ぱんだの喘息日記

ぱんだの喘息日記

人工皮膚の係じゃない


ただ、寝たきりならまだいい。
皮膚は、どんどん薄くなり水を飲めば、その水の通りが見える。
少し動けば皮膚は破け、点滴や水、全てが浸出液として出てくる。
体はほてり、痛痒くなる。
死人にかけるように、薄いシーツをかけるのもやっと。
点滴もテープで固定なんて出来ない。
オムツすら、やっと見つけた薄手の物をブカブカな状態に軽くあてがうだけ。
皮膚移植にも自分の皮膚全てが薄いから出来ない。
葉書サイズの1枚500円の人工皮膚。
一度、空気に触れたら、それは全部破棄。
でも、それ以外に望みはない。それだけが助け綱だったんだ。
取り寄せるにも何日かかかる。
私は、なくなるのを計算しては先生に頼んだ。
そんな時だった。
先生達だって忙しい。だから、私は早め早めに頼んでいたのに忘れた。
確認の意味で
『先生、頼んでくれた?』
そう聞いた私に突然、大きな声で
『私は人工皮膚の係じゃない!』と怒鳴った。
人工皮膚の係じゃない…
そうかもしれない。だけど、自分で頼める物じゃない。
頼んで貰えなかった事より先生の言葉が辛かった。
同じ女として、傷だらけの身体、それだけだって辛いのに、服すらまともに着れる状態じゃない、水分は通りが見える。
どれだけ怖いか…
まして、心の傷みをわかろうとするのが医療者なはずなのに冷たい一言。
その日から、私は人工皮膚に対して何も言わなくなった。
ただただ、傷ついて毎日、壁の方を見て泣いていた。
こんな生き地獄なら早く死んだ方がマシだと思った。

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