霊ちゃんといっしょに


     イギリスのホテル地下室の謎を残したまま
     激安ツアーは最終地パリへ。
     私はこのツアーに一人で参加したのだが、
     もうこの頃になると みんな仲良くなり、 住所の交換など
     うち溶け合って、いい雰囲気になる。

     若い女性(20歳くらい)のグループの中に、
     霊が憑きやすいのよ と言う人がいて、
     ローマのコロセイムでは、奴隷の霊に・・・
     イタリアのウフィツェ美術館では だれだれさんの霊が・・
     もう クタクタに疲れて2キロぐらいは痩せたと
     話してくれる。

     わたしもイギリスのホテルのことを 話したかったけど、
     なぜか 黙っていた。
     おしゃべりな私がどうして話さなかったのか
     今思っても不思議でならない。

     霊憑きの彼女は「美術館などは霊が憑きやすいから」と
     霊がついたときの 祓い方・・といって、
     お経のような文字を ちいさな紙切れに書いてくれた。
     「○X△@<* ウンジャクソワカ」などと
     訳のわからぬ言葉。


     フランスでは2日間お決まりの駆け足観光、
     その後ツアーの人達と別れて、
     私は一人フランスに残った。

     外国で独りぼっちになった私、
     英語はしゃべれない、
     フランス語ときたら3、4語しか知らない。
     さぞ心細いだろうと予想していたのに、
     一人でいる という感覚がまったくおこらない。
     街をあるいても、あ~懐かしいという気分。

     一人で泊るフランスのホテルに着いて、入浴。
     洗面所の鏡の電気をつけようとしたが、スイッチがない。
     鏡の上には蛍光灯があるのだから、これは点くはずだ。
     でも スイッチがない、
     部屋も洗面所も照明が暗いので、これを点ければ
     明るくなると くまなくスイッチをさがしたが 無い。

     そのとき 頭の上の方で、
     むにゃむにゃ~と電波のようなものを感じ、 
     「蛍光灯の後ろ 後ろ」と頭の中に浮かぶ。

     蛍光灯の後ろを手で探ってみると、スイッチがあった。
     目では見えないところに。
     あ・霊ちゃんが一緒だ!と感じた。

     その後も 何度も霊ちゃんに 助けられた。
     困った事が起こると、必ず向こうからやってくる人が、
     フランス語で、ウジュジュ ブー ウジュ ウジュ と言い。
     それが、私の頭の上で、ムニャ~ と電波に変わり、
     理解できた。


         ~~~~~~~~~~~~~~~~~~


     霊ちゃんのおかげで、フランスでは
     心細いどころか、 楽しい事ばかりに出くわした。

     OPERA座の一番安いボックス席を手に入れ、
     坐ろうとすると、
     ご夫婦で来ていた、お髭のおじさんが、
     ウジュ ジュ~ ブ~ ジュ 「この席にお掛けなさい」
     と言ったと思う (頭の上の方にムニュ~と電波を感じた)
     一番前の席と替わってくれた。

     ボックス席は後ろの方は千円強ぐらいの値段
     一番前の席は1万円以上はするらしい。
     その席に替ってくれて、
     ウジュ ジュ 「私たちはいつでも来られます」と。

     私は舞台も客席も一目で見渡せるボックス席の一番前の席で、
     手すりにもたれ、贅沢な気分に浸る。
     ・・・やっぱり、霊ちゃんのおかげだ。


     街をあるいていても、
     道行く人が 微笑みかけてくれる。

     デパートの前に出店を出してる 香水売りのおばさんは
     昔からの知り合いのように、
     香水買え~!という。(もちろんウジュ ウジュ)
     いらない と私が手まねすると、
     ナニーッ! 香水の並んだ台の上に上がって
     私をこわがらせ、 それから、にーっと笑った。
     私をからかったのだ。
     ここでも 
     香水売りのおばさんは 
     きっと霊ちゃんの知ってる人だな・・と思えた。
     その頃から私は
     霊ちゃんはきっとフランス人だと思うようになっていた。


     わたしは 昔からここに住んでいたように
     美術館をぶらぶらし
     あちこちの 街を歩き回り。
     教会のチェロコンサートに行き
     セーヌ河畔を散歩して、 
     2週間はあっという間にすぎた。

     大切にしまってあった、
     「霊が憑いた時のお祓いの呪文の紙」は
     なぜか、いつのまにか 無くなっていた。

      ~~~~~~♪つづく~~~~~~~


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