屋のほうが、気に入っています。きょうは夕方から小雨になり、星は見えません。 (2007/04/15 10:46:48 PM)

何故か・・・  
kitakitune05  さん
緊張してきますね、
 この物語の展開・・・
  まるで、サスペンス小説のようです。

女性って、さりげに探りいれるんですね!!
 怖いですね・・・
(2007/04/16 06:22:33 AM)

うわっ(><)  
ひろ主任  さん
覚えがあると反射的に過去を振り返る男の単純...

これ..あたってます^^;まいったなぁ^^;
女性の直感、勘の鋭さ..

男はいつまでも単純な生き物と納得してしまいました^^;
今日はドラムより、男女の心理戦を堪能しました(><) (2007/04/16 09:13:03 AM)

Re:ツツタツ ツツタツ(04/15)  
恵 香乙  さん
ずうじゃじじいさん
>ごろごろして煎餅や饅頭食べて、テレビみているのは8歳とし下の我奥様。
>防音対策はヤマハのアビテックスで完全のはずが、外からは漏れているタイコの音が聞える。ハズカシイ。
-----
ごめんなさ~い。これは日常の私も覚えがあること。
主人公裕子さんは違うキャラにしましたが。
奥様、かわいいじゃありませんか? 健康も美徳。
防音、そうなんですか。
ずうさん、ドラム復活は?♪~  (2007/04/16 09:20:31 AM)

Re:山小屋では(04/15)  
恵 香乙  さん
ちぎれ雲さん
>夜は闇に閉ざされるので、星はよく見えます。もう星座も入れ替わり、オリオンから白鳥に代わりますが、オリオンの近くのスバル星雲も、はっきり見えます。東京の高層ビル群ですが、あれ、正直、ぼくには醜悪にしか見えません。それがあと、14のビルを建てる計画があると、嘆いている友人も多いですね。ビル風の影響を、国は考えてもいないのですかね。那須の森は年々、痩せていきます。東京は年々、嫌な感じに変貌していきます。ぼくも実は、都民であり、家族は東京にいるのですが、野ネズミが膝を駆け抜けていく、この山小屋のほうが、気に入っています。きょうは夕方から小雨になり、星は見えません。
-----
そうですか・・・。私はオリオン座がとても好きです。
山小屋の居心地、想像だけですが自然と頬ずりしながら
・・でも森が痩せる、寂しいですね。 (2007/04/16 09:26:54 AM)

Re:何故か・・・(04/15)  
恵 香乙  さん
kitakitune05さん
>緊張してきますね、
> この物語の展開・・・
>  まるで、サスペンス小説のようです。

>女性って、さりげに探りいれるんですね!!
> 怖いですね・・・
-----
ふふふ、怖いですか? 
探りいれられるような経験ありの方は怖いでしょう
ま、あくまで作り物ですし、女性にもいろいろ。
世代ということで、若者ばかり描けないんです~
血圧が上がらぬように、気軽に読んで下さい。 (2007/04/16 09:28:59 AM)

Re:うわっ(><)(04/15)  
恵 香乙  さん
ひろ主任さん
>覚えがあると反射的に過去を振り返る男の単純...

>これ..あたってます^^;まいったなぁ^^;
>女性の直感、勘の鋭さ..

>男はいつまでも単純な生き物と納得してしまいました^^;
>今日はドラムより、男女の心理戦を堪能しました(><)
-----
ドラム、若者とのふれあいを通して、夫婦のリアルな会話なども入れていかないと、、、苦労しています。
器以上のタイトルにしてしまって・・・
男女のこの辺りは、得意分野かも? しれません。
なんせ女性はよく喋る。自然取材の日々。 (2007/04/16 09:31:59 AM)

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