mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年05月31日
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廊下の空気が冷たさを感じる。
視線の向こうで悠然と立つガラテアから放出されるオーラが、アルテミスの肌に恐怖の寒さを与える。
その反面、内面より湧き出る戦士としての高揚感が体を火照らした。

「魔槍メタルビートルだ、そいつに任せろ。少なくとも死にはしない」ゲルニカがアルテミスに話す。

アルテミスはゆっくりと頷く。

_奴の言う通りだ、私に全てを任せなさい。

_魔槍メタルビートルよ、悪いけどこれは私の戦い。
_あなたは少しだけ私に力を貸して。私のオーラと同調して。

_馬鹿な!プロフェッサーと呼ばれるゲルニカですら私と同調するのにどれ程かかったと思ってる。


槍から煙のように湧き上がる赤いオーラとアルテミスのオーラがシンクロし、絡み合うようにアルテミスの周りに渦をなす。

ゴォーーー!

張り詰めた糸が切れたかの様に一気にオーラが膨れ上がり、紅蓮のオーラがアルテミスの背後に不死鳥を浮かび上がらせた。
これには槍の持ち主ゲルニカも、対面するガラテアやその背後に控える楸やフクチ、花火さえも度肝を抜かれた。

「まさかこれ程とはな」
「初めて手にしたメタビと簡単にシンクロするだけなく、オーラが完全に具現化している」

ゲルニカは呆れたように言葉を発した。

「どうやら敵では無さそうだな。しかし武人としてこれ程のオーラを見せられては相手しない訳にはいかないな」

ガラテアはゆっくりと大剣で平正眼の構えを取る。

「俺は元老院直轄部隊の隊長、ガラテア。お前の覚悟を決めたオーラに武人として最大限の力で応えよう」
「はぁーーーーーっ!」


を包む。無数の傷跡がついた大きな肩からは、オーラと同調するように黒い巨大な龍の頭の模様が浮かび上がり、その
龍はやがて裸の上半身を囲むように全身を現した。その文様と同じ様にオーラも渦を巻きガラテアの周りに昇竜が出現する。
青いオーラと赤いオーラが埋め尽くす中、静かにアルテミスは槍を構え大剣に向き合う。

_この人、強い!

巨躯と大剣の為かガラテアは大雑把な力技を得意と思われがちであるが、元々は正統派の戦士であり一軍を任される

背筋が伸び、前に出した右足は少しだけ踵を浮かせ、膝は緩やかに曲がっている。後ろの足はつま先立ちで何時でも
獲物へ飛びかかれる態勢をとり、大剣を支える左手はしっかりと右手は柔軟にリラックスした状態である。
その剣先はアルテミスの喉元へと向けられていた。
アルテミスは同じように槍を水平に構えガラテアに集中するが、ガラテアの強い剣先が実際の数倍にも見え、脳裏
にその剣先が喉元を襲うイメージが体を硬直させる。

_くそ、相手に飲まれるな。
_間合いは槍の私の方が長い。スピードでは私の方が上のはず。
_迷うな、行くぞ!

チッチッ

剣先と穂先が触れる乾いた金属音がした。その瞬間、アルテミスは後ろに跳躍し間合いを開ける。
アルテミスは体全体に寒気が走り、本能的に危険を回避したのであった。

「いい感してるな」

ガラテアは構えをそのままにアルテミスを誉める。

_いつの間に間合いが詰まった?

ガラテアに動きは見られなかった、その事がアルテミスの頭を混乱させた。

_ケケケ。小娘よ、奴の足元を良く見るんだ。

アルテミスは再び槍を構えると、ガラテアの足元に注目した。ガラテアは相変わらず微動だにしない平正眼を保っている
が、右の足は尺取虫のように静かにアルテミスとの間合いを詰めていた。

「安心しな、殺したりしない」

ガラテアのこの声がアルテミスに決断を促した。

_一撃、私の全てをこの一撃に込める。
_この人には下手な駆け引きなど通用しない。

_いい決断だな。

心を決めたアルテミスは目を閉じた。剣先を見ると体が萎縮する。萎縮した筋肉では本来のスピードが出ない。
体の力を抜き、オーラを相手と同調させ一気に攻撃を繰り出す。ゲルニカに教わったランサーの基本を思い出していた。

「ほう、覚悟を決めたようだな。ますます気に入った」
「俺は二段打ち下ろしだ、それ以外の技は出さねぇ」

再び対峙した二人のオーラが交じり合う。

バン!

アルテミスが槍を突き出す。

ダッダン!

それに呼応するようにガラテアの大剣が強烈な踏み込みと共に迎え撃つ。
強烈な二人の打ち込みに伴う踏み込みにより、石の床に亀裂が入る。
紅の不死鳥と紺碧の龍がぶつかり合う。一瞬の間に二人の距離は縮まり二人は体ごとぶつかり、小柄なアルテミスは宙に
投げ出され、石の廊下に激しく体を打ち付けられた。

「いい突きだった」

ガラテアの声にアルテミスは反応しない。篭手と兜に強烈な攻撃を喰らい、意識ごと飛ばされたのであった。
ガラテアの方も右手で脇腹を押さえ、その指の間から血が流れ落ちている。

_おいお前、大丈夫か?

メタルビートルの心の声にもアルテミスは反応を示さない。

「ちょっと、起きなさい。こんな事で死なれたら私の気分が悪いじゃない」

メイヴィが涙を流しながら、倒れたアルテミスに近寄り笛を吹き始める。すると消えかかっていたアルテミスの
オーラが再び不死鳥を象り、アルテミスはよろめきながらも再び立ち上がった。

「うぅうう、ありがとうメイヴィ。また助けられたね」

アルテミスの言葉の意味はメイヴィに伝わらなかったが、涙が伝うその表情に明るさが戻った。

_おい、もう止せ。さっきの攻撃が通用しない以上、お前に勝ち目は無いぞ。
_もう一度さっきの喰らったら本当に死ぬぞお前。

「思い出したよ、覚悟の無い攻撃はフェイクにもならない。昔メイヴィに言われた言葉だ」

_何言ってんだ?

「ほう、あの攻撃を喰らって尚、俺の前に立つか」
「前言撤回だ。殺す気でいく。それが俺流の礼儀と思ってくれ」

ガラテアが再び平正眼の構えをする。ガラテアの後方にいた花火や楸が止めようと動いた瞬間、ゲルニカの分身が
彼らの前に立ちはだかり、静かに首を横に振る。

_今の私の攻撃はあの人に通用しないのはわかった。
_でもあの人は優しい。その優しさが油断を生むはず。
_メタビ、お願いがあるの。さっきのように意識まで飛ばされるのだけは避けたいの。
_私の考えはもう解ってるでしょ。私の体が動かなくなった時はお願い、あなたが私の代わりに動かして。

_・・・お前、結構凄い奴だな。
_わかったよ。それしか奴に勝つ方法は無さそうだな。しっかり意識を保てよ。

アルテミスはオーラを高め、不死鳥は再び舞い上がった。

「行くぞ!」

バン!
ダッダン!

再びアルテミスの突きとガラテアの打ち下ろしがぶつかり合う。激しい踏み込みが音をたて石の廊下を砕き
二人の戦士は体ごとぶつかり合う。全く同じ光景である、しかし今度は吹き飛ばされる事無く、その場へ前のめりに倒された。
ガラテアも同じ所、右脇腹に激しい突きを喰らい流血は激しさを増した。

_何とか意識は保った。
_今しかない、相手が勝ちを意識した瞬間のこの隙にもう一度同じ場所に攻撃を!
_動いて私の体よっ!

アルテミスの瞳が真っ赤に輝き、ガラテアを見据える。しかし其処には油断など微塵も感じさせないガラテアが再び
平正眼の構えから鋭い眼光をアルテミスに向けていた。

_うぅ、何故だ。明らかに私を既に打ち負かしているのに。
_この男は殺しても尚戦いを止めないのか!

アルテミスは愕然としながらも、覚悟を決め再び槍を持つ手に力を込めた。しかし、次の瞬間にはアルテミスの目の前
にゲルニカが現れ、アルテミスを制止する。

「『残心』と言う」
「優れた武芸者は敵を打ちのめした後にも心を残す」
「お前は良くやったよ」

「YESマスター・・・」

アルテミスはそれだけを言って力尽き、再び意識を失った。

赤石物語
(Blackworld and Redstonestory)

~古都の南風 傭兵の詩~



天には赤い月が昇り、常に北を指すという星すらも朱色に犯している。
ザードフィルの居城の屋上に数人の黒装束の者達が集まっていた。
その中心にはザードフィル本人が立っている。

「さぁ、そろそろ始めようか同志達よ」

ザードフィルがマントから両手を出し、頭上へと突き出し何やら呪文のような言葉を発する。
その呪文に呼応し、足元から文様と共に六亡星が激しい光と共に現れた。

「我ら大地の民の宝玉を今解放せん」

掛け声と共に、懐から黄色に輝く宝玉を取り出した。宝玉は静かにザードフィルの手より離れ上空に浮かび上がる。

「さぁ風の子達よ」

ザードフィルに促され、3人の黒装束が前に進みその中心にいた者が光輝く緑石をかざした。
光る緑石は手から離れ上空に浮かび上がる。

「さぁ暗闇の子、ロウ・ヴァイオレットよ」

また一人黒装束の者が進み出て、黒宝玉を宙に浮かべた。

「さぁ、水の民。元老院よりの使者、ネド・ケリーよ」

同じく、青宝玉が宙に浮かぶ。

「さぁ、我が同志。その光輝く慈悲の心と共に聖騎士、sakezukiよ」

眩しく光と共にまた一つ宝玉が浮かび上がる。

「そして、これが最後宝玉。レッドストーンよ今その力を解き放て!」

最後にザードフィルは自らの首に下がる赤い宝玉が付いたペンダントを天空高く放り投げた。

<あとがき>

う~ん、もう直ぐ、もう直ぐ。
あと少し、あと少し。

頑張れmikusuke!





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最終更新日  2007年05月31日 21時43分45秒
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