旅の途次~ちょっといい景に逢っていきませんか?~

旅の途次~ちょっといい景に逢っていきませんか?~

●帰路(完結)


~伊勢湾一周“台風”ツアー~

最終回 帰路

 15:18発の豊橋行新快速には乗客もそこそこいたが、なぜか無事に着席できた。場所とりの成果か、はたまた前夜パチンコで負けたオイラの悪運の成せる業か、今となっては知る由もないが、とにかくういろうの買いすぎで重くかさばるお土産と一緒に立たされることがなくて助かった。豊橋着は16:06。ホームの向こう、留置線上には先日現役を退いたばかりの中央西線165系【※1】が停まっており、作業員の点検を受けていた。
 わずかな邂逅のひとときを惜しみつつ、16:22発の列車で浜松へ。新幹線700系(別名:カモノハシまたはひょうたんつぎ・笑)の通過を眺めつつ30分のヒマを持て余す。というのも、わずかな乗換時間で間に合うはずの始発列車は満員で、疲れがたまった我々にはとてもじゃないが乗れた代物ではなかったためである。一本遅らせた列車は17:23始発の御殿場行き。一日の中でも滅多にお目にかかれない運転系統なので、二人してワケもなく心を躍らせる。やって来た列車は、何の変哲も無い電車だったが、車内アナウンスの「御殿場までまいります。」にミョーに敏感に反応してしまう我々であった。やっぱ「てつ【※2】」ってのは……
 静岡には18:30に到着。ここで一度改札を出る。静岡に来るとネモ君がいつも立ち寄るカマボコ屋に今日もよるのだという。
 「家族に頼まれましてね。ウマイんですよ、ここのは。」
 やっぱりワガママ野郎がいつのまにか彼にシフトしてしまっている。まぁいいや。どうせもう終わりだし。かくして向かった先は駅ビルの地下食品売場。文字どおり遠く離れた遠江の国にお知り合いがいるとは、かさねがさね侮りがたし、ネモ。
 「お墓参りによく来るんですよ。」
 あ、なるほどね。
 「ついでに夕飯もここで買いましょう。」
 出たぞ、必殺ワガママ野郎。駅弁フリークのキミが駅弁に食指を動かさないなんて、よほどのことなんだろうな。
 「ここの寿司は駿河湾(って教えてくれたと思う。焼津だったかな?)の新鮮なネタを使ってますからね。旨いんですよ。」
 ほう、それなら試してみるのも一興、案内したまえ……って、だから先に立ってズンズン行くなよ、ちょっと待てって。
 19:36発の東京行普通列車は昨夜我々が乗った「ムーンライトながら」用の特急車両だった。どうやらネモ君はこれに乗ることを最終目標にしていたらしい。後半、彼のワガママに身を任せたのはどうやら吉と出たようで、寿司はうまいし、列車は快適、乗客もまばらで気が散ることもなく、食後の惰眠を貪ることもできた。気がつけば列車は大井町あたりを走っており、いつのまにか東京都に戻ってきている。最後の最後にあっけなく東京駅に到着。22:40定刻。この列車は一度品川に回送され、一時間後、昨日の私達と同じように旅の期待に胸を膨らませる沢山の人たちを乗せ、再び西へと旅立ってゆく。ところがそんなこととは一切関係のない私たちは、お互いの住む家へと向かう以外にもう方法はないのだった。

全九話にわたってお送りしました日帰りの旅(……!!)もここで終わりです。実際にはこれを四回に分けて連載し、その期間が約1年。楽しんで読んでくださった方もいらしたようですが、改めて見てみるとやっぱり長いですね(苦笑)。ともあれ、ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました。

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※1 中央西線165系……中央本線はその運転系統の関係から、名古屋-塩尻間を中央西線、東京-塩尻間を中央東線と呼ぶ。まぁ、知る人ぞ知るってヤツ。木曽路マニアの私は同時に中央西線中津川-塩尻間の熱烈なファンでもある。ここで言う165系とは1999年7月までそこで活躍していた急行型の電車で、私のもっとも好きだった車両のひとつ。いずれ木曽路の情景模型にしてやろうかと画策中である。
※2 てつ……鉄道マニアの略称っス。全編通して呼んでいただければ想像ついたかとは思いますがね。

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