旅の途次~ちょっといい景に逢っていきませんか?~

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●武豊へ


~伊勢湾一周“台風”ツアー~

第三話 武豊へ

 列車は快調に走り続け、定刻の6:05、名古屋に到着。いつもながら、日本の鉄道の正確さには恐れ入る。たまには一日か二日くらい遅れてみればいいのに……ってか。それはそうとして、次は武豊線だ。ホームのきしめん屋は7:00を過ぎないと開かないし、とにかく乗り換え時間が4分しかない。どうせ名古屋にはまた戻ってくるから後回しでいいや。昨日買った菓子パンの残りがあるからそれで朝ごはんにしよう。君にも半分やるよ。
 「あ、スイマセン。いただきます。」
 しかし、ローカル線にしてはイヤに編成が長いな。5両つないでるよ。
 「武豊沿線はベッドタウンですからね。途中からサラリーマンとかが乗るんでしょう。」
 あー、なるほど。「折り返す上り」にね。そうかそうか。って、今日は土曜じゃん。しかも第二。
 「べつに全ての学校や会社が休みってわけではないでしょう。」
 あ、そうね。そりゃそうだわ。失礼いたしました。
 ……さて、特に何の変哲もない沿線風景を堪能(??)しつつ、列車は一路、武豊へ。しかし、ここまで徹底的にありふれてると眠くなってくるな。結構ポカポカしてるし。
 「…………………………」
 寝てるよ、早速。まあいいや、俺も少し居眠りしようかな。とはいっても勿体ないやね。初乗り区間で何も記憶がないってのも。おぉ! あれは聞きしに勝る……って、ただの踏切だし。独り「ボケ」は虚しいんだぞ、究極に。トイレ行って、ついでに顔でも洗って来よう。
 席に戻るとN君はちゃんと目を覚ましており、しばらく雑談をしながら景色よりもDC【※1】の乗り心地を堪能。話の内容は忘れた。まぁ、忘れるくらいだから大したことじゃないんでしょう。7:03これまた定刻、武豊に到着したのでありました。……しっかし、ものの見事になぁんにもない駅。駅舎の構造がちょっと個性的だったりするくらいで、ここまで徹底してありふれてると却ってすごいぞ。
 「ふぇ~、ここまで特徴がない終着駅ってすごいですねぇ。」
 やっぱり君もそう思うか。で、次はどうするの?
 「この先の踏切を右に曲がってしばらく行くと……そうですね、4~500mくらいですか、名鉄の知多武豊って駅がありますんで、そこから河和(こうわ)に出ましょう。そこから鳥羽行きの船が出てます。」
 へー、よく知ってるねぇ。
 「インターネットで調べましたんで。」
 おぉ! インターネット。君の口からその言葉が出るとは思わなかったぞ。わしゃあ怖くて触れんもんね。パソコン歴はオレの方が長いはずなのに、若いってぇのはすごいやね……って、ホントにオヤジくさいな、今回のオレ。
 駅からまっすぐ南へ伸びる線路がある。辿っていくとどうやらこの先にある工場へと伸びていたらしい。過去形で書いているのは、そこがすでに廃線となっているのが明らかだからで、線路の表面が赤茶色にさびている。後で調べたところによると、これは武豊貨物線跡で、武豊から1km先の武豊港まで伸びていたとある。工場ではなかった。開通は1930(昭和五)年4月1日、武豊線の開通時で、その35年後、1965(昭和40)年8月20日に廃止されている【※2】。我々はその線路跡に沿って50m程歩き、そこから既に動かなくなって久しい踏切を渡って西へ向かう。そこから武豊の駅をよく見ると、前方右手に駅本屋を持つ片面ホームがあり、折しもさっきの列車が名古屋に向けて発車していく。その左手には待避線と思しき線路が2本ある。さっきは列車の影にあって見えなかったわけだ。貨物線営業時はそれなりに盛況だったのかもしれない。
 さて、踏切を渡りまっすぐ行くと程なく駅があるらしい。そんなにかからないですよ、とN君は言っているが……。
 「あ」
 なんだ? もう見つけたのか? まだ1分も歩いてない……って、まっすぐ道しか見えないじゃん。
 「自動販売機だ」
 はあ!? なんだよ、そりゃ。期待しちまったじゃないか。どうした。
 「GEORGEAの地方限定版があるかもしれませんよ。」
 ~~~~~~~~!! なにかと思えば缶コーヒーかよ。まあ、確かにおれも限定モンには興味あるけどさ。なぁんて思いつつ、しっかり買ってるし、オレも。ふたりで二種類買って飲みくらべて見たけど、あまり大差ないなぁ。普通のヤツより甘みがちょっと強いのと、ちょっとコクがあるのと、あえてそれぞれの違いを言うならそんなとこかな。あ~ぁ、うれしそうに納得した顔してるよ。あれれ、缶捨てちゃうのかい?
 「かさばりますからね。」
 ごもっとも。
 くだらないかそうでないかは皆さんの自由裁量にお任せするとして、それから歩くこと約10分、踏切が見えてきた。名古屋方面に行くに際して、武豊線だけは一生乗る機会がないだろうと思っていたのよ、私ゃ。だって、その先に鉄道があるなんて思わないじゃん? とりわけ興味があるわけでもないし、名鉄キライ【※3】だし。だから、名鉄がこんな所まで触手を伸ばしていたなんて知らなかった。考えてみれば当たり前なんだけど……ね。しかしショボい駅。ここは昭和50年代か、ってな町並みにものの見事に溶け込んでいる風景はある種恐ろしいものがある。しばし呆然。と、警報機が鳴り出した。方向表示は河和方面。しまった、乗り遅れだ。どうする? 地方ローカルだったら列車はしばらくないかもよ。
 「とりあえず駅には行ってみましょうよ。」
 ……ん~、そうだな。ツアコン様の言うとおり。ここではワガママ全開というわけにはいかんな。見捨てられたらイヤだからな。

 ★第四話へ続く★
 ★第二話へ戻る★

注 
※1 言わずと知れた(??)ディーゼルカーのこと。完全電化されている木曽路ばかり旅していると、ディーゼルカーは非常にご無沙汰な存在なのです。
※2 引用文献:全国廃線国鉄の停車場一覧(鉄道廃線跡を歩くⅤ に収録)宮脇俊三編著 JTBキャンブックス刊より抜粋
※3 実は筆者は、かつて名鉄観光で営業マンをやっていたという過去があるのです。ノイローゼになって8ヶ月で辞めちゃったけど。そんなわけで名鉄関係は鉄道から観光・運輸まで全てキライです(笑)。

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