絨毯屋へようこそ  トルコの絨毯屋のお仕事記

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2005年03月10日
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カテゴリ: 出張表話&裏話
毎回毎回同じことを書いているかもしれないけれど、トルコといえども伝統文化は廃れつつあり、村へ行っても以前のような村の生活を見れるチャンスは少ない。

それでもどこかに何かがあるのじゃないか・・・・と、日ごろ駆け回っているわけであるが、今回、とある場所で知り合ったおばあさんの村へ行くことにした。
アンタルヤから600キロの都市から、さらに山奥に100キロほど入ったところにあるらしい。

おばあさんの話では、この村では未だに結婚式、部族の行事などで村の女性たちが民族衣装を着るとのころ。
この地域はたしかに8つの部族の遊牧民がそれぞれの村に点在し、暮らしており、その伝統文化を今も守って暮らしている・・・・というのは知識としては知っていた。期待はするとガッカリする結果になるので、期待こそしないけれど、初めていく村でもあったので楽しみにしていた。

西トルコの山奥である。
町から100キロほどなのに、山の上の村なので、クルマで行けども行けども着かないのである。しかも天気が曇りから雨、山頂では雪に変わり、モヤがかかっているから、5メートル前は何も見えないのである。
右サイドは崖で、天気がよければ山すその景色がいいのだろうなあ・・・などと思いながら、ダート道を進むこと約2時間。
今回はトルコへ戻ったばかりで体調が十分でない上に、アンタルヤから8時間をクルマで走ってきてすぐだったので胃がムカムカしていた。さらにダート道である。自分で運転すればクルマ酔いしないのだけど、うっかり楽をしようと運転をアドナンに任せたので、途中で2度吐いての村行きであった。


隔離された空間である。

きこり、牧畜、農業などで生計を立てている村である。
おばあさんの家を訪ねると、その途中で薪を運ぶおばあさんとすれ違った。
「今、戻るから、先に家で待ってておくれ!」と、薪を背負った姿を写真に撮れとポーズをとってくれた。65歳で、とにかく明るく、元気なおばあさんなのである。

家ではお嫁さんが待っていてくれて、私たちが来たのを知ると、村の女性たちが次々集まってきた。
キスをするあいさつをし、座っていると、隣の部屋に私たち女性だけが呼ばれる。
行くと、それぞれが持参の民族衣装に着替えているところであった。
民族衣装は他の地域、もしくは他の民族のそれと変わることなく、何枚も何枚も重ねていく。着方も興味の対象であるから、それを写真に撮るからね、と言うと、若い娘さんたちは「キャー」と恥ずかしがるのであるが、年寄りたちに「撮らせろ」と言われて、顔を赤らめながら、腰の紐の結び目を撮影させてくれたり、頭部のオヤスカーフの巻き方を見せてくれたり。

ここの民族衣装は、刺繍などの面では特に優れたものではない。ただ簡単な刺繍とプルを刺していて、ベルトはウールの織物に飾りをつけたもの。それを鳥の尻尾のように腰に巻いて端をたらす。
そして色が鮮やかな赤系で、それを若い娘だけでなく、お年寄りまでが着るのである。
この衣装を着るのは、結婚式、部族のお祭りなどの日に限られるが、1人に1着あり、自分で作ったり、お古を手直ししたりする。

それがまた私たちにとっては残念であるが、うれしいのである。

衣装を着たあとは、太鼓と歌が始まり、それにあわせて、踊りが始まった。
適当に踊っているようで、やはり歌やリズムによって、ステップがある。
若い娘たちはいくつかのステップを知っているが、多くを知らない。
そうすると、60歳台のお年寄りが出てきて「こうやるんだよ」とステップを見せる。それにあわせて若い娘たちも踊りだすのである。


誰が何を言うでもなく、集まってきた約20人が歌い、踊り、私たちも輪に入った。

同行した日本人女性2人にも民族衣装を着せ、一緒に踊った。
歳も関係なく、太鼓ひとつで楽しむ様子がとても気持ちよかった。
最初は恥ずかしがっていた娘たちも、じょじょに写真を撮られることにも抵抗なくなり、お年寄りたちにいたっては誰かが来るたびに
「この子も撮ってくれ」と言うほど。

聞けば、もし10年前に来たとしたら、写真は絶対撮らせなかったよ、と言う。
娘たちが村の麓の工場に働きに行くようになり、テレビの普及。かなり開放的になってきているのだろう。
衣装を見て、踊り、合間には娘やおばあさんたち、それぞれに世間話とインタビュー。

とにかくピュアで温かい人たちであった。

帰るといっても「何か食べていかないと返さない」
「帰るなんて言うと怒るよ」と、冗談でプリプリ怒ってみせたり。

村のマーケットのおじさんがやってきて、店の売り物のフルーツジュースを差し入れしてくれたり、そこらの無関係な人まで、飲め飲めと缶ジュースをあけて手渡してくれたり。
おばあさんが自分の手作りのネックレスをはずしてかけてくれたり・・・・。

村では同じような光景に出くわすことが多いが、リーダー格のおばあさんのおかげで、笑い声の絶えない、楽しい時間を過ごせた。

再び、霧の中を下界に下る。
霧の中の幻想の村から抜け出した気分になる。

下界は130万人の大都市。
この大都市と民族衣装を着る村の伝統的で素朴な生活とのギャップに、人間の生活って何が必要で何が必要ないのだろう・・・などと考えながら。







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Last updated  2005年03月15日 06時56分18秒
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