花より男子★二次小説　　　夢　桜　庵

新たな道へ　７

池上さんから小説を受け取ったつくしは、それからというもの

提出期限ギリギリまで小説を手直しするのに時間をかけた

いつもは勉強をしに図書館に行っていたのが、いつの間にか

勉強より小説を書くことを目的として行くようになった

つくしの一心不乱に小説を書く姿に

図書館に勤務している佐々木さんも声を掛けるのを憚られた。そして

（どうか牧野さんの小説が入選しますように・・）

と願わずにはいられなかった

－－－そして提出期限当日－－－

「やったぁ！やっと出来た！」

つくしは朝日の差し込む部屋で厚く積み上げられた原稿を目の前に

ひとり喜んだ

少しの手直しのつもりが、自分の中で納得できるものに、そして

自分の心の中の全てを小説にぶつけようとの思いから

つくしは全編改稿したのであった

「さて、あとはペンネームだけね。どうしようかなぁ」

つくしは腕を組んでうーんと唸っていると

はっとひらめいたかのように、すらすらと筆を入れるのであった

＜１６＞

池上のいる出版社の会議室では、ある企画会議が行われていた

その会議にある人物が出席していた

「・・・では、今回の新人小説発掘コンクールで入選したものの中から

　ひとつ来春の映画の原作とするということでよろしいでしょうか？」

出版社の企画部長が声を発した

会議室の中にいる全員が頷くと

企画部長は上座にいた人物を紹介した

「こちらにいらっしゃるのは、花沢物産社長の花沢遼様です。

　今回わざわざ社長自ら出向いてくださるとは思いもよらず・・・

　本当にありがとうございます」

「いえいえ、たまたま時間が空きましてね・・・

　今回、こちらの出版社で映画の原作として新人を持ってくるという企画に

　私自身興味を覚えましてね・・花沢物産としてスポンサーにつくことに

　したのですよ。そういえばコンクールの締め切りはもうすぐですよね？」

「はい。本日が最終日となっております。」

「そうですか・・・。そうだ、みなさんにご依頼したいことがあるのですが・・」

「はい？なんでしょうか？」

「今回のプロジェクトでは、選考のところから、うちの息子の類を入れてもらっても構いませんか？」

「それはまた・・・なぜ選考のところからなんでしょうか？」

「いえね、映画という世界は花沢物産としては初めてです。

　新分野だからこそ、これから花沢物産を背負って立つ息子に

　なんとか成功させてもらいたいと思ってましてね・・・。

　それには、小説の選考から携わっていたほうがいいと思いますからね」

　「そうですか。分かりました。では選考の日が決まり次第

　　ご連絡差し上げますので・・」

　「よろしくお願いしますよ」

　花沢遼はそう言って、秘書とともに会議室を出て行った

　エレベーターを降りて１Ｆのフロアーに足を踏み出そうとしたとき

　前からあわてていたのか眼鏡をかけた若い女性とぶつかった

　ぶつかった拍子に女性の眼鏡が遠くに飛んでしまった

　「すっすみません！！大丈夫ですか？」

　その女性が顔を真っ青にしながら、自分の事は構わない様子で

　遼に言葉をかけた

　「いえ、大丈夫ですよ」

　遼がやさしく声をかけると

　「本当に申し訳ありません。こちらが前を向いていなかったせいで・・」

　と今度は顔を赤くしながらぺこっと頭を下げた

　下げた瞬間に女性の持っていた封筒から原稿が飛び出てしまった

　「ああーーー！どっどうしよう！すっすみません、あたしったら・・」

　女性はあわてていたのかひざまずきながら原稿を拾い集めていた

　遼は秘書に原稿を拾うよう指示をした

　かなりの枚数がちらばったがなんとか残らず拾うことが出来た

　最後の一枚を遼が渡そうとしたとき、その原稿が小説であったことに

　気がついた

　「あなた・・・もしかして今日締め切りのコンクールに出されるのですか？」

　「はっはい！！もう締め切りぎりぎりなので急いで出さないと・・」

　「そうですか・・。頑張ってくださいね」

　「はい！！」

　その女性は明るく返事をし、会釈をするとすぐエレベータ－に乗り込んで行った

　遼もすぐ横付けされていた黒塗りの車に乗り込み次の会議の場所へと

　向かった

　「ほんとさっきのお嬢さん・・今時の娘さんにしては珍しい・・

　　清清しい感じの子だったな・・でもあの顔どこかで・・・？」

　遼は顔をひねって考えていた

＜１７＞

　つくしはエレベータ－の中でうろたえていた

　「どっどうしよう・・・落とした眼鏡取って来るの忘れた・・」

　遼のやさしく声を掛けられた姿になぜか花沢類を思い出してしまった

　そのことで動揺してしまい、思わず眼鏡を忘れてしまったのだ

　「そうそう。あの表情花沢類に似てるんだよね・・

　　人間世の中に３人は同じ顔の人がいるっていうけど年齢が離れてても

　　似てるって事あるんだね・・はぁ・・それにしても・・

　　出版社の中だけど眼鏡無しで大丈夫かなぁ・・心配」

　つくしは、ひとりエレベーターの中でぶつぶつと独り言を言っていたが

　まさか、ぶつかった相手が花沢類の父親だとは思わなかったのである

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