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エピローグ



そう、出てきた人物は小林さんだった。私の中では出てくる人物は違っていた。
だが、小林さんは話しかけてきた。

「どうして私がここにいるって思ったの?」

小林さんはまるで自分がライヤーのように語るが、私にはどうしても小林さんがライヤーだと信じられない。

「いや、小林さんがいるとは正直思っていなかった。 だが、ライヤーならば、今5階にいるは
ずだと思っていた。 今日一日起きたことを冷静に考えてみると、一つの結論にたどり着いた
んだ。だって、ライヤーは明らかに何かを導いていたから」

私は話し出した。そう、ライヤーは何かを試している。
だからこそ、こまめにメールを送ってくる。本当にかおりに危害を与えるつもりならばここまでのことはしてこないだろう。

「じゃあ、私は何を導こうとしたのかしら? ゆうはどう思っているの?」

小林さんがたんたんと話している。

私は自分の仮説を信じた。いや、それが、一番違和感がないからだ。

「いや、小林さんはライヤーじゃない。これは最後のライヤーが私を試していることだと思う。
 もういいだろう。出てきてくれ。かおり」

私はかおりを呼んだ。

今日一日のことを思うと私におきたことは、
高見とかおりとの過去を知る
小林さんとかおりの過去を知る。
そして、元彼女のエリカとの決別。

そう、私はひとつの道に誘導されていた。最後にエリカが去っていたっときにそう思った。

かおりとの未来を考えた場合知っておいたほうがいいことや、もうひとつ、解決しないといけないことが確かに今日一日でわかった。
だが、どうしてこんなことをしたんだ?
私は最後の鍵をかおりから教わりたかった。

「ゆう、気がついてくれたいたのね」

かおりが部屋の奥から出てきた。

「ああ、かおりが今回のことを考えたって気がつくまで時間かかったよ。でも、どうしてこんな
回りくどいことをしたんだ?」

私はかおりに聞いた。

「それは、私はどうしてもゆうの気持ちを確かめたかったの。それに、ゆうは私との出会いを覚
えていないから。ゆうの中で私ってそんな価値しかないのかと不安だったの」

そういって、かおりはひとつの名刺を出した。キャバクラの名刺。

そう、確か上司に連れて行かれたところだ。そのとき、上司はかなり酔っていて、女の子に触り
まくっていた。女の子は嫌がっていたが、それもどうすることもできない従業員がいた。
だから、私は手にしていたグラスを倒して一瞬の空気を作った。
ああ、あの時助けた子がかおりだったんだ。いわれるまで思い出せなかった。

「思い出してくれた?」

かおりがさらに話しかけてくる。

「私ね、あなたが思うほど、いい女じゃないの。あなたが夜の世界に抵抗を持っているのもしっ
ている。初めて会ったときのあなたは、すごく異質な世界に踏み込んだ人みたいだったから。
 それに、私には複雑な過去もあるし、結婚しても、今の世界は壊したくないって、
 思うことも人もいるの。 だから、私は朋美にもお願いして手伝ってもらった。
 朋美はウソをつくのが苦手だから、あんまりゆうと接点持たなかったと思うけれどね」

そう、いいながら小林さんは楽な表情をして話しかけてきた。

「そうよ、だって、ホントのこといいそうになってしまったからね。
 それに、かおりがゆうに惹かれた理由もわかる。だって、ゆうは純朴なんだもの。
 あなたには裏がない。今までかおりに言い寄ってきた人物は高見を除いて変なのばっかりだっ
たからね」

小林さんがそういう。高見についてはどうなんだ。事故にまであって、今回は関係なかったんだろうか?だが、私の考えを知ってかかおりが話してくれる。

「高見くんが事故にあったのは、不運な偶然なの。だから、エリカにちょっとゆうの昔の家にま
でいってもらったのよ。そして、そのときに高見くんには説明したわ。
説明したのは朋美だけれど。ちょっとびっくりしていたけれどね。
 それと、あの指。あれは私、高見くんの実験データとして自分の細胞をサンプルとして出して
いたの。だから、あまったものをもらっていたのね。
 はじめびっくりしていたけれど。私があんなものをほしがるから。
 でも、よかった。ゆうがあのエリカと切れてくれて。
 ゆうもエリカのことを知ってもういいって思えたでしょ」

かおりはそういいながら、部屋の中央にあった資料を手に取った。

「それに、ゆうも私に困っているなら相談してくれたらよかったのに」

かおりは意地悪く資料をめくりながら私にそういった。私も結婚式のことも言えなかったのも事
実。

「そうね、回りくどいって思うかもしれない。でも、私こういうゲームみたいなのすきなの。
 だって、極限まで追い詰められたほうが本心が見えてくるから。ゆうもこの企画があるから私
にプロポーズしたのか、それともたまたま、こういう機会だから、偶然が重なったからなのか。
そういうことも知りたかったしね。
 それで、どうなの? 私がこんな性格だってしって。それでも、まだ結婚したいって思う?」

くすりと笑うかおりを見て私は考えてしまった。
あの企画。もし、流れたら損失は何億になる。
多分、私の首が飛ぶことは間違いない。いや、損害は補填されている。
信用がなくなるだけだ。この仕事で信用を失ったらもう仕事なんて出来ない。不思議とそんな思いしか出てこなかった。
ただ口から出たセリフは違っていた。
「ああ、かおりと結婚したいって思うよ」

私はこの日初めてウソをついた。

「よかった。じゃあ、来週またゲームしましょ」

かおりの満面の笑顔に私はただ、笑い返すことしかできなかった。



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