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7.始動
7th Section. 始動
視線を感じた。
あれ?と思い周囲を見回すが、そこには何もいない。……気のせいか。
「川田ァ、なーにぼえっとしてんのよォ」
はっとして視線を戻す。友人達の姿が遠くの方にあった。慌てて追いかける。
「ごめんごめん!ちょっと考えゴトー」
「えー、なになに?コイワズライでもしてるワケ?」
「な……誰もそんな事言ってないじゃん!」
「あー、ムキになってるぅ。ますますアヤシー」
「だーかーらー違うってば!」
あはははは、と我ながら耳障りな笑い声が狭い路地に響き渡った。
夕方。いつもの退屈で長々としたうざったい一日の授業が終わり、私と数人の友人達はいつものようにこうしてたむろしながら、繁華街への道を歩いていた。
目的は通い慣れたゲーセン。最近搬入されたという新作のプリクラを早速使ってみよう、という提案が元々の原因だ。
実の所、私は別にゲーセンになんて行きたくなかった。
このまま真直ぐ家に帰って、最近成績が落ち込みっぱなしの数学の問題集を片付けたくて仕方ないのだ。
でも、出来ない。
逆らうのが、恐いから。
私の友人…いや、『表向きでの』友人の1人、榊香苗
(さかき かなえ)
は、このグループの中ではリーダー格に当たる存在だ。
2年前、中等部の2年生に上がった時に一度同じクラスになり、こうして高等部に上がってからまたクラスメイトとなった。
それとなく話をし、何となく自分と意見の合う人だと思って近付いたのが、そもそもの間違いだった。
榊香苗はいわゆる“猫被り”で、教師とか親とかの前では典型的な“良い子”を演じており、そうでない時には、無邪気に気紛れで残酷で、人間性にひどく欠けた本性を露出させる…そういう奴だった。
その榊香苗の提案に逆らったり、あるいはこのグループとは別行動を取ったりすれば即サヨウナラなのだ。
翌日学校に来ると、机にひどい落書きがされたり、クラスの誰もが自分を無視したり、あるいは持ってきた教科書やノートなどが紛失して、後から無惨な姿となって戻ってくる。
榊香苗はクラスメイトの殆どと携帯で連絡を通じる事が可能だ。
気に入らない奴を見つけ、即座にその人間を標的としてクラス全体を“いじめ”に総動員させる為にメールを回す事など造作もない。
恐らく、教師も親も誰1人として、榊香苗の“猫の仮面の下”を知ってはいないだろう。
私達の通っている学校は都内でも有名な進学校で、榊香苗もよく遊んでいる割には成績が驚く程優秀なのだ。
教師達も親達も所詮は皆同じ。成績さえ良ければそれで何もかも済んでしまうのだ。
そして私も……自分さえ無事なら、それでいいと思っている。
────そこまで考えて、また視線を感じた。
思わず息を止めて、目玉だけを動かして周囲を窺う。……誰もいない。
おかしい。確かに感じたのに。
まるで背筋に小さなガラスの破片を突き刺されるような、鋭く強い視線を、感じたのに。
「ねーねー、最近アイツどーしちゃったんだろうね?」
きんきんとした声で、榊香苗が言い放った。
「え、アイツって誰?」
「何ぼけてんのさ。アイツって言ったら決まってるじゃん。ミササギの事だよ、あのユーシューでクソムカつくキコクシジョ!」
「カナちゃん、今はミササギじゃないでしょー。確か………あれ、何だっけ」
「マキだよ。今の名字は『マキ』!」
「どっちだっていーよ。めんどくせー。アイツさぁ、ここんとこずーっと学校来てないじゃん?何してんだろーね?」
「えー、なにー。カナちゃん、あんな奴の事心配してんのー?」
「……アンタ本気で言ってるんだったらブっ飛ばすよ。あのヤローの心配なんかするわけねーじゃん。ただアイツが来ないと退屈なだけなのー、色んな意味でー」
そうだろうな、と思った。
ミササギ──今は事情により名字がマキと改められたらしいが──彼女は私達の同級生であり、榊香苗にとっては大事な“鬱憤の捌け口”であった。
つまり、いじめの標的だったのだ。
彼女は榊香苗に負けず劣らず頭が良くて、思いやりもあって積極的で、………とにかく、どんな人間からも好意を持ってもらえる、そういう人だったらしい。
“だったらしい”と言っているのは、私が彼女と会話をした事が殆どないからだ。
同じクラスになったのは今年が初めてで、はっきり言って今の彼女は、遠目から見てもその人づてに聞いた性格とはまるでかけ離れているように感じる。
頭が良いのは認める。それは間違いないと思うが、思いやりがあると言うよりどこか冷めた感じだ。積極的というのも怪しい。授業中はもちろん休み時間も掃除の時も、いつも周りを睨み付けるような鋭い目で見回して、何も言わずにむっつりと口を噤んでいる。
まあ何がともあれ、彼女は榊香苗にとって一番目障りで、うざったい存在なのだった。
だから、いじめられていた。
筆記用具やノート、教科書、ワークなどの副教材まで、彼女の所有品とされる物はどれも榊香苗の命令で…あるいは榊香苗自身の手で、トイレに漬けられたり、カッターでずたずたに裂かれたり、落書きをされたり、給食で出たソースやジャムを塗り込まれるなど、ありとあらゆる陰惨な手で使用不能とされ、交換を余儀無くさせていた。
私もやった事がある。
ノートとかではなかったが、彼女の机の端の辺りに、家から持って来させられたドライバーの尖った先端を使って文字を彫り込んだ。
“死ね”と、ただ2文字だけ。
その時は榊香苗や他の友人達と一緒に薄ら笑いを浮かべながら「ざまあみろ」と言い捨てていたが、本当はどうしようもなく強烈な罪悪感が心にのしかかっていた。
「どうしよう」という思いばかりが胸一杯に膨れ上がった。
最初に榊香苗から提案を持ちかけられた時、そのまま逃げ出したい衝動に駆られた。
それまでは単なるいじめの傍観者であった私までもが、とうとう実行犯へと堕落させられるのだ。
これでも私は学級委員を務めていて、成績もそこそこ安定している。教師からの信頼も熱かった。
そんな私がいじめに加担していたなどという事が周囲にばれたら───。考えただけでも、背筋が寒くなった。
榊香苗は「ヘーキだって。センコだってそんな真面目に調べやしないし、放課後なら教室に誰もいないしさ、見られたりなんてしないよ」と、その可能性を鼻で笑い飛ばしていた。
事実、今まで榊香苗がやってきた“犯行”は、どれも実行犯が誰か分からないまま迷宮入りになっている。
冷静に考えれば、確かに大丈夫だとは思う。だがミササギさんに対する後ろめたさだけは変わらない。
でも、やらない訳にはいかなかった。
逆らえば、自分がいじめられる。
榊香苗の卑怯極まるいじめを傍観者として間近で見てきた私の中に芽生えていたのは、彼女に対する恐怖以外の何でもない。
結局、やってしまった。
汗ばんだ自分の手に握られたドライバーの先端がごりごりと音を立てて机の表面を削り、不格好な文字を刻んでいく様が今でも脳裏に焼き付いている。
それ以来、榊香苗と付き合うのがどうしても嫌で嫌でたまらなくなった。
実際はそんな本音などおくびにも出さず、こうして毎日つるんでいるのだが。
───そういえば確かに、ここ1週間程ミササギさんは学校を休んでいる。風邪でも引いたのだろうか?
……そして、また背筋を視線が突き刺す気配を感じた。
「ひっ」
思わず声が漏れる。それも、感じた視線があまりにも寒々しく、それでいて強烈な敵意に満ちていたからだ。
間違いなかった。誰かに見られている。
「ぁん?……何だよ、川田」
他の友人達が、顔色の変わった私を訝しげな表情で見た。
……がちがちがち。
合わない歯の根の音が頭蓋の中でやたらに大きく響いた。
怖い。
自分でもよく分からないが、感じた視線にどうしようもない恐怖を植え付けられていた。
本能が叫んでいた。……これは避けるべき物だ、と。
ぞくり。
突然、背筋が激しく粟立った。
はっとして、俯けていた顔を上げる。
進行方向の道の真ん中に人が立っていた。
老人だ。腰を折り曲げたまま、杖も使わずにその場で直立不動している。色素が抜けて白くなった艶のない前髪が、彼の目元を隠していた。灰色の少しくたびれたブラウスに、だぶだぶとした黒のズボンと茶色の革靴を履いている。
即座に、こいつだ、と直感した。
私は足を止めたが、他の友人達は気にせずそちらへ向かっていく。
やめろ、戻れ、と言いたかったが、喉を締め付ける恐怖がそれを阻止していた。
「………ん?あ、ねえ、おじいさん」
老人の存在に漸く気付いたのか、榊香苗が猫撫で声を発した。
「あのね、悪いんだけど…ちょっとどいてくれないかな。ここ通れないよー」
確かにそうだった。
私達が今歩いていたのは、両側を塀で挟まれた住宅地の路地。人の多い大通りとは別に存在する、ゲーセンへの近道の1つだった。
道の幅はせいぜい7mぐらいと結構狭い。そのど真ん中に人が立っているのだから、邪魔なのは火を見るよりも明らかだ。
榊香苗は持ち前の“演技力”でうわべでは『心穏やかで清楚な高校生』をやってみせているが、実際は「なんだよこのジジイ、突っ立ってねえでさっさとあの世へ逝っちまえ」とでも罵りたいくらいなんだろう。
榊香苗の声を聞いても、老人は動かなかった。
「ねえー、おじいさんー」
やっぱり動かない。
そして、榊香苗の中にある堪忍袋の緒が切れた。
「………ぼさっと立ってんじゃねえよクソジジイ!耳遠いのかこの野郎!」
先程とは一変して口汚く怒鳴り、持っていたバックで老人の胴体を殴り飛ばす。
老人の体はあっさりと…本当に、信じられないくらいにごくあっさりと、傍の硬い塀へ叩き付けられた。
「うわ…!」
まさか無抵抗で殴られるとは思っていなかったのだろう、それを見た榊香苗は驚愕に引き攣った顔で後ずさりした。
…いや、それだけではない。
叩き付けられた老人はそのまま力を失ったように、ずるずると塀に凭れたまま座り込んだのだ。
「……やだ…ウソ…」
「気絶しちゃったの?」
「まさか死んだ…?」
「嫌な事言わないでよ!」
友人達は動かない老人を見たまま揉め事を始める。その中で、焦燥に駆られている榊香苗の姿がやけに目に付いた。
あの榊香苗でも慌てる事があるんだな…と場違いな考えにふける。
すると、友人の1人がそろそろと老人に近寄った。
「…………おじいさん…大丈夫ですか…?」
声を掛けたが、反応はない。
「おじいさん……?」
友人が体を揺さぶってみようと、老人の肩に手を掛けて────
どす、と鈍い音が聞こえた。
え?と目を疑った。
老人の肩に手を置いた姿勢のまま、友人は凍り付いていた。向けられた茶色いブレザーの背中から、何かが伸びていた。
…………触手。
そう、触手だった。
色も太さもばらばらの触手3・4本程が、友人の背中から先端を突き出させていた。
やがてその触手はうねうねと少し蠢いた後で、ずる、と友人の体から引き抜かれる。
途端に、凍り付いていた友人の体がその場に崩れ落ちた。手にしていた鞄を投げ出して、道路の上で仰向けになる。
手足はぴくりともしない。空の遥か彼方へ向けられた双眸にある黒い瞳はますます黒みを深め、半開きになった口の端からは血が一筋、流れていた。
燕脂のネクタイが締められた白いブラウスの胸元に、見事な風穴が空いていた。
そこまで見て、理解した。
友人は、死んでいた。
瞳の黒さが増していたのは、黒い瞳孔が全開になったので、そういう風に見えたのだ。
一足遅れて、地面に真っ赤な血溜まりがみるみる内に広がっていった。
「───────きゃあああああああああああああああ──────────────────っ!」
瞬間、誰かのつんざくような悲鳴が響き渡った。
視界の端で、それまで座り込んでいた老人がゆっくりと立ち上がる姿を捉え、私は目を一杯に見開いた。
「ひっ───────!」
喉の奥が嫌な音を立てるのが分かった。
さっきは腰を折り曲げて立っていたはずなのに、今の老人は背筋を驚く程に真直ぐと伸ばし、通常人と殆ど変わらない姿勢でその場に直立していた。
通常人と違うのは、その体から先刻友人の背中に見えた物と同じと思われる、あの触手が生えていた事だ。
襟と首筋の間、手首の甲と袖口の間、更にはボタンで閉めたブラウスの合わせ目から、何本もの触手が顔を出して先端を宙で躍らせている。ズボンの裾からも出ていた。
榊香苗も、他の友人達も、私も、誰もが怯えていた。揃って徐々に後ろへと下がっていく。
その様子を見てか、老人が口元を三日月状に歪めた。………嗤っている。
だがよく考えると、それはおかしかった。老人の目蓋は閉じられたままであり、私達の様子を窺う事は出来ないはずなのだ。
そう思うのも束の間だった。
ひゅん、と風を切る音が聞こえ……他の友人2人が、伸びてきた触手に貫かれて絶命した。
1人は脇腹、もう1人は大胆にも喉元を突き刺されていた。
触手を引き抜くと同時に、噴き出した鮮血が路地を赤く染め上げる。
「い、やっ──────」
その場に情けなくへたり込んだのは、他ならぬ榊香苗であった。
殺された2人が道路に投げ出される。
「誰か…たすっ、助けてええええええッ!」
もう1人の友人が、踵を返して逃げ出した。その背中を、触手は無造作に突き刺した。
「あ………」
気付くと、残ったのは私と榊香苗の2人だけだった。
榊香苗は完全に動転していたが、私の頭はどこか冴え渡っている。……何でだろう。
すると、老人の口が開かれた。
「………あト、ふたリ」
しわがれていて、どこか調子外れで、まるで外国人が話すような片言の日本語だった。
何者だろう、この人は。───いや、人ではないのか。
老人は静かに人差し指で私達の事を示した。
「ドっちが、サキに、ころさレたイ?」
そんな事言ってないで、早く殺せば良いのに。……少ししてから、自分の思考に愕然とした。
「やだっ───やだっ────やだぁっ─────」
地面に座り込んだまま後ずさる榊香苗は半べそになっていた。
いつもの彼女からは想像出来ない。情けない姿だった。
同時に、自分が今までこんなちっぽけな奴に怯えながら毎日を過ごしていたのかと思うと、無性に馬鹿馬鹿しく感じられた。
自分は何をやっていたのだろう、とさえ思った。
…………だから、私は老人に向けて言い放っていた。
「こいつを殺して」
榊香苗が息を呑む音が、いやにはっきりと聞こえた。恐怖と驚愕に塗り潰された憎々しい人間の顔がゆっくりとこちらを振り向き「川田……?」呆然と呟く。
老人は表情を変えなかったが、言った時に一瞬だけ触手の蠢きが止まっていたので、やはり驚いたのだろう。
だがすぐに、その口元がにたりと引き攣った。
「…………それナラ、」
触手がぴたりと動きを止め、先端を同じ方向へ固定させる。すなわち、標的の方へ。
「…のゾみどおリに、シてヤろう」
太い触手が、一気に閃いた。それは瞬時に榊香苗の胸へと吸い込まれる。
「ぐぎゃはっ」
妙な声を上げて、榊香苗が目と口を大きく開く。榊香苗の体を貫通した触手はその下の道路に突き刺さり、彼女の体を磔にする形になった。
次に別の触手2本が彼女の左右の肩口をそれぞれ貫いた。
今度はミニスカートに覆われた太股を貫き、掌を貫いた。
「が………げぼっ、がはっ」
意外にも、榊香苗は血反吐を大量に吐き出しながらもまだ死ななかった。人間とは想像以上にしぶとい生き物らしい。
だが、いきなり眉間を図太い触手で突き刺されたとなれば、もう抗いようがなかった。
榊香苗は一度、びくっ、と大きく痙攣し………動かなくなった。
今度こそ、死んでいた。ざまあみろ。
「……ねえ、おじいさん。今度は私の番?」
私は無意識に聞いていた。かなり脳天気な口調で。
その時気付いた。
私は、死にたがっていたのだ。自分でも知らない内に。
多分それは“榊香苗”という名の呪縛から解放されたいという思いが生んだ、密やかな願望だったのだろう。
どんな形でもいい。榊香苗から逃れたい。
そんな願望が、私の中に巣食っていたのだ。
老人は触手を榊香苗に突き刺したまま、沈黙していた。
答える代わりに、ゆっくりと、それまで閉じていた目蓋を持ち上げる。
開かれた目に、眼球はなかった。ただその顔に穿たれた2つの眼窩には、毛細血管を思わせる無数の細い触手が互いに絡まり合い、蠢きながら、みっちりと詰まっていた。
そうか、だから最初から目を閉じたまんまだったんだ……と他人事のように考える。
どうやら頭の奥にあった思考の枷が外れて、どこかおかしくなったみたいだ。もう駄目だ。私は壊れた。
────いや、ひょっとしたら…壊れていたのはずっと前からだったのかも知れない。
「オマえは、れいがイとしテおコう」
しわがれた声が発せられる。
眼窩に詰まっていた触手が何本かそこからするすると出て、私の方に伸びてきた。
最初は胸の奥であんなに湧き出ていた恐怖が、今は影も形も無くなっている。
するする、するする。
触手が、近付いてくる。何をする気なのだろう?『例外』って、何の事だろう?
「おマえは、“ほすト”となレ」
ホスト…?水商売のホストとは別物なのだろうか?
そこまで考えて、触手が私の唇に触れた。不思議と、気持ち悪くはなかった。
生温くもなく、むしろ冷たい─────
触手は私の口をこじ開け、口腔内に滑り込んだ。その時、ちょっとだけ触手を歯で軽く噛んでしまった。
あれほどしなやかに蠢く様を見せていたその触手は、驚く程硬かった。
その時気付いた。……これは、普通で言う“触手”とは違う。
コードだ。電気機器に使われるコード。……それがこの“触手”の正体だったのだ。
考えてみれば確かに、色が一本一本様々であったり、太さがバラバラだったり……これはある意味で、電気機器に詰められたコードの持つ特徴そっくりだった。
となると、あの老人は宇宙からやってきた未知の生き物なんかではないのか?
ひょっとしたら、あの体の中はIC部品が積み込まれた機械なのかも──────
口に入り込んだ触手の先端は無遠慮にも喉の奥の気管にまで侵入し、私は思わず咳き込んで、嘔吐感と共にそれを吐き戻しそうになった。
そしてそのまま、ふっ、と意識を失った。
それ以降、私が榊香苗に怯えて暮らす事も、取り留めのない場違いな思考に浸る事も、2度となくなった。
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