旅の途次~ちょっといい景に逢っていきませんか?~

旅の途次~ちょっといい景に逢っていきませんか?~

●知多半島


~伊勢湾一周“台風”ツアー~

第四話 知多半島

 駅の時刻表によると、次の列車は10分後に出るらしい。……ん? 時刻表示に色が付いてる。どういう意味かな……って、特急だよ! 特別料金350円だとさ。ここはワガママ野郎の本領発揮。ヤダイヤダイ、特急乗らなかったらグレてやる。
 「ちょうどいいですね。これに乗っちゃいましょうか。」
 なんだ、お前さんも乗りたいのね。よーし、乗っちゃえ!
 ホームに上がるとちょうど列車接近のアナウンス。遠くに目を凝らすと……! パノラマSuperが来たよ。すごいね。こんな辺鄙な所にまでこんな列車を走らすとは、ナゴヤ人の感覚は褒めるべきか、それともけなすべきか、ようわからん。まあ、こっちとしちゃあラッキーってなもんで、意気揚々と先頭車に乗り込んだね。
 列車の中は親子連れがやたらと騒いでいた。やかましいワイ! こんなところにいられるかってんでぃ。最前部に続く扉を通っ……特別室!? おいおい、また金とられるのかな。
 「いいんじゃないですか? 乗るだけ乗っちゃいましょうよ。」
 おぉ、なんか段々オレに似てきてないかい? いいことだよ。野郎はそうでなくっちゃね。
 ……なんて調子で自動ドアをくぐったら特別室には誰も乗っていない。これまたラッキー。最前列の席で“かぶりつき”だ。
 さて、特急列車「パノラマSuper」の最前列の席で“かぶりつき”としゃれ込んでみたものの、流れゆく景色はあまり面白くない。どこにでもあるありふれた風景ばかり。せめてもの救いは、この特別室、特急料金の他には一銭もかからないってこと。自由席ってわけだね。さらにハイデッカーになっているので見晴らしだけは抜群にいい。つまんないけど。まあ、典型的な寂れたローカル線沿線を、ハイデッカータイプの、しかも特急列車が結構なスピードで飛ばすって言うのは、ある意味、スリルがあって面白いかもしれないね。なぁ、N君よぉ。
 「結構気持ちいいですねぇ。こりゃいいや。」
 ……。喜んでるよ。
 さて、列車は揺れること揺れること。花やしきのジェットコースターなんてメじゃないね。カーブのたんびに外側にフッ飛ぶんじゃないかって感じ。怖い怖い(ここは「オモシロイ」とルビを振るべきだな)。そんで、すれ違う列車には必ずと言っていいほどヘッドマークがついている。「祝・中日ドラゴンズ優勝」だってさ。名古屋鉄道の前会長兼名鉄観光前社長、故・犬飼氏(オイラが名鉄観光にいた頃は現役バリバリ)はもうオカシイんじゃないかってくらいの中日ファンだったしね。香港の研修先のホテルで、貝印カミソリの社長を招待(接待って言うんだよな、それって)して「名鉄ドラゴンズ会、万歳!!」とかやってんの。さらには俺たちに向かって「名鉄に入ったからには君たちは皆中日ファンになれ!」などとホザク始末。もっとも、ナゴヤ人のほとんどは大阪人の阪神ビイキに負けないくらい相当熱狂的なファンらしいけどね。ただ、さすがにカーネルサンダースと一緒にどこぞに飛び込んだりといった、ある意味「非常に正しい」ファンの姿を露骨に晒すことがないってのは、ニャーミャーギャー一族のイヤラシキ誇り(!?)といったところかな。まあ、地元球団の優勝にはどこでも似たような反応を示すことだし、あまりペンの暴力に訴えるようなことは……手遅れかな(苦)。あまりマジに捕らえないように。
 なんてことを思っているうちに列車は終点、河和に到着。7:36これも定刻。結構広い駅構内にア然。侮りがたし、名鉄。さて、ここからどうするかと、久々登場のN君。
 「師崎港からフェリーに乗るのが一般的ですねぇ。」
 ふ~ん。フツーでなければどこへ行くの?
 「ここ、河和からも船はあるんですよ。ただちょっと時間がかかるしあまりオススメできません。」
 ん~、どれでもいいなぁ。いいかげんだけど。
 「とりあえず改札出ましょうよ。」
 そうだった。ホームで話しててもしかたがないじゃないか。これから海を渡るってのにこんなところにいたって仕方あるまい。……っていうか、早く出ろよってか。んで、出たぞ。どこ行くのさ?
 「あ゙~! 師崎行のバス、出ちゃってますよ」
 あにぃ~!? 何とかしろ、このボケツアコン!
 「どうしましょうか」
 いや、どうしようったって、時刻表にはなんてあるのさ。
 「次のバスは30分後ですね。でも、その先のフェリーが9:30までありません。1時間待たされます。」
 やだよ、そんなに待つのは。それで鳥羽に着くのは? ……10:40? それで予定通りに行くの?
 「あんまりよくないですねぇ」
 ここまで来てそれはないでしょ。河和港ならどうなのよ。
 「あ、8:10の高速船がありますね。ちと高いですが。」
 え~、あんまり高いのはやだなぁ。いくら?
 「2,540です。ただ、そのあと鳥羽発10:31の快速みえ8号に乗れそうです。」
 あんまり高くないだろ、それは。師崎-鳥羽が……1,150? 師崎までが620? 700円くらいだろ? それで乗り継ぎも楽ならそっちじゃねぇか? はい、決まり。
 ……勝手な旅行客があったもんである。こんなヤツばっかだったら団体旅行は成りたたん。「ツアコン様の言うとおり」の境地は一体どこに行ったんだ。
 「そうですね。たまには贅沢しましょうか。」
 こら。素直に従ってどうする。これだからオマイサンはみんなから好かれるんだよ。……? 意味不明。
 ともあれ港に向かいましょ。いかにも中学生が夏休みの宿題に作りました、みたいなショボい看板はその看板たる機能をしっかり備えており、矢印の通りに道をたどっていったら、ホントに港に着いちゃった。でも、とっても心細かったぞ! もうちょっと考えて欲しいもんだ。ラブホテルみたいなケバイのはかえってイヤだけどさ。
 さて、出港15分程前の待合室には見事なまでに誰もいない。キップ売り場の中途半端にキレイなお姉ちゃんと、みやげ売り場にいるこれまた中途半端にイキのいいオイチャンとオバチャン。いるのはこれくらいのモン。せっかくだからなんかお土産にとえびせんを買う。カルビーではないよ、駄菓子屋で売ってるような味のする揚げ煎餅みたいなヤツ。結構安い。調子に乗って4袋も買っちゃった。
 しっかし、港といっても目の前にひろがるのはだだっ広い駐車場みたいな空き地とウルトラクイズの検問ゲートみたいなさびたアーチ、そしてそこから伸びる桟橋とおぼしきブツ切れの突き出し道だけ。船も来ていないし、何か、島流しにされるのかな、みたいな意味のない不安に駆られるのよ、マジで。なぁ、ここでいいんだよねぇ。
 「…………………………えぇ。」
 キップを手渡しながら不安そうにうなずくなよ。キップがあるならここで間違いないんだろうよ。
 「…………………………そうですよね。」
 だから素直に納得すんなって。ほら、船来たじゃないか。
 「ああ! 本当ですね。よかった。」
 ほれみろ……って、あれ? 不安なのは俺の方じゃなかったっけ? ま、いいか。
 なんてことをほざきつつ、船上の人となる。待合室にはその後何人かの客がやってきたが、基本的に人数が少なく、経営大丈夫か? 状態。まぁそんなことはオレらには関係ないわけで、とりあえず船が動けばいいや。

 ★第五話へ続く★
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