絨毯屋へようこそ  トルコの絨毯屋のお仕事記

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2004年10月28日
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日本に送るキリムの何枚かに、修復が必要だったので、キリムの修理職人を呼んだ。


修理職人というのは、トルコに掃いて捨てるほどいる。
でも仕事を任せることができるのはトルコでも名前を挙げられるほどしかいない。
しかも古いものを任せるとなると、なおさらである。

日本ではイラン人、トルコ人の修理職人の修復したキリム、絨毯を見る機会があるが、プロの仕事をまだ見たことはない。実際、修理職人である人は稀で、たいていが見よう見まねの修復で、穴は埋まっているけど、糸が合っていない、色が合っていない、修復箇所が明らかである。

本当の修復を知らなければ、そんなものかと思って納得してしまうのだろうけど、基本的に素人目には修復箇所がわからないレベルでないと、私たちは修復と呼ばないし、それができない職人はプロと呼ばれない。

新しいキリム、絨毯なら、ほつれの進行が止まればいいとか、穴がふさがったから・・・というので構わない場合もあるが、骨董になるとそういうわけにはいかないのである。

修復をしないほうがよい状態のものもある。


糸の様子、モチーフの有無により、修復の技術が困難、簡単。または修復箇所が明らかになりにくい、なりやすい・・・リスクを抱えるもの。なども当然だがある。
だが腕のよい職人は、それらを経験から知り、もっともよい状態に持ってきてくれるのである。

修理職人はたいてい、小学生のころから親方のもとに、丁稚として修行に入る。無報酬に近い形で、親方の技術を盗み(誰も教えてはくれない)、経験を積む。
性格的に向き不向きはあるし、最終的にはセンスの問題であるから、経験が長ければいいというものでもない。
センスのよい人は、短期間で、修復がなんであるかを身につける。

ミフリには日本からキリムの修復を勉強しにくる人も訪れる。一般的には最低5年程度やらないとどうしようもないのであるが、日本人はよほど器用な人種なのだろう。トータルで半年~1年も勉強をすると、一通りの技術と、実際に骨董の修復をやれるかな、ってレベルになる人が少なくない。
勉強に来ているという意識の差かもしれないが、日本人が本格的にやったら名人が出てくるに違いないと思う。

ただ日本人で不足しているのはキリム、絨毯をたくさん見る機会がないということ。
文化としてのキリム、絨毯もないし、見分け、良いものを見る目を養えていない。
いくら日本でキリム、絨毯がブームになったところで、見る、もしくは手に触れることのできるものは知れているし、とくに古いものを見る機会はトルコでも減ったのだから、日本では本当に少ないと思う。

事例をたくさん知ることも大切な修行のひとつだと思ったりしている。


いくら本で見たところで、その質感、糸の状態を思い浮かべることができないだろう。
そういう意味では、修理職人は自分のものでないにしろ、たくさんのキリム、絨毯に触れ、実際にどんな糸を使うべきか色のことなどを考えるのであるから、キリムを知るもっとも近い場所にいる人ともいえる。


修理職人にとって大切なのは、糸をどれだけ所有しているか、ということである。
当たり前のようなことで、当たり前でないのだが、糸は売っているようなものではないということ。
修復用の糸屋さんとかないですよ。自分でいろんなツテ、コネで古い糸、もしくは修復にも使えるようなウール糸を探すが、親方から譲りうけるか・・・・。


糸が命です。

ミフリは修復屋でもあったので、糸のストックは十分にあり、現在は修理職人にその糸を渡して、修復をしてもらっている。足りない分は染めるし、古くて糸の状態が良いキリムから解いて使うこともある。
うっかりすると、糸代がバカにならないこともある。

でも出来上がりを見たときに、満足いくものであれば、ミフリの社長もうれしいし、うちの修理職人もうれしい。

キリムの修理は満足いかないときはやり直しをさせるし、骨董などの場合、下手な修理で壊された場合(価値を下げられた場合)訴訟もありえる。
ヨーロッパのコレクターのお客さんの場合、修復にはなかなか厳しい。

修復ひとつとっても、どの部分をどのような形で直すか、修理職人を交えて、事前に話し合いをする。
お客さんによって、購入目的が異なるので、
手を加えないでくれという人
ほつれそうなところ、そこから穴が広がりそうなところだけ押さえをしてくれという人
フリンジ部分はオリジナルを残して、中だけを修復してくれという人
オリジナルにこだわらないから目立つところは全部修復してくれという人

とそれぞれである。修復の仕方もお客さんの要求によって変わるし、またキリム、絨毯のコンデションによって、こういうやり方の方がいいですよ、とアドバイスさせていただくこともある。
それは修復の代金にも影響するからである。

通常、その作業にどれだけの材料費がかかり、何日働かなければならないか、で見積もりを出す。
トルコの場合、有能な修理職人であっても、あくまで職人であるから、賃金は安い。
しかも一人でできる作業は限られているので、たいていの修理職人はギリギリの生活を強いられていたりする。

これだけの技術を持っていたら、日本だったら特殊技能者として日当2、3万円で計算しなきゃなあ・・と思うけど、トルコの場合、500円~3000円ぐらい。

生活を豊かにするためには、丁稚をとって、自分が親方になっていくしかないのであるが、一人前の修理職人に育てる手間を考えると、一人でやっていたほうがいい、という人も多いし、今どき、トルコで修理職人の丁稚に入る子供や若者を探すのも難しい。

修行を積んで、手に技術をつけるより、学校を出て高給の会社に勤める方がいいし、高給でなくとも工場で働いたほうが今日、明日の給料が手にはいる・・・と考えるのはトルコに限らず、万国共通であろう。

・・・・とおまけの話がついつい長くなってしまったが、修理職人を呼んでキリムの修復について、打ち合わせをしたわけである。
1枚1枚広げて、どこをどの程度に修復するか・・・その代金について、云々。

ときには喧嘩をしながら、ときには怒鳴りながら、ときにはおだてながら・・・・。双方納得して、修復を任せるのである。もちろん出来上がってきたものを点検、確認する作業もある。それでまた喧嘩になることもある。

でもこの喧嘩は実は楽しかったりする。
うちの修理職人はキリムを愛しているし、自分の仕事に誇りを持っているので、根本的なところで理解し合える人物である。だから修復のことでモメても、最終的には納得してやり直しをしてくれるし、最初の打ち合わせも手を抜かない。

どんなことでもそうなのだけど、仕事を愛し、誇りを持ち、相当の能力もある、そんなプロ意識を持つ相手との仕事は、本当に楽しいものである。

ああ、今日も怠けるつもりが仕事をしてしまった・・・・。






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Last updated  2004年10月28日 15時53分01秒


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