mikusukeの赤石お散歩日記

mikusukeの赤石お散歩日記

2007年08月21日
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闇は世界を包み、暗黒のオーラが空気を凍てつかせる。
重たい空気にアルテミスは身体全体に体験したことのないプレッシャーを感じていた。
眼下に広がる荒廃した大地に異様な大きさの魔物が蠢く。
巨大な魔物から黒煙の様に湧き上がる無数の魔物達で大地が埋め尽くされる。
巨大な魔物達は魔方陣を象り、世界を侵食するかのように膨張していく。
今までに無い恐怖心から言葉を失ったアルテの横にゲルニカが立つ。

「怖いのか?これ程の強い力だ、仕方ない」
「でもな、人は決して魔物などには負けないさ」

静かな口調で話し、ゆっくりと巨大な魔物の方向へ指を指す。

そこには、先の戦争でビガプールの地を開放すべく戦っていた太史慈率いる独立軍であった。

「行くぞっー!ここは俺たちの土地だ、魔獣などに好きにさせるな」

太史慈の号令で独立軍が巨大な魔獣、ゲートキーパーに向かい突進する。
レイチェル、サモ、BUG、パプリカ達が魔獣を次々となぎ倒していく。

それでも、アルテミスの瞳は不安の色が濃く浮かんでいた。
察したようにゲルニカが再度差した方向は先程と少しだけ違う。
そこには新たな雄たけびと土煙が上がり、独立軍の倍以上の部隊が魔獣に満ちた空間を波のように押し寄せる。

「あれは?」

「あの旗は正規軍だ。榎がうまく説得してくれたようだな」
「不思議だな、先日まで互いに血を流し合った者達が今、同じ目的のために協力する」

「それでも、いくら力を合わせても勝てやしない」


「絶望なんて、下を見て俯いている奴にだけ訪れるものさ」
「奇跡は起きるものじゃない、起こすものさ」
「前を向き、進める足を決して止めない強い心が奇跡を起こす。そう何度でもな」

ゲルニカは優しくアルテミスの肩に手をかけ俯くアルテミスを諭す。
そこに、場の空気を読まない二人組みが軽快にステップを踏んでやってくる。



「ちょー、毎度そのパターン止めてくださいよ酒さん」
「お久しぶりですゲルニカさん。タケウマです」

二人の登場は空気を読まないが、場がどんな状態であろうと不思議と二人の空気感で和ませる力があった。
そのおかげか、アルテは少し恐怖に足が震えている事を忘れることが出来た。

「やぁゲルちん、あれはどんな感じだい」

「感じるままだな、想像以上の化け物だ。しかし太史慈達と正規軍で6体のうち2体位なんとかするだろう」

「うんうん、じゃゲルちん達で1体。おいらとタケちんで残りもらうよ」
「簡単だね、タケちん」

sakezukiはまるで陽気である。
しかし、剣聖と呼ばれるこの人物、その男がこの場に充満する禍々しいオーラ、
馬鹿馬鹿しい位に巨大なオーラを感じていないはずが無い。アルテは戸惑っていた。
確かにこれだけの面子が揃っていれば一個大隊程の戦力はあるように感じられる。
それでも正規軍、独立軍の片方を凌駕する程の力があるとは思えない。
sakezukiの涼しい表情と余裕がどこから生まれてくるものかアルテミスは混乱していた。

「となると、到着した訳だな。本当にあれを使うのか?」

「ん?ああ、ゲルちんの弟子がもう直ぐ此処にくる。よく爺さんを説得してくれたよ」

「酒さん…」

「タケ、そんな顔をしないの。男の子でしょ。ウフ」

sakezukiの軽薄な表情と対象的にタケウマの表情は何か思いつめたように曇っていた。

タッタッタ

一人の戦士が小走りに向かってくる。風貌と背中に抱える槍と弓からしてランサーかアーチャーである。
戦士は2メートル程の距離までくると足を緩め、その場に跪き一礼をする。

「剣聖様、教皇の命により例の品を運んでまいりました。聖騎士団のほぼ全ての部隊が終結しております」
「そして、書状を剣聖様へと」

戦士が懐から封筒を出そうとすると、sakezukiが必要ないと掌を戦士に向けた。

「エロスちんもやっぱゲルの弟子だね。インターと同じで頭が固いよ」

「まぁそう言うな」
「それより、アウグとの交渉ご苦労だったなエロス」

「だ・か・ら、エロスじゃないです。ネ・ロ・スです。師匠も剣聖様に悪されすぎです」
「それより剣聖さま。教皇から伝言が『アウグの民の全てはお前に託す。だから必ず生きて帰って来い』との仰せです」

「老けたたな爺さんも。おいらは簡単には死なないさ、全国一千万の女子高生が泣いちゃうからね」
「それよりタケちん、例の物は捕捉出来るかい?」

「ええ、1キロ先に反応を確認しました。今、システム起動中です。シンクロ率も上昇、レベル1クリア」
「トリプル7システム、霊力反応、増幅回路ともにオールグリーンですね」

「よし、こっちは良さそうだ。後はゲルちん達次第かな」

その時、一瞬の隙を突き、いや隙など突く必要がない。空気すら動く気配もない速度で
アルテミスの視界を横切りゲルニカの前に一人の戦士が現れた。
そして、膝つくネロスの頭に足を置き軽くアルテ達を見渡した。

「ようエロス久しぶりだな。相変わらずへたれっぽいな」

戦士の姿を見たアルテミスは体中の血液が沸騰するのを必死でこらえていた。
アルテミスにとって忘れることの出来ない相手、ロクショウの命を奪った戦士「神速のインター」マシン・インターであった。

赤石物語
(Blackworld and Redstonestory)

~古都の南風 傭兵の詩~



塔の屋上ではゲートキーパからの魔力が集まり、上空のの空間に歪が出来つつある。
ゲートキーパへの各軍の攻撃には特に動揺もなく、ただひたすら時を待っていた。

「ザード様、巨大な霊力反応が確認できました」トリーシャが報告する。

「ああ、間違いない。あれを出してくるとは、アウグの老人達も必死だな」
「先にジョーカを切るのはやはり向こうだったな。しかし、本当にいいのだな剣聖よ」

ザードフィルはどこか悲しげな表情を浮かべ呟いた。

「よいのですか」トリーシャがザードフィルを気遣い悲しそうな表情を浮かべる。

「人の真価など、鬼籍に入った時に他人が語ればよい。剣聖と俺は生き方が違った。ただそれだけだ」

ゲートキーパから1キロ東に行った場所に聖騎士団が無数の棺桶のような箱を並べ、僧侶達が棍棒を両手に掲げ
交互に膝をつき祈りを捧げる。
祈りの言葉は言霊となり大気に溢れ、一帯を神聖な空気で満たす。
その輝くオーラは何かの意思に従うように箱に注ぎ込まれていった。


マシン・インターはネロスの後頭部に足を置いたままゲルニカを睨み付けている。

「久しぶりだなゲル。まさか腕は鈍ってないだろうな」

「ちょーインター!いつまで汚い足を乗せとんや!」

ネロスがインターの足を振り払い対峙する。

「相変わらず、器の小さい男だな。エロスよ」

「違うわい、心優しき、器の大きい男ネ・ロ・スや!」

「下らん、そんな言動にこだわっている所が小物感たっぷりだぞ、器の大きいネロス君」

嘲るように横目でネロスを見るインターの手が一瞬だけぶれているようにアルテミスの目が捉えた時、
ネロスの身を包む鎧が全て砕け散っていた。

「ついでに着替えたらどうだ、その臭い鎧を脱がしてやった」

「く、くさないわい」

「インターよ、何故裏切った?」ゲルニカが冷静に問う。

「簡単なことだ、集団戦において剣聖をも凌駕すると謳われる魔槍メタルビートルを持つ鬼神ゲルニカを倒すため」
「全力の師匠を倒すことが弟子としての使命。武人として頂点を極めるのは当然だ」

「何!インター、貴様裏切ったのかっ!」ネロスが叫ぶ。

ネロスがインターに向かって背中の槍に手をかけようとした刹那、既にインターの突き出した槍の穂先が喉元数センチの
所まで来ていた。そしていつでもネロスの首に大きな穴を開けることは簡単に出来た。それでも、インターが喉元で
止めたのは自らの意思によるものでは無かった。インターの喉元にも同様に銀色に光る穂先が今にも突き刺そうとしていた。
槍の伸びる先にはアルテミスの手があり、真っ赤に染まる瞳が、額がぶつかる程の位置からインターを睨み付けていた。

「お前あの距離から。どうする、神速と呼ばれる俺の刃はネロスの首とお前の首を切り離すなど造作もないぞ」

「やれるものならやってみろ。同時に私の槍がお前の喉元に風穴を開ける」

身体の中の血液が沸騰するのを抑え、アルテミスが静かに脅す。しかし、その身体には既に異変が起きていた。
槍を握る腕は硬質化が始まり、額には無数のしわと中央には僅かに紅い宝玉が少し姿を現し始めていた。
金縛り状態の動けぬ二人を解き放ったのはメタルビートルであった。素早い動きで二人の間に入り、槍を回し二人を
左右に吹き飛ばした。

「ネロスよりまともな弟子を取ったようだな」インターがアルテミスとゲルニカを交互に睨み付ける。

「インター、もうお前の槍は俺を超えてるさ。それ以上何を望む」

「誤魔化すな、本気のお前を倒してこそ最強の名」

「インターよ、万の兵に値するとまで言われるようになって尚、高見を目指すか」
「ならば、武人として相手しよう。来いメタビ!」

メタルビートルが軽く跳躍する。紅い光に包まれ中から紅蓮の炎を纏う槍が現れゲルニカの手に収まる。
直後にはインターの槍がゲルニカを襲う。しかし魔槍の前に全て攻撃は弾かれる。
一度間を置くインターに対し、ゲルニカの魔槍が追撃をするがインターのステップの前に空を切る。
インターが反撃態勢に入った時、ゲルニカの繰り出す炎と氷の槍がインターを包む。

「付け焼刃の知識技など!」

構わず反撃に転ずるインターの動きが鈍る。足元が先ほどの攻撃により僅かに凍らされていた。
一瞬の間が熟練者同士の勝敗を別ける。インターの周りに複数の分身が現れ一気にインターを串刺しにする。
完全に決まったとアルテミスの目に映った次の瞬間にはマシン・インターの身体は崩れ去り、
新たな姿がゲルニカの背後に現れた。

「ダミーか、お前の得意技だったな」ゲルニカは背後のインターに振り向かずに言葉をかけた。

「このゼロ射程では外さない。俺の勝ちだなゲルニカ」

既に勝ちを意識したインターの背後に殺気がほとばしる。ゲルニカの持つ槍は魔槍ではなく通常の槍に変わっていた。
先程の分身攻撃は囮で変身を解いたメタルビートルがインターの背後から槍を繰り出した。

「ちぃ」

インターはすんでの所で再度ダミーを出し切り抜けるが、頬には一筋の傷がついた。

「メタビーにはこういう使い方もあるのさ」
「しかし、それでも相打ちとは神速と言われるだけある」

ゲルニカの頬にも同じく血が滲み出ていた。先程のメタルビートルの攻撃の間隙をつきゲルニカに一太刀浴びせていた。

「ならば、本気を出さないといけないな」
「来いメタビ、バージョン2だ!」

ゲルニカは手に持つ槍を自らの周りに浮かせ、空いた手をメタルビートルに向ける。
再度空中に跳躍したメタルビートルは紅い輝きを放ち今度は紅蓮に包まれた巨大な弓に変化する。

「ゆ、弓だと」

インターが驚きつつ攻撃態勢に移った瞬間、体中に小さな痛みを感じた。

「くぅ、抜き打ちすら見えない程の弓さばきとは、しかしこの位のダメージ……」

「動かない方がいい、俺のビットはお前の得意なサイドもダミーも通用しない」
「そして、蓄積されたダメージは一気に暴発する。お前の負けだマシン・インター!」

「何っ!ぐはぁーーー!」

インターがゲルニカに向かい足を踏み出したとたん、体中から血を噴水のように噴出し前のめりに倒れた。





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最終更新日  2007年08月22日 00時28分18秒
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