新緑の歯車

国王護衛戦(ショートショート)

Y君(主人公の仲間・男)名前ｒｙ

私はX。
ここは現在戦闘が行われている。

ちなみにここは国のシンボルとも言われている巨大な教会の地下。

私達は先日、国王の秘書に依頼を受けて護衛をしていた。
で、護衛が必要な理由は、和平交渉という大事な事な為だそうだ。

で、つい先ほど、その巨大教会の地下に車を止めに来たら...
この通り、地下に隠れていた暗殺野郎どもに襲撃を受けた。

その上、私たちの名前とか得意魔法とかがばれているらしく結構苦戦中なわけだ。

ちなみに今現在言葉が変なのは戦闘中だから...だッ！

「死ねぇぇぇぇ！」
そんなこんなしていると、私の真横から暗殺野郎がいきなり短刀で私の目を狙ってきた。

「はぁ！」
私は体を後ろに倒しながら、そのまま短刀を突き出した手を蹴り、回転。
　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　　ｲﾘｭｰｼﾞｮﾝｽﾋﾟｱ　　
着地の瞬間にさきほど構成した魔法【幻影の槍】で数人の敵を串刺しに....と見えるが、これは精神的にダメージを与える幻影魔法。
実際に痛み等は感じるが無傷なのだ。

「Y！後は頼んだ！」
私は仲間のYに叫んだ。

「おうけーい！
『魔に堕ちし残酷なる風よ
　契約者Yの名の下に集いて、敵を縛れ！
ｺﾞｰｽﾄﾁｪｲﾝ
【霊の楔手】！！』」

その瞬間、Yの足元から黒い歪が生まれ、生温い風が吹き出した。
その風が止んだ瞬間、黒い物体が敵に向かって飛翔、敵の体に巻きついていく。
敵は身動きが出来なくなったようで、各々何か喚いている。

「ふぅ....これで終わりか？」
「のようですね。」
私は首をぐるりと回し、周りを見渡した。

敵の数は約30。
そのうち半数は私の魔法で気絶し、
残りの半数はYが放った、通称【風の化物】と呼ばれる、先ほどの魔法で捕らえられていた。

私とYは敵を一箇所に纏め、秘書に魔電を掛ける。

「あー、こちらYです。
　暗殺に来た連中は全員確保しました。」
「わかった、こちらも無事和平交渉が終わった。」
「了解しました、それではそちらへ向かいます。」
「頼んだ....ﾌﾞﾂｯ」

その言葉の後、魔電は切れ、私はYの方へと体を向ける。

「Y、私は今から国王達を迎えに行って来る。
　お前は一人で見張ってろ。」
「へい、おーけーです。」
軽い口調のYだが、戦闘能力等、今いる魔道師の中(国公認の魔術師の中)でもトップクラスだ。
今のここなら一人で任せても問題ないはずだ。
「それじゃあ、行って来る。」
私は踵を返し、上へと向かった。

私は階段を上りながらふと一つの疑問が浮かんだ...。
あの30人程度の敵の中に、親玉らしき人物が一人も居なかった事だ。

もしかしたら上に居るのかもしれない...

そう考えた瞬間背筋に怖気を感じた...
私はすぐに駆け出し、国王達がいる所へと向かった。

ただ、もしかしたら敵がかなりの数いるかも知れない為、
高位の攻撃魔法を構成しておくことにした。

私が使う魔法はほとんどが詠唱系統の物ではなく、
脳内で特殊な陣を描き、契約した精霊等に力を借り、力を使う物だ。
　　　　　　　　　　　　　　ｼﾞﾝｹｲｼｬ
その手の魔術師を通称【陣契者】と呼ぶ。

私は力の反動がなるべく少なく、ダメージも大きい物を構成し始めた。
ただし、このように条件が良い物は
代わりに複雑な陣と大きな精霊の力を必要とする。

私は陣を脳内に描きながら走り続けた。

1.2分して、上に着いたとき、戦闘の痕跡が地面に大きく刻み付けられていた。

やはり、敵はまだ居た。
私は急いでYに連絡を取ろうとしたとき...、
後ろから刃物...それも多分特殊な魔法が組み込まれているだろう物を突きつけられた。

私は咄嗟に前転し、後ろを振り返り、魔法を放とうとしたが、そこに人影は無かった。

その時また後ろに怖気を感じ私は後ろを振り返った。

そこに居たのは気絶した国王と国王についていた秘書だった。
秘書も傷を負って、とても危険な状態に見えた。

「だ、大丈夫ですか！？」
私は大きな声でそう叫び、秘書に肩を貸した。
秘書は弱弱しく、こう告げた。

「敵はとてつもない魔術師だ。」と...。
私はその時わかった。

国王に常時展開してある、超が付くほど強力だと謳われる結界を破り、
その魔法の保護下にあるはずの秘書までも傷つけるほどの強力な魔術師。

それは...私の兄。

私は全力で奥へと駆け出していた。

思い出を捨て
力のみを求めた兄を倒す為に私は駆け出していた。

奥の祭壇に着いた時

空に浮いている一人の男が居た。

私はすぐにわかった。

あいつじゃない...と。

「お前は誰だ。」
私は無意識にそう問いかけていた。

「私は暗殺部隊隊長。名は無い。」
兄と同じような口調で返事を返してきた。

「お前が国王を殺そうとしたのか？」
「もちろん。」

私はその返事を聞いた瞬間、先ほどから構成していた魔法、
ｸﾗｴﾙ･ﾊﾝｽﾞ
【残酷なる魔手】を発動させた。

「はぁぁぁぁ！」
私は吼えるように叫びながら魔法を発動させた。

この魔法【残酷なる魔手】の力は2つある。
まず影が相手の体を覆いつくして一時的に、完全に動けなくすること。

そして名前の通り、残酷な力は、相手の骨という骨を砕く。
ただ、この魔法は結界等で防御されたら一気に効果が低くなる。
それでもある程度の効果は得られるはずだ...。

相手は驚いたような表情を見せたが、すぐに顔も影に覆われていく。

私をそれを確認すると次の魔法を構成し始めた。

バキョ....メキ....ギシ....

木が折れるような音が、祭壇に木霊する。

数分後、影がすーっと引いていった。

相手は苦々しい顔をしながら私を睨み付けたきた。

が、私はそんな事を無視して、どこの骨が砕けたか確認した。
あの強力だと謳われる結界を破った男だ。
もしかしたら無傷かも知れない。

一通り、体を嘗め回すように見ると、
両足と両腕が砕けていた。

しかし...
まだ終わらない、終わらせない！

私はすぐに次の魔法を放った。

「地獄より生まれし契約よ
我の名の下に力を貸せ
鎖となりて敵を捕縛、締め上げよ
【地獄の鎖】！」
私はそう叫びながら相手に手を翳した。

すると相手の足元から太い鎖がジャラジャラと音を立てて出てきた。
その鎖は、足から蛇の様に絡めとり、地面へと縫い付けて行く。

相手は鎖を払おうと足掻いていたが、一度巻きついた地獄の鎖は切れない。

私は不思議に思った...。
あの結界を破った男が...？
なぜこんなにあっさりと？

私はその事について男に問いかけた。

「お前、国王を気絶させたな？」
「なんでそんなことを....ガッ！？」
私は"ある事情"で尋問の仕方を一通り知っている。

ここで一番なのは体に痛みを知らせることだろう。
そう私は思い、砕けた足を踏みつけた。

「さっさと喋れ。」
「くっ...そう..だ、国王...を気絶させた....のは俺だ...。」
相手は顔を青くさせながら途切れ途切れそう喋った。

「ならどうやって結界を破った？」
「結界...？なんの...話だ？」
こいつ...
「国王に張られている結界の事だ。」
「あ...ああ....、裏の魔道具屋で...売ってある...闇の結界破りで...」
「嘘をつけ。」
私は相手の足に短刀を突き立て、痛みを走らせる。

「ぁ！？」
相手はビクッと体を震わせた。
「ほ...本当だ...。」
「嘘だろ？」
私は突き立てた短刀を握り、少しずつ回転させていった。

「ウッ！？」
「正直に喋れ。」
相手は涙を流し、先ほどからは考えられないような口調だった。

「本当...だ...クッ...。」
「そうか。それじゃあ一時気絶してもらう。」

私はそれ以上無意味だと悟るとすぐに
　　　　　　　　　　　　　　　ｿｳﾙﾌﾟﾘｽﾞﾝ
一時的な意識封印の魔法【精神の牢獄】を使い、相手の意識を奪った。
その後、すぐに私はYに魔電を掛け、上で合流し、
魔道警察に連絡を取った。

それで今回の依頼は終わりだったが、不自然な事があった気がした...が、
今回のお陰で、魔力の半分を持っていかれた所為で、いろいろと不都合が多かった。
あいつに使った3つの魔法、【残酷なる魔手】【地獄の鎖】【精神の牢獄】は、どれも威力等のバランスは高いが、魔力の消費量がかなり多い。
私もこの3発だけで半分の魔力を...。

ちなみに、この3つは高位と言っても高位の下に位置する物だった為、私が使役するのも簡易だったが...
あの...隊長...。
あの結界を破る為には、確実に最上位の攻撃魔法を使わなければ成らないはずだ...。

そんな事を考えたが、一応無事に依頼も終わった為、私はそそくさと家へと帰り、睡眠へと誘われた。

3日後、魔道警察からの報告で分かった事があった。
あいつ、暗殺部隊体長は、先日自殺したという事。
国王の結界は本当に、普通の結界破りの道具によって破られた事。

今回の依頼はいろいろと大変だったわけだ...。
これじゃあ一時依頼が来ても動けないな。
まぁ、依頼料がたんまり貰えたから、魔力が回復するまで一時休業だ。

「Y。」
「ん～？」
「1週間ほど休業だ。」
「おっけー。」

Yは別に驚く様子もなく、
軽く返事をしながらゲームをしていた...。

さて、そんな事は放って置いて....
私はゆっくり眠る事にしよう...。

終了

感想などはBBSにお願いします(*´ェ`*)ポッ

ジャンル別一覧